2014年衆院選比例区の東京ブロックは定数が2議席も足りない――衆院選の無効請求訴訟を

12月 29th, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 13:41:31
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 裁判 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

比例区でも正当な選挙が保障されていません。衆院選の無効請求訴訟を提起しませんか。市民参加への模索連絡会の市民に選挙をとりもどすプロジェクトでも、本人訴訟を勧めています。

市民参加への模索連絡会 | 市民が主役の社会へ
http://mosakuren.com/
自治体選挙における本人訴訟の勧め.pdf
http://mosakuren.com/wp-content/uploads/2014/11/%E8%87%AA%E6%B2%BB%E4%BD%93%E9%81%B8%E6%8C%99%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E8%A8%B4%E8%A8%9F%E3%81%AE%E5%8B%A7%E3%82%81.pdf

2013年参議院選挙の無効請求訴訟

(1)訴状:投票価値論を展開。訴状ファイルには目次がありません。目次は下記ブログ記事本文で確認してください。
第23回参議院選挙無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=478 
(2)準備書面:供託金制度についての国会論議を詳しく振り返っている。
第23回参議院選挙無効請求訴訟の準備書面(2013年11月6日付)――戦後直後から最近までの国会審議を振り返る
http://kaze.fm/wordpress/?p=512
(3)上告理由書:準備書面とかなり重複しているが、投票価値論について新たな説明を加えている。供託金制度についての主張は、上告理由書のまとめで手っ取り早く理解できる。
2013年参院選無効請求訴訟で上告――定数配分の格差の是正で投票価値の格差(死票率の格差)はさらに拡大する
http://kaze.fm/wordpress/?p=527

今回の衆院選で、比例区ブロックごとの死票率をみていると、最高が四国ブロックの15.76%、最低でも九州ブロックの4.39%となっています。

比例区がブロック制でなく全国1区だった場合、死票率がわずか0.72%であることからして、現在のように定数が細切れにされているブロック制はもはや比例代表制とはいえないことが分かります。

ブロックによって「異なる選挙制度」が適用されていることで、投票価値の格差(死票率の格差)がもたらされているわけです。ブロック間で「異なる選挙制度」を適用すべき理由はありません。これは憲法違反です。

現在、衆院選比例区の各ブロックへの定数割り当ては、国勢調査の人口数値に基づいてドント式で行われています。本来は、直近の選挙人名簿に基づいて決定すべきです。

直近の選挙人名簿に基づけば、東京ブロックの定数は2増して19議席となるなど、他のブロックでも増減がみられます。2010年国勢調査(人口)の結果に基づいた場合でさえ、選挙人名簿に基づく場合と比べ、北陸信越が1増、北海道が1減となるだけで、やはり東京ブロックの定数が2議席も足りなくなっています。

直近の選挙人名簿に基づいて定数割り当てを行った上で、各党への議席配分を全ブロックでやり直すと、自民が1減、次世代の党が1増(東京ブロック)します。これは定数配分の格差が1票の価値の格差(政党間1票格差)につながっている例です。

小選挙区の場合、定数配分の格差は、自民党の支持率の高い中国・四国地方に人口(有権者数)当たりの議員数が多く割り当てられている場合などに限り、1票の価値の格差(政党間1票格差)が発生します。比例代表制と小選挙区制では定数配分の格差の意味するところが本質的に違います。

よく分かる「定数配分の格差」(「1票の格差」)
http://kaze.fm/wordpress/?p=531

詳しい分析の結果は後で報告します。

選挙無効請求訴訟は、投票日から30日以内に提訴しないといけません。最初に訴状だけ出して、詳しい理由を準備書面で出すこともできます。

太田光征

定数配分の格差についての誤解――民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける(2014年衆院選)

12月 25th, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 23:58:57
under 選挙制度 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

【目次】
(1) 民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける――海江田万里支持の有権者数と山田美樹支持の有権者数の比(投票価値の実体)は有権者数に関係なく決まる
(2) 衆議院比例区も投票価値の格差(ブロック間死票格差と政党間1票格差)をもたらすので違憲

