2014年衆院選無効請求訴訟:原告適格を制限する過去判例と被告回答書に反駁する準備書面(2)を提出

3月 7th, 2015 Posted by MITSU_OHTA @ 15:58:14
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 裁判 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

選挙無効請求訴訟の原告適格を制限する過去判例と被告回答書に反駁する準備書面(2)を2015年3月6日、東京高裁に提出してきました。

準備書面(2):
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Brief2.pdf

事件番号:平成27年(行ケ)第5号
訴状:第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=538
準備書面(1):小選挙区定数の「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大して選挙の違憲性を強める
http://kaze.fm/wordpress/?p=539
甲第1号証Excelブック(選挙分析):同上
【第一回口頭弁論】
日時:3月13日午後3時半から
場所:東京高裁8階の812号法廷

準備書面(2)の要旨

第1 選挙人は所属選挙区以外の選挙区についても選挙無効の提訴ができる

最高裁判所昭和39年2月26日大法廷判決・民集18巻2号353頁は、選挙人は所属選挙区についてしか選挙無効の提訴できないとした原審仙台高裁判決を支持し、それが今日に至るまで踏襲されています。

最高裁判決・民集18巻2号353頁
https://drive.google.com/file/d/0B480nG80A_kJbVhqUGlERjdvYzA/view?usp=sharing

原告相棒の原さんが明治の選挙法に遡り、原告適格制限を導く公職選挙法第204条の解釈がでたらめであることを主張し、私も補足を加えました。

両判決は、選挙人は所属選挙区についてしか選挙無効の提訴ができないとの立証命題そのものを根拠なく前提にし、選挙訴訟を規定した公選法第204条の「選挙人又は公職の候補者」という表現は、裁判で無効としたい選挙区とは別の選挙区に居住している公職の候補者を除外しないという配慮のための表現である、という趣旨に解釈しています。選挙人の中に公職の候補者が含まれるという包含関係があるのだから、わざわざ候補者を挙げているのには理由がある、というわけです。

ところが、明治の選挙法では先に(落選)候補者に出訴権限を認め、わざわざ後に出訴権限を選挙人にも拡大したので、出訴対象の選挙区と出訴権者の選挙区が異なるケースが最初から想定されていました。選挙人名簿の抄本の閲覧について規定した公選法第28条にも「選挙人又は公職の候補者」という表現がありますが、第204条と同じく、権利・義務主体を明確化するためにそう書いているに過ぎません。

公選法第10条では、選挙の種類によって立候補権者の所属選挙区条件が規定されていたり規定されていなかったりしています。

第204条で出訴権者の所属選挙区条件が規定されていないのは、文字通り所属選挙区条件がないことを意味しているのです。

第2 答弁書の体を成していない答弁書に反駁する

原告は「比例区の定数枠から無所属候補を締め出す小選挙区比例代表並立制は制限選挙規定であり違憲である」と主張しているのに、被告は「拘束名簿式比例代表制が憲法の規定に違反しない」と答弁し、2013年参院選無効請求訴訟と同様に争点をずらしています。何の答弁にもなっていない。

原告主張に対する認否・憲法判断をことごとく避ける被告の常套文句は、根拠なき結論先述の「(国会の)裁量の範囲に属することは明らかである。したがって、…の規定は何ら憲法に違反するものではない」です。

既に最高裁は違憲の評価枠組みたる「国会裁量権の合理性検討」(太田の言い方)を課しています。これは憲法と立法目的(従って立法効果)に照らして違憲選挙規定の合理性なるものを評価すべきというものです。

が、被告は憲法と立法目的・効果に照らして選挙規定を評価するということを素っ飛ばしているのです。

例えば、野宿者などから実質的に選挙権を剥奪して違憲であるという原告主張について、投票所入場券(整理投票券)や身分証明書などの提示がなくとも投票ができる実態は、住所がなくとも投票できるという原告主張を支持するものですが、選挙管理委員会たる被告は「その余は、原告ら独自の考えを述べるものであるため、認否の要を認めない」などと、この実態に対する認否を拒否しています。

答弁書という有印文書で自ら公務員不適格を証明しているわけで、財政法第9条2項「国の財産は、常に良好の状態においてこれを管理し、その所有の目的に応じて、最も効率的に、これを運用しなければならない」に違背して重大です。

太田光征

小選挙区定数の「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大して選挙の違憲性を強める

2月 4th, 2015 Posted by MITSU_OHTA @ 18:29:01
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 裁判 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟(事件番号:平成27年(行ケ)第5号)で準備書面(1)と甲第1号証を2015年1月19日付で提出しました。

第一回口頭弁論の期日が3月13日午後3時半に決定しました。場所は東京高裁8階の812号法廷です。傍聴をよろしくお願いします。

なお、1月31日付の朝日新聞朝刊で本訴訟を紹介いただきました。

訴状:
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.pdf
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.doc
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.docx

準備書面(1):
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Brief1.pdf

甲第1号証Excelブック(甲第1号証Excelブックは下掲Excelブックを印刷用にレイアウトしたもの):
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_koudaiichigoushou.xlsx
選挙分析Excelブック:
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_gisekihaibun.xlsx

以下、準備書面(1)を転載しておきます。

太田光征

準 備 書 面(1)
2015年1月19日

平成27年(行ケ)第5号選挙無効請求事件
東京高等裁判所 第17民事部ニ係 御中

《原告1》  太田光征
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46番地の2 さつき荘201号
《原告2》  長岩 均
住所
《原告3》  原 裕幸
住所

《原告》 送達先
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46番地の2 さつき荘201号
原告   太田光征
電話・ファクス:047-360-1470

《被告1》 送達先
〒100-8926 東京都千代田区霞が関2丁目1番2号 中央合同庁舎第2号館
被告1   中央選挙管理会
上記代表者 委員長  神崎浩昭
《被告2》 送達先
〒260-8667 千葉市中央区市場町1番1号
被告2    千葉県選挙管理委員会
上記代表者  委員長  本木陸夫
《被告3》 送達先
〒330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂3丁目15番1号(県庁本庁舎3階)
被告3   埼玉県選挙管理委員会
上記代表者  委員長  滝瀬副次
《被告4》 送達先
〒163-8001 〒163-8001 東京都新宿区西新宿二丁目8番1号 都庁第一本庁舎 N39階
被告4    東京都選挙管理委員会
上記代表者  委員長  尾正一  

