第1回活憲政治セミナー「地球温暖化問題から取り残される日本の政治」報告

6月 5th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 22:53:17
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開催日:2008年5月31日
主催:「平和への結集」をめざす市民の風

目次

・写真
・ビデオ
・発言要旨(Wordファイル
 1 平田仁子さん(気候ネットワーク)によるレクチャー
 2 質疑応答
 3 結語

 
 
第1回活憲政治セミナー3

講師 平田仁子さん(気候ネットワーク)
第1回活憲政治セミナー1

平和への結集・市民の風事務局長 竹村英明
第1回活憲政治セミナー2

part1/3
http://video.google.com/videoplay?docid=-8442140682838451809

part2/3
http://video.google.com/videoplay?docid=6628849199553092610

part3/3
http://video.google.com/videoplay?docid=6310920924315482674


 
 
1 平田仁子さん(気候ネットワーク)によるレクチャー

世界で多発する異常気象による被害

 異常気象によって、事例を挙げるときりがないくらい多くの被害が世界中で発生している。すべてが温暖化によると断定することは難しいが、最近でも、ギリシャでの山火事、南アジアの洪水、北朝鮮の洪水、中国の洪水が相次ぎ、ミャンマー(ビルマ)で巨大サイクロンにより10万人に及ぶ死者が出ている。温暖化の影響に関する予測に符号する。日本の新聞では出ないが、英字新聞などでは気候変動に関するニュースを頻繁に伝えている。

 

IPCCの第4次評価報告書―温暖化の科学的根拠

 IPCCは2007年、第4次評価報告書を発表した。同報告書によれば、過去100年間で0.74℃気温が上昇した。21世紀末には最大で6.4℃の上昇を予測。2030年まではすでに排出された温暖化ガスの影響で、10年当たり0.2℃の上昇が不可避となる。その他、熱帯低気圧の強度の上昇、北極海の晩夏の海氷が21世紀後半までにほぼ完全消滅、海洋の酸性化の進行、などが挙げられる。

 今後100年、温暖化の傾向は変えようがない。どの程度に抑制できるかというレベルにある。2100年以降になると、グリーンランドの氷が溶けて海面6メートル上昇とか、海底のメタンが噴き出して温暖化の悪循環に陥るなどの事態も想定される。

 

IPCCの第4次評価報告書―温暖化による影響

 地球の自然環境(全大陸とほとんどの海洋)の9割以上は温暖化の影響を受けている。気温上昇が1.5〜2.5℃を超えただけでも、最大30%の動植物が絶滅のリスクを被る。1〜3℃の気温上昇を超えると、穀物生産性の低下、サンゴの白化、洪水と暴風雨の増加、熱波・洪水などによる死亡率の増加、数億人規模での水不足などが予測される。

 

IPCCの第4次評価報告書―温暖化の緩和策

 温室効果ガスの排出量をどこかの時点でピークを迎えさせ、削減していかなければならない。気温の2℃上昇が不可逆的な影響をもたらす“Point of No Return”と言われている。最低の気温上昇シナリオ(2.0〜2.4℃)でも、二酸化炭素を2000年比で50〜80%削減する必要がある。同シナリオを達成する場合、日本は1900年比で、80〜95%の二酸化炭素を削減しなければならない。

 

国際動向―京都議定書まで

 国際的には、国連の場で世界の温暖化対策が議論され決定されてきた。気候変動枠組条約(1992年採択・1994年発効)や京都議定書(1997年採択・2005年発効)である。京都議定書は、2008年から2012年までに、先進国全体で少なくとも5%の削減を義務付けた。

 しかし、ブッシュ政権になってアメリカが離脱、またオーストラリアも離脱(今年、政権交代により参加)、カナダが目標達成を断念、ロシア・東欧諸国は目標を大きく下まわる排出レベルとなった。京都議定書の取組みは、温暖化対策としては不十分だが、重要な1歩であった。

 

国際動向―京都議定書以降

 2013年以降の野心的な取組みが必要で、現在交渉中である。次の目標設定と、米・豪の参加の確保、中国・インドなどの主要排出途上国による削減、温暖化の悪影響を受ける国々への対策が求められている。

 2007年12月のバリ会議では、先進国が2020年に、1990年比で25〜40%削減という目安が示されている。次の国際枠組みの合意は2009年末の予定。

 

国際動向―主要国首脳会議(G8)

