「放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針骨子案」等に対する意見

10月 25th, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 3:18:30
under 一般 No Comments 

環境省 報道発表資料−平成23年10月17日−「放射性物質汚染対処特措法に基づく基本方針骨子案」等に対する意見の募集(パブリックコメント)について(10月26日まで!)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14327
 
 
[意見1]

・意見の対象([2])

・意見の該当箇所

2.汚染状況重点調査地域の指定の要件 【法第32 条第1項関係】
3.除染実施計画を定めることとなる区域の要件 【法第36 条第1項関係】

・意見の要約

「その区域における放射線量が一時間当たり0.23 マイクロシーベルト以上」という要件と、その基となる「追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方」(平成23 年10 月10 日災害廃棄物安全評価検討会・環境回復検討会 第一回合同検討会の参考資料2の別添2)を採用しないこと。

・意見及び理由

「追加被ばく線量年間1ミリシーベルトの考え方」は外部被ばくしか考慮しておらず、不適切。

フィンランドにおいてはチェルノブイリ原発事故の直後となる86年5月の線量がわずかμSvレベル(6.6〜137.9μSv)であっても、線量が高いほど死産率がその後、一時的に上昇している。下記参照。

市民・科学者国際会議 放射線による健康リスク〜福島「国際専門家会議」を検証する〜(2011年10月12日)
http://www.crms-jpn.com/art/140.html
真実を見極める チェルノブイリ、ドイツ、フクシマ:セバスチャン・プフルークバイル(物理学博士、ドイツ放射線防護協会会長)
http://www.ustream.tv/recorded/17826285
Scherb und Weigelt:Bericht Nr.24(2003) des Otto Hug Strahleninstituts

チェルノブイリ事故後は米国でも同様。米国各地でミルク中のヨウ素131濃度と全死亡率の増加率に相関関係が見られ、線量反応関係は上に凸の形であった。ミルク中ヨウ素131の最高濃度はカリフォルニア州、ワシントン州でわずか44pCi/l=1.6Bq/l(1ピコキュリー=0.037ベクレル)だった。下記参照。

『死にいたる虚構―国家による低線量放射線の隠蔽―』(ジェイ・M・グールド、ベンジャミン・A・ゴルドマン著、肥田舜太郎、斎藤紀訳、2008年、PKO法『雑則』を広める会)

ちなみに、ヨウ素131に関する日本の飲料水暫定基準値は300Bq/lと異常に高いが、米国の基準値は0.111Bq/lで、上記事実から納得できる。

ウクライナ・ナロジチ地区の年間線量は外部被ばく、内部被ばく合わせて1.3mSv(1991〜2004年の平均)であったが、住民の健康被害は年々拡大して、最新の調査を行った2008年が最大となり、ICRPの予測をはるかに上回っている。下記参照。

FUKUSHIMA of チェルノブイリ救援・中部
http://www.chernobyl-chubu-jp.org/pg244.html
南相馬市放射線量率マップ(2011年7月版)
http://www.chernobyl-chubu-jp.org/_userdata/msoumasokutei.pdf

[意見2]

・意見の対象([1])

・意見の該当箇所

<国際放射線防護委員会(ICRP)の2007 年基本勧告、原子力安全委員会の「今後の避難解除、復興に向けた放射線防護に関する基本的な考え方について」(平成23 年7 月19 日原子力安全委員会)等を踏まえて、目標値を設定すること。>

・意見の要約

ICRP勧告と原子力安全委員会「基本的な考え方」には従わないこと。

・意見及び理由

原爆傷害調査委員会(ABCC)とそれを引き継いだ放射線影響研究所は、広島・長崎に投下された原爆による初期外部放射線の人体に対する影響を調査するために設立されたもので、内部被ばく者を対象群に用い、内部被ばくの影響を切り捨てた。下記参照。

