米国にのみ謝罪する橋下徹氏「私の認識と見解」は元慰安婦と沖縄の方々を新たに侮辱するもの
米国にのみ謝罪する橋下徹氏「私の認識と見解」は元慰安婦と沖縄の方々を新たに侮辱するもの
大阪市長 橋下徹殿
橋下徹大阪市長は、5月13日の「従軍慰安婦制度は必要であった」「風俗店の活用を」という発言の「真意」を説明する文書を公表しました。当初の発言とは似ても似つかないものです。
朝日新聞デジタル:橋下徹氏の「私の認識と見解」全文(2013年05月26日)
http://digital.asahi.com/articles/OSK201305260021.html?ref=reca
橋下徹氏:「私の認識と見解」 日本語版全文− 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20130526mog00m010012000c.html
26日の「私の認識と見解」では、いわば今日の現実に光を当てるという意図が説明されています。
「私の発言の真意は、兵士による女性の尊厳の蹂躙の問題が旧日本軍のみに特有の問題であったかのように世界で報じられ、それが世界の常識と化すことによって、過去の歴史のみならず今日においても根絶されていない兵士による女性の尊厳の蹂躙の問題の真実に光が当たらないことは、日本のみならず世界にとってプラスにならない、という一点であります。」
ところが、13日の発言では、日本が間違った事実認識に基づく特殊性によって日本だけが非難されているという侮辱を解消することに重点が置かれていると感じざるを得ません。
橋下徹大阪市長「米軍の風俗業活用を」はいかなる文脈で発言されたのか(2013年5月13日) | SYNODOS -シノドス-
http://synodos.jp/politics/3894
Part 2
http://synodos.jp/politics/3894/2
「ただ事実と違うことでね、我が日本国が不当に侮辱を受けているようなことに関しては、しっかり主張はしなくては行けないと思っています。」
「レイプ国家だというところで世界は非難してるんだっていうところを、もっと日本人は世界にどういう風に見られているか認識しなければいけないんです。」
「そりゃそうですよ、あれだけ銃弾の雨嵐のごとく飛び交う中で、命かけてそこを走っていくときに、そりゃ精神的に高ぶっている集団、やっぱりどこかで休息じゃないけども、そういうことをさせてあげようと思ったら、慰安婦制度ってのは必要だということは誰だってわかるわけです。ただそこで、日本国が欧米諸国でどういう風に見られてるかというと、これはやっぱりね、韓国とかいろんなところの宣伝効果があって、レイプ国家だって見られてしまっているところ。ここが一番問題だからそこはやっぱり違うんだったら違うと。」
「いや、意に反した、意に即したかということは別で、慰安婦制度っていうのは必要だったということですよ。意に反するかどうかに関わらず。軍を維持するとか軍の規律を維持するためには、そういうことが、その当時は必要だったんでしょうね。」
「今はそれは認められないでしょう。でも、慰安婦制度じゃなくても風俗業ってものは必要だと思いますよ。」
「だけど風俗業ありじゃないですか。これ認めているんですから、法律の範囲でね。」
「そういうのをやっぱりおさえていくっていうためには一定の慰安婦みたいな制度っていうものが必要だったということも厳然たる事実だと思いますよ。そんな中で、なぜ日本がね、世界から非難されているのかっていうことをね、もっと日本国民は知っておかなければいけないわけでね。慰安婦制度を全部否定するとか、正当化するってのは、それはダメなわけですよ。それは戦争の悲劇の中で生まれたものだから、それはね、慰安婦の方に対してはしっかり配慮を持って接しなければいけないけれども。」
「一番の問題点は、世界から日本がどこを非難されているかといったら、政府が拉致して暴行脅迫で無理矢理そういう仕事に就けさせてね、レイプ国家だって言う風に言われているわけですよ、日本は。」
「旧日本兵の慰安婦問題を相対化」(「私の認識と見解」)するつもりはないと説明されますが、そのような思いが滲み出ているのが、13日の発言です。
