2009千葉県知事選――森田氏「偽装勝利」の可能性を残す単純小選挙区制のカラクリ

4月 1st, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 18:50:12
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 千葉県知事選挙が終わりました。メディアは案の定、森田氏の「圧勝」、森田氏勝利の「民意」という表現を使っています。しかしここには致命的な問題が潜んでいます。

 平和運動関係者の中には、共産党推薦の八田氏と民主党推薦の吉田氏の得票数を合わせても、森田氏の得票数に及ばないことをもって、「分裂選挙」を今回の敗因と考える人は少ないかもしれない。仮に、八田氏と吉田氏陣営が統一候補を立てたとしても、白石陣営や西尾陣営とまでは統一できないから、今回の結果は「実力」の差であり、敗北は仕方がない、と。

 しかし、森田氏の勝利は、必ずしも民意を反映しているとは言えない。現行の単純小選挙区制では、過半数を制する候補者が現れない限り常に「偽装勝利」の可能性が残るのです。単純小選挙区制が偽装勝利を許すカラクリを説明しましょう。

2009年千葉県知事選挙結果
出所:千葉県選挙管理委員会

候補者 得票数
森田健作 1,015,978
八田英之 136,551
西尾けんいち 95,228
白石ますみ 346,002
吉田たいら 636,991
2,230,750

 
 
 白石、八田、 西尾の各氏に投票した有権者の90%が、吉田氏、森田氏をそれぞれ2番目に好きな候補(第2選好候補)、3番目に好きな候補(第3選好候補)と判断し、白石、八田、 西尾の各氏に投票した有権者の残り10%が、森田氏、吉田氏をそれぞれ第2選好候補、第3選好候補と判断したとします。さらに、森田氏に投票した有権者全てが、2番目以降の候補として、吉田氏 > 白石氏 > 八田氏 > 西尾氏の順に好きだたとしましょう。

 結果は、森田氏より吉田氏を好ましいと思う有権者が1,156,994人、吉田氏より森田氏を好ましいと思う有権者が1,073,756人。従って、「最も好まれた候補者」は、吉田氏ということになります。

 上記の「90%」を「83%以上」に置き換えても同様です。このパーセンテージについては、八田氏投票層に限れば、ほぼその線が予想されますが、実際はブラックボックスで分からない。

 「第1選好票で最も好まれた候補者」である森田氏は、上記を仮定すれば、実は「2番目に好まれた候補者」なのです。単純小選挙区制は、第2選好以下の順位を測ることができないので、見かけの選好順位しか決定できない。こうした矛盾をコンドルセのパラドックスと呼びます。単純小選挙区制を選挙制度とはみなせない理由の1つです。

 単純小選挙区制による選挙は、過半数を制する候補が現れない場合、選挙でも何でもないわけです。

 何時になったらこの虚構の政治儀式から抜け出せるのか。主権者としては、主権者をコケにする選挙制度の改正に、最優先で取り組みたいものです。

太田光征
http://otasa.net/

千葉県知事選挙:熟議討論集会の報告と立候補者情報

3月 26th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 18:59:27
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千葉県知事選挙熟議討論集会
平和への大結集・千葉主催「千葉県知事選挙熟議討論集会」

修正:名前が抜けていたので、追加しました。

(参考)
森田氏:憲法9条は改正を検討すべきである。
(「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート)

【目次】

(1) 主権者はどのような投票行動をすべきか――熟議投票・選挙区すみ分け投票
(2) 千葉県知事選挙熟議討論集会の報告
(3) 「八ッ場ダムをストップさせる千葉の会」公開アンケート
(4) 「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート――鬼泪(きなだ)山からの山砂採取問題など
(5) 浦安合同個人演説会
(6) 朝日新聞 千葉県知事選候補者アンケート
(7) 「平和への大結集・千葉」公開アンケート
(8) 千葉県知事選挙情報サイト

【立候補者】

森田健作氏 無所属 新
八田英之氏 無所属(共産推薦) 新 
西尾憲一氏 無所属 新
白石真澄氏 無所属 新
吉田 平氏  無所属(民主、社民、国民新、市民ネット推薦) 新


(1) 主権者はどのような投票行動をすべきか――熟議投票・選挙区すみ分け投票

そもそも「熟議投票」という概念は、小林正弥さんらが2004年参院選に向けて発表したアピールの中で、次のように提案されたものです。

「…選挙制度の変化のために、従来のように政党の支持・不支持だけで投票すると、死票となってしまう危険性が増えています。そこで、現在の選挙制度においては、各党・各候補者の政策に加えて、選挙区の状況を勘案して、投票することが重要になってきています。そこで、『熟議民主主義(deliberative democracy)』の最も重要な一環として、『これらについての情報を得た上で、さらに市民の間で十分な議論を行い、各自で投票を考える』という『熟議投票(deliberative vote)』が望ましいと思います。」
(B−2.「平和への結集」投票の指針:平和を希求する有権者に」
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/ReCPAcoe/51kobayashiichinose.pdf

つまり、小選挙区制という死票を発生させる選挙制度を前提に、候補者の当選可能性なども考慮した戦術的投票のことを熟議投票と呼んでいます。

首長選挙にしろ、議会選挙にしろ、政策をパッケージで提示されたところで、主権者としては一括承認するわけにいきません。選挙で選択できるものには限界があります。

首長や議員の政策決定権限を最小限に抑制し、首長制のあり方について検討し、住民投票制度など、個別課題ごとに民意を直接問う制度を整える必要があるでしょう。

首長選挙は小選挙区制で行うしかありません。そうはいっても、過半数得票率の規定や決戦投票機能などを備えていない現行制度は、コンドルセのパラドックスを考慮していないので、選挙制度の名に値しません。

主権者としては、主権を保障する諸制度の確立にこそ優先的に取り組む必要があります。主権が保障されない枠組みの中で、各政策課題について熟議し、候補者の姿勢を問うことは、いつまでも続けられません。

今回の熟議討論集会では、予想通り、参加者は八田氏(共産党系)を推す人と吉田氏(民主党系)を推す人に分かれました。これでは森田氏の当選を拒むことは難しい。こうした矛盾と対立の構造は、主権を侵害する現行選挙制度に原因があります。

「各自が勝手に投票先を決める熟議投票」だけでは、不十分なのです。各自が勝手に投票先を決められるのは、主権を保障する選挙制度ができてからのこと。それまで主権者は、投票行動を統一する必要があります。

そのような矛盾・対立構造を解消するものとして私が提唱しているのが、「選挙制度修正投票としての選挙区すみ分け投票」です。現行選挙制度では矛盾のない選択などできないのだ、ということを認めなければなりません。そこが出発点です。

熟議討論集会では、首長選挙とその他の選挙をパッケージで考える必要があると提案しました。八田氏側(共産党系)の主権者は、今回は吉田氏側に投票する。その代わり、今度の総選挙の比例区など2人区以上では、吉田氏側(民主党系)が八田氏側(共産党系)に投票する――これで、総体において、私たちが望む平和候補者の当選拡大を図ることができる。

重要なのは、こうした選挙区すみ分け投票によって、民主党に偏っている野党の勢力バランスが修正され、野党共闘路線を確かなものにする効果がある点です。そうした政治力学が生まれて初めて、矛盾に満ちた単純小選挙区制の廃止に道が開かれるでしょう。

選挙区すみ分け投票は、選挙制度改革運動に他ならず、共産党系主権者と民主党系主権者の矛盾・対立構造を解消する機能を持つものです。


(2) 千葉県知事選挙熟議討論集会の報告

平和への大結集・千葉が主催した「千葉県知事選挙熟議討論集会」に参加してきました。

日時:2009年3月21日
会場:千葉市市民会館                      
主催:平和への大結集・千葉(http://www.xn--x41az7v.jp/~daikessyu/

参加者から出た意見を簡単にまとめておきます。

―投票率ワースト1は、1981年の千葉県知事選挙で、25.38%。平成9年が28.67%、昭和29年が29.30%、昭和60年が30.7%。

―森田氏は、浦安合同個人演説会では3分の1くらいしか参加していない。残土産廃ネットワークでも公開アンケートをお願いしたが、回答拒否の文面が大結集に対するものとまったく同じで、誠実さが見られない。白石氏からも回答がなかったが、八田氏からは回答をもらった。

―白石氏は、教育政策の見直しを掲げているが、学校選択制とかバウチャー制など、新自由主義的意味での個人の尊重を主張している。

―白石、森田の各氏は、医療の自立を主張。病院ごとの独立採算性のことなら、医療の現実を分かっていない。

―吉田氏は、支持団体を通じて配布するチラシと、一般向けチラシが異なっている。

―市民ネットワーク千葉県の方:市民ネットワーク千葉県は、総選挙に向け、13ある選挙区のうち、6、7選挙区で民主党と政策協定を結んだ。自衛隊の海外派遣には慎重を期することを盛り込んだ。平和・憲法を基準に個人ごとに推薦するかどうかを決めている。吉田氏についても、100%政策を支持しているわけではない。政策協定に、当選後、その都度話し合うという条項をいれてある。