市民・科学者国際会議 放射線による健康リスク〜福島「国際専門家会議」を検証する〜(2011年10月12日)
http://www.crms-jpn.com/art/140.html
実態とかけ離れた放影研の被爆者研究:沢田昭二(物理学博士、名古屋大学名誉教授)
http://www.ustream.tv/recorded/17827015

ICRPはこれら組織の研究成果を基に内部被ばくの影響を外部被ばくの影響から外挿によって推定しており、その勧告は科学的根拠を持たない。下記参照。

ECRR(欧州放射線リスク委員会)2010年勧告
http://www.jca.apc.org/mihama/ecrr/ecrr2010_dl.htm

原子力安全委員会「基本的な考え方」はやたらに経済的因子を強調し、「心理、政治等の側面」など意味があいまいな記述もあり、人体と環境に対する影響を極力抑えるという思想に立脚しているとは思われない。

[意見3]

・意見の対象([1])

・意見の該当箇所

<現行の廃棄物処理法に基づく廃棄物の処理体制、施設等を可能な範囲で積極的に活用>

・意見の要約

放射性廃棄物(以下、廃棄物)は処理ではなく隔離を基本とする。廃棄物処理は表面処理に集中する。廃棄物処理の施設は専用とする。

・意見及び理由

廃棄物の対策については、生活環境からの隔離を基本とし、焼却処理などによる二次汚染を引き起こさないことが重要。放射性物質は廃棄物の表面に付着しているので、廃棄物処理は廃棄物表面の処理に集中する。廃棄物処理施設が必要な場合、二次汚染を引き起こさないよう専用施設を利用すべき。

[意見4]

・意見の対象([1])

・意見の該当箇所

<廃棄物の再生利用>

・意見の要約

徹底的に除染した廃棄物のみ再利用すること。

・意見及び理由

コンクリートくずなどは洗浄などにより徹底的に除染し、二次汚染を引き起こさない場合のみ、再利用すべき。

[意見5]

・意見の対象([1])

・意見の該当箇所

<処理等に伴い周辺住民が追加的に受ける線量が年間1ミリシーベルトを超えないようにすること。>
<処分施設の周辺住民が追加的に受ける線量が年間10マイクロシーベルト以下>

・意見の要約

廃棄物処理行為、そうでない行為の両方による追加被ばく線量が年間1ミリシーベルトを超えないようにすること。処分施設の周辺住民が追加的に受ける線量を「年間10マイクロシーベルト以下」より厳しくすること。

・意見及び理由

通常の生活環境から受ける追加線量に加え、廃棄物処理行為に関係する追加線量が年間1ミリシーベルト以上あってはならない。

廃棄物再利用製品が年間181マイクロシーベルトという例が実際にある。下記参照。

どうなる放射能汚染物の処理【5】次々明らかになる「安全」のウソ
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110909/108322/

[意見6]

意見の対象([1])

・意見の該当箇所

<平成24年3月末までを目途に仮置場への移動を行う。また、土壌等の除染等の措置に伴って発生する廃棄物については、当該措置の進捗と整合を図りながら処理を行うこと。>

・意見の要約

廃棄物は発生場所での処理を基本とし、降雨などを活用した除染を行い、仮置場などをなるべく利用しない。「当該措置の進捗」を考慮しなければならない処理方法は採用しない。

・意見及び理由

二次汚染を引き起こさないよう仮置場はなるべく利用すべきではなく、廃棄物は人体と環境に対する影響を考慮して処理すべき。

[意見7]

・意見の対象([1])

・意見の該当箇所

<指定廃棄物の指定基準については、放射性物質による汚染のレベルに応じて求められる処理方法及び平常時に廃棄物処理を行っている市町村の処理技術、処理施設等の能力などの実態を勘案し、設定すること。>

・意見の要約

指定廃棄物の指定基準は、処理施設能力などではなく、人体と環境に対する影響を考慮して設定すること。

・意見及び理由

処理施設能力が足りなければ獲得できるようにすべき。

[意見8]

・意見の対象([1])

