2009衆議院選挙――結果分析
10月 2nd, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 17:29:26under 一般 [25442] Comments
2009総選挙(衆議院選挙)の結果を分析中ですが、膨大なデータを処理しなければならず未だに終わっていません。完了してからまとめて掲載するつもりでしたが、終わった分析から順に報告していくことにします。印刷用ファイルはすべて終了後に用意します。
太田光征
http://otasa.net/
共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」賛同募集中
【目次】
1. 民意は民主党の単独過半数を明確に否定している
2. 改憲派議員の割合――民主党の改憲派議員の割合は07参院選から増加している
3. 民主党が勝った小選挙区のうち、自民・民主の支持層以外に依存しなければ勝てなかった可能性の高い選挙区は51ある。
1. 民意は民主党の単独過半数を明確に否定している
表1は、2009衆院選の各党獲得議席数をまとめたもので、2007参院選の結果に基づくシミュレーション値や、全国一区比例代表制だった場合の獲得議席数(議席配分計算表)なども示しています。
各党の比例区得票率や、全国一区比例代表制だった場合の獲得議席数を比較すれば明らかなように、民主党は比例区得票数レベルで投票者の過半数から支持を受けているわけではなく、民主党の比例区票に社民・国民・日本・大地の票を合わせてさえも過半数に達せず、共産の票を足してやっと過半数になる。ここに今回の衆院選の民意が表れています。
小選挙区も含めた民主党の獲得議席数308だけを見たのでは、民意を読み誤ることになります。民主党が嫌々社民・国民と連立政権を組んでいることは、上記民意から正当といえ、各党の比例区票を基準にすれば、むしろ社民・国民の閣僚数が極端に少ないといえる。
自
民 |
民
主 |
公
明 |
共
産 |
社
民 |
み ん な |
国
民 |
日
本 |
大
地 |
改
革 |
幸
福 |
無 所 属 |
計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
定 数 一 八 〇 |
現 行 ブ ロ ッ ク 式 |
北海道 | 2 | 4 (5) |
1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 (0) |
0 | 0 | - | 8 |
東北 | 4 (5) |
7 | 1 | 1 | 1 (0) |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 14 | ||
北関東 | 6 | 10 (9) |
2 (3) |
1 | 0 (1) |
1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 20 | ||
南関東 | 6 (7) |
11 (10) |
2 (3) |
1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 22 | ||
東京 | 5 | 8 | 2 | 1 (2) |
0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 17 | ||
北陸信越 | 4 | 6 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 11 | ||
東海 | 6 | 12 (11) |
2 (3) |
1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 21 | ||
近畿 | 9 (7) |
11 (12) |
5 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 (1) |
0 | 0 | 0 | - | 29 | ||
中国 | 4 | 6 (5) |
1 (2) |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 11 | ||
四国 | 2 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 6 | ||
九州 | 7 | 9 | 3 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | - | 21 | ||
計 | 55 | 87 (85) |
21 (25) |
9 (10) |
4 | 3 (-) |
0 | 0 (1) |
1 (0) |
0 | 0 | - | 180 | ||
議席獲得率 | 30.6 | 48.3 | 11.6 | 5.0 | 2.2 | 1.6 | 0 | 0 | 0.6 | 0 | 0 | - | - | ||