(1) 民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける――海江田万里支持の有権者数と山田美樹支持の有権者数の比(投票価値の実体)は有権者数に関係なく決まる

弁護士ドットコムは12月15日付で、海江田氏が自民党の山田美樹氏に負けたことについて、次のように書いています。

<一票の格差>「選挙無効は解散より混乱が少ない」弁護士らが衆院選「無効」求め提訴(弁護士ドットコム)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141215-00002430-bengocom-soci

<伊藤真弁護士は、民主党の海江田万里代表が東京1区で落選したことに触れ、「一票の格差」が背景にあると指摘した。
「海江田代表は約8万9000票の得票で落選した。しかし、8万9000票以下で当選している選挙区は、全国で130選挙区ある。彼は、この『130のどこか』から出ていれば、問題なかった。国会議員を選ぶのに、その背後の主権者の数がバラバラなのは、どう考えてもフェアではない。民主主義とは言えない」>

一連の定数配分の格差是正訴訟に取り組まれている伊藤真弁護士には敬意を抱いていますが、上記見解は定数配分の格差についての誤解といわなければなりません。

海江田氏が約8万9000票もの票を獲得できたのは、東京1区の有権者数が多く、対立候補がそこそこだったという理由によるものです。「130のどこか」から出れば、8万9000票もの票は取れないかもしれないし、対立候補が弱小であれば、それ以上の得票をしたかもしれません。小選挙区では絶対得票数は意味を持たず、選挙区内の相対得票率のみで当落が決まります。

例えば、東京1区を2分割してできた新選挙区で海江田氏と山田氏が立候補すれば、両候補とも旧1区の時の2分の1の得票をして、やはり海江田氏が敗れることになるでしょう。小選挙区における当落は選挙区の有権者数の多寡にはまったく依存しません。第1得票率と第2得票率の比だけで当落が決まるからです。

ですから定数配分の格差それ自体は投票価値の格差ではありません。定数配分の格差が問題となるのは、地域代表性の格差があまりにも拡大してしまう場合や、自民党が強い中国地方に有権者数当たりの議員数が多い場合などに限られます。

2012衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=435#2012election17
(17) 選挙区間1票格差(地域代表性格差)が政党間1票格差に有利に働く例――自民は中国地方で支持率が高く、同地域は人口当たりの議員数が多いので、選挙区間1票格差は自民に有利

地域代表性の格差としての定数配分の格差があるとしても、地方から都市部に数議席を移せば解決する程度なので、現時点でもそれほど問題ではありません。

伊藤真弁護士は「国会議員を選ぶのに、その背後の主権者の数がバラバラなのは、どう考えてもフェアではない」とも語っていますが、これも間違いだと思います。

小選挙区制では、投票者のすべてが当選者を生み出すことはほとんどありません。生票を投じる有権者と死票を投じる有権者を同列視して、国会議員の背後に同数の有権者がいるべきといっても、意味がないのです。

小選挙区制ではA「1区50万人、2区150万人」でもB「1区100万人、2区100万人」でも、議員2人の背後には同数の有権者がいて問題なく、選挙区間での投票価値に格差はありません。Aを1つの2人区からの分区、Bを1つの2人区からの分区と考えれば分かりやすいかもしれません。選挙区間で投票価値の格差がなくとも、生票対死票という深刻な投票価値の格差は存在します。

海江田対山田は、50万人、100万人、150万人のいずれの選挙区で戦われても、有権者数が結果に影響を及ぼすことはありません。選挙結果は、各選挙区の海江田支持の有権者数と山田支持の有権者数の比だけで決まり、選挙区の有権者数の絶対値には関係がないのです。投票価値は第1得票率の候補に票を投じた有権者にのみ発生し、そのような有権者になって投票価値が発生するかどうかは、候補者の顔ぶれとそれらに対する有権者の態度だけで決まり、有権者数の絶対値には影響されません。