・意見の該当箇所

<法第36 条第3 項の協議会を設置する場合には、放射性物質、除染等の措置等の専門家を入れ、必要な知見を取り入れること。国は、計画策定者が協議会を設置する場合には、自ら管理する土地等に係る除染等の措置等を実施する立場として参加するのみならず、必要な科学的・技術的知見を提供すること。>
<国は、迅速な土壌等の除染等の措置の推進のため、費用対効果が高くかつ効果の実証された除染方法を標準的な方法として示すこと。>

・意見の要約

国などの福島原発震災原因者は、除染に関する専門家・知見・方法を直接に派遣・提供・提示すべきではない。

・意見及び理由

国は福島原発震災を引き起こした原因者であるので、それが派遣・提供・提示しようとする専門家・知見・方法は、人体と環境に対する影響を考慮したものである保証はなく、脱原発の見解、除染についての厳しい見解、内部被ばくの影響を重視する見解を持つNPOや専門家などの見解を反映したものでなければならない。

[意見9]

・意見の対象([1])

・意見の該当箇所

<国は、独立行政法人日本原子力研究開発機構をはじめとする様々な研究機関の取組の支援及びこれらの研究機関との連携の確保を行うなど>

・意見の要約

日本原子力研究開発機構が除染に関わる研究開発を行う場合、外部による承認が必要。

・意見及び理由

日本原子力研究開発機構は原子力推進機関なので、人体と環境に対する影響を考慮した研究開発をする保証はない。同機構の行う研究開発については、脱原発の見解、除染についての厳しい見解、内部被ばくの影響を重視する見解を持つNPOや専門家などによる承認を必要とする。

[意見10]

・意見の対象([1])

・意見の該当箇所

6.その他事故由来放射性物質による環境の汚染への対処に関する重要事項

・意見の要約

国や地方自治体、東京電力などの事業者が専門家の派遣、リスクコミュニケーションの実施、環境汚染への対処の実施内容及びその効果に関する周知、知識を得る機会の提供、専門家の派遣、必要な情報の提供などを行う場合、脱原発の見解、除染についての厳しい見解、内部被ばくの影響を重視する見解を持つNPOや専門家などによる承認を必要とする。

・意見及び理由

国や東京電力などは福島原発震災の原因者なので、人体と環境に対する影響を考慮した専門家や情報を派遣・提供する保証はない。自治体の中には煮る、焼くという調理方法で放射能対策になるとする見解の放射線医学総合研究所研究員を講師とする講演会を実施したところがあり、外部からのチェックが必要。

[意見11]

・意見の対象([2])

・意見の該当箇所

1.汚染廃棄物対策地域の指定の要件 【法第11 条第1項関係】
○ 警戒区域又は計画的避難区域である地域

・意見の要約

汚染廃棄物対策地域の指定の要件は警戒区域、計画的避難区域のみとすべきでない。

・意見及び理由

廃棄物は警戒区域、計画的避難区域の外にもある。
 
 
太田光征
http://otasa.net/

小選挙区比例代表連用制

10月 13th, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 3:03:11
under 一般 1 Comment 

公明党が衆議院選挙制度改定案として提案した小選挙区比例代表連用制について、2009衆議院選挙の結果を基にシミュレーションを行いました。現行定数の場合、小選挙区、比例区いずれかの定数を80削減した場合の3通りです。

議席配分が完全比例代表制とほぼ同じになるのは、小選挙区定数220、比例区定数180の場合、しかもブロック式ではなく全国一括式で比例区議席を割り当てた時のみです。

では、小選挙区定数を削減して小選挙区比例代表連用制にすればよいのかというと、そういうわけにはいきません。

小選挙区と比例区の定数を分離するのが小選挙区比例代表並立制と小選挙区比例代表連用制の本質で、無所属候補と政党候補に同じ総定数をめぐって同じ難易度で競わせる単一の土俵を用意するという思想がまったくない。

小選挙区定数を削減するか、比例区定数を増やした上で小選挙区比例代表連用制に改定すれば、政党にとってはより公平になりますが、無所属・政党間の格差がますます拡大します。

