中選挙区比例代表併用制を提案する

 

[本案は、中選挙区制と比例代表制の単なる折衷案ではなく、ドイツ型の小選挙区比例代表<併用>制や日本の小選挙区比例代表<並立>制における小選挙区を中選挙区に置き換えた制度とも異なります。一言でいえば、無所属候補に配慮した比例代表制です。印刷用ファイル](2008年7月6日追記)

共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」賛同募集中

 日本は小選挙区制の下で保守二大政党制が完成されつつあります。二大政党制の落とし穴は、アメリカ、特に大統領選の民主党候補予定者が、象徴的に表しているのではないでしょうか。

 核兵器廃絶を公約に掲げるバラク・オバマ氏ですが、原発企業から献金を受けています。ヒラリー・クリントン氏も、マイケル・ムーア監督作品『シッコ』で批判された民間医療保険会社から献金を受けているのです。民主・共和のどちらに転んでも財界党。二大政党制は献金攻勢などで財界政治を保障するのに都合のよい仕組みといえます。

 海外では、全候補者に順番をつけて投票する選挙制度も見られます。日本と比べればオタク的とも思えるほど民意の反映に腐心しているのです。民主主義の土台としては当然でしょう。

 民意を切り捨てながら二大政党制に誘導する小選挙区制は廃止しなければなりません。中選挙区比例代表併用制が、選挙制度改革論議のたたき台になればと思います。
 
 

【関連投稿】
小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215
小選挙区比例代表併用制の問題点
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大選挙区制(中選挙区制)の問題点 〜連記投票制の落とし穴〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=232
比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション
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トラックバックの送信などをすると、記事の後半部分が切れて保存されてしまうことがあるので、【解説】以降をこちらに転載しておきます。

 
【目次】
 
 
要点
具体例
制度
(1) 中選挙区比例代表併用制
(2) 無所属候補の当選決定方法と一票の格差を防止するための措置
(3) 比例区選挙における議席配分数の決定方法
(4) 政党内当選順位の決定方法
(5) 候補者数が議席配分数に満たない政党の扱い
(6) 無所属候補に対する余剰票の処理
解説
(1) 二種類の一票の格差を解消する
(2) なぜ中選挙区制と比例代表制の<並立>制ではなく<併用>制か
(3) 中選挙区選挙の位置づけ
(4) 選挙区定数と総定数は開票後に確定する――無所属候補に関する格差を防止するための措置
(5) 比例区選挙の方法
(6) 比例区選挙における政党内当選順位の決定方法
(7) 政党・無所属別の格差
(8) 無所属候補を政党と見なすだけの比例代表制は比例代表制とはいえない――無所属候補に対する余剰票の処理

 
 

3つの選挙制度の主な違い

3つの選挙制度の主な違い
  小選挙区比例代表
併用制(ドイツ)
小選挙区比例代表
並立制(日本)
中選挙区比例代表
併用制
総定数 比例区定数に同じ。 選挙区定数と比例区定数の合計。 中選挙区に割り振られた数の合計。
定数関係 比例区定数の中に小選挙区定数の全部または一部が組み込まれている。 選挙区定数と比例区定数が分離している。 従来の意味での定数は存在しない。
総定数から中選挙区における無所属の総当選者数を差し引いた数が、比例区での議席割り当て数にな
る。
公平性 比例区定数は小選挙区定数を上回っており、比例区は政党の優先枠的性格。 比例区は政党の完全な独占枠。 同じ総定数を政党と無所属が争うので、無所属が全議席を独占することも可能。
死票の多寡 超過議席を認めるため、完全な比例代表制ではなく、大政党に有利。無所属の死票が生じやすい。 政党、無所属を問わず死票が多い。 政党については完全な比例代表制。無所属の死票は抑制的。

 

【要点】
 
 
1. 総定数をすべて無所属候補でも当選可能な中選挙区に割り振る。
2. すべての候補者は選挙区と全国比例区の両方から立候補する。比例区名簿は非拘束式。
3. 有権者は一人二票を持ち、一票を選挙区候補者に、もう一票を比例区候補者に投票する。
4. 無所属候補は主に選挙区で選出し、政党候補は比例区で選出する。
5. 総定数から無所属の総当選者数を差し引いた数の議席を政党に割り当てる。
6. 政党と無所属に議席配分をめぐる公平な土俵を設定。
7. 選挙区で無所属に投じた票が死票の場合、比例区での投票先がその死票の委譲先になる。
8. 比例区の投票では第二希望も記入し、死票を縮減。
 

【具体例】
 
 
 全国を仮定数5の選挙区に区割りした場合を説明します。その内のある選挙区で、投票の結果、1位から4位までを政党候補が占め、5位に無所属候補がついたとします。

 この段階で、無所属候補の当選は確定ですが、1位から4位までの政党候補については、当選はまだ確定しません。ただし、政党全体に割り当てられる比例区議席数の内、4が確定します。