 2005年の主要国首脳会議(G8)以降、イギリスのブレア首相がきっかけとなり、G8で気候変動が主要議題になってきている。2007年G8では、ドイツのメルケル首相も熱心で、「次の国際枠組み条約について2009年に合意を図る」と前向きな合意に至った。日本の安倍首相は就任直後、温暖化問題に関心がなかったが、欧州首脳らと接するうちに重要性に気づいた様子。“Cool Earth”(美しい星へのいざない)を発表した。福田首相はある程度、良識的な関心を持っていると思う。

 北海道・洞爺湖サミットは、温暖化を論議する一つの場にすぎないが、サミットが国際的な次期枠組み合意の後押しの役割を果たせるか、足を引っ張るかが注目される。アメリカがブッシュ大統領である以上、どれほどの成果が上がるかは疑問だが、日本が温暖化問題でリーダーシップを取ることで、日本が変わるきっかけになり得る。日本の福田首相は、所信表明演説でも「低炭素社会」を言い、ダボス会議へも出席して温暖化問題を訴え、「地球温暖化問題に関する懇談会」を設置してきている。もし、日本がサミットでリーダーシップをとるとすれば、日本が率先して行動しないと説得力がなくなる。

 

国際動向―地方都市など

 世界を見た場合、都市が国よりも先行して取り組んでいる事例が多い。例えばカリフォルニア州は、2050年までに1990年比80%削減を掲げており、IPCCの削減目標にほぼ沿っている。

 アメリカの連邦裁判所は、政府に対して、自動車からの二酸化炭素排出規制をしないのは大気浄化法に反するとの判決を下している。

 

日本の動向―排出量の推移

 アメリカは、世界の温室効果ガス排出量の4分の1を占め、日本は世界で4番目の排出国である。日本は京都議定書の目標を達成できていないどころか、2006年度、基準年比6.2%の増加で、−6%という目標との差は12.2%もある。

 2010年の国内削減目標は基準年比−0.6%だが、森林吸収や排出権取引などの京都メカニズムの活用、原発の積極利用、「その他」の削減により目標を達成しようとしている。しかし、原発は想定通り動かなかった場合や「その他」削減見込み量の過大評価などを考慮すると、わずか−0.6%の目標さえ達成は厳しい。

 

日本の動向―二酸化炭素排出量の内訳

 二酸化炭素排出量の内訳を日本独自の「間接排出量」で見ると、2005年度、1990年比で、産業部門は5.5%減少しており、業務部門は44.6%増加、家庭部門は36.7%増加となっている。「産業は努力しているが、家庭は努力が足らない」と見られてしまう。

 しかし、世界的な捉え方である「直接排出量」で見ると、エネルギー転換部門の排出量増加が顕著であることが分かる。2005年度、1990年比で、石炭火力発電による排出量が3倍になったからである。

 また日本では、大規模事業所が大量の二酸化炭素を排出している。わずか200事業所で日本全体の二酸化炭素排出の50%を占めている。家庭は5%、中小企業は11%、運輸(車)は17%である。これら200事業所の取組みが重要。

 

日本の国内対策(1)―京都議定書目標達成計画

 政府は、2005年に「京都議定書目標達成計画」を策定し、4度改定している。しかし過去10年間、進展はなく、小手先対策にしかなっていない。追加政策への産業界の根強い反対によって、産業界の取組みは今も「自主行動計画」にとどまっている。原子力発電所に大きく依存しているが、稼働率は見込めず、結局、化石燃料による発電で排出量が増えてしまう。排出量の抑制を直接促したり、規制したりする政策はほとんど導入されておらず、排出量取引・炭素税もない。

 

日本の国内対策(2)―啓発運動

 そこで政府は、啓発運動に傾倒。1人1日1kg削減というモットーを掲げた「国民運動」キャンペーンを展開している。これで京都議定書の目標を達成するつもりか!? 目標達成できなかったら、「国民の努力が足りなかった」ということになるだろう。まるで「1億総懺悔」。排出責任が曖昧で、政府の責任回避では? 産業界が反対するから個人に押し付けているのが実情。

 

日本の現状

 政府対策の現状として、中長期的なビジョンや数値目標がなく、炭素税や自然エネルギーの普及などの抜本的な政策が全て先送りされている。このままではIPCCの100%削減はおろか、京都議定書第一約束期間の6%削減達成も危うい。温暖化を防止しながら築くべき社会のビジョンが欠如している。

 

