2013年参院選無効請求訴訟で上告――定数配分の格差の是正で投票価値の格差(死票率の格差)はさらに拡大する

2013年参院選無効請求訴訟の訴えが東京高裁で2014年1月30日に却下・棄却されたので、4月11日に上告理由書と上告受理申立て書を提出しました。

第23回参議院選挙無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=478
第23回参議院選挙無効請求訴訟の準備書面(2013年11月6日付)――戦後直後から最近までの国会審議を振り返る
http://kaze.fm/wordpress/?p=512

上告受理申立て書はほぼ上告理由書からの抜粋の形をとるので、上告理由書だけを紹介しておきます。

上告理由書
http://otasa.net/documents/2013Election_Appeal_to_the_Supreme_Court.pdf

上告理由書は54ページありますので、一部だけを抜粋します。残りはファイルでご確認ください。

目次
第1 理由要旨
第6 選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす/千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性
 1 従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)について憲法判断しない原判決――投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある
  (1) 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較)

表 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較)

  (2) 定数配分の格差より死票率の格差の方が重大――定数配分の格差の是正で投票価値の格差はさらに拡大する

上 告 理 由 書
従来の定数是正訴訟と同型でありながら
より重要な本件訴状争点について判断しない原判決
〜定数配分の格差の是正で投票価値の格差はさらに拡大する〜

2014年(平成26年)4月11日
平成25年(行ケ)第92号 選挙無効請求事件
上告提起事件番号 平成26年(行サ)第26号

最高裁判所民事部 御中

上告人   太田光征
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46番地の2 さつき荘201号
送達先 同上(電話・ファクス:047-360-1470)

被上告人1    千葉県選挙管理委員会
被上告人2   中央選挙管理会

目次

第1 理由要旨 - 5 -
第2 用語と出典の説明と訂正について - 7 -
第3 本件訴訟は従来の「定数是正訴訟」(「1票の格差訴訟」)と同型であるから適法であるが、原判決は「定数是正訴訟」と同型の本件訴訟争点について理油不備・理由齟齬の違法を犯している - 7 -
第4  原判決は、本件訴訟の原告適格性と被告適格性について、憲法レベルで理由不備・理由齟齬の違法を犯している - 8 -
第5 比例区の定数枠から無所属候補を締め出す現行選挙制度は制限選挙を禁止する憲法に違反 - 8 -
 1 訴状争点を名簿式比例代表制にすり替え、自身の立論根拠「国会の広い裁量」「政党の重要性」について理由を示さない原判決 - 8 -
 2 「国会の広い裁量」について憲法の解釈と適用を誤った原判決 - 9 -
 3 「国会裁量権の合理性検討」を怠った原判決 - 10 -
 4 本件訴状の争点を名簿式比例代表制にすり替え、しかも非拘束名簿式比例代表制(名簿式比例代表制一般とは異なる)の合理性を「政党の重要性」で説明した上掲平成16年大法廷判決を援用し、「政党の重要性」を理由にすることで理由齟齬の違法を犯している原判決 - 11 -
 5 政党を最も重要な媒体と認める原判決は、無党派層が最大の政治勢力である今日の現実を無視して、重層的な理由齟齬の違法を犯している - 12 -
 6 まとめ - 12 -
第6 選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす/千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性 - 13 -
 1 従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)について憲法判断しない原判決――投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある - 13 -
 (1) 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較) - 13 -
 (2) 定数配分の格差より死票率の格差の方が重大――定数配分の格差の是正で投票価値の格差はさらに拡大する - 16 -
 2 訴状の争点とは異なる争点にすり替えて判断し、過去大法廷判決で要求された「国会裁量権の合理性検討」を行っていない原判決 - 17 -
 3 過去大法廷判決の成果(国会議員の地域代表性の重要性を否定し、都道府県単位の選挙区制の見直しを主張)から後退する原判決 - 18 -
 4 憲法要請「国民の厳粛な信託」から導かれる定量的な選挙制度条件を検討せずに憲法判断をする原判決 - 18 -
 5 憲法より普遍的といえる数科学的知見を検討せずに憲法判断をする原判決 - 19 -
 6 まとめ - 19 -
第7 公職選挙法の供託金・立候補者数規定は「正当な選挙」どころか「不当な選挙」を規定するもので、憲法第14条に違反する - 20 -
 1 比例区選挙の立候補要件――政党本位といいつつ既成政党のみを優遇して何らの民主主義的意義もなく、原判決は理由不備・理由齟齬の違法、憲法の解釈と適用を誤った違法を犯している - 20 -
 (1) 無党派層が最大の政治勢力であり、政党よりも支持される政治団体が選挙で存在する今日、政党本位の立候補要件に合理的理由はない - 20 -
 (2) 国会裁量権の合理性検討に値しない国会審議――強行採決で立候補要件を決定し、政党本位と矛盾しない「名簿届け出政党等の要件緩和」など合理的な代案を無視 - 21 -
 (3) まとめ - 23 -
 2 供託金――「泡沫候補排除」「選挙公営費の一部負担」などの実際の立法目的を無視し、架空の立法目的を設定する原判決は、理由不備・理由齟齬の違法を犯し、同負担を不当と認めた過去最高裁判決に違背 - 23 -
 (1) 理由不備の過去最高裁判決を支持する原判決 - 23 -
 (2) 供託金制度の立法目的・手段・効果に合理性はない――過去の供託金争点裁判(大阪高裁判決)を振り返る - 24 -
 (3) 供託金制度の立法目的・手段・効果に合理性はない――過去の国会審議を振り返る - 29 -
 (4) まとめ - 48 -
第8 野宿者の方などの選挙権が剥奪されている――住所非保有者も適正に生活保護を受給できるように、住所非保有者の選挙人名簿を調製して選挙の公正を確保できる - 49 -
 1 公正な選挙に必要なのは本人確認であり、住所ではない - 49 -
 2 行政は居所・仮住所を住所と見なさず、民法、住民基本台帳事務処理要領、過去の住民登録事例に違背する - 51 -
 3 行政は住所非保有者に住所を確保すべき住民基本台帳法の義務を怠っている - 51 -
 4 在外選挙人を優遇して国内住所非保有選挙人を差別するのは不当 - 53 -
 5 本件原判決が支持する上掲大阪高裁判決は、その論理構造で国内住所非保有者の選挙権の行使制限を是としない - 53 -
 6 まとめ - 53 -


