分家の従軍慰安婦発言が批判され、歴史修正主義の本家本元がお咎めなし?

分家の従軍慰安婦発言が批判され、歴史修正主義の本家本元がお咎めなし?

2013年6月5日

自由民主党幹事長・衆議院議員 石破茂様

 従軍慰安婦をめぐる橋下発言によって、来る参院選においては「日本維新の会」が不利となり「自由民主党」が有利になったという見かたがあります。現に渡辺「みんなの党」代表までが「独り勝ちした後の自民党の先祖返り」を懸念しているようです。
 いい気分でしょうか? これで参院選はとったとお思いでしょうか? もし本気でそう思っておられるのだとしたら、おめでたい。

(橋下発言について)「日本の過去の歴史に関し、不適切な発言を繰り返し、周辺諸国に誤解と不信を招いた」「安倍政権は、そのような発言や歴史認識にくみするものではない」(小野寺五典防衛相、時事通信 6月1日)

 貴党の橋下発言批判は「目くそ鼻くそを嗤う」のたぐいで、橋下発言の本家本元は安倍自民党なのだと炯眼の士はとうに見抜いています。炯眼の士でなくても、それくらいのことはだれにもわかります。

 根も葉もないことだと、もし仰るのでしたら、残念ながら、政党としての見識に欠けると言わざると得ない。いえ、黒を白と言いくるめる詐術にすぎないでしょう。

 貴党が橋下発言を批判するのは、諸外国、とりわけアメリカ合衆国からこの発言に対する批難が相次ぎ、わが身に火の粉が降りかかってきそうになると判断するからではありませんか。

 安倍首相は2007年、米国議会下院で慰安婦問題に関して日本政府に謝罪を求める決議案が準備されていることを受け、国内向けに「米決議があったから、我々が謝罪するということはない」(下記辻元清美衆議院議員2007年3月8日質問主意書)と語り、ブッシュ前米大統領と4月に会談した際、慰安婦問題について「ブッシュ大統領が『首相から釈明があった』と発言した」との辻元清美衆院議員の指摘を否定しておきながら、「元慰安婦の方々に、首相として心から同情し、申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と同前米大統領に発言したとの答弁書を決定しました(毎日新聞 5月18日)。

 ところが、米国大統領に釈明した安倍首相は2012年、多数の自民党国会議員などとともに、従軍慰安婦制度の強制性を否定する意見広告を米紙に出したのです。

日本軍「慰安婦」 強制を否定/安倍首相が賛同/米紙に意見広告 4閣僚も/国内外の批判は必至/昨年11月
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-06/2013010601_01_0.html
 
 2007にも既に同じ意見広告がやはり多数の貴党国会議員などによって米紙に出されています。

村野瀬玲奈の秘書課広報室 |2007年6月14日 ワシントンポスト紙 従軍慰安婦(性奴隷)強制文書否定広告署名国会議員(衆議院、参議院、五十音順) (2007年6月15日作成) 和文表記
http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-266.html
 
 その後も安倍首相らは従軍慰安婦制度の強制性を認めた河野談話を見直す考えを示し、米国による批判を受けて同談話をしぶしぶ継承すると決定したのです。橋下氏が風俗店の活用発言を米国に謝罪したのも、こうした安倍首相らの精神性をそっくりなぞるものです。

 このように安倍首相らは米国向けには本音を否定して、またさらけ出すということを繰り返してきました。

 言いかえれば、貴党は、このところ「国民感情」が貴党のもともと望んでいた方向へ動きだしていることに気をよくして、かなり「思い切った」政治的発言をもって「国民感情」のいっそうの誘導をこころみてきたのではないでしょうか。橋下・石原といったひとたちの言説をも巧みにとりこみ利用してきたのではなかったでしょうか。

 そこでハプニングがおこった。おなじスタートラインに並んだ仲間からフライングする走者が出たのですね。老獪さを欠いた青二才が、血気にはやって、本来なら小出しにすべきことがらを一挙に出してしまった。正直すぎたってわけです。

 橋下発言とは、貴党の総裁である安倍晋三氏が慰安婦問題に関してくりかえし発言してきた認識に誘発されて出て来たものです。日本が国家として女性を脅迫・拉致して性奴隷にしたと諸外国から非難されるような不名誉をこうむった原因は河野談話にあるのだから、これは見なおさなければいけないなどといった発言は、安倍晋三氏の物言いを真似たというより、鸚鵡返しにくりかえしたにすぎないのではなかったか。

 実際、辻元清美衆議院議員が指摘しているように、安倍首相は第1次内閣で2007年に「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とする答弁書を「初めて」閣議決定した、「閣議決定を多くの人たちは知らない。河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある」と虚偽を述べ、この虚偽を橋下氏が借用したのです(ほぼ同じ内容の閣議決定は1997年に橋本内閣が行っている)。

橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言の背景となった安倍首相の「閣議決定」に関する発言について
http://www.kiyomi.gr.jp/blogs/2013/05/23-933.html

 要するに橋下発言は自由民主党の本音を増幅吹聴してまわったにすぎません。橋下氏は貴党の拡声器だった。貴党が歴史修正主義の本家本元であり、そこを出自とする「従軍慰安婦は自ら身体を売って稼いでいた」の石原慎太郎氏、「従軍慰安婦は戦地売春婦」の平沼赳夫氏、「化けの皮がはがれた」中山成彬氏を擁する日本維新の会は、貴党の分家に他ならないのです。

 こういった解釈に、もしご不満であるのなら、貴党は、たんに橋下発言を批判するポーズをとり国民を欺くことによって、自党の支持率上昇を計ろうなどといったさもしい根性は棄てて、歴史修正主義の本家本元の店じまいを明瞭に宣言すべきではないでしょうか。

 具体的には、「軍や官憲によるいわゆる強制連行」に関して国会議員から出されている質問主意書に改めて誠実に答えるとともに(2007年の質問から6年が経過した2013年の同じ内容の質問を調査していないのは、極めて不誠実)、上記意見広告に賛同した貴党議員を除名することではないでしょうか。

安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する再質問主意書(「旧オランダ領東インドにおけるオランダ人女性に対する強制売春」資料、2007年4月10日、辻元清美衆議院議員)(ほぼ同じ内容の2013年の質問: http://goo.gl/kKwE0
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166168.htm

バタビア臨時軍法会議の証拠資料と安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問主意書(2007年5月28日、辻元清美衆議院議員)(ほぼ同じ内容の2013年の質問: http://goo.gl/kKwE0
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166266.htm

陸軍中尉による強制的な慰安婦の徴用(2013年4月23日、紙智子参議院議員の質問主意書)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/364811549.html

「海軍航空基地第二設営班資料」と慰安所開設における中曽根元総理の「取計」に関する質問主意書(2013年5月16日、辻元清美衆議院議員)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a183081.htm
安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問主意書(中曽根康弘元首相による慰安所の設立・運営、2007年3月8日、辻元清美衆議院議員)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166110.htm
「海軍航空基地第二設営班資料」原資料
http://fujihara.cocolog-nifty.com/tanoshi/2011/10/post-191b.html
http://fujihara.cocolog-nifty.com/tanoshi/2011/10/post-4383.html

「平和への結集」をめざす市民の風
http://kaze.fm/

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