日本が克服すべき課題

 第一に、排出の多い工場や発電所を持つ企業に対して確実に削減を求めること。現在の「自主的な取組」まかせを放置しないことが重要。

 第二に、発電部門において石炭火力発電所を減らすこと。1990年以降、石炭火力発電所が3倍に増えている。これを一時的には天然ガス、さらに太陽光、風力などに転換すべき。

 第三に、炭素に価格をつけ、企業や個人の確実な行動を促すこと。経済システムを二酸化炭素削減型に変えることが必要。

 

世界から取り残される日本

 世界では国内の排出量取引・炭素税を制度化している国が多く、気候保護法を制定しているところもある。アメリカですら、一部州で排出量取引を導入している。世界の中で日本は、「低炭素社会(クールアース50など)」を発信しながら、いまだ国内策を講じていない“不思議な国”。

 

気候ネットワークが提案する気候保護法案

 イギリス、アメリカ、EUでもある同じトレンドを上回る法案を気候ネットワークが提案している。政治家の口約束ではなく、法律にして責任を持たせるのが狙い。

 短期・中期・長期における削減数値目標を設定し、それらを直線で結びつける排出経路の数値をもって、毎年の排出目標とする。1990年比で、中期目標は2020年に30%削減、長期目標は2050年に80%削減。

 2020年までに再生可能エネルギーの一次エネルギーに対する比率を20%とする。

 温室効果ガスの排出に価格をつけ、必要な投資を行うための仕組みとして、国内排出量取引制度や炭素税などを導入する。

 他にも、再生可能エネルギー促進政策や排出量報告の公表、民生・運輸の規制と公共交通の自治体支援などを行う。政党にも法案制定の動きが出ている。

 

日本が“失敗の10年”から脱却するために

 第一に、国際的圧力が必要になるだろう。温暖化論議が消えなかったのは、京都議定書のおかげ。次期の国際的枠組みで、より大きな総量削減目標を合意することが、国内への強い圧力となる。

 第二に、東京都千代田区などの先進自治体が率先して国を牽引することが期待される。

 第三に、個別企業の社会的責任に基づく行動が期待される。経団連は温暖化防止に反対してきたが、個々の企業の中にはそれが不利であることに気付いているところがあり、経団連の分断が見られる。

 第四に、NGO・研究者や賢明な市民の力が期待される。客観的提案を支持する大多数の市民が政治を変える。

 

MAKE the RULEキャンペーン

 今は、日本の政治を変えるチャンスだと考えられる。サミットで格好がつかないという点から、政治的に動かざるをえない状況が出てきている。経団連は変わっていないが、これからの低炭素社会を生き抜くためには規制も必要と声をあげる企業も出てきている。気候変動関係のニュースが一般市民の関心を高めているという側面もある。

 MAKE the RULEキャンペーンを構想している。関心を持つ人達をつなぎ、世論を動かし、政治を動かすことが、今なら可能なのではないか。

 そのために、NGOも変革しなくてはいけない。過去と同じ10年を過してはもはや手遅れである。10年後、悲壮感漂う影響が目に見えてくるだろう。多くの市民と力を合わせ、政治を変えていくNGOにならなくてはいけない。海外NGOの成功を見て痛感する。化学変化を起こすぐらいの心づもりでいる。分野の違いを超えてサポートし合いたい。

 
 
2 質疑応答

Q バイオ燃料は、農作物を奪うのみならず、肥料由来の窒素酸化物が二酸化炭素に比べはるかに高い温室効果をもたらすという問題がある。アメリカ上院では2022年までにトウモロコシを原料としたエタノール生産を7倍にするという法案が検討されていて、大変だ。

(平田) アメリカのトウモロコシ由来のエタノールは、石油よりも結果的に二酸化炭素を出す。バイオ燃料は世界的には軌道修正の方向にある。バイオ燃料生産地(途上国)の原住民、経済などに配慮した持続可能な生産を可能にする生産ガイドラインの制定が必要。EUなどもそれを認識している。

 

Q サマータイムはエネルギー節約になるか?

(平田) 環境省が二酸化炭素の削減見込み量を計算上は出しているが、ライフスタイルがどう変化するのか分からず、温暖化にどういう影響を与えるかは読めない。

 

Q 『成長の限界』が出版された1972年に地球温暖化は言われていなかったのか?