―新社会党の方:新社会党としては、問われれば、八田氏を支持することにしている。吉田氏は、教育基本法の改定推進に立場にあった政治倫理研究会の役員をしている。吉田氏は、教育基本法の改定には賛成しているが、公明党に関する部分には不満だと明言した。吉田氏は、財界も推している。堂本氏は、後に自民党に取り込まれた。吉田氏は、よりまし候補とは言えない。残念だが、当選可能性はないが、八田氏がいいと判断した。

―新社会党の方:8年前、共産党で活動している方から、共産党候補を推す政策協定を持ちかけられたが、共産党県レベルで拒否されたという経緯がある。4年前も、候補者と政策・応援協定を結んだが、チラシに「新社会党支持」という言葉が入った程度で、応援依頼はなかった。

―堂本知事に環境問題で要望をしたが、環境問題は全部自民党が押えていて、何もできないと語っていた。自民党を半分にしてくださいよ、と言われた。堂本氏にとって、手に余る千葉県だった。吉田氏も、有権者が応援しなければならない。知事になったら、(政治を)させること。

―八田氏の周囲がアンケートに回答しなかったことに不信を抱いている。政策についてではなく、自分たちの組織に属さない市民にどう呼びかけて政策を実現していくのか、疑問だ。

―自民党は成田・羽田間に3兆円をつぎ込もうとしている。借金だ。森田氏には30人の自民県議がついている。

―吉田氏が知事選出馬に当たって相談したのが松下政経塾一期生の方だった。当選後にチェックする上でも、候補者の背後を知っておく必要がある。


(3) 「八ッ場ダムをストップさせる千葉の会」公開アンケート

「八ッ場ダムをストップさせる千葉の会」公開アンケート
http://yanbachiba.blog102.fc2.com/blog-category-17.html

八ツ場ダム反対を明確に主張しているのは、八田氏と吉田氏。西尾氏は回答がなかったが、パンフレットなどから、千葉県の財政負担反対は明らか。

白石氏:「八ッ場ダム事業については、治水、利水の観点から事業の必要性は理解できるところであるが、ただ、闇雲に事業を進めるだけでなく、時代のニーズや進め方を検証した上で、事業費の削減など必要な見直しについても考えていくことも必要であると考えている。」

(参考)
白石氏:4600億の事業のうち、すでに7割の執行が完了しており、今後、千葉県の負担金はダム本体工事だけで約46億あり、これを福祉に、という声があるが、千葉県は年間1600億の福祉予算を使っている――という正しい知識を持っていただきたい、と発言。(浦安合同個人演説会)

吉田氏:「千葉県の水需給予測、及び河川整備の点からみて、利水、治水の両面から必要ないと考える。」

森田氏:「この問題は千葉県単独の事業ではないため、関係都県との調整が必要。また全体の建設費が9000億円、千葉県の負担金も780億円に及ぶことから、関係都県と協議、検討した上で対応を考えるべき。」


(4) 「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート――鬼泪(きなだ)山からの山砂採取問題など

「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート
http://chibatiji.exblog.jp/9788796/

鬼泪(きなだ)山周辺の国有林からの山砂採取に明確に反対しているのは、西尾、八田、吉田、森田の各氏。白石氏は、一括文書回答で、その中で鬼泪山に言及していない。

「政策を知る会」公開アンケートではこのほかにも多くの質問項目があり、森田氏が女性関連政策に軒並み否定的な回答をしていることが明白です。

道路・交通についても、リニアモーターカーの導入をすすめると1人回答したのが、森田氏で、「産業の振興、雇用創出のためにも高規格道路(自動車専用道路)づくり(圏央道、第2湾岸、銚子連絡道路など)をすすめる。」を明確に選択したのも森田氏。


(5) 浦安合同個人演説会
                       
浦安合同個人演説会の様子を伝えるJANJANの記事
「千葉県知事選 候補者5氏が揃って演説会」(ビデオあり)
http://www.senkyo.janjan.jp/senkyo_news/0903/0903160494/1.php

以下は、政策に相違が目立つ課題についての発言要旨です。

行財政改革について

西尾氏:県職員に対する地域手当の廃止と聖域のない行政コストのカットを主張。
白石氏:知事報酬の2割カットと県職員の削減、(子育ての終わった)退職間際の職員の給与カット、退職金の半分を県債で支払う、年1千億円カット、法人超過課税の導入で税収増を主張。
森田氏:前年度踏襲主義を止め、事業の見直し等のコスト削減を図る。
八田氏:小泉構造改革と三位一体改革で、仕事が増えたにもかかわらず2008年まで4兆円の税金が減らされたことと沼田県政時代の大型開発が財政破綻の原因。巨大開発の見直しと、福祉型公共事業の転換を主張。
吉田氏:無駄な国直轄事業への財政支出の中止と大胆な投資を主張。

雇用問題について

西尾氏:バイオマスエネルギーの生産や介護事業に力をいれることで雇用を増やす。
森田氏:自分自身の試練を与えられた使命だと思い乗り越えることに頑張ることから入るべきである、頑張ればメシぐらいは食えるのではないかと主張。アクアライン料金を800円に下げて、経済効果を期待する。
八田氏:労働者派遣法の抜本改正を求め、大企業呼び込み型ではない雇用効果の高い福祉型公共事業に転換し、大企業の責任を取らせ、セーフティーネットを拡大する。
吉田氏:企業を倒産させないための緊急融資を県独自の既存制f度を利用して行い、農業ハローワークなどを通じた需要創造を。
白石氏:企業に解雇を思い止まらせるための雇用調整助成金の拡充、失業給付の改善を国に求め、職業教育を進め、成田空港を活かして海外からの渡航者を対象にした遺伝子ビジネスを呼び込みたい。

教育問題について(これ以降、森田氏は退席した)

八田氏:学校間競争と財政支援の格差を持ち込むことになる学力テストの公開には反対し、子供に格差を持ち込まず、生きる力を育てるべき。
吉田氏:学校・家庭・地域が一体となった地域センターによる教育を。
白石氏:出し方に注意をした学力テストの公開に賛成で、成績の悪い学校に人的・資金的資源を投入すべきとし、多様性のある教育と機会均等を主張。学力テストという数値化した実証データで「格差」は測られるし、それに基づき教育を語る必要があるとした。
西尾氏:競争を煽る学力テスト公開には反対で、基本的な生活習慣を身に付けさせることが学力向上につながり、携帯やテレビ、ゲームなど学習を阻害する要因を減らしていくべきと主張。

三番瀬と第二湾岸道路について

白石氏:三番瀬は県独自の保全条例を検討し、湾岸道路は需要予測に基づき検討していきたいとした。
西尾氏:三番瀬は保全しラムサール条約に登録すべきで、第二湾岸には見切りをつけ、湾岸バイパスを。
八田氏:三番瀬のラムサール条登録を急ぎ、第二湾岸道路は財政的重荷であり、慎重にならざるを得ないと主張。
吉田氏:三番瀬はラムサール条約に登録し、アクアライン無料化が実現すれば、湾岸道路は必要なくなるとの見解。
(参考:三番瀬猫実川河口域の埋め立てについて)
森田氏:現段階では明確に判断を下せる段階にはないと考える。今後、様々な意見を伺いながら、検討すべき。
(「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート)

介護問題について

西尾氏:南房総にシニアタウンのようなものを建設したい。
八田氏:千葉県の特別擁護老人ホーム数は全国最低で、これを6000作ると公約。
吉田氏:要介護度4、5の方に対するセーフティーネットを拡大する予算措置が必要であり、在宅やグループホームも検討すべきと主張。
白石氏:後期高齢者医療制度は無理があるので、制度改正を求めていき、介護については、小規模分散型ケアホームを、資金がかかるので、NPOなどを活用して建て、不足する介護士に外国人の活用を検討したいとした。

憲法9条について

回答時に出席していなかった森田氏を除く4名が、1項、2項とも守るべきだとした。
西尾氏:憲法を変えずとも、自衛隊を持つことができたし、将来は非武装を目指すべきと発言。
八田氏:世界の財産が憲法9条、世界で評価が高まっていると主張。
吉田氏:憲法を一切変えないという思想とリンクすることは違うと発言。
白石氏:現憲法下でも自衛隊を持つことができており、国際協力、海外派遣が十分機能していることを改正しない理由に挙げた。
(参考)
森田氏:憲法9条は改正を検討すべきである。
(「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート)