第1 理由要旨

 原判決は、訴状の争点とは異なる争点にすり替えて判断したもので、昭和59年(行ツ)第339号選挙無効請求事件昭和60年7月17日最高裁判所大法廷判決で要求された「国会裁量権の合理性検討」を怠り、また憲法判断を誤っているから、民事訴訟法第312条1項「判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること」および同法第312条2項6号「判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること」に該当し、破棄を免れない。

 原判決は訴状争点「比例区の定数枠から無所属候補を締め出す現行選挙制度は制限選挙を禁止する憲法に違反」を名簿式比例代表制の合理性にすり替え、「国会裁量権の合理性検討」を怠って、自身の立論根拠「国会の広い裁量」「政党の重要性」について理由不備の違法を犯した上に、訴状争点を否定するために非拘束名簿式比例代表制の合理性を「政党の重要性」で説明した後掲平成16年大法廷判決を援用して理由齟齬の違法を犯し、さらに「政党の重要性」についても無党派層が最大の政治勢力である今日の現実を無視して、重層的な理由齟齬の違法を犯している(第7の1の(1)、第7の2の(3)第47段落参照)。
 国会の裁量は優先的憲法要請を選挙制度の細部に落とし込む立法作業の限りにおいて認められるところ、原判決は「国会の広い裁量」について、憲法の「国民の厳粛な信託」「正当な選挙」(前文)、第14条1項、15条1項、43条1項、44条などの解釈と適用を誤った違法を犯している。

 「選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす」「千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性」という争点につき、原判決は、従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)に対する判断になっておらず、「国会裁量権の合理性検討」を怠っているから、重大な審理不尽、理由不備・理由齟齬の違法を犯している。
 過去大法廷判決が憲法要請でない国会議員の地域代表性の重要性を否定し、都道府県単位の選挙区制の見直しを主張しており、憲法要請である死票率の最小化(投票価値の平等化)を優先して制度化すべきところ、選挙区を中選挙区ないし大選挙区で統一できるにもかかわらず、数科学的知見から小選挙区が最悪であると承知しながら、選挙区によって小選挙区制および中選挙区制というまったく異なる選挙制度を適用することは、死票率の格差という投票価値の格差をもたらすから、憲法第14条1項に反するのに、原判決は憲法の解釈と適用を誤った違法を犯している。

 比例区選挙の立候補要件は政党本位といいつつ、選挙供託金制度や既成政党のみを優遇する政党助成金制度と相まって、既成政党のみを優遇するもので、何らの民主主義的意義もないから、憲法第14条1項に反するのに、現行要件を認める原判決は憲法の解釈と適用を誤った違法を犯している。
 無党派層が最大の政治勢力であり、政党よりも支持される政治団体が選挙で存在する今日、政党でない政治団体にのみ候補者10人を課す政党本位の立候補要件に合理的理由はないから、原判決は理由不備・理由齟齬の違法を犯している。