 総定数から無所属候補の総当選者数を差し引いた数の議席を政党に割り当てるのです。政党候補にとっての選挙区選挙は、政党全体に対する議席割り当て数を獲得する戦いという意義を持ちます。

 そもそも、政党候補と無所属候補が公平に議席を争う設定が必要です。現行の小選挙区比例代表<並立>制では、政党候補にとって、比例区定数分は、無所属候補と戦わずして割り当てが確保されています。これは非常に不公平な制度です。この不公平さは、ドイツ下院の小選挙区比例代表<併用>制でも排除しきれていません。

 各政党に対する議席割り当て数は、比例区選挙の得票数に応じた比例配分で決定します。各政党内における当選順位の決定は、各候補者の比例区得票実績に基づきます。要するに、現在の参院と同じ制度です。ただし、比例区の大きさについては、ブロック制も考えられるし、政党内における当選順位の決定についても、中選挙区選挙の得票実績(惜敗率など)などに基づく方法もあり得ます。
 
 
【制度】
 

(1) 中選挙区比例代表併用制

 仮総定数はすべて有権者数に比例した仮定数を持つ選挙区に配分する。選挙区の仮定数は5以上を目安とし、なるべく揃える。本定数は(2)の措置に基づき、開票後に確定する。選挙区の定数は、実際上、無所属の当選上限枠を意味する。

 無所属候補を含むすべての候補者は選挙区と全国比例区の両方から立候補する。有権者は一人二票を持ち、一票を選挙区候補者に、もう一票を比例区候補者に投票する。比例区名簿は非拘束式とする。

 比例区の投票では、第一希望の他に、第二希望の候補者名も記入することができる。第二希望の候補者は、第一希望の候補者と同じ政党に所属する候補者であってはならない。第一希望の無所属候補または政党が議席を獲得できなかった場合、その死票を第二希望の候補者に委譲する。

 政党候補は、比例区選挙で選出する。無所属候補は、選挙区または比例区選挙で選出する。

(2) 無所属候補の当選決定方法と一票の格差を防止するための措置

 無所属候補は、選挙区または比例区のいずれかでの当選をもって当選とする。選挙区と比例区の両方で当選した場合は、選挙区での当選を優先する。無所属に関する選挙区別の一票の格差を防止するため、以下の措置を取る。

 投票者数当たりの仮定数が一番多い選挙区を基準に、仮定数の少ない選挙区の定数を、投票者数に比例して増やす。この措置の結果、各選挙区の本定数を決定する。これにともない総定数を確定させる。

(3) 比例区選挙における議席配分数の決定方法

 全政党に対する議席割り当て数は、総定数から無所属候補の総当選者数を差し引いた数とする。各政党または無所属候補に対しては、その比例区得票数を基に、ヘア・ニーマイヤー式などで議席数を配分する。

(4) 政党内当選順位の決定方法

 政党候補は、その比例区得票数の多い順に当選させる。

(5) 候補者数が議席配分数に満たない政党の扱い

 政党所属の候補者数が、当該政党に配分された議席数に満たない場合、無所属候補と同様の扱いとし、当該候補者のみを当選させる。当該候補者数を無所属候補の総当選者数に繰り入れた上で、議席配分を再度実施する。

(6) 無所属候補に対する余剰票の処理

 当選した無所属候補が選挙区選挙または比例区第1希望投票で獲得した票数のうちいずれか大きい票数が、比例区当選者1人分の当選に要する当選基数分の票数を上回る場合、以下の措置を取る。

 有効な比例区第2希望投票数が、「『選挙区選挙または比例区第1希望投票で獲得した票数のうちいずれか大きい票数』から当選基数を減じた票数」よりも小さい場合、第2希望投票を第2希望投票先政党へそのまま移譲する。

 有効な比例区第2希望投票数が、「『選挙区選挙または比例区第1希望投票で獲得した票数のうちいずれか大きい票数』から当選基数を減じた票数」よりも大きい場合、後者の票数を比例区第2希望投票に基づいて第2希望投票先の政党に比例配分する。

 
 
【解説】
 

トラックバックの送信などをすると、記事の後半部分が切れて保存されてしまうことがあるので、【解説】以降をこちらに転載しておきます。【解説】は(8)まであります。


(1) 二種類の一票の格差を解消する

 区割り選挙を独立して行う結果生じる一票の格差には、二種類あります。一つは、選挙区ごとに定数当たりの有権者数あるいは投票者数が異なることで生じる格差です。選挙区別の有権者間格差といえます。一票の格差という場合、どういうわけか、普通はこちらのみを指します。具体例についてはこちらを参照してください。