橋下市長は13日、誰から聞かれたわけでもないのに、軍の規律維持、兵士の休息、性病管理と、慰安婦制度が必要である理由を幾つも挙げているのであり、当時は慰安婦制度が必要であったとあなたが考えていたことは、それこそ誰だって分かるというものです。
あなたの「当時の軍は」という言葉を付け加える手法は、他人の発言だとかこつけて高齢女性を「地球にとって非常に悪しき弊害」とした石原慎太郎氏の「ババア発言」とほとんど同じです。
ババア発言 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%90%E3%82%A2%E7%99%BA%E8%A8%80
旧日本軍による従軍慰安婦制度の問題だけでなく、他国の兵士による被害女性に光を当てているのは、他でもない旧日本軍の元慰安婦の方々です。下記ビデオをご覧ください。
「橋下氏は辞任を」〜抗議集会に女性結集
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1587
日本の従軍慰安婦制度の特殊性は、何百人もの被害者が名乗り出ているのに、日本政府が開き直っていることが世界中から非難されている点です。これも上記集会で指摘されています。
次に、「風俗店の活用」発言について。
橋下市長の13日の発言は、ボーリングやバーベキューと風俗店を比較し、米兵の性欲をコントロールする上で風俗店が優れている、という判断を示したと解する他ありません。
ところが26日の「私の認識と見解」では、次のように述べられています。
「また、沖縄にある在日アメリカ軍基地を訪問した際、司令官に対し、在日アメリカ軍兵士の性犯罪を抑止するために風俗営業の利用を進言したという報道もありました。これは私の真意ではありません。私の真意は、一部の在日アメリカ軍兵士による犯罪を抑止し、より強固な日米同盟と日米の信頼関係を築くことです。一部の在日アメリカ軍兵士による犯罪被害に苦しむ沖縄の問題を解決したいとの思いが強すぎて、誤解を招く不適切な発言をしてしまいましたが、私の真意を、以下に説明いたします。」
「日本の安全保障にとって、米国との同盟関係は最も重要な基盤であり、在日アメリカ軍の多大な貢献には、本当に感謝しています。」
「より強固な日米同盟と日米の信頼関係を築くこと」という「真意」は、13日の発言から微塵もうかがい知ることができないだけでなく、女性を米兵に差し出すことの意図を別の面から説くものに他なりません。
「一部の心無い在日アメリカ軍兵士をしっかりとコントロールして欲しい、そのような強い思いを述べる際、『日本で法律上認められている風俗営業』という言葉を使ってしまいました。この表現が翻訳されて、日本の法律で認められていない売春・買春を勧めたとの誤報につながりました。さらに合法であれば道徳的には問題がないというようにも誤解をされました。合法であっても、女性の尊厳を貶(おとし)める可能性もあり、その点については予防しなければならないことはもちろんのことです。」
「今回の私の発言は、アメリカ軍のみならずアメリカ国民を侮辱することにも繋(つな)がる不適切な表現でしたので、この表現は撤回するとともにお詫び申し上げます。」(26日「私の認識と見解」)
沖縄の女性に対する侮辱を謝罪するのでなく、米国の怒りを忖度して「在日アメリカ軍の多大な貢献には、本当に感謝しています」と述べるというところに、米国への従属と沖縄への犠牲を認める思想が表れています。
「私の認識と見解」は風俗店の活用という考え方そのものを撤回するものにはなっていません。
風俗店発言の真意は、5月25日付毎日新聞が松井一郎大阪府知事の話として伝えているところが本当でしょう。
「風俗業の活用の表現は日米で文化も違い、米国文化の中では全く異質なものと取り上げられている。誤解される発言については撤回し、おわびをする」
あくまでも表現の受け止め方を考慮して発言を撤回するというもので、その意図は「私の認識と見解」の「アメリカ軍のみならずアメリカ国民を侮辱することにも繋(つな)がる不適切な表現」という表現に込められています。
また同記事では、従軍慰安婦が必要であったという発言の意図が「悲惨な戦時下で慰安所があったという事実であり『二度と戦争を起こさないように』とのメッセージのつもりだった」と説明されています。