タウンミーティンングについて

八田氏:それを含め様々な機会を捉え様々な意見を聞きたい。
白石氏:堂本氏のようにタウンミーティンングを定例化する考えはない。
西尾氏:膝を付き合わせる会議を設けたい。
吉田氏:(時間切れでコメントなし)

八ツ場ダムについて

白石氏(最後のまとめ演説にて):4600億の事業のうち、すでに7割の執行が完了しており、今後、千葉県の負担金はダム本体工事だけで約46億あり、これを福祉に、という声があるが、千葉県は年間1600億の福祉予算を使っている――という正しい知識を持っていただきたい、と発言。


(6) 朝日新聞 千葉県知事選候補者アンケート

朝日新聞 千葉県知事選候補者アンケート(3月17、18日付)から。

成田空港について

八田氏が、発着回数を際限なく増やすことに反対、森田、白石、吉田の各氏は、年間30万回の発着回数を目指す考え。

医療再生について

森田氏:「自立のための経営サポートや効率化の推進、地域事情に合わせた対策に加えて、自立支援のための資金投入も検討する。」
八田氏:「県が地域医療に責任を果たす姿勢を明確に」
西尾氏:「無駄な公共事業(八ツ場ダム)を直ちに停止・凍結し、この予算を県立医科大学創設に振り向け…」
白石氏:「病院局を地方独立法人化して、七つの県立病院の合理化と自立化を図り、一般会計からの繰り出し金を抑制し、財源を地域医療の中核病院支援へ振り分ける。」
吉田氏:「教養課程修了者を受け入れる4年制の医大を民間と共同で設置するほか、千葉大医学部の定員を増やす。」


(7) 「平和への大結集・千葉」公開アンケート

「平和への大結集・千葉」公開アンケート
http://www.xn--x41az7v.jp/~daikessyu/page012.html

八田氏と森田氏からは文書で回答できない旨、返事がありました。


(8) 千葉県知事選挙情報サイト

下記サイトはニュース記事など情報が豊富です。

千葉県知事選挙2009 千葉を任せていいのは誰なんだ?
http://chibagovernor2009.blog73.fc2.com/
 
 
太田光征
http://otasa.net/

選挙制度改革に関する協議の申し入れ

3月 17th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 23:18:03
under 一般 [7] Comments 

 西松建設からの政治献金が「事件化」されたことで、政治資金規正法の改正に動き出す気配が生まれてきました。1994年には、政治改革の名目で現在の選挙制度に改悪されてしまいましたが、今回の件がきっかけとなり、正しい方向で選挙制度改革に注目が集まってほしいところです。

 政治献金を政党のみに認めればよいとか、公共事業を受注する企業からの政治献金を禁止すればよい、という意見が出ていますが、そうした制度内改革だけでは、企業寄り政策などを是正できません。派遣企業からの政治献金が適切だ、ということにはならないでしょう。

 では企業・団体献金を一律に禁止すれば、政治改革が完成するのか。政党・議員の買収手段は、企業・団体献金だけではありません。例えば、原発を推進したい電力企業の労組から、選挙運動の支援を受けるという便益も、政治を歪めます。

 小選挙区制は、二大政党制という寡頭政治を強制する傾向があります。ですから小選挙区制は、腐敗政治を固定化させるのに都合がいい制度です。この点に目を向けなければなりません。

 買収する側は、二大政党だけを押えればよい。アメリカのように、マスメディアと二大政党の癒着も悲劇的です。主権者にしても、小選挙区制の下では、ポジティブな面では違いがあっても、ネガティブな面では同じ二大政党というのが、一番悩ましい。死票を生じない選挙制度の下での多党制が、腐敗政治を防止するためのセーフティーネットといえます。

 主権者の良識を死票の形で抹殺しない、主権を保障する選挙制度が、何よりも価値があります。

 本日、下記申し入れ書を民主党、日本共産党、社会民主党、国民新党、日本新党および新党大地に郵送しました。

太田光征
http://otasa.net/
 
 

選挙制度改革に関する協議の申し入れ

●●御中

 国会活動いつもありがとうございます。貴党には、野党連合による、国民の立場に立った、民意を反映した政権交代を期待しております。

 その政権交代とも密接に関係する選挙制度について、各党は次期衆院選に向け、見解を出し始めています。選挙制度は、憲法が真っ先に謳った国民主権を具体的に保障するための、極めて重要な制度であり、すべての主権者にとって最優先の政治課題であるといえます。主権を切り縮める方向での選挙制度改定は、あってはなりません。

 これまで、尋常でない頻度で公職選挙法が改定されてきましたが、そのほとんどが主権を制約するものでした。1994年に小選挙区比例代表並立制が導入されたことで、主権格差が制度化され、世界に類を見ない主権侵害の法体系が完成しました。

 野党が得票率で与党を上回った場合でも、与党が政権に居座ったり、得票率で与党より劣る野党が政権を獲得したりすることを許す小選挙区制は、選挙制度の名に値しません。

 いわゆる「衆参のねじれ」は、小選挙区制による「民意のねじまげ」の賜物にほかなりません。「衆参のねじれ」解消は、小選挙区制の廃止で可能です。

 そもそも選挙制度は、単に政権交代を促すための制度ではなく、歴史的にみても、小選挙区制が政権交代を促すという事実はありません。もはや、小選挙区制神話に基づく政権交代の必要性がないほど、自民党の寿命が尽きようとしています。

 つきましては、貴党と当団体があるべき選挙制度について意見交換を行える機会を設けていただきたく、お願い申し上げます。このような政党・市民間の協議が実現すれば、日本の民主主義に画期的な前進をもたらすに違いありません。是非ともご検討よろしくお願い申し上げます。

2009年3月17日

「平和への結集」をめざす市民の風・選挙制度問題担当
太田光征

「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!2.21パネルディスカッション」報告

3月 1st, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 12:18:20
under 一般 [2] Comments 

「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!2.21パネルディスカッション」の報告です。発言要旨をかいつまんで紹介しておきます。詳しい内容については、直接ビデオをご覧ください。

太田光征
http://otasa.net/
 
 
「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!2.21パネルディスカッション」
主催:2.21パネルディスカッション実行委員会
日時:2009年2月21日
場所:文京区民センター

憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 1/7
http://video.google.com/videoplay?docid=-1897314432599953858

 
 

最近の世界金融恐慌について:伊藤 誠(経済学者)

現在の金融恐慌は、新自由主義の結果であり、資本主義の運動内部によるもの。オバマ米大統領も(ニュー)ニューディール政策を取ろうとしている。ニューディールは、完全雇用を実現できないという限界があった。それが実現したのは、第二次大戦があったから。現在の軍事技術は、資本集約的で、雇用効果が少ない。

ドイツ左翼党の経験から:伊藤成彦(中央大学名誉教授)

ドイツでは2007年に、旧西ドイツの社会民主党左派が離脱して結成したWASG(Arbeit & soziale Gerechtigkeit ? Die Wahlalternative)と、旧東ドイツのドイツ社会主義統一党を前身とする左翼党-民主社会党が、統一して左翼党を結成した。政党連合段階の2005年9月の連邦議会選挙では、614議席中、54議席を獲得した。左翼党は、東西格差がある分断国家で統一がうまくいかなかった状況で結成されたもので、日本にこのモデルを当てはめることはできないだろう。

憲法・自衛隊・田母神論文問題:山内敏弘(龍谷大学教授)

昭和初期に似ている現在の状況、右旋回傾向が、田母神問題をクローズアップさせている。田母神氏は表現の自由を主張していたが、下部自衛官と高級幹部では表現の自由の保障度が違う。同じ航空自衛隊に所属していた小西誠氏の言論活動は保障されず、小西氏は懲戒免職処分を受けている。

「テロとの戦い」のデマゴギー:奈良本英佑(法政大学教授)

2001年9月11日、マンハッタンの南、ユニオンスクエアで新聞を読んでいた。ツインタワーが炎上し、崩れ落ちた。その翌日、ハイジャック犯19人の顔写真が新聞に載っていた。捜査当局が動きをマークしていたが、止められなかったか、止めようとしなかったのだろう。刑事事件の捜査経過がはっきりしていない。その後アメリカは、証拠を示さず、ビン・ラディンを引き渡せとアフガニスタンに要求し、アフガニスタン攻撃を開始した。9月12日の新聞で、当時の国防次官が、イラクもやるべきだ、と発言している。「テロとの戦い」はインチキである。

平和運動の経験から:糸井玲子(キリスト者政治連盟)

二度と神を裏切ってはいけないと、日の丸君が代裁判などを闘っているクリスチャンが多い。子供だったから、知らなかったからといっても、戦争に加担した罪を背負っている。残りの人生を、この罪を許してもらうために頑張っていきたい。[「戦中派平和活動家」の思いをよく表現しているスピーチです。若い方は是非ビデオを実際にご覧ください。]