  一票の格差は比例代表制で解消するしかない
  http://kaze.fm/wordpress/?p=142

 もう一つは、政党の得票率と議席獲得率に乖離が生じる格差です。野党が票数の上では与党に勝っても、議席数で負けるなどの事態が発生します。政党別の有権者間格差と呼べます。

 政党所属の国会議員が国会の採決でどう振る舞うかは、選挙時の得票数の多寡ではなく、党が決めた方針に大きく左右されます。国会政治がこうした政党政治である現実を考慮すれば、政党別の有権者間格差は非常に不合理といえます。

 これらの格差を生じさせない選挙制度が必要です。また、政党候補と無所属候補の間の格差についても、留意しなければなりません。


(2) なぜ中選挙区制と比例代表制の<並立>制ではなく<併用>制か

 区割り選挙を独立して行えば、二種類の一票の格差は避けられません。政党候補に限れば、これらの格差をなくす最も合理的な制度は、全国一区の比例代表制でしょう。しかし比例代表制を採用する場合は、政党と無所属の間の公平性を確保しなければなりません。

 比例代表制では、政党が複数の候補者を立てて一人を当選させるパターンが可能ですが、無所属にはそれができません。定数が大きすぎる選挙区選挙では逆に、一部の政党候補者に票の集中現象が起きることで、無所属に有利となる場合があり得ます。

 したがって、比例代表制とともに、適切な規模の区割り選挙を併用するのが合理的です。そこで、無所属でも当選可能な中選挙区に区割りして、総定数をすべて中選挙区に割り振り、すべての候補者に中選挙区制と比例代表制を適用します。こうして政党と無所属が同じ総定数をめぐって競う制度が、最も公平であるといえます。

 日本の現在の制度は選挙区比例代表<並立>制です。この制度は、総定数を二つに分けて、それぞれに選挙区制と比例代表制という異なる制度を適用しているにすぎません。これに対して、ドイツの下院などが採用している小選挙区比例代表<併用>制は、比例代表制の中に小選挙区制を組み込んだもので、小選挙区の候補者に対して、小選挙区制と比例代表制を同時に適用します。比例代表制で政党への議席配分数を決定し、小選挙区の当選者を優先的に当選させる制度です。

 中選挙区比例代表併用制は、ドイツの制度における小選挙区を中選挙区に置き換えただけの制度ではありません。選挙区と比例区の関係が逆転している点で、両制度は大きく異なります。

 中選挙区比例代表併用制では、総定数をすべて中選挙区に割り振り、政党候補と無所属候補が同じ総定数をめぐって争います。選挙区における無所属の当選者数に応じて、主に政党に対する比例区の議席割り当て数が変動します。そのため、選挙区にも比例区にも、従来の意味での定数は存在しません。選挙区の定数は、実際上、無所属の当選上限枠を意味します。

 これに対して、ドイツの制度では、比例区定数が総定数であり、比例区定数の中に小選挙区定数の全部または一部が組み込まれています。実際は比例区定数が598で、半数の299が小選挙区定数になっています。小選挙区の当選者が比例区での議席配分数を上回る場合は、「超過議席」として認められます。このため、総当選者数が総定数を上回ることがあります。

 比例区選挙は無所属に不利なので、ドイツの制度における比例区は、政党優先枠の性格が強いといえます。日本の並立制における比例区は、完全な政党独占枠になっています。ところが中選挙区比例代表併用制では、政党優先枠が存在しません。

 同併用制では、同じ総定数をめぐって政党候補と無所属候補が中選挙区で競い合います。したがって原理的には、無所属が全議席を独占することも可能です。政党と無所属に議席配分をめぐる公平な土俵を設定しているわけです。

 小選挙区制では、第二位以下がすべて切り捨てられるので、特に無所属については民意を反映する制度とはいえません。中選挙区以上にすることで、低順位の無所属も当選可能となります。

 全国一区の比例区を設けることで原則的な平等性を、総定数を中選挙区に割り振ることで実際的な公平性を担保するのが、中選挙区比例代表併用制といえます。


(3) 中選挙区選挙の位置づけ

 無所属候補は比例区での当選が困難なので、選挙区で当選しただけでも当選を確定させます。ただし、選挙区で無所属が落選しても、比例区で当選することが原理的にはあり得るので、無所属も比例区で立候補することにしています。政党候補も選挙区で無所属と戦いますが、選挙区における政党候補の得票実績は、候補者個人の当落に直接的には関係しません。

 全政党に対する議席割り当て数は、総定数から無所属の総当選者数を差し引いた数としています。無所属の総当選者数には、比例区での当選者数も原理的には含まれますが、わずかであると思われます。