得票率 | 26.7 (28.1) |
42.4 (39.5) |
11.5 (13.2) |
7.0 (7.5) |
4.3 (4.5) |
4.3 | 1.7 (3.0) |
0.8 (0.3) |
0.6 (0.5) |
0.1 | 0.7 | - | - | ||
得票率x定数 | 48.1 | 76.3 | 20.7 | 12.6 | 7.7 | 7.7 | 3.1 | 1.4 | 1.1 | 0.2 | 1.3 | - | - | ||
全国一括式 | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | - | ||
自
民 |
民
主 |
公
明 |
共
産 |
社
民 |
み ん な |
国
民 |
日
本 |
大
地 |
改
革 |
幸
福 |
無 所 属 |
計 | |||
小 選 挙 区 |
議席数 | 64 | 221 | 0 | 0 | 3 | 2 | 3 | 1 | - | 0 | 0 | 6 | 300 | |
得票率 | 38.7 | 47.4 | 1.1 | 4.2 | 2.0 | 0.9 | 1.0 | 0.3 | - | 0.1 | 1.5 | 2.8 | - | ||
議席獲得率 | 21.3 | 73.6 | 0 | 0 | 1.0 | 0.6 | 1.0 | 0.3 | - | 0 | 0 | 2.0 | - | ||
自
民 |
民
主 |
公
明 |
共
産 |
社
民 |
み ん な |
国
民 |
日
本 |
大
地 |
改
革 |
幸
福 |
無 所 属 |
計 | |||
全 国 |
議席数 | 119 | 308 | 21 | 9 | 7 | 5 | 3 | 1 | 1 | 0 | 0 | 6 | 480 | |
完全比例制 | 129 | 206 | 55 | 34 | 20 | 20 | 8 | 3 | 2 | 0 | 3 | 0 | 480 | ||
比例区得票率 | 26.7 (28.1) |
42.4 (39.5) |
11.5 (13.2) |
7.0 (7.5) |
4.3 (4.5) |
4.3 | 1.7 (3.0) |
0.8 (0.3) |
0.6 (0.5) |
0.1 | 0.7 | - | - | ||
議席獲得率 | 24.8 | 64.2 | 4.4 | 2.0 | 1.5 | 1.0 | 0.6 | 0.2 | 0.2 | 0 | 0 | 1.0 | - |
比例区 | 小選挙区 | |
---|---|---|
自民 | 18,810,217(26.73) | 27,301,982(38.68) |
民主 | 29,844,799(42.41) | 33,475,334(47.43) |
公明 | 8,054,007(11.45) | 782,984(1.11) |
共産 | 4,943,886(7.03) | 2,978,354(4.22) |
社民 | 3,006,160(4.27) | 1,376,739(1.95) |
みんな | 3,005,199(4.27) | 615,244(0.87) |
国民 | 1,219,767(1.73) | 730,570(1.04) |
日本 | 528,171(0.75) | 220,223(0.31) |
大地 | 433,122(0.62) | - |
改革 | 58,141(0.08) | 36,650(0.05) |
幸福 | 459,387(0.65) | 1,077,543(1.53) |
本質 | 7,399(0.01) | - |
無所属 | - | 1,986,055(2.81) |
計 | 70,370,255 | 70,581,679 |
2. 改憲派議員の割合――民主党の改憲派議員の割合は07参院選から増加している
「どちらとも言えない」という態度保留派と、無回答の29人を考慮すると、改憲派議員は新議員全体の59%以上、87%未満といえる。朝日の見出しのように、分母を回答者だけにして、「改憲派、3分の2切る」とはいい切れない。3分の2を超える可能性は十分にある。
民主党に限って見れば、憲法改正に「賛成」「どちらかと言えば賛成」を合わせた割合は、61%(04年)、39(07年)、46(09年)と07年参院選から増加に転じ、「どちらかと言えば反対」「反対」を合わせた割合はそれに呼応して、27%(04年)、34(07年)、22(09年)と07年参院選から減少している。
また民主党については、憲法改正について「どちらとも言えない」が11%(04年)、22(07年)、31(09年)と増加し、態度が曖昧化しているのが特徴。
[参考]
参院新勢力に関する朝日新聞東大共同調査(2007年8月7日)
http://kaze.fm/wordpress/?p=140
09年 | 05年 | |||