150万人の小選挙区の有権者の1票は、50万人の小選挙区の有権者の3分の1の影響力しかない、ということではありません。小選挙区における票の影響力は、海江田支持の有権者グループ全体の票数、山田支持の有権者グループ全体の票数の大小関係に他なりません。この大小関係という比は、50万人、100万人、150万人という有権者数とはまったく無関係に決まります。実体が大小関係=比である投票価値は、有権者数とは無関係なのです。

よく分かる「定数配分の格差」(「1票の格差」)
http://kaze.fm/wordpress/?p=531

(2) 衆議院比例区も投票価値の格差(ブロック間死票格差と政党間1票格差)をもたらすので違憲

同じ弁護士ドットコムの記事で、升永英俊弁護士は次のように語り、比例区は小選挙区と違って違憲ではないから、選挙を無効にする必要性はない、との考え方を示しています。

「295人の(小選挙区の)国会議員がいなくなるということは、解散と同じだ。むしろ(比例代表の180人が残っているから)解散よりも、社会的変更は少ない。そして、解散を社会的混乱と言う人はいない」

しかし、小選挙区制が違憲である理由として重大なのは、定数配分の格差よりも、投票価値の格差(生票と死票の対立)です。同じ理由で衆議院の比例区や参議院の選挙区は投票価値の格差をもたらすので違憲です。衆議院の比例区や参議院の選挙区は定数の異なる11ブロックや、改選定数1〜5の選挙区に分かれていて、ブロックや選挙区によって死票率に格差が生じているからです。死票率の格差は政党間1票格差につながります。

2012年衆院選の比例区(全国集計)における政党間1票格差(「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値)は、社民党でいえば4.87倍にもなっています。「2倍」程度の定数配分の格差よりよほど重大です。

2012衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=435#2012election8
(8) 2012衆院選の最大1票格差――小選挙区が日本未来の党の13.83倍、比例区が社民党の4.87倍

2014年衆院選でも同様の政党間1票格差が生じているはずで、新たに提起する衆院選無効請求訴訟の争点の1つにします。

太田光征

定数配分の格差についての誤解――民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける(2014年衆院選)

12月 25th, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 23:56:36
under 選挙制度 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

【目次】
(1) 民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける――海江田万里支持の有権者数と山田美樹支持の有権者数の比(投票価値の実体)は有権者数に関係なく決まる
(2) 衆議院比例区も投票価値の格差(ブロック間死票格差と政党間1票格差)をもたらすので違憲

(1) 民主党の海江田万里氏は定数配分の格差がない小選挙区でも負ける――海江田万里支持の有権者数と山田美樹支持の有権者数の比(投票価値の実体)は有権者数に関係なく決まる

弁護士ドットコムは12月15日付で、海江田氏が自民党の山田美樹氏に負けたことについて、次のように書いています。

<一票の格差>「選挙無効は解散より混乱が少ない」弁護士らが衆院選「無効」求め提訴(弁護士ドットコム)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141215-00002430-bengocom-soci

<伊藤真弁護士は、民主党の海江田万里代表が東京1区で落選したことに触れ、「一票の格差」が背景にあると指摘した。
「海江田代表は約8万9000票の得票で落選した。しかし、8万9000票以下で当選している選挙区は、全国で130選挙区ある。彼は、この『130のどこか』から出ていれば、問題なかった。国会議員を選ぶのに、その背後の主権者の数がバラバラなのは、どう考えてもフェアではない。民主主義とは言えない」>

一連の定数配分の格差是正訴訟に取り組まれている伊藤真弁護士には敬意を抱いていますが、上記見解は定数配分の格差についての誤解といわなければなりません。

海江田氏が約8万9000票もの票を獲得できたのは、東京1区の有権者数が多く、対立候補がそこそこだったという理由によるものです。「130のどこか」から出れば、8万9000票もの票は取れないかもしれないし、対立候補が弱小であれば、それ以上の得票をしたかもしれません。小選挙区では絶対得票数は意味を持たず、選挙区内の相対得票率のみで当落が決まります。

