選挙制度改正運動としての選挙区すみ分け投票の勧め

5月 8th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 23:23:55
under 選挙制度 , 選挙制度修正投票 [5] Comments 

 

政権交代の需要に依拠した選挙区すみ分け投票が野党連合を促し、
小選挙区制の廃止と平和共同候補の擁立、
第3極の形成に道筋をつける
(印刷用ファイル)

 1人区でどう平和共同候補を実現したらよいのか。平和共同候補と民主党候補が対立してよいのか。平和共同候補が、野党の分裂選挙と敗北を助長することがあってはいけません。平和共同候補は必ず勝てる候補でなければならず、全野党統一候補が理想です。

 第3極候補ないし平和共同候補を民主党候補と対立させてでも、第3極の形成や、9条派3分の1突破を図ろうとするアプローチは、将来見通しが立ちません[参考1]。何十年かかるのか、何世紀かかるのか分からない。

 小選挙区選挙を利用して第3極議員を増やすには、時間がかかります。したがってその前に、民主党の単独主義を牽制する全野党連合を早急に確立しなければなりません。全野党連合が形成されれば、全野党統一候補の擁立も可能になります。

 小選挙区制の米英などで第3極が台頭する兆しは見られません。小選挙区制の廃止が第3極形成の現実的な条件ではないのか。小選挙区制の廃止も、野党連合の枠組みが作られることで道筋がつけられます。少数政党を抹殺する仕掛けであり、かつ政権交代を阻害することがある小選挙区制――2005郵政選挙の小選挙区で、与党は49%の得票率で76%もの議席を獲得――は、野党連合の理念に反するからです。

 最も好まれた候補の選出すら保障しない小選挙区制は、選挙制度ではありません[参考2]。 主権を侵害する小選挙区制の廃止は、主権者にとっても最重要の政治課題です。小選挙区制の土俵に素直に乗ってはいけません。個別選挙における投票に矮小化しない、選挙制度改正などを目指す運動としての投票戦略を組み立て、実践する必要があります。民主党単独政権を回避する野党連合と、そこを足がかりとした小選挙区制の廃止、平和共同候補=全野党統一候補の擁立を目指す運動として、小選挙区選挙を利用するべきです。

 「選挙区すみ分け投票」※は、主権者が主導してこの野党連合を促すものです。共産・社民など小数政党を支持する主権者が、小選挙区で民主党候補に投票する見返り、バーターとして、民主党支持者に比例区では小数政党に投票してもらうことを狙っています。自民・民主・公明の議席を減らして、小数政党の議席を増やし、その結果各党がそれぞれの得票率にほぼ見合った議席数を獲得できるようにする投票パターン(選挙制度修正投票)に他なりません。まだ比例区が残っている点が米英とは異なり、ここに突破口があります。

 選挙区すみ分け投票は、政策か政権交代かの二者択一を迫るものではなく、政権交代の需要に依拠して、共産・社民など第3極の議席を増やし、小選挙区制廃止などの政策実現を図る運動なのです。

 沖縄でなぜ糸数慶子氏のような全野党平和共同候補が実現しているのか。平和世論の強度や、社会大衆党という地域政党が野党の接着剤として機能していること、市民による政党への働きかけだけでなく、当地でどの党もひとり抜きん出ていないことが、大きな要因として考えられます。

 「本土」においても、野党勢力バランスの「沖縄化」が必要でしょう。選挙区すみ分け投票は、この「沖縄化」に近づけるアクションともいえます。主権者が野党の勢力バランスを民意に即したものに変え、全野党の共依存関係をつくることで、全野党に選挙共同路線を取ってもらうのです。

 こうして全野党選挙共同の枠組みが作られることで初めて、1人区での勝てる平和共同候補の擁立にも道筋がつきます。政権交代のための全野党選挙共同の意義が認識されることで、少数政党抹殺政策であり、政権交代を阻害することがある小選挙区制の廃止機運も高まるというものです。小選挙区制をなくしたい小数政党からすれば、逆の関係も成り立ちます。

 共産・社民など小数政党の支持者としては、選挙にならない小選挙区選挙で死票を投じるのか、それとも野党連合を足がかりに小選挙区制の廃止などを目指す運動としての投票を行うのかが問われます。次期総選挙で野党連合が勝利すれば、小選挙区制の廃止を可能にする土台が作られます。共産・社民と両党支持者には、まずはたった1回の選挙を我慢し、選挙区すみ分け投票を推し進めていただきたいものです。

 一方、民主党支持者など政権交代を望む主権者は、小選挙区で勝利の見込みのある野党候補に票を集中させるには、どのような投票パターンが有効なのかを問う必要があるでしょう。

 共産党は小選挙区で候補者を降ろすべきだ、という意見は選挙の度ごとに聞かれますが、これが落とし穴です。それは一部の主権者の民意には違いありませんが、得票率で測った民意は、共産・社民の議席を増やせ、民主の議席を減らせ、というものです。この正当な民意を重視し、公平を期した要求を政党に突きつけるとすれば、共産・社民はほとんどの小選挙区で候補者擁立を見送ってくれ、その代わり民主は比例区で候補者の擁立数を大幅に減らし、議席を共産・社民に譲るべきだ、ということになるでしょう。

※ 選挙制度改正運動としての選挙区すみ分け投票:

 比例区・複数定数区では少数野党などに投票する代わりに、1人区(地方自治体の首長選挙を含む)では「勝てる野党候補」に票を集中させること。死票を投じることが常の少数野党の支持者と、1人区で死票を生票として欲しい民主党などの支持者双方にメリットを与える投票パターン。

 全体の議席異動からみると、1人区の議席を自公から民主などに移転させる代わりに、民主が比例区・複数定数区で獲得していた議席を少数政党に移譲し、各党の議席獲得率を得票率に近づける「選挙制度修正投票」といえます。

 異なる野党の支持者どうしで実際に「バーター契約」(選挙区すみ分けバーター投票)を結び、それを世間に公表するのがよい。こうした選挙区すみ分け投票の意思表示アクションは、選挙前から行います。

 本来であれば、各党が主体的に選挙区すみ分け投票の協定を結ぶのが理想です。次期総選挙に向けては、青森選挙区の一部で、民主党と社民党がこの投票で合意しています。

2009年5月8日

太田光征
http://otasa.net/

[参考1] 自民と民主が改憲発議要件を緩和する改憲に成功すれば、国会議員3分の1で9条改憲発議を阻止することはできない。
[参考2] 「小選挙区制の廃止へ向けて」
      http://kaze.fm/wordpress/?p=215