派遣切り・非正規雇用者の現実:山口素明(フリーター全般労組)

東京都が、「安全条例」で、街頭における市民活動を「迷惑パフォーマンス」として規制しようと動いている。外国人・暴力団・市民活動家が排除対象。そもそも、憲法は、権力をいかに規制するかというもので、公共的なものを、権力を取っ払って、皆で担っていくという理念の下にある。今の改憲状況は、その逆を行くものだ。(権力者側による憲法の空洞化だけでなく)本来の憲法理念を守らせる民衆側の努力の「空洞化」が目立つ。

子どもたちと生きる:星野弥生(翻訳家)

世田谷でいじめによる子供の自殺が多発していたため、「子供の命を守るネットワーク」を立ち上げ、「チャイルドライン」を開設するなどした。子供の問題と政治は密接につながっている。「心のノート」や「新しい歴史教科書」などに取り組んだ。世田谷では「新しい歴史教科書」を採択させなかった。「教育問題は、子供、親がいる柔らかいところからひたひたと足もとを掬われ、足跡が近づいてくるという、気分の悪いものだと思う」。人とのつながりが財産だが、教育に格差が持ち込まれ、「名簿」がないなど、親が分断されている。次の世代を生きる人と一緒に社会を作っていきたい。

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 2/7
北野弘久(日本大学名誉教授):憲法は、全ての税金を平和・福祉のために使うことを約束している。
http://video.google.com/videoplay?docid=-6935998331273938299

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 3/7
前田裕晤氏(大阪全労協議長):運動の主人公は政党ではなく市民である。労組・市民団体あげて選挙戦を戦ったきた。
http://video.google.com/videoplay?docid=-8819670233986307447

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 4/7
上原公子氏(前国立市長):自ら息苦しさを作り上げる日本人。自粛し、強いヒーローを待望する。田母神氏は国会議員になるのではないか。
http://video.google.com/videoplay?docid=-4346987268857929691

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 5/7
平田豊氏(前北部労協事務局長):昨年、東京北部と西部で全労協と全労連が総力を結集して格差反対の集会を行った。今後、全都集会に発展するだろう。
http://video.google.com/videoplay?docid=3149723020899900750

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 6/7
質疑応答
http://video.google.com/videoplay?docid=-8281054289313023975

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 7/7
フロアからの意見
http://video.google.com/videoplay?docid=-5759377112069994859

非改憲と民主的選挙制度改正を柱とする 「野党統一政策」が政権交代を確実にする

2月 27th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 15:53:41
under 一般 1 Comment 
非改憲と民主的選挙制度改正を柱とする
「野党統一政策」が政権交代を確実にする

野党各党御中

 新聞報道によると、次期総選挙後の連立政権を想定し、民主党、社会民主党、国民新党の3党が「大枠の政策合意」を作ることで合意しました。大いに歓迎します。3党だけでなく、日本共産党や新党日本なども政策合意作りに参加されることを希望します。

 社民党幹部は特に、「民主党と基本政策をすり合わせ、格差是正や憲法護持などを求めていきたい」としています(2月21日、産経新聞)。これは重要で、また当然といえます。憲法、特に9条については、これを変えるべきではないとする世論が6割を超えています。有権者と大連立する、民意を反映した野党統一政策を是非ともお願いします。

 現在の格差・貧困をもたらした大きな原因の一つは、派遣労働の原則自由化であると思われます。一部小数政党を除き、全政党がこれに賛成した経緯は、国会における小数政党の意義を照らし出すものです。この教訓を野党統一政策としての選挙制度改正に反映していただきたいと思います。

 小選挙区制が中心の現在の小選挙区比例代表並立制では、野党連合が得票率で与党連合を上回っても、議席獲得率で負けることがあります。このことは、2005郵政選挙の小選挙区で、与党が得票率49%で76%もの議席を獲得した「偽装勝利」でも明らかです。小選挙区制は、野党連合による政権交代(政権交代後にはその維持)にはまったく不向きの選挙制度です。

 小選挙区制はまた、小数政党抹殺政策であり、野党連合の精神と相容れないです。パートナー政党を窮地に陥れるような選挙制度改定を、野党の一部が主張することはありえないはずです。

小選挙区制の下では、勝利の見込みが高い野党候補として、民主党候補に支持者以外からも票が集中する傾向があります。これは、死票を回避する「選挙制度修正的」投票行動として意義がありますが、同時に、比例区では民主党以外の野党に票を集中させることで、各党が政党支持率に見合った議席を獲得できるようにすることが必要です。

 青森県の民主党県連と社民党県連合は、まさにそのような「選挙区すみ分け投票」の選挙協力を行う協定書を交わしました(2月25日、朝日新聞)。これを全国規模、全野党共闘の枠組みに拡大して行うべきだと考えます。これにより、野党議席数が最大化するとともに、憲法などに関する世論を反映した議員構成に近づきます。

 野党統一政策の柱の一つに、比例代表制を基本にした制度など、死票を最小化する選挙制度を盛り込んでいただきたいと思います。それにより、野党共闘は一層強固になり、また有権者レベルでの選挙共同も促進され、政権交代がより確実なものとなるでしょう。

 具体的な選挙制度改正案については、政党と有権者とが協議できる場を設定し、そこで十分に議論することが必要だと考えます。有権者と大連立する姿勢を明瞭に出してください。

 民意を反映して9条改憲をしない、誠実な野党共闘を進める、その担保として、野党共倒れをもたらし政党間格差を拡大する小選挙区制を廃止し、民意を反映する選挙制度改正案で合意する――これが民意を反映する政権交代の近道です。よろしくお願い申し上げます。

2009年2月27日

太田光征
http://otasa.net/
 
 
要望先(FAX番号・メールアドレス)

民主党代表 小沢一郎 3503-0096
民主党代表代行 菅直人 3595-0090
民主党副代表 岡田克也 3502-5047
民主党幹事長 鳩山由紀夫 3502-5295
民主党参議院幹事長 平田健二 5512-2332
民主党政策調査会長 直嶋 正行 3503-2669
日本共産党 info@jcp.or.jp
社会民主党党首 福島瑞穂 3500-4640
社会民主党幹事長 又市征治 5512-2537
国民新党代表 綿貫民輔 3504-2569
国民新党代表代行 亀井静香 info@kamei-shizuka.net
新党日本代表 田中康夫 yassy@yasu-kichi.com

憲法9条を守る共同行動をひろげるために2.21共同討論会

1月 25th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 11:51:25
under 一般 [25] Comments 

 いよいよ改憲国民投票が可能になる2010年が間近です。今年必ず行われる総選挙では、すでに各党が候補者をほぼ決定していて、小選挙区のみを視野に入れた広範な平和選挙共同は期待できません。

 来年の参院選についても、自民党は候補者公認を前倒しで進めています。各党もそれにつられ、候補者擁立を急ぐ可能性があります。またしても平和共同候補運動の「出遅れ」が心配されます。

 今年、来年と選挙共同が重要な年が続きます。2.21共同討論会で有効な運動手法を探っていきましょう。

太田光征

シンポ案内チラシ
シンポ呼びかけ人

憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!
2月21日パネルディスカッションのご案内
(最終案内)

 麻生内閣は、「政局より政策」を主張し、第二次補正予算と09年度予算の成立をもってその人気を回復しようと、政権に居座り続けています。

 アメリカ発の金融恐慌は直ちに日本の企業を直撃し、大企業を中心とする「派遣切り」に示されるように、そのしわ寄せが非正規雇用者をはじめ働く者や国民の最も弱い部分に押し付けられ、10万人以上の解雇者が社会的手当を欠いたまま路頭に放り出されています。

 政府・国会は2008年、給油延長法を衆院3分の2の多数で再議決し、「海上自衛隊インド洋派兵」を引き続き強行、アフガニスタン市民を殺傷している戦争に荷担しています。さらに麻生内閣はソマリア沖海賊対策と称して、海上自衛隊の海外派遣を決定し、更に自衛隊海外派兵恒久法成立を狙っています。これらは明らかに憲法第9条の空洞化です。

 市民は年末から「年越し派遣村」をつくり、多くの共感を呼びましたが、政府は無策でした。また、イスラエルがパレスチナ人150万人が居住するガザ地区に侵攻し、大勢の子どもを含む1300人以上を虐殺、世界各地からの怒りの声が上がりましたが、日 本政府は無策でした。

 私たちは憲法9条を生かし、世界から戦争や貧困・格差をなくしたいと願います。軍隊を持つための9条改定は、私たちの生存権や思想・信条・表現・教育の自由などの 基本的人権すべてを侵害することに直接つながっています。「憲法改正手続法」施行が来年5月に迫っている今、私たちは、改憲を許さないためにそれぞれの力を合わせ ていきたいと思います。

