小選挙区定数の「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大して選挙の違憲性を強める

2月 4th, 2015 Posted by MITSU_OHTA @ 18:29:01
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 裁判 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟(事件番号:平成27年(行ケ)第5号)で準備書面(1)と甲第1号証を2015年1月19日付で提出しました。

第一回口頭弁論の期日が3月13日午後3時半に決定しました。場所は東京高裁8階の812号法廷です。傍聴をよろしくお願いします。

なお、1月31日付の朝日新聞朝刊で本訴訟を紹介いただきました。

訴状:
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.pdf
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.doc
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.docx

準備書面(1):
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Brief1.pdf

甲第1号証Excelブック(甲第1号証Excelブックは下掲Excelブックを印刷用にレイアウトしたもの):
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_koudaiichigoushou.xlsx
選挙分析Excelブック:
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_gisekihaibun.xlsx

以下、準備書面(1)を転載しておきます。

太田光征

準 備 書 面(1)
2015年1月19日

平成27年(行ケ)第5号選挙無効請求事件
東京高等裁判所 第17民事部ニ係 御中

《原告1》  太田光征
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46番地の2 さつき荘201号
《原告2》  長岩 均
住所
《原告3》  原 裕幸
住所

《原告》 送達先
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46番地の2 さつき荘201号
原告   太田光征
電話・ファクス:047-360-1470

《被告1》 送達先
〒100-8926 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号 中央合同庁舎第2号館
被告1   中央選挙管理会
上記代表者 委員長  神崎浩昭
《被告2》 送達先
〒260-8667 千葉市中央区市場町1番1号
被告2    千葉県選挙管理委員会
上記代表者  委員長  本木陸夫
《被告3》 送達先
〒330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂3丁目15番1号(県庁本庁舎3階)
被告3   埼玉県選挙管理委員会
上記代表者  委員長  滝瀬副次
《被告4》 送達先
〒163-8001 〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 都庁第一本庁舎 N39階
被告4    東京都選挙管理委員会
上記代表者  委員長  尾正一  

小選挙区定数の「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大して選挙の違憲性を強め、本件選挙に何らの正当性も与えない

訴状「3 憲法違反・法律違反の事実」を補足するものとして、以下を指摘する。

(1)無所属候補の比例区での立候補制限は「定数配分の格差」「1票の格差」よりはるかに権利制限性、違憲性が強い

訴状「第6章 比例区の定数枠から無所属候補を締め出す小選挙区比例代表並立制は制限選挙規定であり違憲である」で指摘したように、無所属候補の比例区での立候補制限(あるいは比例区定数に相当する当選枠からの排除)は違憲である。
小選挙区比例代表並立制は比例区選挙と小選挙区選挙の定数を分離して別個の選挙を同時に行うものであるから、制限選挙をめぐる論点では、権利制限を各選挙で考察しなければならない。
無所属候補は小選挙区に立候補できるから立候補権は侵害されていない、と考えるわけにはいかない。また、無所属候補の立候補者数が比例区定数の180はおろか小選挙区定数の295にも満たない現状では無所属候補が比例区に立候補できなくとも構わない、と考えるわけにもいかない。
比例区定数の180議席が無所属候補も当選しやすい大選挙区制などで、無所属候補も小選挙区選挙のほかに大選挙区選挙に立候補できれば、無所属候補の立候補者数は現在よりも多くなり、当選者も多くなるだろう。
政党候補が2つの選挙、しかも1つは当選しやすい比例区選挙に立候補できながら、無所属候補が1つの選挙、しかも当選しにくい小選挙区選挙にしか立候補できないのは、政治的身分の差別に基づく明白な制限選挙であり、違憲である。政党候補も無所属候補も同じ定数をめぐって争わなければ平等ではない。
政党を支持する有権者が比例区で政党を選択できるが、無所属候補を支持する有権者が比例区で無所属候補を選択できないのも、政治的身分の差別に基づく明白な制限選挙であり、違憲である。制限なき候補者選択権が保障されなければ制限なき選挙権は保障されない。
「1票の格差」(一般的な定義)は、候補者選択権の制限なき選挙権そのものが保障された上で、投票価値の格差をもたらし得る格差であるが、無所属候補の比例区からの締め出しは、無所属候補の比例区での立候補権そのものを完全に奪っているという点で、従って無所属候補を支持する有権者の比例区での制限なき候補者選択権そのものを完全に奪っているという点で(政党を支持する有権者にとっての比例区定数180対無所属候補を支持する有権者にとっての比例区定数0という「当選枠配分の格差」)、現状程度の「定数配分の格差」「1票の格差」よりはるかに権利制限性、違憲性が強い。

(2)「0増5減」によって無所属候補に対する差別がさらに拡大

2013年6月24日、衆議院の小選挙区定数を「0増5減」する区割り法案(公職選挙法改正案)が成立し、本件選挙から適用された。
その結果、無所属候補に対する差別がさらに拡大することになった。数値で示せば、「0増5減」以前、無所属候補は総定数の62.5%(300÷480)が当選枠であったが、「0増5減」以後、当選枠は62.1%(295÷475)に縮小した。
「わずか0.4ポイント」の縮小であるが、無所属候補に対する差別がある現状から差別を拡大する方向で定数が削減されたことは、極めて重大である。
訴状の第4章「第1節 都道府県間で移動すべき議席数は最低でも13議席」で指摘したように、「0増5減」の後でさえ、「定数配分の格差」「1票の格差」(一般的な定義)「政党間1票格差」を解消するため、原告が在住する千葉県、埼玉県、東京都など、定数を増やすべき都道府県があったのだから、「5減」するだけでなく、「5増」するなどしておけば、少なくとも無所属候補に対する差別を拡大することだけは防げた。
「0増5減」について、国会が無所属候補に対する差別の拡大を防ぐため、また「定数配分の格差」「1票の格差」(一般的な定義)「政党間1票格差」を解消するためにも必要な「5増」以上の措置を怠り、優先的憲法要請に照らしての「国会裁量権の合理性検討」を放棄したことは明らかである。定数削減は投票価値の格差の解消に必要ではなく、投票価値の格差の解消より優先されるべきものでもない。
「0増5減」は、訴状の第3〜5章で指摘したように、「定数配分の格差」とそれに起因する「政党間1票格差」の解消をほぼ没却し、「定数配分の格差」「1票の格差」(一般的な定義)「政党間1票格差」の「解消」ないし「最小化」の目標を曖昧にしたまま、「1票の格差」2倍程度という根拠なき「目安」を落としどころに狙ったもので、各種格差是正の抜本対策になっていないばかりか、無所属候補の立候補権・選挙区(選挙制度)選択権ひいては無所属候補を支持する有権者の選挙権・候補者選択権に対する差別を拡大して、選挙の違憲性を強めるものに他ならず、本件選挙に何らの正当性も与えない。

(以上)