例えば、東京1区を2分割してできた新選挙区で海江田氏と山田氏が立候補すれば、両候補とも旧1区の時の2分の1の得票をして、やはり海江田氏が敗れることになるでしょう。小選挙区における当落は選挙区の有権者数の多寡にはまったく依存しません。第1得票率と第2得票率の比だけで当落が決まるからです。

ですから定数配分の格差それ自体は投票価値の格差ではありません。定数配分の格差が問題となるのは、地域代表性の格差があまりにも拡大してしまう場合や、自民党が強い中国地方に有権者数当たりの議員数が多い場合などに限られます。

2012衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=435#2012election17
(17) 選挙区間1票格差(地域代表性格差)が政党間1票格差に有利に働く例――自民は中国地方で支持率が高く、同地域は人口当たりの議員数が多いので、選挙区間1票格差は自民に有利

地域代表性の格差としての定数配分の格差があるとしても、地方から都市部に数議席を移せば解決する程度なので、現時点でもそれほど問題ではありません。

伊藤真弁護士は「国会議員を選ぶのに、その背後の主権者の数がバラバラなのは、どう考えてもフェアではない」とも語っていますが、これも間違いだと思います。

小選挙区制では、投票者のすべてが当選者を生み出すことはほとんどありません。生票を投じる有権者と死票を投じる有権者を同列視して、国会議員の背後に同数の有権者がいるべきといっても、意味がないのです。

小選挙区制ではA「1区50万人、2区150万人」でもB「1区100万人、2区100万人」でも、議員2人の背後には同数の有権者がいて問題なく、選挙区間での投票価値に格差はありません。Aを1つの2人区からの分区、Bを1つの2人区からの分区と考えれば分かりやすいかもしれません。選挙区間で投票価値の格差がなくとも、生票対死票という深刻な投票価値の格差は存在します。

海江田対山田は、50万人、100万人、150万人のいずれの選挙区で戦われても、有権者数が結果に影響を及ぼすことはありません。選挙結果は、各選挙区の海江田支持の有権者数と山田支持の有権者数の比だけで決まり、選挙区の有権者数の絶対値には関係がないのです。投票価値は第1得票率の候補に票を投じた有権者にのみ発生し、そのような有権者になって投票価値が発生するかどうかは、候補者の顔ぶれとそれらに対する有権者の態度だけで決まり、有権者数の絶対値には影響されません。

150万人の小選挙区の有権者の1票は、50万人の小選挙区の有権者の3分の1の影響力しかない、ということではありません。小選挙区における票の影響力は、海江田支持の有権者グループ全体の票数、山田支持の有権者グループ全体の票数の大小関係に他なりません。この大小関係という比は、50万人、100万人、150万人という有権者数とはまったく無関係に決まります。実体が大小関係=比である投票価値は、有権者数とは無関係なのです。

よく分かる「定数配分の格差」(「1票の格差」)
http://kaze.fm/wordpress/?p=531

(2) 衆議院比例区も投票価値の格差(ブロック間死票格差と政党間1票格差)をもたらすので違憲

同じ弁護士ドットコムの記事で、升永英俊弁護士は次のように語り、比例区は小選挙区と違って違憲ではないから、選挙を無効にする必要性はない、との考え方を示しています。

「295人の(小選挙区の)国会議員がいなくなるということは、解散と同じだ。むしろ(比例代表の180人が残っているから)解散よりも、社会的変更は少ない。そして、解散を社会的混乱と言う人はいない」

しかし、小選挙区制が違憲である理由として重大なのは、定数配分の格差よりも、投票価値の格差(生票と死票の対立)です。同じ理由で衆議院の比例区や参議院の選挙区は投票価値の格差をもたらすので違憲です。衆議院の比例区や参議院の選挙区は定数の異なる11ブロックや、改選定数1〜5の選挙区に分かれていて、ブロックや選挙区によって死票率に格差が生じているからです。死票率の格差は政党間1票格差につながります。

2012年衆院選の比例区(全国集計)における政党間1票格差(「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値)は、社民党でいえば4.87倍にもなっています。「2倍」程度の定数配分の格差よりよほど重大です。