 したがって、中選挙区比例代表併用制における選挙区選挙は、無所属の選出と、全政党への議席割り当て数を概略決定するための選挙と位置づけられます。

 無所属で当選後、政党に鞍がえするケースが頻出すれば、比例代表制ではなくなります。そのような鞍がえは認めないことが必要でしょう。


(4) 選挙区定数と総定数は開票後に確定する――無所属候補に関する格差を防止するための措置

 政党候補に関しては、比例代表制を採用することで二種類の格差が解消されます。しかし、中選挙区に区割りしているため、無所属候補については、選挙区別の有権者間格差が生じ得ます。そこで、選挙区の開票前の定数は、その選挙区の有権者数に比例した仮定数とし、本定数は開票後に確定させます。

 具体的には、投票者数当たりの仮定数が一番多い選挙区を基準に、仮定数の少ない選挙区の定数を、投票者数に比例して増やします。これに伴い、総定数が確定します。

 (2)で指摘したように、選挙区の定数は、実際上、無所属の当選上限枠を意味します。


(5) 比例区選挙の方法

 政党候補と無所属候補はすべて全国一区の比例区にも立候補します。政党の候補者名簿は非拘束式です。各政党または無所属候補への議席配分数は、各政党または無所属候補が比例区で獲得した票の合計を基に、ヘア・ニーマイヤー式などで決定します。政党内当選順位は、各候補の比例区得票数が多い順とします。地域代表の性格を強めたいのであれば、全国一区ではなく、ブロック制にするのがよいでしょう。


(6) 比例区選挙における政党内当選順位の決定方法

 選挙区の政党候補は、無所属候補と競う必要があり、選挙区選挙の運動を軽視できません。全国一区の比例区選挙のために、他選挙区での運動に比重を割けないという意味です。

 比例区得票数を政党内当選順位の決定に利用する場合、候補者にとって選挙区別の格差が生じ得ます。各候補の比例区得票数は、選挙区の投票者数に影響を受けると考えられ、投票者数は選挙区によって異なるからです。また、全国一区の比例区にだけ立候補できる政党候補を認めても、比例区得票数の点で、選挙区候補との間に不平等が生じる可能性があります。

 そこで、政党候補は選挙区のみから立候補し、選挙運動も選挙区内に限定すべきという考え方ができます。この場合、比例区選挙では政党名で投票し、政党内当選順位は、選挙区での得票実績に基づいて決定することになります。

 ところが、現在の並立制で全国一区の比例区から立候補する候補でも、実際は選挙運動地盤が限定されています。したがって、選挙区から立候補する政党候補に関しても、全国一区の比例区得票数を基準に政党内当選順位を決定することは、不合理とはいえないでしょう。この場合、有権者は全国の政党候補者の中から選択できるので、選択権が拡大するというメリットが生じます。

 以上の理由から、中選挙区比例代表併用制における政党内当選順位の決定は、比例区得票数に基づくことにしています。

 以下は、参考までに、政党候補の当選順位を選挙区の得票実績で決定する方法です。

 選挙区での得票実績としては、得票率が考えられます。しかし、候補者が乱立した場合など、第一位候補でも当選できないことが起こり得ます。また、例えば、A選挙区で第一位候補の得票率が40%、第二位候補の得票率が30%、B選挙区で第一位候補の得票率が50%、第二位候補の得票率が30%とします。同じ得票率30%でも、A選挙区の第二位候補は、第一位候補との差がB選挙区の場合より小さく、得票実績が高いと評価するのが妥当です。

 したがって、単純な得票率に基づく当選順位の決定は不適切と考えられます。政党候補の得票実績としては、第二位以下の候補の場合、第一位候補を基準にした得票数の比を採用するのが妥当でしょう。第一位候補については、第二位候補を基準にした比を用います。


(7) 政党・無所属別の格差

 政党候補については、政策的統一性が認められるため、比例代表制で各党に議席配分する方法が合理的です。政党候補に関する格差は、この方式で解消されます。しかし、政党候補に投票した有権者と無所属候補に投票した有権者の間でも、一票の格差が生じ得ます。無所属候補の死票が政党候補に比べて多い場合、何らかの手当てを考慮しなくてよいのか、という問題があるからです。

 無所属全体を仮想党派とみなして、議席数を政党と同様に比例配分することも形式的には考えられます。しかし、無所属については政策上の一致点でくくることが困難なため、合理性を欠きます。

 例えば、無所属を与党系と野党系に分けて考えます。与党系については、個々の得票実績は高いが総得票数は少なく、野党系については、個々の得票実績は低いが総得票数が多いとします。このような場合、比例配分することで、むしろ政策上の民意が損なわれる結果になるでしょう。

