那覇市長選へ向けた「4党合意」を歓迎します

7月 28th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 13:21:12
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 沖縄の野党4党が、来る那覇市長選挙で平和共同候補を擁立するという合意に至りました。
 これを受けて、平和への結集・市民の風は、沖縄以外、国政選挙でも同様の合意に向けて協議していただくよう、民主党、日本共産党、社会民主党、国民新党、日本新党および新党大地に下記の要望書を郵送しました。
 9月13日には、東京で支援集会を他の団体とともに開きます。集会の詳細とカンパの呼びかけは下記をご覧ください。

那覇市長選挙、平良長政氏支援を訴えます!
http://pepop.jp/modules/piCal/index.php?smode=Monthly&action=View&event_id=0000004969&caldate=2008-9-13
 
 

那覇市長選へ向けた「4党合意」を歓迎します

●●御中

 今年の11月に行われる沖縄県の那覇市長選挙で、共産党、社民党、沖縄大衆党、民主党の野党4党が元県議の平良長政氏を野党統一候補として擁立すると合意したことを心より歓迎いたします。

 4党と平良氏は、「那覇市長選挙に臨む政治姿勢と基本政策」に合意しました。「政治姿勢」は、4党共闘の堅持、沖縄に過重な基地負担を強いる日米安保体制をあらためる、那覇市へのカジノ導入反対、当選後の市政運営は特定政党に偏らず4党で協議してすすめること、などです。「基本政策」は、憲法9条の擁護、普天間基地の即時閉鎖・撤去、名護市辺野古・東村高江への新基地建設反対、後期高齢者医療制度の廃止、教科書検定意見の撤回・記述の回復など。

 上記の政策はどれも沖縄県民にとって納得のいくものばかりといえます。同時に、「本土」の有権者にとっても切実な政治要求です。憲法9条は新聞の世論調査でも変えないほうがよいとする意見が6割を超えます。沖縄に限らず、特定の自治体に「過重な基地負担を強いる日米安保体制」にも辟易しています。世論は「4党合意」を支持しているのです。

 このような合意を沖縄以外、国政選挙でも交わすよう、協議していただけないでしょうか。

 民主党の鳩山由紀夫幹事長は本年2月11日付けの読売新聞で、「早く米軍基地が、日本の領土の中に存在しないような環境ができるような準備を何年かけても行うべきでないか。もっと日本と米国とが対等な関係でなければならない」との見解を表明されています。何年もかけてといわず、次の総選挙へ向けて、野党各党と市民の間で協議を今すぐに開始するべきではないでしょうか。

 早ければ2年後の2010年には改憲発議が可能となります。来る総選挙で当選した議員が発議するかもしれないということです。したがって、各党は次期総選挙で憲法に関する考え方を示す責任があると考えます。野党には当然、憲法、特に9条に関する世論を反映した合意をしていただきたいと思います。

 小選挙区制の下では、野党が票数の上で勝ったとしても、議席数で与党に負けることがあります。民意を歪めるこのような選挙結果を防ぐためにも、候補者を一本化する必要があるのです。「4党合意」を手本にした合意が総選挙でも可能なはずです。総選挙へ向け「平和共同候補」の擁立で合意されることを、貴党にお願いいたします。

2008年7月28日

「平和への結集」をめざす市民の風

事務局長 竹村英明

借金・多重債務の解決方法

7月 22nd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 17:13:51
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2008年7月19日に千葉県柏市内の私立高校で行われた弁護士・宇都宮健児氏講演会の要旨(ビデオあり)です。印刷用ファイルを用意していますので、皆さんの周りに借金・多重債務で困っている人がいたら、印刷して配って教えてあげてください。

太田光征
http://otasa.net/

[以下、講演要旨]

 宇都宮氏は、サラ金・クレジットによる借金・多重債務の問題に30年近く取り組んできた。多重債務問題の背景には貧困があり、反貧困ネットワークを立ち上げ、運動している。「ネットカフェ難民」やホームレスなどには、多重債務者が多い。多重債務者の定義は、複数から借り入れ、自分の収入で返済できない人のこと。