2012衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=435#2012election8
(8) 2012衆院選の最大1票格差――小選挙区が日本未来の党の13.83倍、比例区が社民党の4.87倍

2014年衆院選でも同様の政党間1票格差が生じているはずで、新たに提起する衆院選無効請求訴訟の争点の1つにします。

太田光征

2014年衆院選:注力した松戸市7区で、与党は比例区得票率の千葉県内順位を落とし、国民審査罷免率が向上

12月 23rd, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 23:54:30
under 選挙制度 , 2014年衆議院選挙 Comments Off 

【要旨】
- 与党は松戸市7区で比例区得票率の千葉県内順位を2012年と比べて下げた。特に公明党は14年と12年の比が全103選挙行政区中97位と低迷。
- 松戸市7区で国民審査罷免率の県内順位が2012年の8位から3位に向上。

2014年衆院選に合わせ、「民主主義創生の草の根街頭行動」ということで、11月24日から11月13日まで集中的に街頭で訴えました。公選法上は選挙運動ではなく、一般的な政治活動ないし落選運動、国民審査運動としての取り組みです。

特に力を入れたのが、選挙区でいえば松戸市7区(千葉県7区の松戸市部分)です。その北が流山市(千葉県7区)、南が松戸市6区となります。

選挙で民意を問うというが、わずか4割の得票率しかない自民党が8割もの議席を獲得できる小選挙区制の下では民意を偽装するしかできない、選挙で民意を問うというが、2012年衆院選で沖縄選出の自民党議員が沖縄・辺野古の海に新たな米軍基地は造らないと公約しておきながら選挙後に破ってしまった、選挙で民意を問うというが、11月の沖縄県知事選で改めて沖縄に新たな米軍基地は要らないという圧倒的な民意が示されながら主要政党の自民・公明・民主・維新は無視し続けている、ということを徹底的に訴え、そもそも選挙と民主主義の前提が崩れ去っていることを強調しました。

(1) 訴えの主な内容

その他、主に以下のようなことを訴えました。

1925年に男子ばかりの普通選挙法が成立したが、以来、世界一高い選挙供託金制度によっていまだに普通選挙は実現せず、制限選挙が続いている。選挙運動のための戸別訪問や自由なチラシ配布が禁止されている国は世界に例を見ない。女性議員比率は先進国中、最低であり、世界一高い政党交付金で政党を甘やかしている国も日本以外にない。日本の選挙関連法制、政党関連法制は世界の民主主義水準から大きく立ち遅れている。自民党の石破氏は韓国が民主主義の発展段階にあると語ったが、とてもよそ様の国を批判していられるほど、日本の民主主義は発展していない。

従軍慰安婦問題で歴史を偽造する発言を安倍首相と橋下大阪市長が繰り返しているにもかかわらず、その責任を問わないままで、本当に国民のための政治が実現するのか。

オランダの民間人女性を強制連行して従軍慰安婦にしたスマラン事件などがあり、裁判で日本軍将校が有罪判決を受けている。10月末にオランダのアレクサンダー国王が来日され、天皇皇后両陛下、安倍首相が参加しての宮中晩さん会で、まさにスマラン事件のことに間接的ながら言及したオランダ国王の話、また先の大戦でオランダと日本の友好関係が損なわれたという主旨の挨拶で同事件を間接的ながら認めた天皇の発言を、安倍首相はどういう気持ちで聞いていたのか、なぜ日本のメディアはこうした重要な発言を報道しないのか。

強制連行で行動の自由のある遊園地に連れてこられるのと、丁重に騙されて行動の自由のない従軍慰安所に連れてこられるのと、どらちがマシか。安倍首相と橋下大阪市長などはこうしたトリックでいまだに従軍慰安婦の方を苦しめ続け、日本の名誉を汚し続けているのである。同じ従軍慰安婦の問題で誤報記事を報じたことが原因で一民間企業の朝日新聞の社長が辞任に追い込まれながら、二人がいまだにその職にあることは、あまりに不公平であり、理不尽なことである。