 2月21日(土曜日)に「パネルディスカッション」を開催し、真摯に話し合い、小さな私たちの力を合わせて、大きな力として憲法9条を守り抜く道をつくりたいと考えます。ぜひこの会にご参加下さいますようお待ちしております。

<パネルディスカッション>

開催日時:2009年2月21日(土曜日)13時30分〜16時30分
場 所:文京区民センターB2
     東京都文京区本郷4−15−14
     TEL 03(3814)6731
地図:http://www.cadu-jp.org/notice/bunkyo_city-hall.htm
交通:都営地下鉄三田線・大江戸線 春日駅A2出口 左折すぐ/南北線 後楽園駅6番出口 徒歩3分/JR水道橋駅東口 左折直進徒歩10分

<テーマ及びパネラー>

最近の世界金融恐慌について:伊藤 誠(経済学者)
平和運動の経験から:糸井玲子(キリスト者政治連盟)
ドイツ左翼党の経験から:伊藤成彦(中央大学名誉教授)
派遣切り・非正規雇用者の現実:山口素明(フリーター全般労組)
憲法・自衛隊・田母神論文問題:山内敏弘(龍谷大学教授)
子どもたちと生きる:星野弥生(翻訳家)
イスラエルのガザ侵攻と改憲問題:奈良本英佑(法政大学教授)
司会進行役:布施哲也(東京清瀬市市議会議員)

主催:2.21パネルディスカッション実行委員会
連絡先:3356-9932(改憲阻止の会)、5652-3119(9条ネット)、0423-84-7505(糸井)、0424-93-2982(布施)

2.21 パネルディスカッション呼びかけ人氏名(2月1日現在、あいうえお順)

相川晴彦(しろいし・九条の会世話人)
池辺幸恵(平和のピアニスト)
糸井玲子(キリスト者政治連盟)
上原公子(前国立市長)
江原 栄昭(9条ネット)
大柳武彦(ねりま九条の会)
川田 洋(改憲〈国民投票〉を考える五月企画委員会)
北野弘久(日大名誉教授)
小西 誠(社会批評社)
下山 保(元生協理事長)
土松克典(小川町企画)
奈良本英佑(法政大学教授)
藤山顕一郎(映画監督)
淵上太郎(9条改憲阻止の会)
前田知克(9条ネット共同代表・弁護士)
正清太一(浅沼実行委員会)
柳田 真(たんぽぽ舎)
山内敏弘(龍谷大学教授)
山崎耕一郎(労働者運動資料室長)
米田隆介(「M66」世話人)
天木直人(元レバノン大使)
伊藤成彦(中央大学名誉教授)
伊藤 誠(経済学者)
江田忠雄(9条改憲阻止の会)
太田光征(「平和への結集」をめざす市民の風)
川上 徹(これからの社会を考える懇談会)
神田香織(講談師)
國弘正雄(元参議院議員)
斎藤貴男(ジャーナリスト)
竹村英明(「平和への結集」をめざす市民の風)
長岩 均(日米安保条約無効訴訟原告)
平田 豊(前北部労協事務局長)
布施哲也(東京清瀬市市会議員)
星野弥生(翻訳家)
前田裕悟(全労協副議長)
門間幸枝(ピースシンガー)
山内徳信(参議院議員)
吉原節夫(平和憲法21世紀の会)

呼びかけ

 麻生政権は急速に支持率を下げ、総選挙のめどさえ立たないありさまです。その間、自動車産業での派遣労働者の解雇、ソニーの16000人首切りを始め、金融危機の津波が押し寄せ、深刻な不況が全世界にひろがっています。

 安倍首相の退陣により、憲法改悪の動きはひとまず後退したかのように見える中、インド洋での補給支援法は1年延長されました。 ソマリア沖海賊対策を口実とする新たな派兵も動きもあります。また田母神発言に見られる歴史の改ざんとシビリアンコントロールの空洞化など、憲法9条を無きものにする既成事実化が進んでいます。選挙結果によっては、政局は大流動過程に入り、改憲推進勢力が再びかたちを変えて登場することも予想されます。

 一方、9条改憲に反対する声は、有権者の3分の2以上を占めながら、それぞれの政党や団体ごとに運動が分断され、広範な人々の意思を表せる場がありません。誰もが願っている運動の統一は、未だ達成できてはいません。

 2010年には、改憲のための国民投票法が実施できるようになり、いつでも憲法改正法案が発議できる状況に入ります。同じく2010年には参院選挙が闘われます。国政選挙でも、「改憲反対」派が多数を占めるためには、民主党の改憲反対の議員から共産党、社民党、新社会党、無所属にいたるまで、党派を超えた多様な選挙協力が不可欠です。

 そこで、来る2月21日に、この間憲法9条を守るために活動をし、また共同の必要を痛感してきた団体・個人が一同に会し、以下のよう討議したいと存じます。

 第1に、9条改憲に反対する様々な個人・団体が、今後の運動の見通しや共同と連帯の場を築くために、知恵を出し合いともに考えたいということです。

 第2に、来るべき総選挙と2010年参院選に向かい、改憲反対議員を増やすための知恵を出し合い、選挙協力できる方途をさぐりたいと思います。

 第3に、こうした論議を積み重ねつつ、改憲の先取りとなる補給支援法や横須賀米空母母港化、沖縄新基地建設などに反対する取り組み、さらには総選挙後の新政権の動向に対応できる連帯の輪をひろげる道も探りたいと存じます。

 派遣切りや非正規労働者の解雇、就職内定取り消しに対する闘いも広がっています。世界不況のしわ寄せを労働者・民衆に押しつけることに反対し、25条の生存権を保障する社会をめざす大きな政治的運動が必要とされます。

 9条とあわせて25条を実現する闘いは、派遣や非正規雇用の労働条件改善を求める青年労働者の新たなうねりと連帯できるものと確信しています。

 そのための以下の要項で行う試みに、ご賛同いただき、シンポジウムにご参加くだるようお願い申し上げます。

・名称:憲法9条を守る共同行動をひろげるために2.21共同討論会
・参加費:800円(資料代を含みます)
・日時:2009年2月21日(土)午後1時半〜午後4時半
・会場:文京区民センター2階ホール
・主催団体:憲法9条を守る共同行動をひろげるために-2.21共同討論会 実行委員会
・連絡先
 9条改憲阻止の会
   〒160-0004 東京都新宿区四谷4-23 第1富士川ビ302号気付 03-3356-9932
 9条ネット
   〒103-0061 東京都中央区銀座5?15?18 銀座東新ビル4階 03-5652-3119
 糸井玲子(キリスト者政治連盟) 0423-84-7505
 布施哲也(東京清瀬市議会議員) 0424-93-2982

湯浅誠「反貧困 これは『彼ら』の問題ではない」

12月 6th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 22:12:33
under 一般 [1542] Comments 

 活憲政治セミナー第2回「湯浅誠さんと考える格差・貧困問題」の報告です。ブログなどで宣伝していただいた方、ありがとうございました。

 正規労働者と非正規労働者の労働条件は分断した関係にはなく、一方の劣悪化が他方の劣悪化を招く。この構図には気付きにくい。貧困が「『彼ら』の問題ではない」というのはそういう意味です。

 宇都宮健児さんのお話を聞く機会が以前にあったのですが、ヨーロッパでは街頭で社会保障の宣伝パンフレットを配っているということです。ところが日本では、自衛隊が電車の中吊り広告で自衛隊員を募集していると湯浅さんから聞いて驚いた。

 2006年2月に京都で母親を自らの手で殺めるなどした事件の背景には貧困があった(湯浅誠『反貧困』岩波新書参照)。刑務所が足りないからと民間資本を導入した刑務所の増設や厳罰化で、あるいは「裁判員制度」の導入でこうした事件がなくなるわけではない。社会問題を見つめる共通視点に<反貧困>を据えるべきです。

 憲法25条(国の社会保障義務)の執行と貧困をなくす政治を求め、国と政党を突き上げていきましょう。

 以下は、講演と質疑応答の発言要旨です。(印刷用ファイル
 
 
講師:湯浅 誠さん(NPO法人自立生活サポートセンターもやい事務局長/反貧困ネットワーク事務局長)
主催:「平和への結集」をめざす市民の風
日時:2008年12月1日
会場:東京都港区立港勤労福祉会館
 
 
http://video.google.com/videoplay?docid=-3926011305873517662

 
 
大企業経営者の責任を「自分の子や孫に、人の命を大切にしなさいと言えますか」と痛烈に問うている湯浅さんのNHK「視点・論点『派遣切り』」(2008年12月23日)のビデオを採録しておきます。

http://jp.youtube.com/watch?v=4b2loVd-WMk

 
 

