定数配分の格差についての誤解――民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける(2014年衆院選)

【目次】
(1) 民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける――海江田万里支持の有権者数と山田美樹支持の有権者数の比(投票価値の実体)は有権者数に関係なく決まる
(2) 衆議院比例区も投票価値の格差(ブロック間死票格差と政党間1票格差)をもたらすので違憲

(1) 民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける――海江田万里支持の有権者数と山田美樹支持の有権者数の比(投票価値の実体)は有権者数に関係なく決まる

弁護士ドットコムは12月15日付で、海江田氏が自民党の山田美樹氏に負けたことについて、次のように書いています。

<一票の格差>「選挙無効は解散より混乱が少ない」弁護士らが衆院選「無効」求め提訴(弁護士ドットコム)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141215-00002430-bengocom-soci

<伊藤真弁護士は、民主党の海江田万里代表が東京1区で落選したことに触れ、「一票の格差」が背景にあると指摘した。
「海江田代表は約8万9000票の得票で落選した。しかし、8万9000票以下で当選している選挙区は、全国で130選挙区ある。彼は、この『130のどこか』から出ていれば、問題なかった。国会議員を選ぶのに、その背後の主権者の数がバラバラなのは、どう考えてもフェアではない。民主主義とは言えない」>

一連の定数配分の格差是正訴訟に取り組まれている伊藤真弁護士には敬意を抱いていますが、上記見解は定数配分の格差についての誤解といわなければなりません。

海江田氏が約8万9000票もの票を獲得できたのは、東京1区の有権者数が多く、対立候補がそこそこだったという理由によるものです。「130のどこか」から出れば、8万9000票もの票は取れないかもしれないし、対立候補が弱小であれば、それ以上の得票をしたかもしれません。小選挙区では絶対得票数は意味を持たず、選挙区内の相対得票率のみで当落が決まります。

例えば、東京1区を2分割してできた新選挙区で海江田氏と山田氏が立候補すれば、両候補とも旧1区の時の2分の1の得票をして、やはり海江田氏が敗れることになるでしょう。小選挙区における当落は選挙区の有権者数の多寡にはまったく依存しません。第1得票率と第2得票率の比だけで当落が決まるからです。

ですから定数配分の格差それ自体は投票価値の格差ではありません。定数配分の格差が問題となるのは、地域代表性の格差があまりにも拡大してしまう場合や、自民党が強い中国地方に有権者数当たりの議員数が多い場合などに限られます。

2012衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=435#2012election17
(17) 選挙区間1票格差(地域代表性格差)が政党間1票格差に有利に働く例――自民は中国地方で支持率が高く、同地域は人口当たりの議員数が多いので、選挙区間1票格差は自民に有利

地域代表性の格差としての定数配分の格差があるとしても、地方から都市部に数議席を移せば解決する程度なので、現時点でもそれほど問題ではありません。

伊藤真弁護士は「国会議員を選ぶのに、その背後の主権者の数がバラバラなのは、どう考えてもフェアではない」とも語っていますが、これも間違いだと思います。

小選挙区制では、投票者のすべてが当選者を生み出すことはほとんどありません。生票を投じる有権者と死票を投じる有権者を同列視して、国会議員の背後に同数の有権者がいるべきといっても、意味がないのです。

小選挙区制ではA「1区50万人、2区150万人」でもB「1区100万人、2区100万人」でも、議員2人の背後には同数の有権者がいて問題なく、選挙区間での投票価値に格差はありません。Aを1つの2人区からの分区、Bを1つの2人区からの分区と考えれば分かりやすいかもしれません。選挙区間で投票価値の格差がなくとも、生票対死票という深刻な投票価値の格差は存在します。

海江田対山田は、50万人、100万人、150万人のいずれの選挙区で戦われても、有権者数が結果に影響を及ぼすことはありません。選挙結果は、各選挙区の海江田支持の有権者数と山田支持の有権者数の比だけで決まり、選挙区の有権者数の絶対値には関係がないのです。投票価値は第1得票率の候補に票を投じた有権者にのみ発生し、そのような有権者になって投票価値が発生するかどうかは、候補者の顔ぶれとそれらに対する有権者の態度だけで決まり、有権者数の絶対値には影響されません。

150万人の小選挙区の有権者の1票は、50万人の小選挙区の有権者の3分の1の影響力しかない、ということではありません。小選挙区における票の影響力は、海江田支持の有権者グループ全体の票数、山田支持の有権者グループ全体の票数の大小関係に他なりません。この大小関係という比は、50万人、100万人、150万人という有権者数とはまったく無関係に決まります。実体が大小関係=比である投票価値は、有権者数とは無関係なのです。

よく分かる「定数配分の格差」(「1票の格差」)
http://kaze.fm/wordpress/?p=531

(2) 衆議院比例区も投票価値の格差(ブロック間死票格差と政党間1票格差)をもたらすので違憲

同じ弁護士ドットコムの記事で、升永英俊弁護士は次のように語り、比例区は小選挙区と違って違憲ではないから、選挙を無効にする必要性はない、との考え方を示しています。

「295人の(小選挙区の)国会議員がいなくなるということは、解散と同じだ。むしろ(比例代表の180人が残っているから)解散よりも、社会的変更は少ない。そして、解散を社会的混乱と言う人はいない」

しかし、小選挙区制が違憲である理由として重大なのは、定数配分の格差よりも、投票価値の格差(生票と死票の対立)です。同じ理由で衆議院の比例区や参議院の選挙区は投票価値の格差をもたらすので違憲です。衆議院の比例区や参議院の選挙区は定数の異なる11ブロックや、改選定数1〜5の選挙区に分かれていて、ブロックや選挙区によって死票率に格差が生じているからです。死票率の格差は政党間1票格差につながります。

2012年衆院選の比例区(全国集計)における政党間1票格差(「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値)は、社民党でいえば4.87倍にもなっています。「2倍」程度の定数配分の格差よりよほど重大です。

2012衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=435#2012election8
(8) 2012衆院選の最大1票格差――小選挙区が日本未来の党の13.83倍、比例区が社民党の4.87倍

2014年衆院選でも同様の政党間1票格差が生じているはずで、新たに提起する衆院選無効請求訴訟の争点の1つにします。

太田光征

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