沖縄に米軍基地を押し付け、福島や新潟などの地方に原発を押し付け、他人事だと思ってきたが、ここ千葉の木更津に沖縄のオスプレイが来ようとしている、福島から放射性物質が飛んできた。他人事ではない。

犠牲を強いる政治から逃れることはできない。無責任の政治の矛先から逃れることはできない。

アベノミクスや消費税増税などの個別政策課題を云々する以前の大きな問題が素っ飛ばされているのが、今回の選挙である。

低所得者が低所得者の生活保護受給者を叩く構図は悲しく、叩く対象が間違っている。国民にしても勘違いをしている。日本の生活保護受給者は1.7%に過ぎず、ドイツでは9.7%が受給している。派遣労働を推進して格差・貧困を拡大し、過去最高の子どもの貧困率を招いた自民党政治、アベノミクスをこそ批判すべきである。

この間の政治で明らかになったのは、小泉首相、麻生首相の時代から、いくらGDPと企業業績が上向いても、庶民の給料が増えないということ。経済成長や企業競争力の向上という条件なしに、無条件で庶民の所得を増やす政策が必要である。米国のウォーレン・バフェット氏は自分のような金持ちに対する増税、富裕者税を主張し、それをオバマ大統領も自分の政策に取り入れている。法人税と所得税の税率を20年前に戻せば、あるいはわずかな税率の富裕者税を創設すれば、消費税は必要ない。レーガン大統領が法人税減税で米国を債務国にし、クリントン大統領が法人税増税で財政を黒字にした米国経済の歴史を学ぶべきである。

三菱重工業は米国のサンオノフレ原発に蒸気発生器を納入し、放射能漏れ事故を起こし、同原発を廃炉に追い込んだ。アベノミクス成長戦略の柱の1つが、放射能漏れ事故を起こすほどの日本の原発技術の海外輸出であり、こうした技術によって海外で大規模な原発事故でも起こせば、技術立国・日本に対する信頼は一瞬にして吹き飛んでしまう。成長戦略どころか、日本経済に大きな打撃を及ぼしてしまう。

三菱重工業は自民に対する献金額を増やした。自民の世耕議員などは派遣会社から献金を受けている。株高といってもその恩恵に与ったのは証券会社であり、その証券会社も自民に対する献金額を増やしている。原発の輸出、派遣労働の拡大など、偏った政策を推し進め、その恩恵を受けた企業から献金を受け取るというのが、自民党政治、アベノミクスのカラクリである。

成長戦略というなら、沖縄県が試算で明らかにしているように、沖縄の経済発展を阻害している米軍基地を減らすべきである。在日米軍には毎年、5000億円以上もの税金をくれてやっている。これを格差・貧困対策、震災の復旧・復興に充てるべきである。私たちの暮らしと経済に関係がある政策はアベノミクスだけではない。

在日米軍特権法というべき安保特別法が主なものだけで22本もある。基地を汚染しても現状復帰する義務がない、低空飛行訓練をしてもよいなど、至れり尽くせりである。

安倍首相は国民の命を守るために集団的自衛権が必要だというが、第一安倍政権の時に野党から原発の電源対策の不備を指摘されておきながら、それを無視した。十分な対策を行っていれば、福島原発事故は防げたかもしれない。現在の日本にとっての最大のリスクは外国からの軍事攻撃ではなく、自然災害であるが、自衛隊の全予算に占める自然災害対策費はわずか1%しかない。東日本大震災や今年2月の大雪被害などでも自衛隊の被災者救援が遅れた。安倍首相がいう「国民の命を守るため」は本心ではない。

集団的自衛権の行使容認に抗議して、これまで1人が自殺、1人が自殺未遂を図っている。6月末、新宿東口のアルタ前で訴えていたのとほぼ同じ時間帯、新宿駅南口で焼身自殺を図った男性がいた。全身燃え盛りながら歩道橋の上から落下する男性を収めたビデオがユーチューブにアップされているが、大変に痛ましいシーンである。この重い事実を受け止めていただきたい。