目次

1. 講演 湯浅誠「反貧困 これは『彼ら』の問題ではない」

アメリカ発の世界同時不況で「派遣切り」
年越し電話相談会
正社員を切っていったら、ワーキングプア自身の足元を掘り崩していた
貧困層が示す問題は、今後進む社会の姿を示す
3段構えのセーフティーネットから落ちる貧困層
家族が抱えられない貧困層は「NOといえない労働者」となって帰ってくる
貧困問題はブーメランである
正規と非正規――均等待遇のほかに、支出を減らす取り組みを
きわめて弱い日本の社会保障
労働市場の質を保障する社会保障の役割
ちょうちん型からひょうたん型へ――所得階層型の変化
貧困層の拡大と中間層の縮小はセット
世の中が地盤沈下するほど魅力的になる自衛隊
戦争・憲法9条・貧困
垣根を越えてつながるということ
社会運動の復権

2. 質疑応答
 
 

1. 講演 湯浅誠「反貧困 これは『彼ら』の問題ではない」

湯浅誠セミナー・相談

アメリカ発の世界同時不況で「派遣切り」

 この十数年で正規雇用者が約500万人減り、非正規雇用者が約600万人増えている。まさにこの時のために非正規への切り替えが行われてきた。11月28日に厚生労働省が公表した予測では、来年3月までに3万人超の非正規雇用者が切られる。この数値は、厚生労働省がハローワークを通じて企業に問い合わせた結果で、少なく見積もられていると思われる。つまり、よく分からない。

 派遣ユニオンが29日と30日に「派遣切りホットライン」を開設し、480件の電話を受けた。派遣ユニオンの関根秀一郎氏は、最終的に10万人が切られると予測している。

 派遣労働者の少なくない人は会社の寮に入っているので、職を失うことは文字通り路頭に迷うことになる。神奈川の厚木で日産のドライブシャフト生産の仕事をしていた31歳の男性が11月18日、相談に来た。11月29日で仕事がないので、20日に寮を出て行くように言われたという。帰る家もなく、所持金は10万円で、住む所がない。80人中、切られたのが9割で、残ったのが8人だそうだ。

 1週間前にはキャノンの宇都宮工場で働いていた45歳の女性からメールが来た。噂では自分の部署では年末まで仕事がありそうだが、その先について会社は何も言わず、精神的に追い詰められているという。宇都宮工場は、偽装請負が告発されたところで、告発した労働者はその後直接雇用された。うち一人は雇い止めに遭い、非自発的失業だが、会社が離職票を出してくれないので失業保険をもらえず、苦しい闘いを強いられている。

年越し電話相談会

 12月24日には「年越し電話相談会」を開く。そして25、26日に駆け込みで生活保護の申請を行う。年末年始のように世間がのんびりしている時期は、仕事がないので、不安定労働者にとってはつらい時期だ。冬であるから、初めて野宿する人は大変だ。しかも役所が閉まっているので、駆け込む先がない。不幸なことに、今年は26日が仕事納めで、来年の仕事始めは5日と、年末年始の期間が長い。

 去年も東京で行い、3回線で85件の相談を受けた。今年は全国で5、60回線を引き、1,000件の電話受付を予想している。掛けてくるのは10倍はいるだろうが、つながらず、放置されることになってしまう。

正社員を切っていったら、ワーキングプア自身の足元を掘り崩していた

 不景気の時に非正規労働者を雇用の調整弁に使うのは今に始まったことではない。70年代に鎌田慧さんが『自動車絶望工場』を書く以前からだ。かつて非正規労働者は、地元に帰れば生活基盤がある出稼ぎ労働者であるとか、親と一緒に住んでいるフリーターであるとか、夫に十分な収入のある主婦パートであり、雇用を切られても大丈夫だと言われていた。他方、正規雇用者は、家族を養う必要があり、非正規とは立場が異なり、それなりの仕事もしているということで、非正規切りに目をつぶってきた。

 ところが最近、非正規労働者の中にはワーキングプア、つまり切られれば生活できなくなる人が相当数いることが明らかになってきた。切られえれば食えなくなるのは正規と同じであり、いま、かつてと同じ非正規切りをやるのかということが問題となる。経営サイドはそのために非正規を増やしてきたので、同じことをする。正社員が同じことをするかどうかがポイントだ。

 90年代、フリーターはライフスタイルであり、最近の若者は分からん、本人の問題であると片付けられてきた。野宿者についても同様。しかし今はワーキングプアより正社員が攻撃されている。正社員や公務員が既得権益の上にあぐらをかいているから、ワーキングプア問題が解消しないのではないかと、「規制改革会議」などが強調している。本音は組合つぶしだ。

 派遣切りや食えない実態がこれから炙り出されてくると、正社員は何をやっているのだ、ということになる。春闘の時に何を要求するかが問題になってしまう。食えない側の人からは正社員に対して批判が起こり、そうした主張をする人に支持が集まるようになる。結果、「規制改革会議」などが勢いづく。

 今でも正社員、公務員には非正規が相当数入ってきており、かなり切崩されている。さらに正規の足元を切崩していっても、ワーキングプアは浮かばれない。分配はワーキングプアに回らない。正規の低職化(労働条件低下)が非正規の待遇低下をもたらすという構図が広がってきている。成果主義が導入され、ホワイトカラーエグゼンプションが導入されかかり、正社員の低職化が進んできた。正社員を切っていったら、ワーキングプア自身の足元を掘り崩していた――これがこの10年の一番の反省点だ。

 ただこれが一般に広まっていない。派遣切りがこれだけ広がる中、例えば自動車総連が記者会見を行ったか。見たことがない。派遣切りに反対するために正社員中心の労組がストライキを打ったというニュースも聞かない。そうすると正社員に対する圧力が強まる。これは貧困問題が正しく捉えられていない結果であると思う。

 12月15日にNHKで「セーフティーネットクライシス」が放映される。今アメリカ自動車産業はガタガタだ。番組の説明を聞いたところでは、自動車工場労働者が、80年代のレーガノミックス時代から非正規が増やされるのを黙って見てきた、自分たちに関係がないと思ってきた、だがこういう事態になって深く反省している、とコメントをしているという。非正規が拡大すると正規が浮かんできて、高待遇が批判され、足を引っ張られ、正規が沈んでいく――その時に慌てても遅い、ということになる。

貧困層が示す問題は、今後進む社会の姿を示す

 こうした事態は様々なところで起きている。例えば妊婦たらい回し死亡事件。医療崩壊が言われて久しい。医療費を切り詰め、診療報酬を引き下げ、医療費の公的負担を無くし、患者の自己負担を上げていけば、病院経営が成立しなくなることはずいぶん前から指摘されていた。

 しかしこれが社会全体としては受け止められてこなかった。その結果まず、貧困層が医療を受けられなくなる。ところが妊婦たらい回し死亡事件で、貧困層だけの問題ではなくなった。

 貧困層が示す問題は、今後進む社会の姿を示している。単に貧乏人が増えた、ガッツのないやつが増えた、というのは正しくない捉え方で、対応を取り違え、問題が進行してしまう。

 貧困問題は「あの可哀想な人たちを何とかしてあげましょう」というだけの問題ではない。今度行う電話相談会などは必要だが、そうした取り組みをしなければ貧困問題に取り組んだことにならない、ということではない。

3段構えのセーフティーネットから落ちる貧困層

 日本の代表的なセーフティーネットは、雇用、社会保障、公的扶助という3段構えになっている。3段目の先には誰一人行かせない、と謳っているのが憲法25条(国の社会保障義務)。しかし最後の3段目の下に、600万〜850万人が生きていると言われる。これは複数の学者の推計値だ。公的資料が欲しいが、政府は頑として調査しないので正確な数値は分からない。

 3段目から落ちた人のほとんどは家族が支えている。介護・福祉現場で働く正社員の3割の年収は238万未満であるとの調査結果が、約2週間前に出た。しかも正社員の4割が経済的に自立できないという。2006年のOECD調査で、日本の相対的貧困率がアメリカに次いで高い、と発表されたが、そこで採用された「相対的貧困」の定義が238万円未満である。その倍の476万円が日本の所得の中央値だからだ。

 3段目から落ちた人を家族が支えているから問題がない、というわけではない。40歳になるフリーター第一世代の親は労働市場を引退している。親自身が自分の老後に不安を抱えている。いつまでも子供を抱えていられず、家族内の軋轢が高まってくる。極限に達すると、事件が起こってしまう。事件しか注目されない。なぜ家族の軋轢が高まったのかに目が届かず、貧困問題が置き去りにされる。