 選挙供託金制度は、泡沫候補の立候補抑止、選挙公営費の一部負担などが実際の立法目的であるが、同制度の必要性と効果を根拠付ける立法事実がないことが国会で論破され、合理的な代替手段も提案されている。
 後掲大阪高裁判決も同負担を根拠に同制度を正当化できないと判示し、同判決を支持する最高裁判決(原審被告乙第2号証)も同じ理を是認しているところ、原判決は同最高裁判決に違背する。
 同制度は無反省に戦前の政治弾圧目的を引きずり、既存政党、特に二大政党を優遇することが実態であり、立候補権と選挙権に財産上の差別をもたらすだけなのであるから、憲法第14条1項、15条1項、44条に反して違憲である。
 架空の立法目的「真に国民の政治意思の形成に関与しようとする意思のない候補者又は政党等が届出をすることを防止し,公正かつ適正な選挙を確保」を持ち出して実際の立法目的を検討しない原判決は、「国会裁量権の合理性検討」を怠り、致命的な理由不備・理由齟齬の違法、憲法の解釈と適用を誤った違法を犯している。

 公職選挙法は、住所非保有者でも生活保護を受給できるのに、住所によらない本人確認の手段があっても、住所非保有者の選挙人名簿の調製規定を設けず、行政も民法の住所割り当て義務と住民基本台帳法の住所確保義務を怠り、住民登録消除の不法行為を働き、過去の住所非保有者の住民登録実績から後退しており、住所非保有者の選挙人名簿を調製できるのに調製しない立法不作為と法の不履行がある。
 住所非保有者の選挙人名簿を調製せずに選挙権の行使を制限することは、「制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合」(後掲平成17年大法廷判決)に該当しないから、憲法第14条1項、15条1項に反して違憲なのに、住所非保有者の選挙権行使は選挙の公正を確保できないとし、立法不作為を是認する原判決は、理由不備・理由齟齬の違法、憲法・民法・住民基本台帳法の解釈と適用を誤った違法を犯している。

第6 選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす/千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性

 1 従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)について憲法判断しない原判決――投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある

  (1) 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較)

 上告人は、訴状の第2の3の(0)緒論(3ページ)で、「本件訴訟では、議員1人当たりの有権者数を選挙区間で揃えただけでは解消されない選挙権の格差を論点とする」と、選挙権の格差(投票価値の格差)の一類型たる「定数配分の格差」を争点とした選挙無効請求訴訟(「定数是正訴訟」)で憲法判断した上掲平成24年大法廷判決との同型性を明確に規定し、訴状の第3結論(22ページ)で下記(2)〜(4)の具体的争点を明示した。これらの争点は、訴状の第2の3の(0)〜(4)(ただし(1)は、別の立候補権の差別が争点)と原審準備書面の第3で解説している。

 (2)「定数配分の格差」に起因する投票価値の格差以外にも「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」の格差があり、投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にあることを認める。
 (3)憲法前文「国民の厳粛な信託」、憲法第14条法の下の平等、憲法第43条「全国民を代表する選挙」は、死票を最小化しつつ国民の意見と国会の意見の乖離を限りなく縮小して平等な国民主権を保障する選挙制度を要請していることを認め、従って憲法は選挙区間での定数分布の人口比例だけでなく投票先政党間などでの当選議員分布の投票者数比例も要請していることを認め、小選挙区制および大選挙区制(理論的に中選挙区制を含む)はそのような要請を是とする思想に基づいて真摯な議論によって制定された法律ではなく、同思想に通じる科学的知見を無視しているから、憲法違反であると認める。
 (4)選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらし憲法違反であると認める。

表 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較)
論点 本件訴訟 従来の定数是正訴訟
投票価値を持つ主体 生票を投じる者(生票を投じて初めて投票価値が生まれ、死票を投じる者にとっての投票価値はゼロ) 死票を投じる者を含めた仮想的な「有権者一般」を想定
投票価値の比較基準(有権者グループの区分け基準) 選挙区間だけでなく政党間にも拡張 選挙区間だけ
何を比べるか 議員1人当たりの投票者数 議員1人当たりの有権者数
「定数配分の格差」についての理解 「有権者個人」の「投票価値の格差」ではなく、「地域代表性の格差」に帰着すると主張(上掲平成23年大法廷判決は地域代表性の重要性を否定(第6の3を参照)) 裁判所は「投票価値の格差」と理解
「投票価値の格差の本質」についての理解 生票と死票の対立 あいまい
参議院選挙区における「定数配分の格差」の是正の結果どうなるか 地方と都市部の間における「死票率の格差」=「投票価値の格差」はさらに拡大すると主張 「投票価値の格差」が縮小すると理解
投票価値の格差の類型化 (1)「選挙区間」で比べる「定数配分の格差」(1議席当たりの有権者数の格差=定数分布の人口比例からの破れ)
(2)有権者グループの区分け基準として投票選挙区を採用して「選挙区間」で比べる「定数配分の格差」(1議席当たりの有権者数の格差=定数分布の人口比例からの破れ)
(3)有権者グループの区分け基準として投票先政党を採用して「政党間」で比べる「投票価値の格差」(政党間1票格差=1議席当たりの得票数の格差=当選議員分布の投票者数比例からの破れ=「1議席当たりの得票数(死票を含む)を各党ごとに求め、最小の党のそれで割った値)
(4)「選挙区間」で比べる生票率および死票率の格差
なし
投票価値に影響を与える要因(法の下の平等に照らして憲法判断する対象)の捉え方 上位規定たる選挙制度本体(定数を決める方式) 上位規定たる選挙制度を所与のものとした場合の下位規定たる区割り方法(1人別枠方式=都道府県にどれだけの数の選挙区を設けるかの方式であり、1選挙区の定数を決める方式ではない)