メディアは自民対野党という構図を提示しているが、野党といっても自民と変わらない政策を掲げている野党が多く、消費税増税という点で主要政党は同じである。野党内でも政策はバラバラである。最大の争点がアベノミクスの評価であるという争点設定と併せ、あまりにも矮小化している。国境なき記者団によれば、日本のメディアの自由度は世界第59位であり、信用できない。

責任ある避難計画があれば原発を再稼働してもよいとする民主党の方針はおかしい。日本の農業と国民皆保険制度などを破壊するTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉に民主党は反対していない。集団的自衛権の行使一般は認めないというのが民主党の立場だが、部分的な行使なら認めてもよいとする結論を出しかねない。

自民党に漁夫の利を得させまいとして選挙協力をする民主党や維新の党などは、なぜ民意を歪め、自民党を利する小選挙区制に反対しないのか。野党は小選挙区制廃止の統一公約を掲げるべきである。

主要政党は消費税増税という国民負担を求める以上、自ら身を切らなければならない、だから国会議員定数を削減すべきであると主張しているが、暴論である。人口が8000万人弱と日本より少ないドイツでは、下院の基本定数は598議席もあり、日本の衆院の定数475議席より100議席以上も多く、日本の国会議員定数は現在でも世界的にみて少ない。

国会内の委員会のポストは議員定数よりも多く、大政党でも議員1人が複数の委員会を掛け持ちしている。特に議員定数の3割削減を主張している維新の党などは、それが実現すれば委員会に委員を配置させることすらできないだろう。民主主義を真面目に考えている政党ではない。現在でも法案のほとんどを官僚が書いている。定数を削減すれば、官僚優位の体制が強化される。

沖縄に押し付けている荷重な米軍基地の負担、子どもに押し付けている貧困という負担、福島県民を中心に押し付けている原発事故という負担は、負担ではないのか、これらの負担は消費税増税より軽いとでもいうのか。議員定数の削減がばかばかしいことを分かってもらいたい。国民が望む形で真の無駄を削減するには、国会に民意が反映されていなければならない。議員歳費はそれと比べ、微々たるものである。

韓国では事故を起こしていない原発の周囲で甲状腺がんがそうでない地域と比べ多発しているとの判決が下った。事故を起こした日本ではどうなのか。東葛地域の市民運動がリーダーシップを発揮して子ども被災者支援法を成立させた。福島原発事故によって健康被害は発生しないとの前提に立った放射能健康検査ではなく、十分な健康検査が必要である。

(2) 国民審査罷免率に対する影響(2012年との比較)

国民審査は国民投票なので、小選挙区制によって民意が歪められません。国民審査の1票は非常に効力のある1票です。新たな定数配分の格差是正訴訟で今度こそ選挙結果を無効とすることで、定数配分の格差是正だけでなく、小選挙区制の廃止を含めた選挙制度の抜本改正を迫る機運とすることができます。

だから私は、棄権をせず最高裁判所裁判官国民審査で選挙結果を無効としてこなかった裁判官に×を、と街頭でも徹底的に訴えました。

2014年衆院選で棄権したい方:最高裁判所裁判官国民審査で裁判官に×をつけ、小選挙区制の廃止につなげよう!
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/410367410.html

千葉県選管が発表した結果を見てみます。

http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Chiba_Kokuminshinsa.xls

私が注力した松戸市7区では、裁判官の罷免を可とする票の割合が2012年選挙の10.3%からわずかに増えて11.6%となりました。また、選挙行政区単位の順位も、松戸市7区は2012年の8位(柏市8区、白井市、習志野市、千葉市美浜区、浦安市、船橋市(2014年は船橋市が13区と4区に分かれていますが、12年と比較できるよう、船橋市13区を船橋市4区に統合)、千葉市花見川区に続く)から、今回は3位(柏市8区、習志野市に続く)へと上昇しています。

