2006年5月20日(土)付け「しんぶん赤旗」は「参院選での『平和共同候補』を求める運動について」という論評を掲載し、平和共同候補運動について批判を行い、「…そのことを抜きにした狭い選挙対策で、政党に自分たちの勝手ないい分をのめと迫るような『運動』は、憲法改悪阻止の運動に障害をもちこむものです」と結びました。この論評においては、「『平和への結集』をめざす市民の風」という固有名詞は挙げていませんが、「平和共同候補」などの表現は私達が考えた表現であり、内容から見て、私達を批判対象の一部と想定していることは間違いありません。
私達は、この論評についてこれまで公に返答したり反論したりすることを控えてきました。なぜなら、私達の運動は、日本共産党を含めて多くの平和グループが平和共同候補を実現するように要望するものであり、正面からこれに反論して対立を深めることになれば、平和共同候補の実現という目的にとって得るところは少ないと考えたからです。そして、この論評が出て以降も、日本共産党を含め、平和政党には、文書で私達の要望を伝えたり面会の希望を伝えたりしてきました。直接訪問して面会を求めたこともあります。しかし、残念ながら、日本共産党中央委員会からは2006年11月11日付けでの文書で「『平和連合・政権交代のための政党間協力のお願い』をうけとりました。要請は、お断りします。/『平和共同候補』問題にかかわっては、5月20日付『しんぶん赤旗』に掲載した『参院選での「平和共同候補」を求める運動について』の党見解があります。全文を同封いたしますので、ご覧ください。/以上、ご返事いたします。」という拒否回答を受け取る結果に終わりました。
その後、沖縄県知事選をのぞく幾つかの知事選などで、複数の平和を求めるグループからの候補が立候補して、いずれも共倒れとなって保守候補に敗退するという憂慮すべき事態も生じています。このままに推移するならば、2007年7月の参院選でも同様の現象が多数現れるであろうという懸念はますます深まっています。
そこで、このような状況を打開するためにも、上記論評に対する私達の見解を率直に表明し、改めて各平和グループに平和共同候補運動に対する正確な理解を求め、平和共同候補の実現を要望したいと思います。
以下、赤旗論評で小見出しの付けられた項目の順を追って私達の見解を述べることとします。
(1)「政党と市民運動との関係のあり方が問われる」
この項目では、「日本共産党との間で、このような政策的一致と共闘の意思をもった政党は存在しない」という判断を述べた後で、「市民団体・運動が、政党に選挙での共同・共闘を要望することは、ありうること」としながらも、平和共同候補運動について強い批判をおこなっています。
7・7シンポジウムにむけた記者会見上の発言についての伝聞を根拠に、この運動を「要望にとどまらず、“ああしろ、こうしろ”と指図する」ものだとみなして、「一方的に『政党は自分たちの言い分をのめ』という態度であり、市民運動と政党が互いに自立性を尊重し合って共同するという立場ではありません」とし、「策略的で非民主的な手口」を用いていると決めつけています。
私たちは、政党に対して、“一方的に自分たちの要求をのめ”というような立場をとるものではありません。そのような力もなければ、対話・協議を経ない一方的な強要をめざすような考えは持っておりません。もし上記記者会見の中で、一方的に強要するような発言が実際にあったのであれば、私達はそれを率直に反省し、正さねばならないと考えています。
私達は、政党ではありませんが、自分たちは「政治的市民運動」であると考えています。そこで、平和共同候補の実現という政治的目標を実現するために、その可能性が高くなるような時期と方法を考えて、7・7シンポジウムの後に貴党への「要望」を行いました。これはあくまで「提案」であり、「強要」や「指図」ではないと思います。
(2)「憲法改悪阻止でいま必要なことは何か」
この項目では、憲法をまもる運動の大道は、「9条の会」のように、「改憲反対の一点で、支持政党の違いを超えて国民の多数派を結集する」ことであるとしています。そして、共同候補運動は「広範な人びとの目には、これは選挙のための運動にしか映らないのは明らか」とし、「選挙に向けた候補者調整運動、しかも策略的な運動に、憲法改悪反対の運動を矮小化すれば、いま改悪反対の運動に支持政党の区別なく結集している多くの人びとを運動から遠ざけ、運動の発展に困難をもたらしかねません。改憲反対の多数派結集にはマイナスの効果しかもたらさないでしょう」と批判しています。
これは本当でしょうか?