 このように、無所属全体を一つの党派とみなして比例代表制を適用することには、無理があります。そこで代替措置として、無所属に投じられた死票を、政策の近い政党に譲ることが考えられます。(逆に政党から票を減らすという発想もできます。)

 実際、有権者は同じ総定数の枠内で選挙区票と比例区票を持ち、かつ比例区で第二希望の投票もできることから、それが可能になっています。選挙区または比例区の第一希望で無所属に投じた票が死票になったとします。この場合、比例区での第一希望または第二希望の投票先が、死票の委譲先になり得ます。現在の並立制では、選挙区の定数と比例区の定数が分離しているため、比例区の投票に死票委譲の意味合いはありません。選挙区の死票は死票のままです。

 過去3回の参院選を振り返ってみます。2007年参院選では、実質的な民主・社民統一型の無所属候補が各地で当選しました。その結果、選挙区では、政党全体においても、無所属全体においても、それぞれ得票率と議席獲得率がほぼ一致しています。ところが、2001年、2004年参院選の場合、無所属は得票率よりも低い議席獲得率を記録しています。下記は得票数/基数でみた結果です。
 
 

2007年参院選(選挙区)――政党・無所属別一票の格差
  得票数 得票数/基数 * 当選者数
政党 54,252,460 66.73 66
無所属 5,095,168 6.26 7

2004年参院選(選挙区)――政党・無所属別一票の格差
  得票数 得票数/基数 * 当選者数
政党 50,412,346 65.5 68
無所属 5,696,505 7.4 5

2001年参院選(選挙区)――政党・無所属別一票の格差
  得票数 得票数/基数 * 当選者数
政党 48,679,572 65.3 70
無所属 5,658,911 7.6 3

* 基数:(政党全体と無所属全体の総得票数)/ 定数(73)
 
 
 現在の小選挙区主体から中選挙区に変更し、無所属がより多く当選できるようにすることで、無所属の得票率と議席獲得率の乖離は縮小すると予想されます。

 中選挙区比例代表併用制では、その基本的構成で、政党・無所属別の格差がかなり解消されるものと期待できます。


(8) 無所属候補を政党と見なすだけの比例代表制は比例代表制とはいえない――無所属候補に対する余剰票の処理

 (7)では無所属候補に対する死票を考えましたが、逆のケースも問題になります。例えば、野党系の無所属候補Aが、野党系候補数人分の得票数を1人で稼いで当選した結果、与党の(仮)当選者数を増やしてしまったケースなどです。

 もしも単純中選挙区制や単純大選挙区制、単純比例代表制の場合、「野党系無所属党A」は、このケースでもたった1人しか当選者を出せません。これは、与党に不当に有利であるといえるでしょう。

 中選挙区比例代表併用制であればどうか。選挙区選挙または比例区第1希望投票で無所属候補Aに投じた有権者が、比例区第2希望投票で政党(野党)に投票したとします。

 無所属候補Aが獲得した、本人の当選に寄与しない余剰票を、比例区第2希望投票先の政党に(比例)配分します。無所属候補に投じられた余剰票を政党に委譲する形で比例代表制に組み込むわけです。

 このように、無所属候補を政党と見なしても、候補者が1人であることに変わりはなく、無所属候補に単純比例代表制を適用しても、比例代表制が期する民意の反映は実現できません。また解説(7)で指摘したように、比例区における無所属候補の死票を生かす措置も必要です。

 無所属候補に比例代表制を適用する場合、中選挙区制と併用しなくとも、比例区第2希望投票などが最低限必要でしょう。

 
 
太田光征
http://otasa.net/

31 Responses to “中選挙区比例代表併用制を提案する”

  1. BLOG BLUES Says:

    二大政党制は格差社会の母…

    書評の結びは、「日本でもそう遠くない」。
    5月の終りの日曜日だったと思います。毎日新聞の書評欄からの切抜です。

    これが、冷戦勝利後の米国社会の必然的展開だっ (more…)

  2. 公的医療保険制度の改正について Says:

    公的医療保険制度の改正について…

    2006年10月から2008年度にかけて段階的に実施される公的医療保険制度の改正が行われています。医療保険の現状、今後の方針、給付内容についての記事をピックアップしてい (more…)

  3. アルバイシンの丘 Says:

    検証:参院選07(2)…

     そういえば,安部首相は惨敗が現実となると雪だるまが融け始めた時のように顔が緩んできて,目は虚ろになっていった.繰り返すフレーズもワンパターンとなった.”お約束”,”反 (more…)

  4. アルバイシンの丘 Says:

    TB戴いてから長い間拝見することができず申し訳ありません.
    拝見しましたが,まだ十分に理解することができない部分があります.それで質問をしながら理解を深めて行きたいのですがよろしいでしょうか.もしよろしいのでしたらまず次のことを教えてください.