反貧困ネットワーク

 社会保障の不備をサラ金などが突いてきた。人口7万人の奄美大島でも主だったサラ金が進出しており、多重債務が問題になっている。

 サラ金業界は2000年に政治団体を結成し、自民や民主の主だった政治家に献金し、出資法の貸し出し上限金利を引き上げるよう、圧力を掛け始めた。

 米系サラ金2社(ゼネラル・エレクトリック・グループに買収後のほのぼのレイク、ユニマットなどの店舗名で営業しているCFJ)や、日本のサラ金株に投資している米投資ファンドも、上限金利を引き下げないよう、米政府を通じ圧力を掛けた。

 米政府による対日要求課題を書き連ねた、規制改革に関する年次改革要望書は、郵政民営化で有名になったが、2005年段階で、「グレーゾーン金利」※の有効化も盛り込まれていた。

 ※(「みなし弁済」の例外に基づく)グレーゾーン金利:旧出資法の上限金利年29.2%と、利息制限法の制限金利(元本10万円未満は年20%、元本10万〜100万円未満は年18%、元本100万円以上は年15%)の間の金利をいう。この超過分としてのグレーゾーン金利は、「無効」だが、刑事罰・行政処分がなかった。最高裁は、利息制限法を原則とし、グレーゾーン金利を無効とする判決を出していた。

 宇都宮氏らは、消費者団体や労働運動団体にも協力を呼びかけ、金利引下げの運動を広げた。金利引下げを求める340万の署名を国会に届け、47都道府県中、43の議会で、金利引下げ決議を勝ち取り、1830ある市町村議会のうち、1136議会からも同様の決議を引き出した。

 こうして、宇都宮氏も生きている間の実現を予想していなかった、金利規制と貸金業規制を大幅に強化する画期的な新貸金業法が、2006年12月13日、成立した。公布から3年を目途(政府答弁)とする第4段階までの施行で、出資法の上限金利を年29.2%から(利息制限法の)年20%に引き下げ(違反すれば行政処分)、年収の3分の1以上を貸さない「総量規制」などが実施される。

 サラ金利用者は1400万人(8〜9人に1人)で、多重債務者は200万人以上いる。弁護士会などの相談窓口にアクセスできているのは約40万人しかいない。

 全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会が、青木ヶ原樹海に「借金の解決は必ず出来ます!」という連絡先付きの看板を昨年立てたところ、3000件以上の相談電話がかかり、自殺志願者29人以上を救うことができた(2008年2月段階)。

 2005、2006年度、貯蓄ゼロ世帯は22〜23%。1998年から、自殺者は年間3万人を超え、そのうち、経済・生活苦が原因の自殺者は約4人に1人の割合(警察庁)。病気治療代を捻出するなどのために、サラ金から借りることになる。

 サラ金業者は、債務者が夜逃げしても、10年間は住民票の異動をチェックしている(元武富士社員の証言)。

 最近、公営住宅の家賃、授業料、給食料を払えるのに払わない、ということが言われているが、多重債務者の場合、払えない。厳しい取立てをするサラ金の支払いを優先してしまう。命を守る公務員、先生が滞納金の催促でサラ金化・ヤミ金化していいのか。

 多重債務を解決することで、滞納問題が解決した事例が実際にある。今、秋田県の多重債務対策協議会の事務局長を務めている方自身が、過去に多重債務者で、県営住宅家賃の滞納対策で、先に多重債務問題に取り組んだところ、成功している。昨年から今年、一番自殺者が減ったのは、秋田県である。

 弁護士法違反である「整理屋」が、NPO法人の資格を取って、悪徳弁護士と提携し、多重債務者を食い物にしている例がある。2000年に、弁護士の広告が自由化され、整理屋が電車内などで広告を出している。首都圏を中心にこうした悪徳弁護士が100人以上いる。弁護士会が斡旋する相談員は安全だ。

 弁護士広告といっても、債務整理の広告ばかり。弁護士広告の自由化は、日本政府の規制改革会議のほか、米国からの圧力によるもので、日本の弁護士内部からの要求はなかった。

 テレビでサラ金のCMが開始されるようになると、取り立ての酷さなど、サラ金問題が報道されなくなった。利息制限法を超える利息は違法であるから、払いたい人だけ払うように、というCMに変えるべきだ、とテレビ局に要求したが、受け入れてもらえない。テレビ局も共犯である。警察にヤミ金の相談に行くとよく言われるセリフ「借りたものは払うべきだ」は間違い。
 
 
熊本の被害者団体相談員とアイフル社員の会話
http://jp.youtube.com/watch?v=N6YkQum6rLM


 
 