無所属候補(に投票する有権者)は我慢しろ、というのは、一部の人間だけに差別的な放射線被害を負わせても多数が無事であればよい、というのと同じで、認められません。

小選挙区比例代表連用制の小選挙区を中選挙区や大選挙区に置き換えれば、選挙制度思想も結果もずっとマシになるでしょう。

私が提案している中選挙区比例代表併用制は、無所属候補と政党の定数枠を分離するという差別の仕掛けから決別しています。

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164

中選挙区比例代表併用制は、無所属候補、政党候補ともまず同じ総定数をめぐって共通の中選挙区で競わせた上で、無所属候補については中選挙区で議席を確定させ、政党については残余議席を比例配分するというものです。

小選挙区比例代表連用制やドイツの小選挙区比例代表併用制は小選挙区で超過議席を発生させますが、中選挙区比例代表併用制は超過議席を回避できます。

福島原発震災の震源は、過疎地にしか原発を建設してはいけないなどという法律を制定してきた差別政治です。私たちの基幹的・実践的権利を保障する選挙制度がそもそも差別でやられているようでは、今後も私たちは差別政治による政治災害を被り続けることでしょう。

脱原発・国会議員の定数削減・壊憲/原発事故と政党の責任について
http://kaze.fm/wordpress/?p=342

民主党は3・11後、早くも25日の段階で、通常国会で衆議院比例区定数の80削減を実現すると公言しました。悲惨な原発事故被害に遭っている有権者から脱原発政党に投票する1票の価値をさらに減じると宣言したのです。差別に差別の追い打ちをかけるもので、あまりにもひどい。

脱原発は脱差別の運動。脱原発をめぐる攻防は、国会議員の定数削減、選挙制度改定をめぐる攻防と重なっています。震源を揺さぶりましょう。
 
 
【目次】

1. 公明党の小選挙区比例代表連用制
2. 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
3. 小選挙区比例代表連用制でも1票格差は解消しない

【関連投稿】

  • 2010参院選――結果分析
    http://kaze.fm/wordpress/?p=309
  • 中選挙区比例代表併用制を提案する
    http://kaze.fm/wordpress/?p=164
  •  

    1. 公明党の小選挙区比例代表連用制
     
     
    公明党は衆議院の選挙制度改定案として小選挙区比例代表連用制を提案していますが、これは「政治改革推進協議会(民間政治臨調)」が1993年にすでに提案しているものです。

    現在の小選挙区比例代表並立制と小選挙区比例代表連用制の違いは、比例区議席を政党に割り当てる計算方法の違いにあります。

    小選挙区比例代表並立制では通常のドント式を採用します。各党の比例区得票数を1、2、3、4、5…という1から始まる整数の除数(比例区での獲得議席数に相当)で割っていき、その商(議員1人当たりの当選に要する得票数に相当)の大きい順に1議席ずつ割り当てるという方法です。

    小選挙区比例代表連用制では政党ごとに除数を変えます。各党の除数は、1から始まる整数に小選挙区での獲得議席数を加えた数(小選挙区での獲得議席を比例区で獲得したものとみなす)とし、同様の計算で議席を割り当てていきます。
     
     

    2. 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
     
     
    2009年衆議院選挙の結果を基に、大きく3つの条件で、小選挙区比例代表連用制のシミュレーションを行いました。

    小選挙区定数を現行の300とし、比例区定数を現行の180とした場合(表1)、民主党が主張しているように比例区定数を80削減して100とし、小選挙区定数を300のままとした場合(表2)、小選挙区定数を80削減して220とし、比例区定数を180のままとした場合(表3)のそれぞれについて、現行の11ブロックごとに比例区議席を割り当てる場合、全国一括で比例区議席を割り当てる場合の結果を計算しています。