(平田) 二酸化炭素の観測データが蓄積され、一部の研究者の間で認識が生まれていたが、まだ共有認識ではなかった。それは1980年代になってからで、さらに国際政治のステージに上ってくるのが80年代後半ということになる。

 気候変動枠組み条約ができた1992年に科学者の話しを聞いていれば、今とは違った社会を築けていたかもしれず、苛立たしい。“Too Late”もう手遅れだと断定する人もいる。しかし何をなすべきか分かっている。行動するだけだ。秒針の一歩手前くらいにはあると思う。

 

Q 日本の太陽光パネルのメーカーは海外で工場を建設するなど活発だが、日本国内ではどうか?石油燃料による発電と比べた場合のコストは?民主党ではどんな動きがあるのか?

(竹村) 太陽光のほうがまだ高い。風力は石油に太刀打ちできるくらいに安くなっているが、政策的に邪魔されている。太陽光はコンピュータと原料(シリコン)の取り合いで、この3〜4年は値段が下がっていない。むしろ去年から今年は上がっている。ヨーロッパでは需要が大きくなって供給が足らない状況が続いていることが背景にある。

 供給が少ないのは、設備投資が遅れたことによる。設備投資が完了すれば劇的に価格も下がるだろう。グリーンピース・ジャパンが1997年に行った世論調査によると、一軒(3〜4KW)あたり、100万円を切れば爆発的に普及するとの結果が出ている。現在、1KWあたり60万円前後。

 政府は、一般家庭への補助を去年、打ち切ってしまった。ヨーロッパでは固定価格買い取り制度があり、風力だと3倍、太陽光では4倍で買い取ることが電力会社に義務付けられている。10年でもとがとれると事業として成立し、ヨーロッパでは爆発的に普及した。

 太陽光パネルは、去年までシャープがトップだったが、去年、ドイツのキューセルに抜かれた。来年は、中国のサンテックにも抜かれる。

 環境エネルギー政策研究所では、「1億人のグリーンパワー」という運動を企画している。自然エネルギーの割合を10〜20%にすることは必須で、ヨーロッパでは実現している。風力や太陽は「きれいな電気」なのに、日本では蔑まれている。価値に見合った価格になっていない。「グリーンパワー(きれいな電力)」はそういう電気の価値を正しく評価、普及しようという運動。

 現在、こうした電力を買っているのは主に大企業で、200社程度。市場は10億円規模。仕組みづくりにはソニーや東京電力なども関わっている。環境エネルギー政策研究所などが、その「グリーンパワー」を供給する発電機(風力、太陽光)を設置し、事業として成立している。通常の1.5倍で売れるので、コスト回収が早まる。

 ドイツは2030年までに45%を自然エネルギーでまかなおうとしている。中国も2020年までに20%にまでしようとしている。ところが、日本は2014年までに1.63%だ。この値は、1.3億人が1ヶ月当たり1日10KWHの電力を節約ないし「グリーンパワー」で代替するのに等しい。したがって政府目標の達成は難しくない。

 キャンペーンとしては、専用のサイトを立ち上げ、そこで購入契約以前の意思表示(クリック)をしてもらい、その集積で1.63%、160億KWHを一気に達成したい。

(平田) 民主党は地球温暖化を時期総選挙での争点の一つにしたいようだ。気候ネットワークに似た法案を考えている(先日、提出した)。長期の削減目標を60%以上と低く設定しているが、排出量取引制度などを盛り込んでいる。他野党も作るのではないか。ただ、ガソリン税を下げた今回の対応は、炭素税の考え方と対立しており、党内がまとまっているとはいえない。自動車関係労組への配慮などもあり、民主党が政権を取ればこの問題で万全の対策ができるというわけではないだろう。

 

Q 石炭液化・ガス化の現状は?
 
(平田) 経済産業省では力を入れている。排出される二酸化炭素を地中、海底に埋める技術とセットで開発されている。EU指令、アメリカの法案、日本でも、排出二酸化炭素を埋める技術とセットでなければ石炭火力は認めない、というシグナルを与えており、実用化すれば、この流れに向かう可能性がある。

 しかし、温暖化対策はこれまで脱化石燃料の動きとしてあったのであり、自然エネルギーをおろそかにするのは優先順位を覆す。ただ、トレンドは地中埋め立てに向かっている。

 

Q 「持続可能な発展」ではなく「持続可能な撤退」が必要であるとの主張がある。ある程度は、地中埋め立てのようなこともやっていかなくてはならないのか?