小選挙区定数の「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大して選挙の違憲性を強め、本件選挙に何らの正当性も与えない

訴状「3 憲法違反・法律違反の事実」を補足するものとして、以下を指摘する。

(1)無所属候補の比例区での立候補制限は「定数配分の格差」「1票の格差」よりはるかに権利制限性、違憲性が強い

訴状「第6章 比例区の定数枠から無所属候補を締め出す小選挙区比例代表並立制は制限選挙規定であり違憲である」で指摘したように、無所属候補の比例区での立候補制限(あるいは比例区定数に相当する当選枠からの排除)は違憲である。
小選挙区比例代表並立制は比例区選挙と小選挙区選挙の定数を分離して別個の選挙を同時に行うものであるから、制限選挙をめぐる論点では、権利制限を各選挙で考察しなければならない。
無所属候補は小選挙区に立候補できるから立候補権は侵害されていない、と考えるわけにはいかない。また、無所属候補の立候補者数が比例区定数の180はおろか小選挙区定数の295にも満たない現状では無所属候補が比例区に立候補できなくとも構わない、と考えるわけにもいかない。
比例区定数の180議席が無所属候補も当選しやすい大選挙区制などで、無所属候補も小選挙区選挙のほかに大選挙区選挙に立候補できれば、無所属候補の立候補者数は現在よりも多くなり、当選者も多くなるだろう。
政党候補が2つの選挙、しかも1つは当選しやすい比例区選挙に立候補できながら、無所属候補が1つの選挙、しかも当選しにくい小選挙区選挙にしか立候補できないのは、政治的身分の差別に基づく明白な制限選挙であり、違憲である。政党候補も無所属候補も同じ定数をめぐって争わなければ平等ではない。
政党を支持する有権者が比例区で政党を選択できるが、無所属候補を支持する有権者が比例区で無所属候補を選択できないのも、政治的身分の差別に基づく明白な制限選挙であり、違憲である。制限なき候補者選択権が保障されなければ制限なき選挙権は保障されない。
「1票の格差」(一般的な定義)は、候補者選択権の制限なき選挙権そのものが保障された上で、投票価値の格差をもたらし得る格差であるが、無所属候補の比例区からの締め出しは、無所属候補の比例区での立候補権そのものを完全に奪っているという点で、従って無所属候補を支持する有権者の比例区での制限なき候補者選択権そのものを完全に奪っているという点で(政党を支持する有権者にとっての比例区定数180対無所属候補を支持する有権者にとっての比例区定数0という「当選枠配分の格差」)、現状程度の「定数配分の格差」「1票の格差」よりはるかに権利制限性、違憲性が強い。

(2)「0増5減」によって無所属候補に対する差別がさらに拡大

2013年6月24日、衆議院の小選挙区定数を「0増5減」する区割り法案(公職選挙法改正案)が成立し、本件選挙から適用された。
その結果、無所属候補に対する差別がさらに拡大することになった。数値で示せば、「0増5減」以前、無所属候補は総定数の62.5%(300÷480)が当選枠であったが、「0増5減」以後、当選枠は62.1%(295÷475)に縮小した。
「わずか0.4ポイント」の縮小であるが、無所属候補に対する差別がある現状から差別を拡大する方向で定数が削減されたことは、極めて重大である。
訴状の第4章「第1節 都道府県間で移動すべき議席数は最低でも13議席」で指摘したように、「0増5減」の後でさえ、「定数配分の格差」「1票の格差」(一般的な定義)「政党間1票格差」を解消するため、原告が在住する千葉県、埼玉県、東京都など、定数を増やすべき都道府県があったのだから、「5減」するだけでなく、「5増」するなどしておけば、少なくとも無所属候補に対する差別を拡大することだけは防げた。
「0増5減」について、国会が無所属候補に対する差別の拡大を防ぐため、また「定数配分の格差」「1票の格差」(一般的な定義)「政党間1票格差」を解消するためにも必要な「5増」以上の措置を怠り、優先的憲法要請に照らしての「国会裁量権の合理性検討」を放棄したことは明らかである。定数削減は投票価値の格差の解消に必要ではなく、投票価値の格差の解消より優先されるべきものでもない。
「0増5減」は、訴状の第3〜5章で指摘したように、「定数配分の格差」とそれに起因する「政党間1票格差」の解消をほぼ没却し、「定数配分の格差」「1票の格差」(一般的な定義)「政党間1票格差」の「解消」ないし「最小化」の目標を曖昧にしたまま、「1票の格差」2倍程度という根拠なき「目安」を落としどころに狙ったもので、各種格差是正の抜本対策になっていないばかりか、無所属候補の立候補権・選挙区(選挙制度)選択権ひいては無所属候補を支持する有権者の選挙権・候補者選択権に対する差別を拡大して、選挙の違憲性を強めるものに他ならず、本件選挙に何らの正当性も与えない。

(以上)

第47回衆議院議員総選挙(2014年衆院選)無効請求訴訟を提起

1月 13th, 2015 Posted by MITSU_OHTA @ 2:36:21
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 裁判 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

本日、無事に受理されました。事件番号は平成27年(行ケ)第5号です。

今回の選挙では、比例区で得票率が同じでもブロック(定数)の違いによって議席を得られたり、得られなかったりと、特徴的な結果が出ています。ここには明白な投票価値の格差が存在します。

特に四国ブロックの方に提訴していただきたいと思います。まだ間に合います。

平和への結集ブログ » 2014衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=537

住民票など、住所を証明するものを要求されると思いますが、少なくとも受理時に必須ではありません。

最低限、下記を変えるだけでどの選挙区でも通用する訴状です。全選挙区を対象にしています。訴状提出の締め切りは13日、本日中です。まだ間に合います。コピーして使っていただいて構いません。印鑑(認印可)を忘れずに。

1ページと6ページ 当事者、宛先高裁名
74ページ 訴状副本の数(裁判所用+被告の数)

下記Excelファイルのシート「小選挙区別登録者」を使用して、第4章第1節の最後に自分の小選挙区の「1票の格差」を明記してもいいでしょう。

比例区の第3章では次あたりに自分の選挙区のデータを追加してもいいでしょう。

第1節
参照Excelワークシート:
(1)比例区ブロックの「選挙当日の有権者数」と「1票の格差」[比例区定数の割り当て]
第7節
参照Excelワークシート:
(3)「政党間1票格差」(小選挙区、比例代表)と「ブロック間死票率格差」(定数自体の格差)と「1議席当たりのブロック間死票格差」[比例区分析]