    小選挙区定数300、比例区定数180の場合(表1)、小選挙区と比例区を合わせた議席数は、小選挙区比例代表並立制と比べて完全比例代表制に近い結果となるものの、民主党では完全比例代表制と比べ26議席(ブロック式)あるいは15議席(全国一括式)も多く獲得しています。この余剰議席は、小選挙区比例代表連用制の欠陥というより、比例区の総定数の少なさ、あるいは定数を細切れにするブロック式に原因があります。

    こうした乖離はすでに現在の小選挙区比例代表並立制の比例区選挙でも見られます。

    2010参院選――結果分析
    http://kaze.fm/wordpress/?p=309

    小選挙区定数300、比例区定数100の場合(表2)、民主党は完全比例代表制と比べ53議席も余分に獲得することになります。小選挙区比例代表連用制で比例代表制の側面を強化するのであれば、比例区定数の削減は論外。

    小選挙区定数220、比例区定数180の場合(表3)で初めて、全国一括式による議席割り当てが完全比例代表制の場合とほぼ同じになります。ブロック式ではまだ乖離を排除できず、民主党の例では完全比例代表制より10議席多い。

    小選挙区比例代表連用制で完全比例代表制に近い結果を出すためには、総定数に占める比例区定数の比重を現在より高めることが前提になります。
     
     

    3. 小選挙区比例代表連用制でも1票格差は解消しない
     
     
    小選挙区比例代表連用制も選挙制度思想の土台を欠いた制度であり、現在の矮小化された1票格差論に注意が必要です。

    小選挙区比例代表連用制は小選挙区比例代表並立制と同様に、比例区は政党の独占枠なので、無所属候補は比例区から議席を獲得できない。

    中小政党には議席を正当に獲得しやすい比例区を確保しておきながら、無所属候補には当選の困難な小選挙区のみしか手当てしないのは、候補者差別、主権者差別です。

    1票の価値は生票を投じた有権者にしかなく、死票を投じた有権者にはまったくありません。

    複数の選挙区間で有権者1人当たりの議席数を平等にして、生票を投じた有権者の間だけで、しかも複数の選挙区間で同じ生票率の場合だけに1票の価値の平等を実現しても、生票を投じた有権者と死票を投じた有権者の間で1票の平等、主権の平等は成立しない。

    選挙制度は主権を保障する制度であって、主権の平等を追求せずに限定的な条件下で1票の不平等のみを解消しようとする選挙制度論は、非常に奇妙。矮小化された1票格差論によって主権格差を拡大させてはいけない。

    定数を細切れにするブロック式の比例代表制は、異なる政党に投票した有権者の間で1票格差をもたらす仕掛けであり(同じ1議席を獲得するにも小政党は大政党より多くの得票数が必要)、無所属候補に狭く当選しにくい1人区しか与えない比例代表制は、(準比例代表制とも言われる中選挙区制や大選挙区制の場合と比べ)無所属候補に投票した有権者と、広い比例区で政党に投票した有権者の間で1票格差をもたらす仕掛けです。

    現在の小選挙区比例代表並立制において、比例区の削減は格差を拡大させるので問題だが、小選挙区の定数削減であれば問題ない、というわけにはいかない。

    小選挙区の定数を削減すれば、比例代表制の比重が高まって政党の間ではより公正になるものの、無所属候補にとっては当選枠が一層狭まることになり、格差を拡大させます。

    参議院選挙でも同様で、例えば1人区と5人区では死票率の乖離という1票格差は避けられない。

    議員1人の当選に必要な議席数をあらかじめ決めておけば、政党候補、無所属候補の別に関係なく、1票の価値は平等になります。差別の仕掛けを排した選挙制度は原理的に可能なのです。

    選挙制度の設計は、これにいかに近づけるか、という問題になります。

    差別の解消を試みた選挙制度として提案しているのが、中選挙区比例代表併用制です。

    中選挙区比例代表併用制を提案する
    http://kaze.fm/wordpress/?p=164
     
     

    表1 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
    (小選挙区定数300、比例区定数180)