 しかるに、原判決は、従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟のこれら「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)関連の争点について憲法判断をしていないから、重大な審理不尽、理由不備・理由齟齬の違法を犯している。以下、詳述する。

  (2) 定数配分の格差より死票率の格差の方が重大――定数配分の格差の是正で投票価値の格差はさらに拡大する

[1] 定数配分の格差では、都市部が地方より議員1人当たりの有権者数が多いことが問題とされる。しかし実際には、例えば2012年衆議院選挙の場合、鳥取第1区の当選者の得票数は124,746票で、生票率は 85%、神奈川1区の当選者の得票数は101,238票で、生票率は41%、東京1区の当選者の得票数は82,013票で、生票率は29%となっている。つまり、これら選挙区に限れば、生票を投じることで実質的に投票に参加している有権者数はむしろ地方より都市部の方が少なく(都市部では立候補者数が多く、死票率が高いことなどが原因と考えられる)、生票を投じる有権者に限れば、都市部が地方より投票価値が低いとはいえないのが実態である。ただし、都市部ほど死票を投じる有権者が多いという点で、都市部の方が投票価値は低いといえる。
[2] 衆議院選挙の選挙区選挙において25選挙区もある東京都の有権者が、議員1人当たりの有権者数が2選挙区の鳥取より多いからといって、鳥取から1議席を東京に移して東京の議席が26議席になったところで、東京の地域代表性が高まることに意義を見いだす有権者はあまりいないであろう。現在ほどの定数配分の格差は、地域代表性の格差としては、ほとんど意味がないほどに小さい。
[3] しかも、1選挙区当たりの定数を変えずに議員1人当たりの有権者数を減らしても「有権者個人」の投票価値が高まらないことは、訴状第2の3の(2)「投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある」(6ページ以降、特に(2-ア)「投票価値の本質」8ページ)で実証した。
[4] 新たな例で説明すれば、ある1人区の有権者すべてが、1人2票を持つようになったとしても、投票価値が2倍になることはない。例えば、自由民主党候補の集票力が2倍になるが、民主党候補の集票力も2倍になり、両党候補の力関係は1人1票の場合と何ら変わらないからである。
[5] 衆議院選挙区のように1選挙区当たりの定数が同じ選挙区どうしを比べれば、都市部は一面で投票価値が地方より高く(生票率が低い)、他面で低いが(死票率が高い)、地域代表性は地方とさほど変わらない。しかも、1選挙区当たりの定数を変えずに議員1人当たりの有権者数を減らしても死票率は低減せず、全体的な投票価値が高まることはない。
[6] 参議院選挙区の場合は、地方ほど1選挙区当たりの定数が少なく死票率が高く、都市部ほど同定数が多く死票率が低いので(第6の「4 憲法要請「国民の厳粛な信託」から導かれる定量的な選挙制度条件を検討せずに憲法判断をする原判決」参照)、「定数配分の格差」を是正するために地方から都市部へ議席を移して、地方の1選挙区当たりの定数を減らし、都市部の1選挙区当たりの定数を増やすと、地域代表性はさほど変わらないが、両地域の間における死票率の格差という投票価値の格差はさらに拡大する。
[7] 従って、「有権者一般」で議員1人当たりの有権者数の多寡を比べても、さほど意味がないどころか、参議院選挙区における「定数配分の格差」の是正によって、地方と都市部の間における投票価値の格差はさらに拡大してしまう。定数配分の格差より、1選挙区当たりの定数などで規定される死票率の格差の方が、重大である。
[8] しかるに、原判決は、従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)について憲法判断をしていないから、重大な審理不尽、理由不備・理由齟齬の違法を犯している。

太田光征

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