消費税増税を強いる前に国会議員は身を切るべきだ?

・「オスプレイ配備という負担を強いる前に行うべき身を切る改革」はどこにいった?
・選挙区間1票の格差2.43倍が問題なら、生票・死票間1票格差(特に小選挙区で)や政党間1票格差4.98倍(2010参院選の結果を基に比例区定数が100に削減された場合の衆院比例区選挙シミュレーションをした場合の民主と社民の格差)の方が大問題である。

2012年12月7日付東京新聞朝刊の記事「身を切る改革遠く 『違憲状態』の衆院選」はひどい。

東京新聞:身を切る改革遠く 「違憲状態」の衆院選:政治(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012120702000105.html

衆議院の定数配分について「違憲状態」判決が出たことから、定数是正が言われている。その限りでは正しい。ところが、これを記事は定数削減と短絡的に結び付け、いわゆる「身切り論」で補強している。

定数是正と定数削減は関係ない。「消費税増税法を成立させた民主、自民、公明の三党は次の通常国会で定数削減を行うと約束した」と記事は指摘するが、そんな談合を私は受け入れない。

記事が書く「国民に負担を強いる前に行うべき身を切る改革」とは一体何だ。消費税増税を主張している民主・自民・公明などは、増税を主張していないその他の中小政党を定数削減によって国会から追い出す、従ってそれらを支持する有権者の身を切るから増税を許してくれ、と主張しているに過ぎず、そんな理屈が通るはずがない。

2012年衆議院選挙アンケート
質問(6)国会議員定数の削減について
http://kaze.fm/wordpress/?p=406

沖縄へのオスプレイの配備は「国民の負担」ではないのか。「オスプレイ配備という負担を強いる前に行うべき身を切る改革」はどこにいったか。
沖縄へのオスプレイ配備に反対する中小政党を国会から追い出すことになる定数削減を行うから、オスプレイ配備の強行を許してくれ、とでも主張するのか。

直近の1票の格差は2.43倍になったという。確かに問題だが、これは選挙区間1票の格差に過ぎず、生票を投じる有権者、主として二大政党の支持者にとってしか意味がなく、厳密には有権者の1票格差の問題ではなく、地域代表性の格差に他ならない。(小選挙区の)選挙区間1票の格差を是正したところで、地方で選出されていた二大政党の候補が、都市部から選出されるようになるに過ぎない。少数政党の支持者のいる小選挙区の選挙区間1票格差が改善されても同支持者にとっての1票価値は生まれず、大政党の支持者のいる小選挙区の選挙区間1票格差が他の選挙区と比べて改善されても、競合する他の大政党の支持者の1票格差も同時に改善されるので、1票価値が自分の選挙区内でも、他の選挙区と比べても、高まるということはない。

1票が価値を持つかどうかは、議員1人当たりの有権者数に依存するのではなく、どの政党を支持するかでほぼ決まってしまう。千葉何区の有権者が等しく高知何区の有権者の何分の1の価値の票しか持っていない、という表現はできない。千葉の当該選挙区で生票を投じた有権者は、高知の当該選挙区で死票を投じた有権者より、1票の価値が高い(ある)のは、当然である。議員1人当たりの有権者数ばかりを問題にしても、1票格差は解消しない。

2010参院選の結果を基に、比例区定数が100に削減された場合の衆院比例区選挙シミュレーション(当時)をしてみると、1票の格差(当選議員1人当たりの得票数)は民主と社民の間で4.98倍となる(社民が4.98倍も余計に得票しなければならない)。比例代表制といっても現在の定数ですら名ばかりで、定数100に削減されることで大政党と少数政党の格差が一層拡大する。

2010参院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=309

選挙区間1票の格差2.43倍が問題なら、生票・死票間1票格差(特に小選挙区で)や政党間1票格差4.98倍の方が大問題である。

1票の格差とは何か
http://kaze.fm/wordpress/?p=381

なぜメディアはこの問題を追究しないのか。

太田光征

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