    2009年衆議院選挙のデータ使用
    議席配分表


















    北海道 0 3 2 1 0 * * * 2 * 0 - 8
    東北 0 6 3 2 2 1 * * * * 0 - 14
    北関東 0 9 5 3 1 2 0 0 * * 0 - 20
    南関東 0 9 5 3 2 3 0 0 * * 0 - 22
    東京 0 6 4 4 1 2 0 0 * * 0 - 17
    北陸信越 1 4 2 2 1 * 1 0 * * 0 - 11
    東海 0 10 5 3 1 2 0 0 * * 0 - 21
    近畿 0 11 8 6 1 2 1 0 * * 0 - 29
    中国 5 0 4 1 1 * 0 * * * 0 - 11
    四国 3 0 2 1 0 * * * * * 0 - 6
    九州 2 4 9 3 1 2 0 * * * 0 - 21
    11 62 49 29 11 14 2 0 2 * 0 - 180
    全国一括式 0 55 51 31 16 17 4 2 2 * 2 - 180








    議席数 221 64 0 0 3 2 3 1 - 0 0 6 300
    得票率 47.4 38.7 1.1 4.2 2.0 0.9 1.0 0.3 - 0.1 1.5 2.8 -
    議席占有率 73.6 21.3 0 0 1.0 0.6 1.0 0.3 - 0 0 2.0 -








    +



    2009議席数 308 119 21 9 7 5 3 1 1 0 0 6 480
    同議席占有率 64.2 24.8 4.4 2.0 1.5 1.0 0.6 0.2 0.2 0 0 1.0 -
    比例区得票率 42.4 26.7 11.5 7.0 4.3 4.3 1.7 0.8 0.6 0.1 0.7 - -
    比例区:ブロック式 232 126 49 29 14 16 5 1 2 0 0 6 480
    比例区:全国一括式 221 119 51 31 19 19 7 3 2 0 2 6 480
    完全比例制 206 129 55 34 20 20 8 3 2 0 3 0 480

     
     

    表2 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
    (小選挙区定数300、比例区定数100)

    2009年衆議院選挙のデータ使用、2005年国勢調査に基づき定数配分
    議席配分表


















    北海道 0 2 1 0 0 * * * 1 * 0 - 4
    東北 0 3 2 1 1 1 * * * * 0 - 8
    北関東 0 4 3 2 1 1 0 0 * * 0 - 11
    南関東 0 5 3 2 1 1 0 0 * * 0 - 12
    東京 0 3 3 2 1 1 0 0 * * 0 - 10
    北陸信越 0 1 2 1 1 * 1 0 * * 0 - 6
    東海 0 5 3 2 1 1 0 0 * * 0 - 12
    近畿 0 5 6 4 0 1 0 0 * * 0 - 16
    中国 2 0 3 1 0 * 0 * * * 0 - 6
    四国 1 0 1 1 0 * * * * * 0 - 3
    九州 0 1 7 2 1 1 0 * * * 0 - 12
    3 29 34 18 7 7 1 0 1 * 0 - 100
    全国一括式 0 17 35 21 10 11 2 1 1 * 2 - 180








    議席数 221 64 0 0 3 2 3 1 - 0 0 6 300
    得票率 47.4 38.7 1.1 4.2 2.0 0.9 1.0 0.3 - 0.1 1.5 2.8 -
    議席占有率 73.6 21.3 0 0 1.0 0.6 1.0 0.3 - 0 0 2.0 -








    +



    2009議席数 308 119 21 9 7 5 3 1 1 0 0 6 480
    同議席占有率 64.2 24.8 4.4 2.0 1.5 1.0 0.6 0.2 0.2 0 0 1.0 -
    比例区得票率 42.4 26.7 11.5 7.0 4.3 4.3 1.7 0.8 0.6 0.1 0.7 - -
    比例区:ブロック式 224 93 34 18 10 9 4 1 1 0 0 6 400
    比例区:全国一括式 221 81 35 21 13 13 5 2 1 0 2 6 400
    完全比例制 171 107 46 28 17 17 7 3 2 0 2 0 400

