選挙制度改革に関する江田参院議長への申し入れ

【お詫び】:3月18日、江田議長の発言(太字部分)を訂正

 「風」の2006「平和への結集」の訴えでも謳われてういる基本理念の一つである選挙制度改革への取り組みとして、1月25日に江田五月参院議長に申し入れを行ってきました。面会場所は何と仰々しくも参院議長公邸で、「風」からは竹村英明さん、小林正弥さん、太田光征の3人が参加。民主党グループ内で小林正弥さんによる公共哲学勉強会を設定したことのある民主党の土肥隆一衆院議員も同席し、私たちの話を聞いていただきました。

 (引き続き2008「平和への結集」アピールへの賛同をお願いします)

全野党・議員にむけての2008「平和への結集」アピール
http://kaze.fm/
賛同署名フォーム(匿名も可能です)
http://form1.fc2.com/form/?id=268462

選挙制度改革に関する江田参院議長への申し入れ

 冒頭、竹村事務局長から、憲法理念を守り活かす「風」の運動趣旨が説明された後、太田が下記の申し入れ書を読み上げました。

 小林正弥さんは2003年7月の『千葉大学法学論集』第十八巻第一号で「恩顧主義的政党と選挙制度改革―日本政治『成功』の条件―」を発表しているなど、選挙制度と政党政治の関係を論じてきています。

 小林さんはこの論文などを参考資料として江田議長にお渡ししながら、小選挙区制による二大政党制では理念の差がなく、政策の幅が縮まり、政治腐敗が起こる懸念があることを指摘し、政治改革論議の際も、ヨーロッパの比例区中心の選挙制度に賛成していたことを説明しました。

 野党連合との関係では、平和憲法の問題などで、民主党が自民党とはっきり区別をつけ、その上で他野党と連合するのであれば、二大政党制が機能する条件が整ってきたといえると小林さんは語りました。しかしこの条件をポジティブに展開していくには、年来の主張であるもっと民意を実現する選挙制度を考えるべきだと議長に要望しました。

 私が準備した申し入れ書はそもそも、いわゆる死票という表現で示されている小選挙区制下における議席獲得率の格差をも、一票の格差の範疇で認識すべきことを主張しています。去年の参院選では、例えば大阪選挙区と千葉選挙区で、従来の意味での一票の格差(選挙区間格差)と議席獲得率の格差(政党間格差)が重なって現れていると私は認識していますが、この考え方は江田議長にはまだ馴染まないようでした。

 以下、参院改革協議会の取り組みや一票の格差問題などについて、江田議長のお話を紹介します。

 参院改革協議会はかなり以前からあり、歴代議長の下、各派代表者会議の合意で設立されたものです。選挙制度の問題はその中で扱う課題の一つで、ゼロから見直すものではないといいます。参院の選挙制度改革としては、全国区を比例区にし、比例区名簿を拘束式から非拘束式に変更したぐらいで、最高裁から指摘されているのは選挙区の定数配分の問題。去年の参院選前に行った2増2減は、各会派の間で緊急避難に過ぎないとの合意があり、定数是正に引き続いて取り組むという申し送りがなされています。参院改革協議会でのテーマは諸般に渡るが、第一のテーマが選挙区の定数配分の是正という認識のようです。

 江田議長が民主党の参院議員会長の時代に、(鳥取・島根選挙区などの)合区・分区を提案しており、この扱いをどうするかが残っているといいます。定数配分の是正くらいできないで大きなことはできないが、逆に大きな制度をいじれば小さな問題は吹っ飛ぶともいえると。しかし、議論が拡散し、例えば職域代表制などを言い出すと、憲法の問題になってしまう。憲法は国会議員選挙で全国民の代表性を規定しているので、憲法改正まで視野に入れなければならなくなるので難しいのではないかと言われました。

 申し入れ書で引用している毎日新聞の書き方は言いすぎだと思うと指摘されながら、選挙区と比例区の定数配分を変えるとなると、蜂の子をつついたようになるので、そこで苦労されているといいます。選挙制度を国会議員にいじらせるのは、泥棒に手錠を作らせるものだ、縄をあわせるものだという意見があり、したがって第三者機関を立ち上げてそこに投げるという案もあるが、なかなか実際にはそうならないという。

 現在の展望では、合区が通れば今度は都道府県の線引きがこれでいいのかということになって、道州制など、県境をいじる議論になってきて、地方自治システムが動いていくことになっていくだろうとの見解を示されました。そうすると時間がかかるだろうが、定数配分問題に別の切り口が見えてくるだろうと。今の定数配分のままでは合憲の範囲に収まらない恐れがあるので、まずそこにメスを入れるという方針だそうです。

 小選挙区制オンリーで、選挙区の人口が平等だとすると、一票の格差がないということになる。得票率と議席獲得率に相当の開きが出るが、これは選挙制度の問題で、一票の格差ではない気がするといいます。一票の格差は各選挙区への定数配分の問題だと。