    1.各選挙区で主に無所属候補を先に当選決定する,ということですね.すると次のような場合,どの人がまず当選決定するのでしょうか.(仮定数5とします)
      1位 A政党候補1
      2位 B政党候補1
      3位 無所属候補1
      4位 A政党候補2
      5位 C政党候補1
      6位 無所属候補2
      7位 B政党候補2
     この選挙区で当選が決まるのは3位の無所属候補1だけですか?残りの候補は比例区での政党得票数に左右され,当選かどうかここでは決まらないのですか?
     また,無所属候補2は,ここでの得票は6番目(定数外)ですが,全国的に知名度があり,各地からの票を比例区で少しずつ集めて,ついに当選(比例区で)という場合もありうるのですか?

    私の理解のためにはまずこれらのことをわかる必要がありそうです.もしよろしければご教示お願いします.

  5. MITSU_OHTA Says:

    わざわざこちらまで来ていただいてありがとうございます。質問してくださるのはすごく助かります。

    上記の例では、その通り、無所属候補の選挙区当選者は3位の方のみですが、6位の無所属候補は、得票数しだいで比例区での当選が可能です。(投票者数が確定し、それに基づいて本定数が6などに増えれば、6位の無所属候補も選挙区で当選となります。)

    政党候補は、比例区での個人名得票数の多い順で当選します。政党への議席割り当て数は、政党名得票数と個人名得票数の合計に基づいて比例配分で決定します。

    政党候補であれ、無所属候補であれ、候補者はすべて比例区と選挙区の両方で立候補します。

    考え方としては、どの候補も原則的に全国一区としての比例区で選出する(「原則的平等性」)、無所属候補は例外的に選挙区でも当選可能(「実際的公平性」)、とするのが分かりやすいかもしれません。

    無所属候補にとっての中選挙区選挙は、そこで落とすためというより、比例区での当選が難しいので、実際的な公平性を確保するための措置といえます。

  6. 大津留公彦のブログ2 Says:

    お父さんとの最初の思い出は何でしょうか?…

    strong>お父さんとの最初の思い出は何でしょうか?

    今日に金八先生でみんなに投げかけれた問いです。

    皆さんいかがでしょうか?思い出せますか?
    (more…)

  7. 「猫の教室」 平和のために小さな声を集めよう Says:

    今日2度目の党首会談。密室談合を許すな。…

    今日も2つめの記事です。 先日に続き、今日も自民党福田首相と、民主党小沢代表の党首会談が行われます。 先日の党首会談では、約45分、2人だけの秘密会議がありまし (more…)

  8. 散策 Says:

    【日記】ロックフェラー回顧録は読もうと思う=>買いました…

    城内みのるさんのリンクをつけてみました。日曜だったか、Japan Timesで、イギリスで亡くなったリトビネンコ氏はイギリス秘密情報部のスパイだったという記事が出ていて (more…)

  9. 「猫の教室」 平和のために小さな声を集めよう Says:

    来るべき衆院選への戦い方…

    臨戦態勢突入月間のため、今日も2つ目の記事です。 さて、来るべき衆院選に対して、私達はどんな戦術で戦えば良いでしょうか?参院選の当時のブログ活動の反省から、今度の (more…)

  10. 大津留公彦のブログ2 Says:

    教訓1…

    加川良の教訓1という歌がある。
    1971年の歌だが非常に現代的なテーマを持った歌だと思う。
    (more…)

  11. 大津留公彦のブログ2 Says:

    落合監督は辞めたらどうだろうか…

    日本シリーズの優勝決定の試合で8回まで完全試合だった山井投手を落合監督が変えたことはどうしても理解できない。
    (more…)

  12. 大津留公彦のブログ2 Says:

    「アベする」から「オザワる」へ…

    民主党の小沢一郎代表が辞任すると言う。

    安倍晋三という人の辞任があったはずだがすっかり小沢一郎と言う人の辞任にお株を奪われてしまった。

    「アベする」が今年の流行語に (more…)

  13. 大津留公彦のブログ2 Says:

    読売とナベツネは責任を取れ!…

    「大連立を持ちかけたのは小沢氏という「謀略報道」について読売とナベツネは責任を取るべきだろう。

    これはどうも読売の全くの作り話だったようだ。
    (more…)

  14. 大津留公彦のブログ2 Says:

    8・21山里会でのナベツネ講演…

    「年金問題や税制、そして憲法や安全保障など多くの懸案事項を一挙に解決するために、大連立が必要なのである」?
    (more…)

  15. 大津留公彦のブログ2 Says:

    「大連立」の真相ニコニコ動画2つ…

    ニコニコ動画と言うものをはじめて見た。
    映像にコメントがオンラインでできると言うのはなかなか面白い。
    コメントを書いたらすぐに反応が来るのが面白い。
    (more…)