     
     

    表3 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
    (小選挙区定数220、比例区定数180)

    2009年衆議院選挙のデータ使用
    小選挙区における定数の配分と議席数の割り当ては最大剰余法による
    議席配分表


















    北海道 0 3 2 1 0 * * * 2 * 0 - 8
    東北 1 5 3 2 2 1 * * * * 0 - 14
    北関東 1 9 5 2 1 2 0 0 * * 0 - 20
    南関東 1 9 5 3 2 2 0 0 * * 0 - 22
    東京 1 6 4 3 1 2 0 0 * * 0 - 17
    北陸信越 2 4 2 1 1 * 1 0 * * 0 - 11
    東海 1 10 5 2 1 2 0 0 * * 0 - 21
    近畿 0 12 8 6 1 2 0 0 * * 0 - 29
    中国 5 1 3 1 1 * 0 * * * 0 - 11
    四国 3 0 2 1 0 * * * * * 0 - 6
    九州 4 5 7 2 2 1 0 * * * 0 - 21
    19 64 46 24 12 12 1 0 2 * 0 - 180
    全国一括式 7 59 45 28 15 16 4 2 2 * 2 - 180








    2009議席数x(220/300) 162 47 0 0 2 2 2 1 - 0 0 4 220
    得票率 - - - - - - - - - - - - -
    議席占有率 - - - - - - - - - - - - -








    +



    2009議席数 308 119 21 9 7 5 3 1 1 0 0 6 480
    同議席占有率 64.2 24.8 4.4 2.0 1.5 1.0 0.6 0.2 0.2 0 0 1.0 -
    比例区得票率 42.4 26.7 11.5 7.0 4.3 4.3 1.7 0.8 0.6 0.1 0.7 - -
    比例区:ブロック式 181 111 46 24 14 14 3 1 2 0 0 4 400
    比例区:全国一括式 169 106 45 28 17 18 6 3 2 0 2 4 400
    完全比例制 171 107 46 28 17 17 7 3 2 0 2 0 400

     
     
    太田光征
    http://otasa.net/

    2011年6月19日北千住・脱原発街頭行動での故久保田千秋さんの訴え

    10月 1st, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 10:00:41
    under 一般 [6] Comments 

    http://youtu.be/ij9kGxQES4w

    2011年6月19日、北千住駅前ロータリーで久保田千秋さん、長岩均さん、私の3人で脱原発街頭行動に取り組んだ。私が脱原発街頭行動で久保田さんらとご一緒したのはこの日が初めて。普段は地元の松戸などでだいたい1人で同様の行動をしている。

    その久保田さんが3カ月後の9月26日、つまり25日の数寄屋橋行動の翌日に他界された。享年59歳。

    私は25日、東日本大震災被災者支援千葉西部ネットワークの取り組みとして、仲間と松戸駅前で南相馬野菜支援カンパのお願いと脱原発の訴えをしていた。

    いま思えば私も数寄屋橋行動に参加したかった。長岩さんによれば25日の久保田さんの演説は格調高いものだったという。

    このような形でこのビデオを紹介するなど、想像もしていなかった。他界される直前まで、数寄屋橋行動のほかにも9・19明治公園集会・デモや経産省前テント行動などに元気に取り組まれたという。だから突然の死は誰もが信じられない。

    久保田さんといえば、3・11以前の何かのデモの時だったと思うが、大きなよく通る声でおそらく沖縄米軍基地、安保を訴えていたのをよく覚えている。

    私が久保田さんと街頭行動を共にしたのは数えるほどだが、今後街頭行動をするたびに思い出さないわけにはいかない。マイクを握る時、自分と久保田さんを重ね合わせる感じになるのだと思う。

    6月19日は北千住行動の後、実は第2ラウンドとして松戸駅前にも来ていただいた。そこで福島第1原発で子供さんが働いているという親父さんと鉢合わせになったのだが(私の場合は再会)、福島原発事故はチェルノブイリ並みではない、すぐに収束する、などという親父さんの主張にやや色をなして久保田さんは反論されていた。その後、反省の弁を私たちに向けて口にされたが。こんなことも思い出される。