 多重債務者の名簿が名簿業者を通じてヤミ金などに流れる。事件化された名簿売買では、大手サラ金の顧客情報を取り扱ったとする供述も得られている。ヤミ金の店長・従業員そのものは暴力団員ではなく、失職者などの就職弱者がリクルートされ、「巻き舌」などの訓練を受けた者達。彼らを統括しているのが暴力団。足を洗おうとすると、暴力団からリンチを受ける。
 
 
ヤミ金の取立て
http://jp.youtube.com/watch?v=RXFruPr9iuQ


 
 
 債権者が法人の場合、借金の時効は5年。滞納すると、一括請求される。この滞納開始の時点から起算し、完全滞納の5年をもって時効が成立する。裁判では出廷し、時効を主張しないと、債権者の言いなり判決になる。

 借金も財産と同時に相続されるが、相続放棄を家庭裁判所に申請すれば、借金を相続しなくて済む。

 2000年に独仏の調査を行ったが、サラ金・ヤミ金がない。銀行が消費者金融を引き受けている。日本以上にセーフティネットが発達している。独では、社会保障の広報義務がある。日本では、ホームレスは「住民票がないから生活保護を受けられない」とはねつけられるが、そんな規定はなく、弁護士・司法書士が同行して申請すると、通る。ヨーロッパの路上生活者は生活保護を受けている。

低所得者に対する低利融資の制度

(1) 社会福祉協議会による生活福祉金の貸付(年利約3%)
(2) 母子家庭貸付金制度

借金・多重債務の具体的解決方法

1 取立ての停止 

弁護士などが「介入通知」(受任通知)を債権者に出すと、取立てを止めることができる。

2 債務整理の方法

(1) 任意整理

 弁護士に依頼する。利息制限法を超える利息は払う必要がないので(元本に充当される)、元本を超えた過払い金は返還請求できる。ヤミ金は完全に違法なので、元本も返還義務がないし、支払った分は返還請求できる。債権者との交渉が決裂すると、裁判になるが、過払い金に年利5%をつけて返還することができる。

(2) 特定調停

 任意整理と同じことを簡易裁判所を通じて行う。

(3) 自己破産

 地方裁判所に自己破産の申し立てをし、免責許可決定を受ければ、債務を免除される。

(4) 個人再生手続き

 地方裁判所に個人再生手続きの申し立てをし、認可された再生計画案どおり弁済すれば、元本の一部が免除される。

借金・多重債務の全国相談窓口

(1) 日本弁護士連合会 tel 03-3580-9841
(2) 法テラス(日本司法支援センター、弁護士費用の立替・事後払い可能) tel 0570-078374
(3) 日本司法書士連合会 tel 03-3359-4171
(4) 全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会 tel 03-3255-2400

小選挙区比例代表併用制の問題点

7月 2nd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 16:08:53
under 選挙制度 [1285] Comments 

 ドイツ下院の小選挙区比例代表<併用>制は、小選挙区制に反対する人の中でもかなり人気があります。確かに日本の現行制度である小選挙区比例代表<並立>制に比べれば、はるかに民意を反映できる選挙制度といえます。

 しかし、ドイツの小選挙区比例代表併用制でも、無所属候補に不利な比例代表制の性格はそのままであるし、いわゆる「超過議席」(下で説明)を認めるために、小選挙区制の弊害を排除しきれていません。

 下記文献を参考に、ドイツ型の小選挙区比例代表併用制の問題点を指摘しておきます。(印刷用ファイル

共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」賛同募集中
 
 
改訂:2009年11月22日

[参考文献]
渡辺洋三・森英樹・広渡清吾『政治改革への提言』(岩波ブックレットNO.291、1993年)
[関連記事]
小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215
中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
 
 
【目次】
 
 
(1) ドイツの小選挙区比例代表併用制とは?
(2) ドイツ型の小選挙区比例代表併用制は政党の優先枠を設定する(無所属候補に不利)
(3) ドイツでは個人を選びうる制度として小選挙区制を併用した
(4) 超過議席を認めるドイツ型の小選挙区比例代表併用制では小選挙区制の弊害を排除できない
(5) ドイツ型の小選挙区比例代表併用制でも小選挙区では大政党への投票を誘導する
 
 

(1) ドイツの小選挙区比例代表併用制とは?