訴状:
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.pdf
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.doc
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Lower_House_Election_Complaint.docx

選挙分析Excelファイル:
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_gisekihaibun.xlsx

訴状目次

第1 請求の趣旨 6
第2 請求の原因 6
1 当事者 6
2 法令 7
3 憲法違反・法律違反の事実 7

第1章 定義と出典 7
第2章 本件訴訟の争点と対象選挙区 12

 第1節 本件訴訟の争点 12
 第2節 本件訴訟は従来の「定数是正訴訟」と同型であるが、「1票の格差」以外の「投票価値の格差」も争点とする 12
 第3節 「定数配分の格差」「投票価値の格差」をめぐってどの選挙区を違憲無効とすべきか 16
 第4節 本件訴訟の対象選挙区と対象違憲/違法事実 16

第3章 比例区――「1票の格差」の最大が1.18倍でも「定数配分の格差」と「ブロック間死票率格差」(定数自体の格差)が「投票価値の格差」「政党間1票格差」をもたらす 17

 第1節 比例区にも歴然とした「定数配分の格差」がある――ブロック間で移動すべき議席は4議席あり、東京ブロックの「1票の格差」(基準:東北ブロック)は1.18倍にすぎないが、東京ブロックは2議席も足りない 17
 第2節 比例区にも歴然とした「投票価値の格差」「政党間1票格差」がある――共産党は四国ブロック(定数6)の得票率10.12%が東北ブロック(定数21)の得票率9.89%および維新の党の北海道ブロック(定数8)の得票率9.89%より高いが、共産党と維新は東北ブロックと北海道ブロックで議席を獲得できながら、共産党は四国ブロックで議席を獲得できない 18
 第3節 比例区における「政党間1票格差」(全国レベル)の最大は社民党の5.06倍 19
 第4節 比例区ブロック間の「定数配分の格差」は「政党間1票格差」をもたらす――「定数配分の格差」を是正すれば獲得議席数は自民党が1減、次世代の党が1増 20
 第5節 「1票の格差」目安論は「定数配分の格差」論を矮小化し、「投票価値の格差」「政党間1票格差」を没却 21
 第6節 比例区の「定数配分の格差」の是正は区割り変更の必要がないので選挙当日の有権者数で決定できる 21
 第7節 「ブロック間死票率格差」(最大:3.59倍)(定数自体の格差)も「政党間1票格差」をもたらす――共産党が2桁得票率でも議席を獲得できない四国ブロックの定数6などは比例代表制の定数とはいえず、異なる選挙制度と異なる定数をブロック間で適用することは投票価値の格差をもたらすから違憲 22
 第8節 「ブロック間死票率格差」(定数自体の格差)の解消をスイス連邦最高裁判所から求められたチューリヒ州 23
 第9節 「定数配分の格差」は、ブロックごとに内部で「政党間1票格差」をもたらすだけでなく、ブロック全体で「党派支持率の不均衡」が相乗して、特定党派に有利・不利な分布になる――自民党の得票率の高いブロックほど定数が過剰 24
 第10節 まとめ 25

第4章 小選挙区――「1票の格差」2倍超が解消しても「定数配分の格差」が「投票価値の格差」「政党間1票格差」をもたらす 25

 第1節 都道府県間で移動すべき議席数は最低でも13議席 25
 第2節 小選挙区における「政党間1票格差」(全国レベル)の最大は共産党の82.78倍 27
 第3節 「定数配分の格差」は、小選挙区より広い地域で「党派支持率の不均衡」が相乗して、特定党派に有利・不利な分布になり、「政党間1票格差」を拡大する可能性がある――自民党の得票率の低い都道府県ほど定数が過少 27
 第4節 定数を増減せずとも各都道府県内の選挙区間で選挙人数をならせば、「1票の格差」2倍超の選挙区はなくなるが、特定党派に有利な(小選挙区より広い地域での)「定数配分の格差」による「政党間1票格差」を没却 28
 第5節 まとめ 30

第5章 「投票価値の格差」「政党間1票格差」は小選挙区、比例区、全国で一体的に集積されるから、一体として評価すべきである 30

第6章 比例区の定数枠から無所属候補を締め出す小選挙区比例代表並立制は制限選挙規定であり違憲である 31

第7章 小選挙区制は優先的憲法要請と数科学的知見に違背し、違憲である 33

 第1節 小選挙区制は優先的憲法要請から導かれる定量的な選挙制度条件に適合せず違憲 33
 第2節 小選挙区制は憲法より普遍的といえる数科学的知見に違背して違憲 33

第8章 野宿者など住所非保有者の実質的な選挙権剥奪は制限選挙であり違憲である――住所非保有者も適正に生活保護を受給できるように、住所非保有者の選挙人名簿を調製して選挙の公正を確保できる 34

 第1節 公正な選挙に必要なのは本人確認であり、住所ではない 34
 第2節 行政は居所・仮住所を住所と見なさず、民法、住民基本台帳事務処理要領、過去の住民登録事例に違背する 35
 第3節 行政は住所非保有者に住所を確保すべき住民基本台帳法の義務を怠っている 36
 第4節 在外選挙人を優遇して国内住所非保有選挙人を差別するのは不当 38
 第5節 まとめ 38

第9章 比例区選挙の立候補者数規定は制限選挙規定であり違憲である 39

 第1節 無党派層が最大の政治勢力であり、政党よりも支持される政治団体が存在する今日、「政党本位」の立候補要件に合理的理由はなく、「政党本位」といいつつ既成政党のみを優遇して何らの民主主義的意義もな 39
 第2節 国会裁量権の合理性検討に値しない国会審議――強行採決で立候補要件を決定し、政党本位と矛盾しない「名簿届け出政党等の要件緩和」など合理的な代案を無視 40
 第3節 まとめ 42

第10章 高額選挙供託金規定は制限選挙規定であり違憲である 43

 第1節 選挙供託金制度を争点とする過去判決は失当 43
 第2節 選挙供託金制度の立法目的・手段・効果に合理性はない――過去の選挙供託金争点裁判(大阪高裁判決)を振り返る 44