当選者 | 自民 | 民主 | 当選者 | |
賛成 | 31% | 75 | 16 | 72 |
どちらかと言えば賛成 | 28% | 21 | 30 | 15 |
どちらとも言えない | 22% | 3 | 31 | 5 |
どちらかと言えば反対 | 9% | 2 | 13 | 3 |
反対 | 10% | 0 | 9 | 5 |
3. 民主党が勝った小選挙区のうち、自民・民主の支持層以外に依存しなければ勝てなかった可能性の高い選挙区は51ある
民主党は比例区で29,844,799票(得票率42.41%)、小選挙区で33,475,334票(得票率47.43%)を獲得した(表2)。小選挙区は比例区より3,630,535票だけ多い。この分は、小選挙区制の特性で、民主の実力を表すものではなく、民主支持層以外から流れた票と考えられます。
今回、自民支持層は比例区で29.4%、小選挙区で30.9%が民主に投票した(表5)。ほとんど同じ割合なので、自民支持者で民主に投票した人の大部分は、比例区・小選挙区とも民主に投票したものと思われます。したがって上記の差分363万票余りは、自民・民主の支持層以外からのものと見なせます。
下記の小選挙区は、いずれも民主候補が当選した小選挙区ですが、当該小選挙区から民主が獲得した比例区票が、小選挙区の対立候補(ほとんど自民)が獲得した小選挙区票よりも少ない選挙区のリストです。合計51あります。
民主候補が当選した小選挙区のうち、その小選挙区票と、次点で落選した対立候補が獲得した小選挙区票の差が約4万票未満の選挙区について調べた結果なので、そうした選挙区をほぼ網羅しているはずです。
上記の推測を前提にすると、民主候補が当選したこれら51の小選挙区は、自民・民主の支持層以外からも票をもらわなければ勝てなかった小選挙区、言い換えると、両党支持層以外に依存しなければ勝てなかった選挙区の可能性が非常に高い。
民主党が勝った小選挙区のうち、自民・民主の支持層以外に依存しなければ勝てなかった可能性の高い51選挙区
凡例:小選挙区名(民主候補の対立候補=小選挙区獲得票、民主候補=民主が当該小選挙区から獲得した比例区票)
北海道5区(町村信孝=151,448、小林千代美=144,026)、北海道11区(故・中川昭一=89,818、石川知裕=64,992)、北海道12区(武部勤=112,690、松木謙公=78,527)、山形1区(遠藤利明=104,911、鹿野道彦=98,797)、福島1区(亀岡偉民=136,526、石原洋三郎=135,943)、茨城1区(赤城徳彦=111,674、福島伸享=105,771)、栃木1区(船田元=111,455、石森久嗣=106,734)、群馬1区(尾身幸次=109,846、宮崎岳志=99,786)、群馬3区(谷津義男=89,436、柿沼正明=86,073)、東京1区(与謝野馨=130,030、海江田万里=119,809)、東京3区(石原宏高=121,699、松原仁=121,485)、東京9区(菅原一秀=126,026、木内孝胤=124,495)、東京10区(小池百合子=96,739、江端貴子=91,440)、東京12区(公明・太田昭宏=108,679、青木愛=99,826)、東京13区(鴨下一郎=111,590、平山泰朗=100,444)、東京14区(松島みどり=93,675、木村剛司=89,914)、東京16区(島村宜伸=113,634、初鹿明博=109,704)、千葉10区(林幹雄=107,745、谷田川元=94,358)、神奈川13区(甘利明=136,164、たちばな秀徳=132,559)、山梨2区(平沼グループ・長崎幸太郎=57,213、坂口たけひろ=40,402)、石川1区(馳浩=117,168、奥田建=115,136)、石川3区(北村茂男=98,599、近藤和也=81,163)、富山1区(長勢甚遠=82,040、村井宗明=66,405)、岐阜5区(古屋圭司=100,931、阿知波吉信=96,927)、三重1区(川崎二郎=98,380、中井洽=98,367)、三重4区(田村憲久=84,583、森本哲生=79,660)、静岡4区(望月義夫=100,352、田村謙治=95,724)、静岡8区(塩谷立=114,677、斎藤進=113,105)、大阪3区(公明・田端正広=97,121、中島正純=96,101)、大阪6区(公明・福島豊=107,336、102,115)、大阪15区(竹本直一=107,896、大谷啓=102,015)、奈良2区(高市早苗=94,879、滝実=93,033)、和歌山2区(石田真敏=71,343、阪口直人=70,081)、香川1区(平井卓也=91,403、小川淳也=86,164)、広島4区(中川秀直=97,296、空本誠喜=90,277)、広島5区(寺田稔=93,594、三谷光男=79,290)、広島7区(宮沢洋一=111,321、和田隆志=105,971)、山口2区(山本繁太郎=105,940、平岡秀夫=89,