声明  足立区長選に吉田万三氏を推す

『「平和への結集」をめざす市民の風』
末次圭介 石垣敏夫 紅林 進 太田光征 大津留公彦  原田伊三郎  萩尾健太  野村修身  櫻井智志

 五月十五日に東京都足立区の区長選挙が投票実施される。当団体は、以下に述べる視点から、現職に対して立候補した元足立区長吉田万三氏の立候補の意義を感じる。
 都知事選での石原慎太郎氏の圧勝は、改めて都民への根強い支持とそのことに対する危うい感覚を感じさせた。しかし、後半統一地方選挙での世田谷区長選の結果は、元社民党国会議員保坂展人氏が接戦を制して当選した。 政治的には、石原氏と世田谷区長に新たに当選した保坂展人氏とでは、ほぼ真逆である。今回、保坂氏は周囲からの区長選立候補を推す動きに対して、立候補を断り続けてきたようだ。それが終盤に立候補を決意したのは、東日本大震災と福島原発事故の悲惨さとそれに対する政府の政治的無力に対する強い決心があったと本人がマスコミの質問に答えている。
 保坂氏が、当選後の記者会見で、原子力発電所の全面的見直しを述べた。間髪を入れず、石原都知事は原発を廃止すれば、日本は立ちゆかないとする打ち消しに躍起となった公的発言をおこなった。
 石原氏のような原発推進派は、このような関東のための電力供給が、「東北電力」管轄下の地域でいわば国内植民地主義的な尊大さとごう慢さを背景としてなされ続けて、そのために東北地域が壊滅的な被害を受けたことを、少しも痛みとして感じていない。
 もっとも石原都知事のように、東京湾埋め立て地に原発を立てるべきだ、などと表明する背景には、なにがあるのか。原発被害を全くわかっていないか、わかっていても、自分たち特権層はいざとなればなんとでも被害を免れるとたかをくくっているのか。
 つい最近、菅総理は、東海沖大地震が起きたならその危険性が日本国内で最も憂慮されている静岡県御前崎市にある浜岡原発の停止を表明した。政治的対応と明確な指導者としての方針が見えなかった菅総理としては、世論の声を配慮してか、珍しくも重要な決断であった。
 それでも、政治家や官僚、大企業の大勢は、原発を続けようという本音が見え隠れする。
 表面に表れたオピニオンリーダーたちのその中心が東京都知事石原慎太郎氏である。石原慎太郎氏を政治的シンボルとするこの国の圧倒的権力をにぎる人たちにとって、原発事故による民衆の悲しみや苦しみは、想像力の範囲外とされている。社民党国会議員だった保坂氏の原発政策の抜本的見直しをかかげたことに都民は敏感に対応して、ついに自民党と民主党が分裂してそれぞれ乱立したなかで、保坂氏の政治的スタンスに共鳴してとうとう当選まで押し出した。
 このような情勢下で、日本共産党の支持を母体とする吉田万三氏は、自ら足立区長選に立候補を表明した。しかも、特筆すべきは、吉田氏は、原子力発電所によるエネルギーを脱して、脱原発の方針を掲げるに至った。しかもこのことは、吉田氏を支援する日本共産党自身が、今までの原子力発電所の平和的利用という従来の原発政策から脱原発のエネルギー政策へと転換しつつあることである。
 現在足立区長選は、現職の有利が伝えられている。そのために、市民運動の中でも、消極的な姿勢がうかがわれる。けれど、もし足立区長に吉田氏が当選して、同じ脱原発をかかげる保坂展人世田谷区長とともに、連帯して原発推進派の都知事石原慎太郎氏の民衆の安全と幸福を保障しえない都政運営の方針に対峙していくなら、その影響ははかりしれないものがある。
 行政トップの菅総理でさえ、浜岡原発停止をうちだした現在、首都東京で連携して原子力政策への異議申し立てが行われるならば、その効果ははかりしれない。都内で原発反対のデモに一万五千人の若者たちが集合した。ほとんどの体制派マスコミは無視に近い黙殺で記事にしなかった。もし都内で特別区の区長が連帯して脱原発をかかげるならば、自然発生的にインターネットの記事を見て集結した若者たちはじめ草の根の都民の世論は、都知事選での二百万票を越える圧倒的な勝利をおさめた後に、反石原都知事の世田谷区長が当選誕生したように、大きな世論の転回へと連動していくことだろう。
 いまこそ、住民運動や市民運動の団体や心ある個人が、脱原発方針の旗を掲げ闘おうとする吉田万三氏の足立区長選への挑戦にエールを贈りたい。

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