  ア)大阪高裁判決は公営選挙費用の一部負担を立法目的の1つとしてきた選挙供託金制度の正当性を否定し、大阪高裁判決を上告審も是認 45
  イ)大阪高裁判決は選挙不正行為の防止という架空の立法目的の効果、不正目的保持者=低得票者=供託金没収対象者(立法目的を達成せずとも低得票者だけに経済制裁)を実証しておらず、大阪高裁判決を上告審も是認 46
  ウ)大阪高裁判決は泡沫候補の排除という実際の立法目的を無視し、それを継承した上告審が選挙供託金制度は違憲でないことが明らかと国会裁量権の合理性検討を怠る 48
  エ)大阪高裁判決は無産者・無産政党に対する政治弾圧という実態的な立法目的を無視し、それを継承した上告審が選挙供託金制度は違憲でないことが明らかと国会裁量権の合理性検討を怠る 49

第3節 選挙供託金制度の立法目的・手段・効果に合理性はない――過去の国会審議を振り返る 50

  ア)柚正夫公述人の見解 50
  イ)泡沫候補の立候補抑止、候補者乱立の抑止、選挙公営費の一部負担の立法事実・効果はない 52
  ウ)例外中の例外と認める立法事実 54
  エ)選挙不正行為の防止という架空の立法目的 55
  オ)実態的な立法目的は選挙管理員会の都合、新たな政治勢力の台頭抑止、二大政党優遇 56
  カ)実態的な立法目的(前例踏襲)のもう1つは無産政党の弾圧 59
  キ)弊害・違憲性について真摯で合理的な国会裁量権を行使していない 62
  ク)(確実に泡沫候補の立候補を抑止できる)代案・違憲性について真摯で合理的な国会裁量権を行使していない 67

 第4節 まとめ 72

第3 結論 74

太田光征

2014衆院選――結果分析

1月 9th, 2015 Posted by MITSU_OHTA @ 1:03:23
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 裁判 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

2014年衆院選:自民に有利の「定数配分の格差」(小選挙区は最低13議席、比例区は4議席を移動すべき)を是正せずとも各都道府県内で選挙人数をならせば「1票の格差」2倍超を解消できる「目安」論は「政党間1票格差」を没却

全文は下記ファイルをご覧ください。

http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014senkyo_bunseki_20150109.docx

http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014senkyo_bunseki_20150109.pdf

http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_gisekihaibun.xlsx

2014年衆院選の無効請求訴訟に必要と思われる範囲で、最小限の分析結果をお知らせしたいと思います。皆さんも各地で訴訟を起こされるよう、お願いします。訴状の提出は1月13日が締め切りです。その後で詳細な準備書面を提出することができます。

下記が選挙結果データなども含むエクセルファイルで、これを使って分析プロセスを検証できます。

http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_gisekihaibun.xlsx

2013年参院選の無効請求訴訟をご参考にしてください。自由にコピーして使っていただいてかまいません。

2013年参議院選挙の無効請求訴訟

(1)訴状:投票価値論を展開。訴状ファイルには目次がありません。目次は下記ブログ記事本文で確認してください。
第23回参議院選挙無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=478 
(2)準備書面:供託金制度についての国会論議を詳しく振り返っている。
第23回参議院選挙無効請求訴訟の準備書面(2013年11月6日付)――戦後直後から最近までの国会審議を振り返る
http://kaze.fm/wordpress/?p=512
(3)上告理由書:準備書面とかなり重複しているが、投票価値論について新たな説明を加えている。供託金制度についての主張は、上告理由書のまとめで手っ取り早く理解できる。
2013年参院選無効請求訴訟で上告――定数配分の格差の是正で投票価値の格差(死票率の格差)はさらに拡大する
http://kaze.fm/wordpress/?p=527

【目次】

第0章 「投票価値の格差」は「1票の格差」「定数配分の格差」だけではない

第1章 比例区――「1票の格差」の最大が1.18倍でも「定数配分の格差」と「ブロック間死票率格差」(定数自体の格差)が「投票価値の格差」「政党間1票格差」をもたらす

 第1節 比例区にも歴然とした「定数配分の格差」がある――ブロック間で移動すべき議席は4議席あり、東京ブロックの「1票の格差」(基準:東北ブロック)は1.18倍にすぎないが、東京ブロックは2議席も足りない

 第2節 比例区にも歴然とした「投票価値の格差」「政党間1票格差」がある――共産党は四国ブロック(定数6)の得票率10.12%が東北ブロック(定数21)の得票率9.89%および維新の党の北海道ブロック(定数8)の得票率9.89%より高いが、共産党と維新は東北ブロックと北海道ブロックで議席を獲得できながら、共産党は四国ブロックで議席を獲得できない

 第3節 比例区における「政党間1票格差」(全国レベル)の最大は社民党の5.06倍

 第4節 比例区ブロック間の「定数配分の格差」は「政党間1票格差」をもたらす――「定数配分の格差」を是正すれば獲得議席数は自民党が1減、次世代の党が1増

 第5節 「1票の格差」目安論は「定数配分の格差」論を矮小化し、「投票価値の格差」「政党間1票格差」を没却

 第6節 比例区の「定数配分の格差」の是正は区割り変更の必要がないので選挙当日の有権者数で決定できる

 第7節 「ブロック間死票率格差」(最大:3.59倍)(定数自体の格差)も「政党間1票格差」をもたらす――共産党が2桁得票率でも議席を獲得できない四国ブロックの定数6などは比例代表制の定数とはいえず、異なる選挙制度と異なる定数をブロック間で適用することは違憲

 第8節 「ブロック間死票率格差」(定数自体の格差)の解消をスイス連邦最高裁判所から求められたチューリヒ州

 第9節 「定数配分の格差」は、ブロックごとに内部で「政党間1票格差」をもたらすだけでなく、ブロック全体で「党派支持率の不均衡」が相乗して、特定党派に有利・不利な分布になる――自民党の得票率の高いブロックほど定数が過剰

第2章 小選挙区――「1票の格差」2倍超が解消しても「定数配分の格差」が「投票価値の格差」「政党間1票格差」をもたらす

 第1節 都道府県間で移動すべき議席は最低でも13議席

 第2節 小選挙区における「政党間1票格差」(全国レベル)の最大は共産党の82.78倍

 第3節 「定数配分の格差」は、小選挙区より広い地域で「党派支持率の不均衡」が相乗して、特定党派に有利・不利な分布になり、「政党間1票格差」を拡大する可能性がある――自民党の得票率の低い都道府県ほど定数が過少