そのようなメッセージは13日発言に微塵も感じませんが、反戦論を釈明には使えないと判断し、「私の認識と見解」で「日米同盟」強化論に切り替えたのではありませんか。
「しかしながら、多くの在日アメリカ軍基地がある沖縄では、一部の心無いアメリカ軍兵士によって、日本人の女性や子どもに対する性犯罪など重大な犯罪が繰り返されています。こうした事件が起きる度に、在日アメリカ軍では、規律の保持と綱紀粛正が叫ばれ、再発防止策をとることを日本国民に誓いますが、在日アメリカ軍兵士による犯罪は絶えることがありません。同じことの繰り返しです。」
「私の真意は、多くの在日アメリカ軍兵士は一生懸命誠実に職務を遂行してくれていますが、一部の心無い兵士の犯罪によって、日米の信頼関係が崩れることのないよう、在日アメリカ軍の綱紀粛正を徹底してもらいたい、という点にあります。その思いが強すぎて、不適切な表現を使ってしまいました。」(「私の認識と見解」)
綱紀粛正が在日米兵による犯罪の防止に役立ってこなかったと認めながら「在日アメリカ軍の綱紀粛正を徹底してもらいたい」という「真意」は、「風俗店の活用」提案とかけ離れているだけでなく、犯罪防止の提案として何らの真剣味を持っていないことをむしろ露呈しています。
「多くの在日アメリカ軍兵士は一生懸命誠実に職務を遂行してくれています」という認識に怒らないイラク人はいないでしょう。
「一部の心無い在日アメリカ軍兵士」が犯罪を起こすのではなく、占領意識丸出しの米軍駐留という構造が犯罪を引き起こすのです。
標的の村 琉球朝日放送
http://www.dailymotion.com/video/xvjmcv_yyyy_shortfilms#.UaG5sdK8BtM
次に日韓関係について。
「しかし、1965年の日韓基本条約と「日韓請求権並びに経済協力協定」において、日本と韓国の間の法的な請求権(個人的請求権も含めて)の問題は完全かつ最終的に解決されました。」(「私の認識と見解」)
このような理屈は、日米が日本国憲法95条の精神を踏みにじって沖縄にオスプレイなどを沖縄県民の頭ごなしに押し付ける決定をし、あなたと日本維新の会もそれを容認しているのと同じで、元慰安婦の方々には何ら関係のないことです。
「韓国政府自身が日韓請求権並びに経済協力協定の解釈について国際司法裁判所等に訴え出るしかないのではないでしょうか?」(「私の認識と見解」)
このような突き放した態度は、被害者個人に対する謝罪と補償を真剣に考えていない証です。
既に「日本政府は法的責任を認め、補償を行い、資料を公開し、謝罪し、歴史教育を考え、責任者を可能な限り処罰すべき」と勧告した1996年1月のクマラスワミ報告書付属文書と、国連人権委員会による同年4月の同報告書付属文書に留意するとの決議があります。
慰安婦問題とアジア女性基金 国連等国際機関における審議
http://www.awf.or.jp/4/un-00.html
これらに従って日本政府が主体的に被害者個人に対して法的責任を取ればよいだけではありませんか。
中曽根康弘元首相の責任を追及することは、その1つです。
アジア女性資料センター - 中曽根元首相の「慰安所」設置関与資料を発見
http://ajwrc.org/jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=682
以上のように、「私の認識と見解」は元慰安婦と沖縄の方々を新たな表現で侮辱するものに他なりません。
弁解を試みるのではなく、メディアに注目される中で差別政治との決別を明瞭に宣言し、安倍首相などを道連れに政界を去ることで、「私の拠(よ)って立つ理念と価値観」で列挙された「基本的人権、自由と平等、民主主義の理念」(なぜか国民主権や平和主義がない)や「女性の尊厳」がこの日本で一気に前進するはずです。
橋下徹大阪市長、安倍首相を道連れに差別政治と決別を
http://kaze.fm/wordpress/?p=456
「平和への結集」をめざす市民の風
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