 少数政党に有利な選挙制度となると、選挙制度は価値ニュートラルでないといけないので、難しいといいます。小選挙区制は代表性をどうするかの問題。選挙制度を議論した時には、小選挙区制は多数意見を三乗すると言われていて、これは政策選択にめりはりがつくので構わないとされたはずで、良いかどうかは別として、これは一つの考え方だと。本来の意見の配分より小さくなった少数意見を尊重するということが大事だが、それは数を増やすことではないだろうとのお考えでした。議長自身は当時、小選挙区比例代表併用制を主張されたそうです。実際は並立制になりました。

 参院改革協議会で選挙制度のことをお願いしているが、まだまだアクセルを踏み込まないといけない状態で、大変なのだといいます。2010年選挙には間に合わせなければならない。すると来年の通常国会には成立させる必要がある。だから今年中に案を纏める必要があるが、具体化は難しいと言われます。

 選挙制度改革に関して市民からの大胆な意見が出るのは歓迎すると言っていただきました。さらに、選挙制度改革の議論は参院改革協議会のしきりでやることになっており、公聴会ということにはならないが、改革協議会で市民の意見を聞いてもらうよう改革協議会に提案することを検討してはどうかと、話されました。

 参院改革協議会の座長は民主党の議員とのことで、「風」として今後働きかけを検討していきたいと考えています。市民運動関係者の間でさえ、選挙制度改革はあまり課題に上っていません。有権者の間でもっと選挙制度改革の論議が盛り上がることを期待したいと思います。

(報告:太田光征)

参議院議長 江田五月様

2008年1月25日
一票の格差是正改革に関する要望書
――定数改革だけではなく抜本的な選挙制度改革への取り組みを――

 私たちは、日本の平和憲法の理念を守り活かし実現することをめざして、国政選挙において平和共同候補の擁立を訴えている「『平和への結集』をめざす市民の風」という団体です。貴職がこのたび選挙制度の改革をめざして「参院改革協議会」の後継組織を発足されたことを踏まえ、一票の格差是正改革に関する要望――定数改革だけではなく抜本的な選挙制度改革への取り組み――をお願いしたいと思います。

 新聞報道によれば、貴職は公平・公正・中立な議会運営を心がけるとともに、小さな政党からスタートしていることから、少数政党の意見も尊重していきたいとされており、私たちは大いに期待しています。

 貴職は、参院選挙における一票の格差是正改革に関し、以下のような見解を表明されています。

 「選挙区は各都道府県があって(最低1議席を割り振る)というところにメスを入れないと前に進まない感じを持っている」
「比例代表、選挙区の数の配分を今のままにしてアンバランスを是正していくのは困難だ」
(2007年8月11日付け毎日新聞)

 しかし、全国を選挙区に区割りする方式のままでは、定数改革で格差を完全に無くすことはできません。定数改革では限界があるのです。こうした区割り選挙の弊害を抜本的に正す選挙制度改革が必要であると考えます。

 2007年参院選の結果を見ても、千葉選挙区と大阪選挙区のように、一票の格差わずか1.42倍でも問題が生じている例があります。

 千葉選挙区と大阪選挙区はいずれも定数3で、投票率はそれぞれ55.14%、55.81%でした。大阪選挙区の有権者数は千葉選挙区の1.42倍なので、千葉選挙区の有権者数を基準にすると、大阪選挙区の定数は、4がふさわしいといえます。しかも、大阪選挙区で次点で落選した候補の票は585,620票であり、千葉選挙区で3位当選した候補の得票数477,402票を上回っていたのです。

 一票の格差を問題にするのであれば、選挙区別の格差だけではなく、政党別の格差も問題にするべきです。

 2005年衆院選の小選挙区で、後者の格差が際立って示されました。与党は49%の得票率で76%もの議席を独占したのです。2007年参院選でも、与党と民主党の立場が逆転していますが、同様の格差を生んでいます。選挙区に限ると、与党が得票率37%で34%の議席を獲得しているのに対して、民主党は得票率41%で55%もの議席を得ているのです。

 2007参院選における民主党の得票率は与党の1.08倍にすぎませんが、民主党の議席獲得率は与党の1.60倍にもなっています。民主党に投じた有権者の一票の価値(獲得議席数 / 得票数)は、与党に投じた有権者の1.48倍もあるのです。

 選挙区別と政党別の二種類の一票の格差は、区割り選挙を独立して行う限り、無くすことはできません。

 定数の少ない区割り選挙は、少数政党をますます少数勢力に追い込む制度であり、貴職の少数政党を尊重するという姿勢に著しく反しています。

 したがって、この観点からも、定数改革に終わらず、選挙制度の抜本的改革に向かうべきであると考えます。市民の意見を十分に反映しつつ、貴職のリーダーシップをこの選挙制度改革で発揮していただきますよう、強く要望いたします。

 2008年1月25日

「平和への結集」をめざす市民の風

竹村英明(事務局長)
小林正弥(執行委員)
太田光征(運営委員)

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