 第4節 定数を増減せずとも各都道府県内の選挙区間で選挙人数をならせば、「1票の格差」2倍超の選挙区はなくなるが、特定党派に有利な(小選挙区より広い地域での)「定数配分の格差」による「政党間1票格差」を没却

第3章 改めて「定数配分の格差」と「投票価値の格差」の理解について

太田光征

2014年衆院選の無効請求訴訟を:比例区にも歴然とした「投票価値の格差」「政党間1票格差」がある――共産党は四国ブロックの得票率が東北ブロックより高いが、東北ブロックで議席を獲得できて四国ブロックではできない

1月 7th, 2015 Posted by MITSU_OHTA @ 15:18:07
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 裁判 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

衆院選無効請求訴訟の提起の締め切りは13日です。詳しい訴えは準備書面に譲り、まずは訴状だけを出しても構いません。私もそうします。

こちらの記事に昨年の参院選の無効請求訴訟の説明などを載せています。訴状のひな形などとしてご参考にしてください。文面をコピーしていただいても構いません。

2014年衆院選比例区の東京ブロックは定数が2議席も足りない――衆院選の無効請求訴訟を
http://kaze.fm/wordpress/?p=535

選挙の分析結果は明日くらいに公表したいと思いますが、取り急ぎ、一部をご紹介します。各地で衆院選無効請求訴訟を起こしましょう。

太田光征

比例区における投票価値とは、政党の議席配分に与える影響力のことであり、このような価値が有権者の間で同じでなければならない。

ところが、例えば、共産党は四国ブロックの得票率10.12%が東北ブロックの得票率9.89%より高いが、東北ブロックで議席を獲得できて四国ブロックでは議席を獲得できていない。共産党を支持する両ブロックの有権者グループの間で、また同党を支持する有権者グループと他党を支持する有権者グループの間で、投票価値の格差が存在するのである。

投票価値の格差はブロック間のみで比べるべきものではない。「投票価値の格差」を「1票の格差」と区別するため、「投票価値の格差」を「諸政党を支持する有権者間の投票価値の格差(政党間1票格差)」と呼ぶことにする。共産党の例は、後述するように、「ブロック間死票率格差」(定数自体の格差)による「政党間1票格差」の例である。

2桁得票率でも議席を獲得できない四国ブロックの定数6などは比例代表制の定数とはいえず、異なる選挙制度と異なる定数をブロック間で適用することは違憲となる。

格差は対で発生する現象であり、有利・不利いずれも不当であるから、全ブロックの選挙結果を違憲無効とし、衆議院解散前の議会に戻さなければならない。

2014年衆院選比例区の東京ブロックは定数が2議席も足りない――衆院選の無効請求訴訟を

12月 29th, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 13:41:31
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 裁判 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

比例区でも正当な選挙が保障されていません。衆院選の無効請求訴訟を提起しませんか。市民参加への模索連絡会の市民に選挙をとりもどすプロジェクトでも、本人訴訟を勧めています。

市民参加への模索連絡会 | 市民が主役の社会へ
http://mosakuren.com/
自治体選挙における本人訴訟の勧め.pdf
http://mosakuren.com/wp-content/uploads/2014/11/%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E9%81%B8%E6%8C%99%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E3%81%AE%E5%8B%A7%E3%82%81.pdf

2013年参議院選挙の無効請求訴訟

(1)訴状:投票価値論を展開。訴状ファイルには目次がありません。目次は下記ブログ記事本文で確認してください。
第23回参議院選挙無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=478 
(2)準備書面:供託金制度についての国会論議を詳しく振り返っている。
第23回参議院選挙無効請求訴訟の準備書面(2013年11月6日付)――戦後直後から最近までの国会審議を振り返る
http://kaze.fm/wordpress/?p=512
(3)上告理由書:準備書面とかなり重複しているが、投票価値論について新たな説明を加えている。供託金制度についての主張は、上告理由書のまとめで手っ取り早く理解できる。
2013年参院選無効請求訴訟で上告――定数配分の格差の是正で投票価値の格差(死票率の格差)はさらに拡大する
http://kaze.fm/wordpress/?p=527

今回の衆院選で、比例区ブロックごとの死票率をみていると、最高が四国ブロックの15.76%、最低でも九州ブロックの4.39%となっています。

比例区がブロック制でなく全国1区だった場合、死票率がわずか0.72%であることからして、現在のように定数が細切れにされているブロック制はもはや比例代表制とはいえないことが分かります。

ブロックによって「異なる選挙制度」が適用されていることで、投票価値の格差(死票率の格差)がもたらされているわけです。ブロック間で「異なる選挙制度」を適用すべき理由はありません。これは憲法違反です。

現在、衆院選比例区の各ブロックへの定数割り当ては、国勢調査の人口数値に基づいてドント式で行われています。本来は、直近の選挙人名簿に基づいて決定すべきです。

直近の選挙人名簿に基づけば、東京ブロックの定数は2増して19議席となるなど、他のブロックでも増減がみられます。2010年国勢調査(人口)の結果に基づいた場合でさえ、選挙人名簿に基づく場合と比べ、北陸信越が1増、北海道が1減となるだけで、やはり東京ブロックの定数が2議席も足りなくなっています。

直近の選挙人名簿に基づいて定数割り当てを行った上で、各党への議席配分を全ブロックでやり直すと、自民が1減、次世代の党が1増(東京ブロック)します。これは定数配分の格差が1票の価値の格差(政党間1票格差)につながっている例です。

小選挙区の場合、定数配分の格差は、自民党の支持率の高い中国・四国地方に人口(有権者数)当たりの議員数が多く割り当てられている場合などに限り、1票の価値の格差(政党間1票格差)が発生します。比例代表制と小選挙区制では定数配分の格差の意味するところが本質的に違います。

よく分かる「定数配分の格差」(「1票の格差」)
http://kaze.fm/wordpress/?p=531

詳しい分析の結果は後で報告します。

選挙無効請求訴訟は、投票日から30日以内に提訴しないといけません。最初に訴状だけ出して、詳しい理由を準備書面で出すこともできます。

太田光征

2013年参院選無効請求訴訟で上告――定数配分の格差の是正で投票価値の格差(死票率の格差)はさらに拡大する

4月 14th, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 0:33:56
under 選挙制度 , 2013年参議院選挙 , 裁判 Comments Off 