 家族が抱えるということは、私的なセーフティーネットが公的なセーフティーネットの肩代わりをしていることだから、無理がある。無理が高じると、老老介護虐待、児童虐待などの事件が起こるが、貧困の問題にまで目が届かない。

家族が抱えられない貧困層は「NOといえない労働者」となって帰ってくる

 労働市場と公的セーフティーネットもだめ、家族も抱えられない「可哀想な人たちを何とかしてあげましょう」では済まない。生きようとすれば労働市場に戻ってこざるを得ない。今日明日の食にも事欠く人はどんな低賃金、労働条件でも働くという人になって戻ってくる。「NOといえない労働者」だ。日給5千円を受け入れる労働者の出現で、なぜ日給1万円を支払う必要があるのか、となってしまう。こうして労働条件が劣悪化していく。

貧困問題はブーメランである

 貧困は労働市場が壊れてきた結果として広がっている一方で、貧困の広がりは労働市場を壊す原因にもなっている。この循環関係を見ないと、自分たちの労働条件がきつくなる。ところが、労働条件の劣悪化は低賃金で働く者がいるからだ、とすり替えられ、正社員と非正規がいがみ合う妙な構図になってしまう。

正規と非正規――均等待遇のほかに、支出を減らす取り組みを

 日本の正規労働者の賃金は年齢とともに増える年功序列型で、非正規の賃金は30歳くらいで頭打ちになるフラット型だ。ヨーロッパでも非正規はフラット型だが、日本の非正規のように、結婚もできないし子供も産めない、というわけではない。

湯浅誠セミナー・収入カーブ

 何が違うのか。日本の支出カーブも年功型だ。子供ができれば支出が増えるから、賃金カーブも40、50で山型を示さなければならない。正社員からすれば、確かに非正規より多く賃金をもらっているが、子供の養育費などがかかり、余ってしょうがない、というわけではないだろう。正社員でも年収400万から800万の範囲で、300万未満が増えている。正社員が既得権益でもらい過ぎだ、というのはどうも怪しい。

 年功型とフラット型賃金カーブの間を取ればいいかというと、支出カーブが今のままでは、どちらも暮らせない。労働市場の中での均等待遇のほかに、支出を減らす取り組みをしないと、バランスがとれないだろう。

 ところが実際は、賃金カーブの山が沈み、支出カーブの山が高くなり、生活が苦しくなっている。給料は下がりながら、医療費の自己負担が上がるなど、家計支出が増えているのだ。国民生活基礎調査によると、生活が苦しいと答えている人が56.2%と過去最高である。

 支出を高支出型から中・低支出型に変えていくことをかませないと、正規の年功型賃金と非正規のフラット型賃金を比較しても埒が明かないだろう。この点では、正規と非正規の利害は一致している。

きわめて弱い日本の社会保障

 ところが労働者の社会保障はきわめて弱い。日本の社会保障費のGDP比は17.7%で、仏独の半分以下、2.5分の1くらいしかない。しかも日本の社会保障費のほとんどは医療と年金で、残りの1.9%に雇用保険や職業訓練などすべての労働保障費が入ってくる。医療・年金以外で比較すると、仏独の8分の1しかない。

労働市場の質を保障する社会保障の役割

 すべて賃金で稼がねばならず、会社から放り出されたら終りになるから、中間層を含め「NOと言えない労働者」になってしまう。

 フランスでは2005年、25歳までの若者を非正規で2年間自由に解雇できる代わりに雇用を促す制度「CP」が導入されかかった。ところが若者と労働組合の大反対で2006年に潰れてしまった。その時の「自分たちの労働力は安売りしない」というスローガンが印象に残っている。

 日本ではフランスのように労働市場の外で暮らしていける余地が極めて少ないから、そんなことを日本で言えば、自分が食えなくなる。
 
 CP反対運動で労組が参加したのは、それを許せば蟻の一穴になり、自分たちの雇用も失われていく、と判断したからだ。日本で若者が「自分たちの労働力は安売りしない」と言えば総袋叩きに遭う。仕事はえり好みしなければいくらでもあるから働け、と言っているうちに、自分たちの墓穴を掘っていくことになる。

 労働者の社会保障は、労働市場の質を保つためにある。それがあれば非人間的な労働条件にNOと言える。しかし例えば雇用保険や失業保険をもらえない場合、提示された労働条件を拒否できず、NOと言えない労働者にならざるを得ない。こうして労働市場が壊れていく。労働市場の中と外を同じ問題として位置づける必要がある。

ちょうちん型からひょうたん型へ――所得階層型の変化

 かつての日本は中間層がぶ厚く、上下の格差が小さいちょうちん型社会だと言われた。しかし現在、「風船」が横から潰された形、縦長楕円型になっている。貧困ライン以下が増加し、中間層が細ってきた。課税所得400万から800万は減少し、300万以下が増えているのが実態。縦長楕円型は同時に、富裕層が増えてくるということ。純金融資産1億円以上の富裕層は150万人いる。生活保護受給者は157万人だから、ちょうど同じくらい。

湯浅誠セミナー・収入階層型の変化

 このまま行くと「風船が破裂する」。その手前は「ひょうたん型」。中間層が薄く、上下極端に2極化されたアメリカ型だ。

貧困層の拡大と中間層の縮小はセット

 ひょうたん型への移行は、貧困層の拡大と中間層の縮小がセットになっているということだ。その結果、職場がきつくなり、学校や病院などいろいろな現場から排除されやすくなる。

 例えば新幹線車両の清掃業務。運転本数は増えているが、料金を上げることはできないので、労働強化になる。てきぱきできない人は、同僚からいじめに遭い、失業保険の出ない自発的失業に追い込まれるのではないか。外では、働けるのに働かない、甘えるんじゃない、などと言われ、はじかれる。こうして貧困が生み出される。NOと言えない労働者となって帰ってくる。

世の中が地盤沈下するほど魅力的になる自衛隊

 自衛隊は優良就職先になっている。電車の中吊り広告で自衛隊が募集をしているのには驚いた。北海道、仙台、東京で見かけた。自衛隊は今が書き入れ時とみて、全国的に宣伝攻勢に出ている。「もやい」に相談に来た食い詰めた若者に自衛隊を宣伝してほしいと、「もやい」にもアプローチがあった。

湯浅誠セミナー・自衛隊中吊り募集広告

 自衛隊には警察と消防というライバルがいる。警察と消防を引き合いに出しながら話が進んだ。警察と消防は高卒でなければならないが、自衛隊は中卒でも大丈夫だ、と話が始まる。試験は簡単で落ちない、自分の名前を書ければよい、と。大事なことは五体満足なことだ。とにかくウェルカムだ。試験と入隊のブランク期間も、自衛隊OBの警備会社が雇うので問題ない、と自衛隊は説明する。

 18歳から25歳までが応募できるのは、陸上自衛隊2年、海上・航空自衛隊3年のコース。陸上自衛隊2年間の賃金は531万円で、退職金が60万円。海上・航空自衛隊3年間の賃金は1,147万円で退職金が90万円。つまり年収300万、400万。食いっぱぐれた中卒者、二十歳そこそこでこれだけの高待遇はない。世の中が地盤沈下するほど自衛隊の魅力が高まるのだ。

戦争・憲法9条・貧困

 野宿者にも自衛隊経験者は多いが、こういう問題は9条との関係で表立っては語られてこなかった。戦争と貧困はアジア、アフリカでは常にセットで語られる。非常に有意義だった今年の9条世界会議でも、戦争と貧困や9条(戦争放棄)と25条(国の社会保障義務)の分科会はなかった。

 日本は堤未香さんがルポしたアメリカ社会に近づきつつあり、9条と25条をセットで考える必要がある。貧困問題は貧困当事者だけの問題ではなく、当事者が望まなくとも、(戦争へ向かう)圧力、操作に使われる。

垣根を越えてつながるということ

 政治家が貧困の解決を建前としては否定できないところに私たちの攻めどころがあるだろう。貧困の実態を突き付けられると、誰もほっとけとは言えなくなる。後期高齢者医療制度に賛成する政治家はいるが、医療費を払えない、と高齢者の家計簿を見せ付けられれば、何とかします、と言わざるを得ない。貧困実態をどれだけ届けられるかが運動側の力量だ。

 貧困問題はいろんな分野に共通する課題だ。多重債務、児童虐待、犯罪の背景に貧困がある。見えないだけだ。様々な問題を形にしてつなげて見せることが大事。だから反貧困ネットワークは様々な分野の人が参加している。

 反貧困全国キャラバンが47都道府県を回ってきた。連合系と全労連系が一緒に反貧困ネットワークの地方版といえるものを4つか5つ立ち上げている。準備段階のものは14ぐらいある。今日(2008年12月1日)はちょうど「反貧困ネットワーク埼玉」の立ち上げ式をやっている。