551)、福岡4区(渡辺具能=106,124、古賀敬章=91,482)、福岡5区(原田義昭=125,767、楠田大蔵=110,214)、福岡9区(三原朝彦=109,807、緒方林太郎=96,138)、福岡10区(西川京子=106,365、城井崇=91,717)、佐賀1区(福岡資麿=75,475、原口一博=59,194)、佐賀2区(今村雅弘=79,243、大串博志=70,717)、長崎2区(久間章生=106,206、福田衣里子=98,398)、長崎3区(谷川弥一=77,316、山田正彦=62,714)、長崎4区(北村誠吾=93,428、宮島大典=73,625)、熊本2区(林田彪=99,933、福嶋健一郎=86,796)、大分3区(岩屋毅=112,602、横光克彦=78,696)、鹿児島1区(保岡興治=94,226、川内博史=93,950)、沖縄4区(西銘恒三郎=71,653、瑞慶覧長敏=62,766)
自民、民主の各支持層、無党派層が自民と民主に比例区で投票した割合の合計は、ともに前回(05年)から今回(09年)にかけてほとんど変化していない。投票先が自民から民主に変わっただけで、少数政党にシフトすることはなかったと思われる。若干減少した分は、みんなの党に流れたのだろう。
支持層別ではなく、投票層全体でみれば、自民と民主の比例区得票率の合計は、69.2(05衆院選)、67.6(07参院選)、69.1(09衆院選)と推移し、減少幅はさらに小さくなる。みんなの党に流れて減少した分は、公明党支持層から補填されたのではないか。
民主が社民候補を推薦した小選挙区では、民主支持層の約6割が社民候補に投票した。選挙協力は比較的成功したといえる。
自民 | 民主 | 自+民 | 社民 | ||
---|---|---|---|---|---|
自民支持層(37%/41) | 比例区 | 54/73 | 30/13 | 84/86 | - |
民主支持層(25%/20) | 比例区 | 2/9 | 84/81 | 86/90 | - |
社民候補を推薦した小選挙区 | 17 | - | - | 66 | |
無党派層(20%/21) | 比例区 | 15/33 | 53/37 | 68/70 | - |
その他(18%/18) | 比例区 | - | - | - | - |
自民から民主に投票先が変るだけで、少数政党にシフトすることがなかった傾向は、小選挙区で一層はっきっりしている。無党派層、公明各支持層が自民と民主に小選挙区で投票した割合の合計は、ともに前回(05年)から今回(09年)にかけてほとんど変化していない。
共産支持層は、公認候補がいない小選挙区で、約7割が民主に投票し、公認候補がいる小選挙区でも、約2割が民主に投票している。
自
民 |
民
主 |
自 + 民 |
公
明 |
共
産 |
社
民 |
み ん な |
国
民 |
日
本 |
改
革 |
諸
派 |
|||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
無 党 派 層 |
比 例 区 |
今回 | 15.6% | 51.6 | 67.2 | 4.9 | 8.9 | 6.1 | 7.5 | 2.0 | 1.4 | 0.1 | 1.6 |
前回 | 32.6% | 38.2 | 70.8 | 7.2 | 8.5 | 7.5 | - | 1.4 | 3.7 | - | 0.7 | ||
小 選 挙 区 |
今回 | 23.4% | 59.4 | 82.8 | - | - | - | - | - | - | - | - | |
前回 | 37.4% | 45.5 | 82.9 | - | - | - | - | - | - | - | - | ||
自 民 支 持 層 |
比 例 区 |
今回 | 53.7% | 29.4 | 83.1 | 6.1 | 2.1 | 1.5 | 4.5 | 1.2 | 0.4 | 0.1 | 0.9 |
小 選 挙 区 |
今回 | 59.8% | 30.9 | 90.7 | - | - | - | - | - | - | - | - | |
公 明 支 持 層 |
小 選 挙 区 |
今回 | 67.7% | 16.6 | 84.3 | 7.1 | 1.8 | 0.6 | 0.6 | 0.3 | 0.2 | 0.1 | 1.8 |
前回 | 72.3% | 11.5 | 83.8 | - | - | - | - | - | - | - | - | ||
共 産 支 持 層 |
小 選 挙 区 |
公認あり | - | 22.1% | - | - | - | - | - | - | - | - | - |
公認なし | 15.2% | 69.3 | 84.5 | - | - | - | - | - | - | - | - |
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