 ドイツ下院の小選挙区比例代表併用制は、大雑把にいえば、小選挙区制が組み込まれた比例代表制といえる。(仮)総定数は598で、その半数の299が小選挙区に割り当てられている。下図参照。

 有権者は1人2票をもち、1票(第1投票)を小選挙区で候補者に、もう1票(第2投票)を政党が用意する候補者名簿に投ずる。政党名簿投票に基づき、(仮)総定数の598議席が比例配分されるが、小選挙区での当選者に優先配分される。小選挙区に割り当てられた議席が比例配分の対象にならない衆院の小選挙区比例代表<並立>制とは、この点が大きく異なる。小選挙区選挙での当選は、政党名簿投票の結果に関係なく、確定する。

 例えば、A党の比例配分による議席割り当て数が30議席であるとする。小選挙区での当選者数が15人であれば、この15が30に繰り入れられ、A党の最終的な獲得議席数は30となる。この場合、政党名簿からの当選者は15人。一方、小選挙区での当選者数が35人であれば、最終的な獲得議席数は35となる。この場合、政党名簿からの当選者数はゼロ。

 後者の例のように、小選挙区での当選者数が比例配分された議席割り当て数より大きい場合でも、その差が「超過議席」として認められる。だからドイツ型の小選挙区比例代表併用制は、厳密な比例代表制とはいえない。

 

3つの選挙制度における選挙区と定数の関係

 

(2) ドイツ型の小選挙区比例代表併用制は政党の優先枠を設定する
(無所属候補に不利)

 一般に比例代表制で無所属候補が当選することは難しい。ドイツ型の小選挙区比例代表併用制では、総定数から小選挙区の定数を差し引いた議席数が、ほぼ政党の独占枠になっている。この特性は、日本の小選挙区比例代表並立制と変わらない。無所属候補に不利な制度といえる。

 

(3) ドイツでは個人を選びうる制度として小選挙区制を併用した

 小選挙区比例代表併用制の問題点というわけではないが、小選挙区制の特性を知る上で重要だと思うので、ドイツでの事例を紹介しておきたい。

 日本では、小選挙区制の特性を政策本位・政党中心の選挙戦をもたらすものとされたが、ドイツでは、比例代表制では人物本位に選べないという批判に応えて、「個人を選びうる比例代表制」として、比例代表制に小選挙区制が併用されたという経緯がある。

 CDU/CSUの小選挙区候補は、地域利害の代表を最も重視し、党の基本政策と異なる政策を掲げることも稀ではない。候補者の決定も、党中央の関与は小さいという(自由法曹団統一ドイツ選挙調査団『選挙制度と民主主義―統一ドイツ選挙調査報告』、1991年)。

 

(4) 超過議席を認めるドイツ型の小選挙区比例代表併用制では
小選挙区制の弊害を排除できない

 超過議席の発生例としては、2009総選挙でCDU/CSUが24の超過議席を獲得した選挙が挙げられる。CDU/CSUは得票率が33.8%(前回比1.4%減)であるにもかかわらず、239議席(13増)を獲得し、議席獲得率は38.4%だった。

[参照]
ドイツの「政権交代」 —— 二大政党の退潮 2009年10月5日(水島朝穂、今週の「直言」)
http://www.asaho.com/jpn/bkno/2009/1005.html

 しかし超過議席数がその程度に収まるとは限らない。極端な例を考えてみる。3つの政党のみが候補者を立て、小選挙区すべてと政党名簿投票で、各党の得票率がほぼ同じ約3分の1とする。

 各党の比例配分による議席割り当て数は(仮)総定数598の約3分の1だから、約199となる。政党Aが、他党よりも得票率がわずかに優勢で、小選挙区の299議席すべてを独占したとする。この場合、(A党による)超過議席は約100にも上る。

 このように、小選挙区比例代表併用制であっても、超過議席を認めれば、得票率と議席獲得率の乖離を許すことになる。

 

(5) ドイツ型の小選挙区比例代表併用制でも
小選挙区では大政党への投票を誘導する

 政党名簿投票で大政党のCDU/CSU、SPDに投票した有権者の95%までは、小選挙区でも同じ政党の候補者に投票する。ところが、政党名簿投票でFDPや緑の党に投票した有権者の40〜50%は、小選挙区で大政党の候補者に投票するという統計結果が出ている。

 超過議席を認める制度ゆえの投票行動なのかどうかは分からないが、ドイツ型の小選挙区比例代表併用制でも、小選挙区では大政党に有利になっている。

 
 
太田光征
http://otasa.net/