    この親父さんは自分の子供が健康リスクを背負いながら事故収束に当たっているのだから、脱原発の訴えは事故収束の後にしなさい、と私が最初に会った時に言われたものだ。

    気持ちは分かるが、今現に原発震災で苦しんでいる方々、また今後発生するかもしれない原発震災に苦しむ方々のことが念頭にない。

    久保田さんはまさに命をかけて脱原発を訴えていたわけだが、親父さんはこの事実を知ってどう思うか。今度会う機会があれば聞いてみたい。

    しかしなぜ久保田さんがこんなにも早く亡くならねばならないのか。福島原発震災の原因を作り、東電を含む電力業界から多額の献金を受けてきた自民党などは、原発被災者に対して何らの責任も取っていない。

    ビデオ中でも久保田さんが訴えているが、政党助成金を廃止すれば震災復興資金に回せるのだ。それさえもせず議員定数を削減しようとする。久保田さんは定数を削減する必要はないとはっきり主張している。

    久保田さんはこう訴えた。「国会議員が原発事故を反省する気持ちがあるなら、まず予算の組み替えを行ってほしい。原子力予算4550億円を震災復興に、米軍思いやり予算1881億円を東北思いやり予算に。思いやり予算を使えば被災者25万人に月々10万円を支給することができる。320億円の政党助成金を返納してほしい。国会議員は国民一人ひとりの意見を代弁していて、削る必要はない。東北復興のために320億円を返納してもらいたい。震災復興資金80兆円の工面は自民党にしかできない。米国債をアメリカに買い取ってもらい、借金を返してもらう。これはアメリカと大変親密な関係にあった自民党にしかできない仕事。」

    脱原発活動家の久保田さんが早死にし、福島原発震災の原因者たる自民党などが無責任にのうのうとしている。

    久保田さんは腎臓病を抱えていたとはいえ、いやそうであるからこそ、死期を早めた原因に放射線があるのではないかと私は疑っている。放射線の影響はがんだけではない。

    セシウム137の腎臓への影響
    http://yocaki.tumblr.com/post/9326267969/137

    セシウムの人体への影響 - 5年後10年後子どもたちが健やかに育つ会 越谷
    http://sukoyaka-koshigaya.jimdo.com/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%AE%E4%BA%BA%E4%BD%93%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF/
    「(チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの)ゴメリ市の突然死の89%が腎臓の破壊を伴い、突然死の99%が心筋不調。 」

    1986年4月26日のチェルノブイリ事故後、米国ではエイズ関連疾患の死亡率が激増した。同死亡率は84年5月から85年5月まで十数%減少していたにもかかわらず、85年5月から86年5月にかけて100%近く増加している。(『死にいたる虚構―国家による低線量放射線の隠蔽―』、ジェイ・M・グールド、ベンジャミン・A・ゴルドマン著、肥田舜太郎、斎藤紀訳、2008年、PKO法『雑則』を広める会)

    乳幼児死亡率も同様で、米国やドイツでは1986年5月から7月にかけて乳幼児死亡率が前年同月と比べ25〜70%以上も上昇している。(同上)

    東電は「万が一、将来ガンになったときに、東電は補償してくれるのか?」という福島市民の問いかけに対して、「因果関係が証明できない場合は、補償しない」と答えている。

    <原賠審への公開レター発出>「自主」避難せざるをえなかった人々の声を聞いてください
    http://unitingforpeace.seesaa.net/article/228101765.html

    放射線の影響は一部の障害を除いて、疫学調査による統計で調査対象群の中に被害者がいる、という形でしか判明しない。個人の被害者は特定できない。

    東電と原発のこの理不尽さ。

    脱原発は久保田さんがやり残した課題。私にとってはより身近で重いものになった。

    太田光征
    http://otasa.net/