 一朝一夕にはいかないだろうが、そうした取り組みを地道にやっていくことが重要だろう。平和のための野党連合と反貧困運動もクロスさせながらやっていければいいなと思う。

 そういう動きはいろいろ出てきている。自治労が2009年3月に反貧困フェスタをやりたいと言ってきた。反貧困ネットワークが2008年3月に同名で開催している。官製ワーキングプアがテーマだという。公務員は勝ち組、既得権益を得ていると言われるが、公務員もとんでもないことになっている――これを訴えたいが自治労だけでは無理だから、自治労連の人にも全労協系の人にも呼びかけて、社会運動として反貧困フェスタをやるので協力を、という。今その方法を探しているところだ。

社会運動の復権

 一つにまとめる必要はないが、そうしたあちこちで起こっていることをいかに社会的に見せるか。これは「社会運動の復権」といえるだろう。政党系列を越えた広い社会的枠組みを作り、社会全体に呼びかけていくことだ。

 今年一番の成果は、状況の悪化を共に認識できたことだと思う。これまでそういう自覚がなかった。この認識をうまく形にすることができれば、「折り返し地点」を作れるのではないか。

 来年も引き続きその準備段階になるだろう。この同時不況下、大きな折り返し地点が来るとは思えない。しかし政策転換が必要なのだという声をどれだけ挙げていけるかで、本当の折り返し地点を作れるかどうかが問われている。我々も頑張りたいが、皆さんとも連携してやっていきたい。

2. 質疑応答

Q 高齢者福祉施設で働いていた。現場の人は目の前のお年寄りが大事で、制度問題などになかなか目が向かない。現場と社会運動をなんとかつなげることはできないものか。

A 「もやい」などでもそういう問題を抱えている。必ずしも活動趣旨に賛同して来る人が社会的に訴えたいというわけではない。旬報社から首都圏青年ユニオンの河添誠さんと『生きづらさの臨海』を書いた。その中でも指摘しているが、労働運動の活動家は社会的に発信するためにやっている意識が強く、社会保障に関わる人たちは、個別ケアに意識が強い。両方をどう混ぜ込めるかが課題だ。「もやい」に来る学生は、寄り添うセンスがあり、相談者の置かれた状況をすっと分かる。他方で、昔の学生運動の活動家と違い、社会構造の話に入っていないし、大学でもそうした話をする再生産システムがなくなっている。他方、年かさの労働運動をやっている人は社会構造にはバッチリ入っているが、寄り添うセンスはからっきし、という感じの人がいる。

 労働運動と社会保障を一緒にやる学校ができないものか。両方のセンスを持った活動家を育てられないか。「もやい」では役割分担でやっている。自分はあちこちに出かけるが、現場を守る人がいる。乖離しないことだ。両者の活動を尊重する。個別ケアと社会運動の活動家がいがみ合わないようにしなければならない。

Q 憲法発布後の平和運動で落としてきたものがある。あまりにもすばらしいのではしゃいできた結果、一般の法律と、公務員に遵守させる憲法の違いを明確に分けてこなかった。憲法を守りましょう、と曖昧な言葉を使ってきた。憲法99条(公務員の憲法遵守義務)が大事だ。憲法改正を言うなら、議員バッジを外してから。「折り返し地点」は99条に注目させることだ。(意見)

Q 野宿者になったらどこに行けばいいのか。警察に? 「自分たちの労働力は安売りしない」と言ったら、移民に仕事を取られる?日本で教育にお金をかけなくなっているようだが、管理は小数の日本人、生産は中国人に、ということだからか?

A 生活保護は区役所などの中にある各福祉事務所で申請するが、若い人は申請方法を勉強しておくのがいい。『生活保護申請マニュアル』を書いているので参考にしてほしい。

 「自分たちの労働力は安売りしない」と言えば、経営者はそうするだろう。(キャピタル)フライト論という、逃げちゃうよ、という脅しがある。大企業の法人税を上げたり、金持ち増税したりすると日本から逃げていく、と脅す。実際に逃げられる企業は少ないが。中国に逃げ、中国の人件費が上がればバングラディシュに逃げる、というようなグローバリゼーションが進んでいる。逃げていくからしょうがないでしょと(労働条件に関する)脅しを飲み込むのであれば、貧困で死ぬ人が出てもしょうがない、となる。貧困で死ぬ人が出てもしょうがなくないのであれば、脅しを飲み込むこともしょうがない、とはいえない。 最終的には国際的に連携して、そのような企業は追い詰めることだ。簡単ではないが。

 教育費が伸びていない。OECD28ヶ国中、公的支出に占める教育費の割合で日本は最低だ。選別をしたいのだろう。学区制を廃止して裕福で優秀な生徒が集まる学校と貧乏でそうでない生徒が集まる学校にランク化する。そして優秀な生徒はさらに優秀にして日本を引っ張ってもらう、そうでない生徒には「実直な精神だけを養っておいてもらえばいい」(三浦朱門)ということだろう。

Q 地方での貧困は、都市部の貧困とどう違うのか?

A 都会の貧困の背景には地方の貧困がある。最低賃金に貼りついた仕事しかない地方で、派遣企業の宣伝を知って、都会に出て、放り出され、ネットカフェに流れ着く。地方の貧困は深刻で、だから自衛隊に入ってしまう。構造的には都会の貧困問題と同じだろう。

Q 大学で貧困のことを学んでいるが、友人に話してもピンとこない感じだ。国際問題、海外の貧困問題には関心があるが、国内の貧困問題には関心がないようだ。

A 関心の広げ方だが、大学で貧困を勉強していること自体、広がっているということに見える。話のきっかけを工夫してもらいたい。

Q 母子家庭・父子家庭の貧困の現状は。小泉政権で児童扶養手当が削減された。

 児童扶養手当が5年で半額になるということになり、「しんぐるまざーずふぉーらむ」の方などがロビーイングして、年収130万未満であれば減額しないことになった。児童扶養手当は家賃に回していて、児童扶養手当の削減でホームレス化を心配していた。

 母子家庭の母親は低賃金だから元祖ワーキングプアで、児童扶養手当がもらえたとしても、貧困は解消されない。

Q 高齢ホームレスにお弁当をあげたりしている。そういう場合、もやいに相談したほうがいいのか。自宅に泊める覚悟もあるが、どうしたらいいか。国会議員への働きかけでできることは?

A まずは生活保護の説明をして、本人に意思確認をしてほしい。95年から2002年にかけて渋谷で夜回りの活動をしてきたが、何年かけてもコミュニケーションできない方がいる。誤解して嫌だと考えている人もいるので、その理由を聞いてほしい。

 シェルターなどに一晩、二晩泊まってもらうことが本人にとってよいことかどうか。寝泊りや食事の付き合いが固定していると、空けることで他のホームレスに取られてしまうことがある。本人と相談しながら進める必要がある。

 地元選出議員や地方議員にまずは働きかけたらどうか。思ったより反応がよいことがある。

Q 医療に携わっている。岐阜から来た。30年前から人を減らしてきた。麻酔科では派遣が医者を送り込んでいる。麻酔医も自身で会社を作っている。深刻な現場になっている。大学の組合にいたが、話に乗ってこなかった。「労働学校」の展望は?

A 労組にはあまねく呼びかけができてはいない。我々の力量の問題だ。反貧困ネットワークは社会保障分野から発足している。労働問題を前面に出していないので、労組は引いている面があった。ただ徐々に近づきつつあると思う。

 「労働学校」については、はっきりしたビジョンは持っていない。ご協力いただきたい。

Q 政府による労働者派遣法改正案が成立する見込みは?

A 今国会では成立しない可能性が大。次の通常国会までにどういう流れを作り上げられるかだ。派遣ユニオンがホットラインを開設したが、12月初旬には労働弁護団もやり、反貧困ネットワークも24日に電話相談会をするというように波状をかけていく。登録型派遣についても今回の改正案はおざなりなので、突き上げてく。

Q 現行経済はねずみ講だと思う。経済から貧困は解消できず、「反経済」の概念が必要ではないか。見えざる敵は経済のことでは?

A あるものとないものを融通するのが経済だから、経済はなくせないのではないか。(質問者:やり取りと駆け引きの面があり、駆け引きが狂信的になっている。経済を全否定するわけではないが。)新自由主義の傾向を規制して押し留めるという点ではその通りだと思う。

Q 様々な分野の方が反貧困ネットワークに参加しているが、宗教家が入っていないようだが?

A 確かにいないが、身近に声をかけられる人がいなかった。紹介していただきたい。反貧困ネットワークには色んな人がない。医師もいないし、教員もいない。選別しているわけではなく、出会いがあっても、入るまでになっていないからだ。反貧困を盛り立てていきたい人はウェルカムだ。

以上

太田光征
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