(平田) 応急措置として原発回帰がヨーロッパでも起こっており、地中埋め立ても環境影響評価を前提にし方がないとするNGOもある。好きな対策ばかりを選ぶことはできず、諸対策のリスクを比較した上で選択しなければならないのかもしれない。だが、対策とそのリスクの選択肢が私達に説明されないまま、偏った技術(原発、埋め立て)に税金が既定路線のようにつぎ込まれている。

(竹村) 自然エネルギーのキャパシティはどれくらいあるか。ドイツでは既に10%が達成されている。日本の風力発電協会は、少なく見積もって風力で10%程度はまかなえるだろうと言っている。太陽光は諸説あるが、分散型であるので、日本の5分の1の屋根につければ太陽光だけでまかなえると、NEDOが1970年代に試算している。

 

Q 自然エネルギー事業に対する妨害とは?

(竹村) 新エネルギー利用特措法(RPS法)を境に風力発電の設置件数は激減した。同法は、固定買い取り制度ではなく、自然エネルギーの一定割合(1.63%)の供給を電力会社に義務付ける内容。 例えば北海道電力はすでに義務量をクリアしていたので、それ以上の自然エネルギーを買わなくなった。

 ヨーロッパでは自然エネルギーで発電された電気を電力会社が買い取ることが義務付けられている。しかし日本ではそうした法律がなく、風力事業者が風車を立てても、送電線との連結や電池の設置を風力事業者が自己負担しなければならない。ヨーロッパに比べ高いコストを強いられ、事業が促進されない。

 

Q NGOが社会を変えるということについて

(平田) イギリスで気候変動法が成立した際、国際環境NGO・FOE による“Big Ask”という大掛かりなキャンペーンがその成功の原因になった。有名なRadio Headというロックバンドを引き込んだりして、幅広い支持を集めることに成功した。日本のNGOにはそうした力がない。サポート会員が少なく、政治を動かせない。今後は寄付を集めることなどにも積極的に取り組む必要がある。それが成功すればNGO元年になるだろう。

 

Q 政党に申し入れた際、共産党や社民党の反応はどうだったか?

(平田) 前向きである。早いうちから連携することができなかったが、働きかけを始めた。今は法案を持っていないが、今後、作ってくれるのではないか。各党議員を招いての話でも、(共産の)笠井氏、(社民の)福島氏も前向きだった。

 温暖化防止で民主党案、NGO案、共産・社民の案が競争し、法案の形には出てこないかもしれないが、自民も福田ビジョンで何か言ってくる可能性がある。これらをどう波に乗せていけるかだ。

 

Q 原油高は温暖化防止を後押ししているか?

(平田) 定量的なことは言えないが、コスト削減のために対策が行われている面がある。しかし、原油は価格が変動するので、炭素税と同様に安定的な効果があるかというと、分からない。

(竹村) 木質バイオマス(木から作るペレット燃料など)については、石油より安くなっているが、ストーブやボイラーが高価であるため、今一つ普及していない。それらを購入しても、元は取れるのだが。温室栽培を行っている農家には注目されている。

 ピークオイル(生産頂点)がすでに来ているという説がある。すでにないので投機資金が値上がり率を倍増させているのだろう。投機活動のみが高騰の原因ではない。

 世界的には石油代替燃料の生産が必要だという流れにある。また、アメリカにおける食物由来燃料の生産は、穀物産業が生産に必要な特許技術を売り込むためという側面がある。

 

Q 地球温暖化防止のためには、原発などあらゆるものを取り入れる必要があるのではと思うと、つらくなるが。

(平田) 原発や地中埋め立てが良いと言っているわけではない。2030年に30%削減という目標の場合、経済スタイルの変更などで、原発や地中埋め立てに依存せずに目標達成が可能。グリーンピースの試算では、自然エネルギーと省エネで75%削減は可能としている。2050年の80%以上削減という目標が迫られる段階になれば、原発や地中埋め立ての検討が必要になるのかもしれない。しかし現在、そこに至るまでに取るべき対策を取っていない。

 
 
3 結語

結語(平田さん)

 地球温暖化の問題は、きわめて政治の問題であり、きわめて私たち当事者の問題であり、平和の問題でもある。この問題によって物理的にたちゆかなくなる前に、社会パニックが来るのではないかと思う。みなさんが地域で輪を広げていくことを期待している。

結語(竹村さん)

 日本社会でよく指摘される「タコツボ」ではなく、視野を拡げて、政治につなげることが大事。今日は横のつながりを作る第一歩になったのではないかと思う。

 
 
太田光征
http://otasa.net/