私たちは、憲法改定を阻止するためには、まず国会での改憲発議の阻止を目指そうと考えています。そのためには可能な限り多くの平和を希求する議員が当選することが必要です。したがって、日本共産党を含めて平和グループ全体が躍進することを望んでいる立場であると言えます。
従来の多くの運動には、「改憲発議の阻止を具体的にどう実現するか」、すなわち「発議を阻止するに足る国会議席をどう確保するのか」という考え方は必ずしも有力ではなかったと思います。国民投票は最後の厳しい決戦場であって、そこに至る前にできることに手を尽くすべきではないでしょうか。私たちは、そのために、国会議席に3分の1以上の「改憲阻止」議員を確保することを目標とし、これを強調しています。
「九条の会」をはじめとする憲法をまもる諸運動と、私達の共同候補運動とは、二者択一的に相互に排除し合うものでもなく、また、一方が他方に取って代わる運動でもありません。平和憲法をまもる諸運動にも、このような国会議席の確保という目標への理解が必要ではないでしょうか。いくつかのばらばらの平和グループに分かれている状態だからこそ、改憲発議阻止のための共同候補はなお一層必要なのではないでしょうか。
次項で述べるように私達は特定政党を応援するものではなく、憲法改悪に反対する人びとが支持政党の相違を超えて一致して、一人の候補者に力を集中できるような選挙と投票行動を作り出したいのです。ですから、この運動によって、憲法を守るための運動から人びとが離反するとは考えられません。「九条の会」に参加する保守系や公明党支持者を、その支持政党のゆえに非難したり排除したりするものでないことも、いうまでもありません。
(3)「特定政党の事実上の“応援団”ではないか」
この項目では、「『共同候補』運動と同じ主張をしているのが、新社会党です」として、「『共同候補』運動は、推進者の意図はともかく、客観的には新社会党の応援団の役割を担う運動ということになります。特定の政党を応援する運動を『市民運動』の名でおしすすめ、他の政党をそれに従わせようというのであれば、それは、善意の人びとをあざむくというよりも、もてあそぶことにさえなるでしょう」としています。
しかし、ここには明白な事実誤認があると思われます。私達「『平和への結集』をめざす市民の風」が特定政党の応援団になってしまったら、上記(2)で述べた形で改憲発議の阻止をすることはできません。さまざまな平和グループが結集し得てはじめて、それが可能になるからです。
7・7シンポジウムは、私達「『平和への結集』をめざす市民の風」の構成員以外にも様々な人びとが集まって開催をしました。その中には、多様な考えがあることが、シンポジウムの中でも確認されました。この多様性は、例えば「参議院比例区においてどのような戦い方をするか」という点にも現れています。日本共産党を含む主要な平和政党が、平和共同候補の実現に同意していないという現実の中で、このシンポジウムに参加した人びとの一部は、最近になって、比例区で「9条ネット」という確認団体を作る運動を始めました。しかし、私達「『平和への結集』をめざす市民の風」は、共同候補擁立という目標とこのような動きとの間には緊張関係が存在すると考え、この動きには加わらず、それとは一線を画しています。
平和共同候補の実現という目標のために、7・7シンポジウムの場合のように、その時点で目標を共有するグループと私達が連帯して行動することは、今後もあり得ると思います。しかし、これはあくまでも平和共同候補実現という目標のためであり、特定政党の応援団としての行動ではありません。したがって、「『平和への結集』をめざす市民の風」は、この論評が指摘するような「特定の政党を応援する運動」ではないことを認識して頂きたいと思います(※)。
以上の説明によって、私達の平和共同候補運動に対しての誤解や偏見がなくなることを希望します。そして、日本共産党をはじめとする平和政党には、この「しんぶん赤旗」の論評のような認識を改めて、現在の選挙方針を再考され、参議院選挙における平和共同候補の実現に向かってくださるように改めて要望するものです。
※2007年5月1日(火)付け「しんぶん赤旗」は、「『9条ネット』とはどんな団体ですか?』という質疑を掲載し、9条ネットについて「その実態は新社会党委員長らを国会に送ろうとする運動団体」とした上で、平和共同候補運動についての上記論評の批判に言及しています。そして、「『9条ネット』は、この『市民運動』の流れを受け継ぐものですが、どちらも新社会党の『別働隊』のようなものです」としています。これは、本文で説明した通り、少なくとも私たちについては明確な誤解です。
以上
2007年5月14日
「平和への結集」をめざす市民の風