2013年参院選無効請求訴訟の訴えが東京高裁で2014年1月30日に却下・棄却されたので、4月11日に上告理由書と上告受理申立て書を提出しました。

第23回参議院選挙無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=478
第23回参議院選挙無効請求訴訟の準備書面(2013年11月6日付)――戦後直後から最近までの国会審議を振り返る
http://kaze.fm/wordpress/?p=512

上告受理申立て書はほぼ上告理由書からの抜粋の形をとるので、上告理由書だけを紹介しておきます。

上告理由書
http://otasa.net/documents/2013Election_Appeal_to_the_Supreme_Court.pdf

上告理由書は54ページありますので、一部だけを抜粋します。残りはファイルでご確認ください。

目次
第1 理由要旨
第6 選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす/千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性
 1 従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)について憲法判断しない原判決――投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある
  (1) 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較)

表 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較)

  (2) 定数配分の格差より死票率の格差の方が重大――定数配分の格差の是正で投票価値の格差はさらに拡大する

上 告 理 由 書
従来の定数是正訴訟と同型でありながら
より重要な本件訴状争点について判断しない原判決
〜定数配分の格差の是正で投票価値の格差はさらに拡大する〜

2014年(平成26年)4月11日
平成25年(行ケ)第92号 選挙無効請求事件
上告提起事件番号 平成26年(行サ)第26号

最高裁判所民事部 御中

上告人   太田光征
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46番地の2 さつき荘201号
送達先 同上(電話・ファクス:047-360-1470)

被上告人1    千葉県選挙管理委員会
被上告人2   中央選挙管理会

目次

第1 理由要旨 - 5 -
第2 用語と出典の説明と訂正について - 7 -
第3 本件訴訟は従来の「定数是正訴訟」(「1票の格差訴訟」)と同型であるから適法であるが、原判決は「定数是正訴訟」と同型の本件訴訟争点について理油不備・理由齟齬の違法を犯している - 7 -
第4  原判決は、本件訴訟の原告適格性と被告適格性について、憲法レベルで理由不備・理由齟齬の違法を犯している - 8 -
第5 比例区の定数枠から無所属候補を締め出す現行選挙制度は制限選挙を禁止する憲法に違反 - 8 -
 1 訴状争点を名簿式比例代表制にすり替え、自身の立論根拠「国会の広い裁量」「政党の重要性」について理由を示さない原判決 - 8 -
 2 「国会の広い裁量」について憲法の解釈と適用を誤った原判決 - 9 -
 3 「国会裁量権の合理性検討」を怠った原判決 - 10 -
 4 本件訴状の争点を名簿式比例代表制にすり替え、しかも非拘束名簿式比例代表制(名簿式比例代表制一般とは異なる)の合理性を「政党の重要性」で説明した上掲平成16年大法廷判決を援用し、「政党の重要性」を理由にすることで理由齟齬の違法を犯している原判決 - 11 -
 5 政党を最も重要な媒体と認める原判決は、無党派層が最大の政治勢力である今日の現実を無視して、重層的な理由齟齬の違法を犯している - 12 -
 6 まとめ - 12 -
第6 選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす/千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性 - 13 -
 1 従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)について憲法判断しない原判決――投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある - 13 -
 (1) 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較) - 13 -
 (2) 定数配分の格差より死票率の格差の方が重大――定数配分の格差の是正で投票価値の格差はさらに拡大する - 16 -
 2 訴状の争点とは異なる争点にすり替えて判断し、過去大法廷判決で要求された「国会裁量権の合理性検討」を行っていない原判決 - 17 -
 3 過去大法廷判決の成果(国会議員の地域代表性の重要性を否定し、都道府県単位の選挙区制の見直しを主張)から後退する原判決 - 18 -
 4 憲法要請「国民の厳粛な信託」から導かれる定量的な選挙制度条件を検討せずに憲法判断をする原判決 - 18 -
 5 憲法より普遍的といえる数科学的知見を検討せずに憲法判断をする原判決 - 19 -
 6 まとめ - 19 -
第7 公職選挙法の供託金・立候補者数規定は「正当な選挙」どころか「不当な選挙」を規定するもので、憲法第14条に違反する - 20 -
 1 比例区選挙の立候補要件――政党本位といいつつ既成政党のみを優遇して何らの民主主義的意義もなく、原判決は理由不備・理由齟齬の違法、憲法の解釈と適用を誤った違法を犯している - 20 -
 (1) 無党派層が最大の政治勢力であり、政党よりも支持される政治団体が選挙で存在する今日、政党本位の立候補要件に合理的理由はない - 20 -
 (2) 国会裁量権の合理性検討に値しない国会審議――強行採決で立候補要件を決定し、政党本位と矛盾しない「名簿届け出政党等の要件緩和」など合理的な代案を無視 - 21 -
 (3) まとめ - 23 -
 2 供託金――「泡沫候補排除」「選挙公営費の一部負担」などの実際の立法目的を無視し、架空の立法目的を設定する原判決は、理由不備・理由齟齬の違法を犯し、同負担を不当と認めた過去最高裁判決に違背 - 23 -
 (1) 理由不備の過去最高裁判決を支持する原判決 - 23 -
 (2) 供託金制度の立法目的・手段・効果に合理性はない――過去の供託金争点裁判(大阪高裁判決)を振り返る - 24 -
 (3) 供託金制度の立法目的・手段・効果に合理性はない――過去の国会審議を振り返る - 29 -
 (4) まとめ - 48 -
第8 野宿者の方などの選挙権が剥奪されている――住所非保有者も適正に生活保護を受給できるように、住所非保有者の選挙人名簿を調製して選挙の公正を確保できる - 49 -
 1 公正な選挙に必要なのは本人確認であり、住所ではない - 49 -
 2 行政は居所・仮住所を住所と見なさず、民法、住民基本台帳事務処理要領、過去の住民登録事例に違背する - 51 -
 3 行政は住所非保有者に住所を確保すべき住民基本台帳法の義務を怠っている - 51 -
 4 在外選挙人を優遇して国内住所非保有選挙人を差別するのは不当 - 53 -
 5 本件原判決が支持する上掲大阪高裁判決は、その論理構造で国内住所非保有者の選挙権の行使制限を是としない - 53 -
 6 まとめ - 53 -