  16. 花崗岩のつぶやき Says:

    連合政権とゲーム理論…

    昨日の続きで,民主党と自民党の連立構想について書きます.実は連立政権への学問的なアプローチはもう40年以上前になされているようです.アメリカのウィリアム・ハリソン・ライ (more…)

  17. 大津留公彦のブログ2 Says:

    ルール違反の言葉…

    今日の金八先生で自殺抑制ロールプレイングゲームと言うものをやっていた。
    学校でこれをやらざるを得ない状況が悲しい。
    (more…)

  18. 大津留公彦のブログ2 Says:

    Madam i’m adam(金八先生)…

    駿の女形が美しかった。
    なんだかすごみがあった。
    この配役は最初からこの踊りを前提にしていたのだろう。
    (more…)

  19. ツァラトゥストラはこう言っている? Says:

    小選挙区制は廃止すべきだ!…

    赤旗で非常によくまとまった記事があったので紹介する。

    自民党政権が終わっても、小選挙区制が続く限り政治の安定と民主化は実現しない。小政党を中心に――たとえば公明党など (more…)

  20. いわいわブレーク Says:

    「国?」体ジッケン1 電子投票ナゾ…

    今日は、HNの通り、忙しく転げ回ってはるLike a rolling beanさん の 『極めて重要な』最新エントリーを取上げます。 「電子投票の既存技術と将来の危険性 (more…)

  21. 三介 Says:

    今晩は、TBありがとうございます。
    選挙制度、細かいことはよくわかりませんが、
    できるだけ比例で、2-3%乗降くらいが、
    民意を上手く表わし、死票も少なく、安定性も確保できそな気がします。

  22. 私の愚痴聞いてもらえますか? Says:

    自民党のやりたい放題…

    今日国会が又延長された。越年国会となる。自民党、公明党の数の力で、国民の生活は議論されず、新テロ特措法を通す為の、越年国会と成るそうだ。又大幅な無駄なお金を、国は使おう (more…)

  23. 飯大蔵の言いたい事 Says:

    審議もされず法律が出来ていく…

     国会も終盤に入り、民主党が何でも反対と言われないためなのか、いくつもの法案を成立させている。 (more…)

  24. ブログ意見集(投稿募集中)by Good↑or Bad↓ Says:

    ブログ意見集: 小選挙区と二大政党制の是非 by Good↑…

    「小選挙区と二大政党制の是非」に関するブロガーの意見で、みんなの参考になりそうなブログ記事を集めています。自薦による投稿も受け付けているので、オリジナルな意見のブログ記 (more…)

  25. どこへ行く、日本。(福田は国民羊化計画と構造改革(=政財癒着推進→格差拡大)をやめられるのか) Says:

    小選挙区制が作り出す二大政党制、狙いは「権力維持のための安定…

    東京都知事選・首長選はどうたたかわれるのか(花・髪切と思考の浮游空間)
    http://www.asyura2.com/07/senkyo32/msg/115.html (more…)

  26. ろーりんぐそばっとのブログ Says:

    教師の採用汚職…

    こういう地域で完結しているものは汚職がはびこりやすい。

    実際明らかにはなっていないが どこでもそういう面はあるのではないか。

    自分の地元では教師の親 (more…)

  27. 架空政党:進歩民主党 Says:

    選挙制度…

    選挙方式は「多数派診断法」にします。

    候補者全員を6段階で評価し、その総体で当選者を決める手法だ。ボルドー・ワインの挌付けにヒント… (more…)

  28. 世界の片隅でニュースを読む Says:

    「1票の格差」を是正し、「世襲議員」を減らすには比例代表制し…

     私が「何はともあれ(政策転換がなくても)政権交代」という考え方に抵抗感を抱く要因の1つに、1990年代の政権交代が結果として小選挙区制の導入につながった苦い記憶がある (more…)

  29. 小沢氏「国替え」確信=民主・鳩山氏 | ニュースの森 Says:

    […] →続きを見る← フランスの決戦投票制でさえ選好順位すら測定できない… 215 中選挙区比例代表併用制を提案する http://kaze.fm/wordpress/?p=164 小選挙区比例代表併用制の問題点 http://kaze.fm/wordpress/?p=220 比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション http://kaze.fm/wordpress/?p=229 大選挙区 …平和への結集第2ブログ IP電話 日本で苦戦が報道されるiPhoneについていろいろ考 …… ( ここをクリック ) 11月9日投票という日程で衆院選に向かっているという。 「モンスターペイシェント」病院で患者がエスカレートして凶暴化 関連記事 ADSLからFTTHへの移行は通信速度の不満が多数 「NTTの月額基本料なんていらない」 NTT東西 …IP電話 R世論調査/株暴落 「解散」に否定的な総理に納得か?/ 1… 9月の任期満了までいく可能性がある」(9日) ・伊吹前財務相は「衆院選は11月中旬頃までか、4月以降のどちらかだ」 ・一方で、民主党の山岡国対委員長は「衆院選をやりたくないと言っているのは麻生総理と選挙に負けると思っている人だ。 …■ 時事応接室 Official blog ■ 「新自由主義」とは一体何だったのか?… 自分の家のポストから投票券が「創○価○学○会員」により盗まれるのも気が付かない。日雇い派遣で疲れた体は、貴重な日曜日に休ませたいと思うのは良く分かる。しかし、次の衆院選だけは、がんばって起きて投票へ行こうで …たかしズム「ネトウヨ、バカウヨ、ネット右翼、恥さらし、売 … この時期にペイリン氏のこの事実はまずいよね… なぜなら黒人だからだ」を初め問題発言多数。 http://www.chiyomi.jp/ 5) 戸倉多香子(山口4区) 敵は安倍晋三。07.夏、所信表明演説をやりながら国民捨ててトンズラしました。05衆院選はトリプルスコアで負けました。しかし安倍氏のように無責任な人間を …民間人です この記事もこの新聞社特有の「アサヒる」されたもの?… 「いよいよ民主党が衆院選のマニフェストを公表したか」と私は思いました。実際の公表されたマニフェストとこの評論を比較しようと臣いました。民主党のHPを確認しましたが衆院選マニフェストなんてどこにもありません。 とするとこの記事の根拠は何 …民間人です 次期衆院選へ野党の選挙協力進む ! 中日新聞 2008年10月12 …またまた、中日新聞からコピペ: 次期衆院選に向けて、民主、社民、国民新の野党3党が、選挙協力協議を着々と進めている。前回2005年は、野党間の推薦はゼロ。これが、票の分散を招き、与党圧勝を許す原因の1つになったとの反省からだ。 …YAMACHANの@飛騨民主ブル新聞 日本は東国原知事に「どげんか」してもらうべきか… ショー通信簿(下)>衆院解散時期をめぐる憶測が飛び交う中、宮崎県の東国原英夫知事の衆院鞍替え問題が話題を集めた。「失言」問題で国土交通相を辞任した中山成彬・衆院議員が、次の衆院選へ立候補しないことも表明したことが発端だ。 …J-CASTテレビウォッチ 安保・外交中身なし、民主マニフェスト… 10月11日付asahi.com 〜・〜・〜 民主党が衆院選マニフェスト(政権公約)で示す外交・安保政策がわかった。小沢代表の3原則をもとに「強固で対等な日米同盟」と「国連平和活動への積極参加」を打ち出している。 …key person 10月23日 片岡晴彦 収監… [俺達は見ているぞ] 意思表示をすることで、国民の関心の高さを見せることになります。 裁判官の国民審査に参加ましょう。 各政党の選対の皆さん。衆院選の投票率UPにこれを利用しませんか? 日本の司法の将来は立派な政治課題 …高知白バイ事故=冤罪事件確定中 You Tube関連動画 動画がうまく再生されない時はお使いのブラウザにインストールされているFlashPlayerのバージョンが低い可能性があります。最新のものをインストールしてご覧下さい。▲こちらをクリックして、FlashPlayerのバージョンを最新のものにして下さい。(無料) 作成者:LoveNipponタイトル:有田でGO!次期衆院選第一次公認決定タグ: 新党日本 田中康夫 WebTV 政治 衆議院 選挙 有田芳生 東京都 第9区 練馬区 城山三郎 公務員 入札 消費者 田原総一朗 ビートたけし 山本モナ 国民新党 社会民主党 作成者:shaminpartyタイトル:【次期衆院選】:社民党公認・予定候補者(07年12月20日段階)タグ: 新党日本 田中康夫 WebTV 政治 衆議院 選挙 有田芳生 東京都 第9区 練馬区 城山三郎 公務員 入札 消費者 田原総一朗 ビートたけし 山本モナ 国民新党 社会民主党 介護 年金 セーフティネット ワーキングプア […]

  30. エクソダス2005《脱米救国》国民運動 Says:

    男一人女一人いれば世界をもう一度産み出すことだってできる.…

    男一人女一人いれば世界をもう一度産み出すことだってできる.
    Movie Review: National Lampoon’s Adam & Eve

    たとえこの (more…)

  31. 誠司の自論補事 Says:

    衆議院選挙制度改革提案のまとめ…

    私は、衆議院の選挙制度について
    小選挙区単記移譲式と大選挙区単記移譲式の並立制を提案している。

    以前、大選挙区単記移譲式でなく拘束名簿式比例区でも良いと書いたが (more…)

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