今回の選挙でやはり国民審査を重視していた内田ひろき柏市議を擁する柏市8区で、罷免率が2年連続で最高を記録しているのも、偶然ではないでしょう。

衆議院選挙がスタート | 内田ひろき 活動記録・ドブイタから政治闘争まで
http://uchidah.info/blog/?p=6346
「今回の選挙で私、内田ひろきがもう一つ重要だと考える戦いは、衆議院議員選挙と同時に執行する最高裁判所裁判官の国民審査である。」

1人で1ポイント伸ばしたといえば傲慢かもしれませんが、それくらいの力量が市民運動にあることを証明したいという思いで、今回は取り組みました。1人で1ポイント動かせるのなら、市民運動が総力を挙げたときの力は膨大です。

(3) 政党得票率に対する影響(2012年との比較)

各党の松戸市7区における比例区得票率と、選挙行政区単位での県内順位は、以下のようになっています。上段が2012年、下段が2014年です。(選挙行政区は市計、選挙区計などの重複を合わせて県内全103行政区。2014年は船橋市が13区と4区に分かれていますが、12年と比較できるよう、船橋市13区を船橋市4区に統合。)

http://otasa.net/documents/2014senkyo/2012_Chiba_Hireiku.xls
http://otasa.net/documents/2014senkyo/2014_Chiba_Hireiku.xls

自民党
81位で25.1%(2012年)
86位で32.0%(2014年)

民主党
59位で16.4%
62位で15.6%

公明党
67位で11・1%
77位で12.9%

維新の党
56位で18.8%
7位で17.3%

共産党
10位で6.1%(千葉市花見川区、船橋市、流山市、市川市6区、勝浦市、習志野市、松戸市6区、大網白里町、柏市8区、松戸市7区)
2位で13.5%(千葉市花見川区、松戸市7区)

社民党
3位で2.4%(流山市、野田市、松戸市7区)
4位で2.8%(流山市、松戸市6区、野田市、松戸市7区)

生活の党(12年は日本未来の党)
26位で7.2%
48位で2.5%

与党の自民党と公明党は、いずれも比例区得票率を全選挙行政区で伸ばしているものの、松戸市7区の順位はいずれも下げています。特に公明党については、松戸市7区の得票率の12年との比が1.15倍で97位と低迷しています。

共産党は松戸市7区で得票率、順位ともに上げました。

両年とも7区だけに小選挙区候補を立てた社民党は、松戸市7区での順位が3位から4位に落ちるも、得票率は上げています。社民党の場合は、松戸市6区が2位で3.1%となり、12年の33位、1.8%から上がりました。

松戸市6区が、私が松戸で普段訴える場合の地域です。松戸市6区では、共産党も12年の20位、6.3%が14年には15位、13.4%に上がっています。

野党の民主党、生活の党(12年は日本未来の党)はいずれも得票率、順位ともに下がりました。

12年に千葉県7区でみんなの党から立候補した石塚貞通氏は、今回は同じ選挙区で維新の党から出ました。このため維新は松戸市7区の順位が上がっていますが、得票率は落としています。

(4) 市民個人の力量

私は2014年都知事選で宇都宮健児氏を応援しましたが、私が傾注した葛飾区と足立区は、2012年都知事選と比べて同氏が得票数を伸ばしたトップ3の区に入りました。

このことからしても、完全な実証はできませんが、国民審査に対する影響にしろ、政党得票率に対する影響にしろ、市民個人が及ぼす影響力には大きいものがあるのだと、私は確信しています。

(5) 市民運動のこれから

故菅原文太氏は沖縄県知事選候補・翁長雄志氏の応援で、「仲井真さん、弾はまだ一発残っとるがよ」と語りました。

菅原文太氏のスペシャルゲストあいさつ - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=8PFTMiaHXAc

では、市民運動の弾はどれだけ打たれたのか、一発しか残っていないほどやり抜いたのか。この辺が問われているのではないでしょうか。

多くの有権者を味方につけるため、少人数多地点の街頭行動を改めて呼び掛けたいと思います。

太田光征