第1 理由要旨

 原判決は、訴状の争点とは異なる争点にすり替えて判断したもので、昭和59年(行ツ)第339号選挙無効請求事件昭和60年7月17日最高裁判所大法廷判決で要求された「国会裁量権の合理性検討」を怠り、また憲法判断を誤っているから、民事訴訟法第312条1項「判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があること」および同法第312条2項6号「判決に理由を付せず、又は理由に食違いがあること」に該当し、破棄を免れない。

 原判決は訴状争点「比例区の定数枠から無所属候補を締め出す現行選挙制度は制限選挙を禁止する憲法に違反」を名簿式比例代表制の合理性にすり替え、「国会裁量権の合理性検討」を怠って、自身の立論根拠「国会の広い裁量」「政党の重要性」について理由不備の違法を犯した上に、訴状争点を否定するために非拘束名簿式比例代表制の合理性を「政党の重要性」で説明した後掲平成16年大法廷判決を援用して理由齟齬の違法を犯し、さらに「政党の重要性」についても無党派層が最大の政治勢力である今日の現実を無視して、重層的な理由齟齬の違法を犯している(第7の1の(1)、第7の2の(3)第47段落参照)。
 国会の裁量は優先的憲法要請を選挙制度の細部に落とし込む立法作業の限りにおいて認められるところ、原判決は「国会の広い裁量」について、憲法の「国民の厳粛な信託」「正当な選挙」(前文)、第14条1項、15条1項、43条1項、44条などの解釈と適用を誤った違法を犯している。

 「選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす」「千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性」という争点につき、原判決は、従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)に対する判断になっておらず、「国会裁量権の合理性検討」を怠っているから、重大な審理不尽、理由不備・理由齟齬の違法を犯している。
 過去大法廷判決が憲法要請でない国会議員の地域代表性の重要性を否定し、都道府県単位の選挙区制の見直しを主張しており、憲法要請である死票率の最小化(投票価値の平等化)を優先して制度化すべきところ、選挙区を中選挙区ないし大選挙区で統一できるにもかかわらず、数科学的知見から小選挙区が最悪であると承知しながら、選挙区によって小選挙区制および中選挙区制というまったく異なる選挙制度を適用することは、死票率の格差という投票価値の格差をもたらすから、憲法第14条1項に反するのに、原判決は憲法の解釈と適用を誤った違法を犯している。

 比例区選挙の立候補要件は政党本位といいつつ、選挙供託金制度や既成政党のみを優遇する政党助成金制度と相まって、既成政党のみを優遇するもので、何らの民主主義的意義もないから、憲法第14条1項に反するのに、現行要件を認める原判決は憲法の解釈と適用を誤った違法を犯している。
 無党派層が最大の政治勢力であり、政党よりも支持される政治団体が選挙で存在する今日、政党でない政治団体にのみ候補者10人を課す政党本位の立候補要件に合理的理由はないから、原判決は理由不備・理由齟齬の違法を犯している。

 選挙供託金制度は、泡沫候補の立候補抑止、選挙公営費の一部負担などが実際の立法目的であるが、同制度の必要性と効果を根拠付ける立法事実がないことが国会で論破され、合理的な代替手段も提案されている。
 後掲大阪高裁判決も同負担を根拠に同制度を正当化できないと判示し、同判決を支持する最高裁判決(原審被告乙第2号証)も同じ理を是認しているところ、原判決は同最高裁判決に違背する。
 同制度は無反省に戦前の政治弾圧目的を引きずり、既存政党、特に二大政党を優遇することが実態であり、立候補権と選挙権に財産上の差別をもたらすだけなのであるから、憲法第14条1項、15条1項、44条に反して違憲である。
 架空の立法目的「真に国民の政治意思の形成に関与しようとする意思のない候補者又は政党等が届出をすることを防止し,公正かつ適正な選挙を確保」を持ち出して実際の立法目的を検討しない原判決は、「国会裁量権の合理性検討」を怠り、致命的な理由不備・理由齟齬の違法、憲法の解釈と適用を誤った違法を犯している。

 公職選挙法は、住所非保有者でも生活保護を受給できるのに、住所によらない本人確認の手段があっても、住所非保有者の選挙人名簿の調製規定を設けず、行政も民法の住所割り当て義務と住民基本台帳法の住所確保義務を怠り、住民登録消除の不法行為を働き、過去の住所非保有者の住民登録実績から後退しており、住所非保有者の選挙人名簿を調製できるのに調製しない立法不作為と法の不履行がある。
 住所非保有者の選挙人名簿を調製せずに選挙権の行使を制限することは、「制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難であると認められる場合」(後掲平成17年大法廷判決)に該当しないから、憲法第14条1項、15条1項に反して違憲なのに、住所非保有者の選挙権行使は選挙の公正を確保できないとし、立法不作為を是認する原判決は、理由不備・理由齟齬の違法、憲法・民法・住民基本台帳法の解釈と適用を誤った違法を犯している。

第6 選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす/千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性

 1 従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)について憲法判断しない原判決――投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある

  (1) 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較)

 上告人は、訴状の第2の3の(0)緒論(3ページ)で、「本件訴訟では、議員1人当たりの有権者数を選挙区間で揃えただけでは解消されない選挙権の格差を論点とする」と、選挙権の格差(投票価値の格差)の一類型たる「定数配分の格差」を争点とした選挙無効請求訴訟(「定数是正訴訟」)で憲法判断した上掲平成24年大法廷判決との同型性を明確に規定し、訴状の第3結論(22ページ)で下記(2)〜(4)の具体的争点を明示した。これらの争点は、訴状の第2の3の(0)〜(4)(ただし(1)は、別の立候補権の差別が争点)と原審準備書面の第3で解説している。

 (2)「定数配分の格差」に起因する投票価値の格差以外にも「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」の格差があり、投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にあることを認める。
 (3)憲法前文「国民の厳粛な信託」、憲法第14条法の下の平等、憲法第43条「全国民を代表する選挙」は、死票を最小化しつつ国民の意見と国会の意見の乖離を限りなく縮小して平等な国民主権を保障する選挙制度を要請していることを認め、従って憲法は選挙区間での定数分布の人口比例だけでなく投票先政党間などでの当選議員分布の投票者数比例も要請していることを認め、小選挙区制および大選挙区制(理論的に中選挙区制を含む)はそのような要請を是とする思想に基づいて真摯な議論によって制定された法律ではなく、同思想に通じる科学的知見を無視しているから、憲法違反であると認める。
 (4)選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらし憲法違反であると認める。

表 従来の定数是正訴訟と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」の構造(従来の定数是正訴訟との比較)
論点 本件訴訟 従来の定数是正訴訟
投票価値を持つ主体 生票を投じる者(生票を投じて初めて投票価値が生まれ、死票を投じる者にとっての投票価値はゼロ) 死票を投じる者を含めた仮想的な「有権者一般」を想定
投票価値の比較基準(有権者グループの区分け基準) 選挙区間だけでなく政党間にも拡張 選挙区間だけ
何を比べるか 議員1人当たりの投票者数 議員1人当たりの有権者数
「定数配分の格差」についての理解 「有権者個人」の「投票価値の格差」ではなく、「地域代表性の格差」に帰着すると主張(上掲平成23年大法廷判決は地域代表性の重要性を否定(第6の3を参照)) 裁判所は「投票価値の格差」と理解
「投票価値の格差の本質」についての理解 生票と死票の対立 あいまい
参議院選挙区における「定数配分の格差」の是正の結果どうなるか 地方と都市部の間における「死票率の格差」=「投票価値の格差」はさらに拡大すると主張 「投票価値の格差」が縮小すると理解
投票価値の格差の類型化 (1)「選挙区間」で比べる「定数配分の格差」(1議席当たりの有権者数の格差=定数分布の人口比例からの破れ)
(2)有権者グループの区分け基準として投票選挙区を採用して「選挙区間」で比べる「定数配分の格差」(1議席当たりの有権者数の格差=定数分布の人口比例からの破れ)
(3)有権者グループの区分け基準として投票先政党を採用して「政党間」で比べる「投票価値の格差」(政党間1票格差=1議席当たりの得票数の格差=当選議員分布の投票者数比例からの破れ=「1議席当たりの得票数(死票を含む)を各党ごとに求め、最小の党のそれで割った値)
(4)「選挙区間」で比べる生票率および死票率の格差
なし
投票価値に影響を与える要因(法の下の平等に照らして憲法判断する対象)の捉え方 上位規定たる選挙制度本体(定数を決める方式) 上位規定たる選挙制度を所与のものとした場合の下位規定たる区割り方法(1人別枠方式=都道府県にどれだけの数の選挙区を設けるかの方式であり、1選挙区の定数を決める方式ではない)

 しかるに、原判決は、従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟のこれら「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)関連の争点について憲法判断をしていないから、重大な審理不尽、理由不備・理由齟齬の違法を犯している。以下、詳述する。

  (2) 定数配分の格差より死票率の格差の方が重大――定数配分の格差の是正で投票価値の格差はさらに拡大する

[1] 定数配分の格差では、都市部が地方より議員1人当たりの有権者数が多いことが問題とされる。しかし実際には、例えば2012年衆議院選挙の場合、鳥取第1区の当選者の得票数は124,746票で、生票率は 85%、神奈川1区の当選者の得票数は101,238票で、生票率は41%、東京1区の当選者の得票数は82,013票で、生票率は29%となっている。つまり、これら選挙区に限れば、生票を投じることで実質的に投票に参加している有権者数はむしろ地方より都市部の方が少なく(都市部では立候補者数が多く、死票率が高いことなどが原因と考えられる)、生票を投じる有権者に限れば、都市部が地方より投票価値が低いとはいえないのが実態である。ただし、都市部ほど死票を投じる有権者が多いという点で、都市部の方が投票価値は低いといえる。
[2] 衆議院選挙の選挙区選挙において25選挙区もある東京都の有権者が、議員1人当たりの有権者数が2選挙区の鳥取より多いからといって、鳥取から1議席を東京に移して東京の議席が26議席になったところで、東京の地域代表性が高まることに意義を見いだす有権者はあまりいないであろう。現在ほどの定数配分の格差は、地域代表性の格差としては、ほとんど意味がないほどに小さい。
[3] しかも、1選挙区当たりの定数を変えずに議員1人当たりの有権者数を減らしても「有権者個人」の投票価値が高まらないことは、訴状第2の3の(2)「投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある」(6ページ以降、特に(2-ア)「投票価値の本質」8ページ)で実証した。
[4] 新たな例で説明すれば、ある1人区の有権者すべてが、1人2票を持つようになったとしても、投票価値が2倍になることはない。例えば、自由民主党候補の集票力が2倍になるが、民主党候補の集票力も2倍になり、両党候補の力関係は1人1票の場合と何ら変わらないからである。
[5] 衆議院選挙区のように1選挙区当たりの定数が同じ選挙区どうしを比べれば、都市部は一面で投票価値が地方より高く(生票率が低い)、他面で低いが(死票率が高い)、地域代表性は地方とさほど変わらない。しかも、1選挙区当たりの定数を変えずに議員1人当たりの有権者数を減らしても死票率は低減せず、全体的な投票価値が高まることはない。
[6] 参議院選挙区の場合は、地方ほど1選挙区当たりの定数が少なく死票率が高く、都市部ほど同定数が多く死票率が低いので(第6の「4 憲法要請「国民の厳粛な信託」から導かれる定量的な選挙制度条件を検討せずに憲法判断をする原判決」参照)、「定数配分の格差」を是正するために地方から都市部へ議席を移して、地方の1選挙区当たりの定数を減らし、都市部の1選挙区当たりの定数を増やすと、地域代表性はさほど変わらないが、両地域の間における死票率の格差という投票価値の格差はさらに拡大する。
[7] 従って、「有権者一般」で議員1人当たりの有権者数の多寡を比べても、さほど意味がないどころか、参議院選挙区における「定数配分の格差」の是正によって、地方と都市部の間における投票価値の格差はさらに拡大してしまう。定数配分の格差より、1選挙区当たりの定数などで規定される死票率の格差の方が、重大である。
[8] しかるに、原判決は、従来の定数是正訴訟の争点「定数配分の格差」(上掲平成24年大法廷判決にいう「投票価値」の格差の一類型)と同型でありながらより重要な本件訴訟の争点「死票率の格差」(同判決にいう「投票価値」の格差の一類型)について憲法判断をしていないから、重大な審理不尽、理由不備・理由齟齬の違法を犯している。

太田光征