袋小路の「1票の格差」論――定数配分の格差は地域属性(地域代表性)の問題であって、個人の投票価値の問題ではない

9月 6th, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 18:33:54
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) Comments Off 

日本で使われている「1票の格差」概念をめぐる混迷について、象徴的な記事がありました。

(1)スイスの政治学者は正しく投票価値論を展開

一票の格差、スイスの政治学者に聞く - SWI swissinfo.ch
http://www.swissinfo.ch/jpn/%E4%B8%80%E7%A5%A8%E3%81%AE%E6%A0%BC%E5%B7%AE-%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%94%BF%E6%B2%BB%E5%AD%A6%E8%80%85%E3%81%AB%E8%81%9E%E3%81%8F/36290172

以下はswissinfoからの抜粋です。

「ボクスラー : 「公平さ」で他に重要な基準は、自分がスイスのどこに住んでいようとも、他の人と同価値の選挙権を有しているということ。自分の一票が、他の人と同様に政党の議席配分に影響を与えるということだ。」

「ボクスラー : 例えば、比例代表制を採用しているチューリヒ州では、一つの自治体が一つの選挙区を形成しており、選挙区の人口の規模によって議員定数がかなり異なっている。そのため非常に小さな選挙区では、小さな政党は議席を得られなかった。

そこで連邦最高裁判所はチューリヒ州に対し、小さな政党にも議席獲得のチャンスを与えるよう命じた。また、選挙区の大きさにばらつきがありすぎることも批判した。そこでチューリヒ州は、選挙区を変えなくても最高裁の要求に応えられる「プーケルスハイム式(Doppelter Pukelsheim)」を採用することにした。」

「ボクスラー : 比例代表制では、各政党は得票率に応じて議席が配分される。得票率に正確に沿って議席を配分するとなると、小数点以下の値が問題になる。例えば、定数4人の選挙区でA党が50%、B党が30%、C党が20%得票したとする。正確に議席配分した場合、A党は2議席、B党が1.2議席、C党が0.8議席となるが、1.2議席や0.8議席は配分できない。そこで、小数点以下の値を処理する必要が出てくる。これにはさまざまな計算方法があるが、これまでのやり方ではいつも同じ政党に有利に働き、同じ政党が不利になるという問題があった。

プーケルスハイム式では、選挙区全体の得票数に応じて各政党に議席数を割り当て、その後、各政党が得た議席数を各選挙区に配分する。もし一つの政党が小数点以下の問題で一つの選挙区で議席を得られなかったとしても、それが他の選挙区でボーナスになるように計算されるため、得票率に応じた議席配分が州全体でできるようになっている。」

「swissinfo.ch : つまりこの方法では、一票の価値がどの選挙区でも同じになり、死票も減るため、民意が議席配分に反映されやすいのですね。しかし、計算方法がかなり難しそうです。有権者の理解は得られるのでしょうか。」

(抜粋ここまで)

ボクスラー教授が正しくも問題にしているのは「政党間1票格差」であって、選挙区ごとに定数が異なる定数配分(1議席当たりの有権者数の違いの問題ではなく、日本の参議院選挙のように、1人区から5人区までなど、定数の異なる選挙区がある問題)、実際には日本の衆議院比例ブロックのように定数が少なすぎて得票率に応じた比例配分が実現しない問題を問題だとしているのは、政党間1票格差に影響を与えるためだと、これも正しく認識しています。

「「一票の格差」の問題解決に向けて、日本では政治家たちがようやく重い腰を上げ始めた」と書き出しているswissinfoは、おそらく「定数配分の格差」(1議席当たりの有権者数の違い)と「政党間1票格差」を混同して理解しています。日本の有権者のほとんどがそうでしょう。

「1票の格差」というのは自然に読めば「1票の価値の格差」を意味しますが、日本では「1票の格差」が単なる「定数配分の格差」の意味でも使われています。ようやく重い腰を上げ始めた政治家がもっぱら取り組んでいるのは「定数配分の格差」の問題であって、「政党間1票格差」などの「1票の価値の格差」「投票価値の格差」の問題ではないのです。ただし、最高裁が「定数配分の格差」の問題を「投票価値の格差」だと認定してしまったところに大きな意義があります。

swissinfoはプーケルスハイム式なら「一票の価値がどの選挙区でも同じになり、死票も減る」と書いていますが、プーケルスハイム式であろうとなかろうと、どの選挙区を比べても1議席当たりの有権者数が同じならば、日本でいう意味の「1票の格差」=「定数配分の格差」は存在しません。swissinfoはここで、「一票の価値」を文字通り、投票の価値の意味で使っています。正しい。

(2)定数配分の格差は地域属性(地域代表性)の問題であって、個人の投票価値の問題ではない

定数配分の格差と投票価値の格差は、本質的には関係がありません。

例えば、衆議院選挙で東京の選挙区が25から26に増えても、1票が当選に及ぼす影響力は増えません。1票が当選に及ぼす影響力は、選挙区内の候補者の力関係で決まるからです。中国・四国地方の某選挙区と比べて1議席当たりの有権者数が多いから投票価値が低い、と嘆いている東京の某選挙区の民主党支持有権者が、定数配分の格差是正、つまり区割り変更で有権者数が2分の1の新選挙区の有権者になったとしても、旧選挙区の自民支持率が90%、新選挙区の自民支持率が90%なら、相変わらず自分の票は死票のままで、投票価値に変化は起きません。自民支持有権者にしても同様です。民主党支持有権者の数が2分の1に減るのと同様に自民支持有権者の数も同率で減るので、両有権者グループの力関係は変わらないのです。定数配分の格差是正、つまり区割り変更で政党支持率や有権者グループの力関係が変わるとすれば、それは地域の属性の違いが原因であって、1議席当たりの有権者数とは何の関係もありません。

小選挙区制を前提にする限り、定数配分の格差是正で変化するのは、東京という地域全体で選出する議員の数という地域属性、つまり地域代表性だけです。定数是正は個人の投票価値の領域に属する問題ではないのです。

下掲の[3]から抜粋しておきます。

「定数配分の格差では、都市部が地方より議員1人当たりの有権者数が多いことが問題とされる。しかし実際には、例えば2012年衆議院選挙の場合、鳥取第1区の当選者の得票数は124,746票で、生票率は 85%、神奈川1区の当選者の得票数は101,238票で、生票率は41%、東京1区の当選者の得票数は82,013票で、生票率は29%となっている。つまり、これら選挙区に限れば、生票を投じることで実質的に投票に参加している有権者数はむしろ地方より都市部の方が少なく(都市部では立候補者数が多く、死票率が高いことなどが原因と考えられる)、生票を投じる有権者に限れば、都市部が地方より投票価値が低いとはいえないのが実態である。ただし、都市部ほど死票を投じる有権者が多いという点で、都市部の方が投票価値は低いといえる。」

ただ実際は、自民が強い中国・四国地方に議席が多く配分されているなど、政党支持率の違いと定数配分の格差の組み合わせがランダムでないことによる相乗効果で、定数配分の格差が政党間1票格差に影響を与える場合があります。これこそが問題です。そうでない場合、定数配分の格差は純粋に地域代表性の格差に他なりません。しかし、定数配分の是正が地域代表性に与える影響についても、東京の場合、25から26ではほとんど意味がありません。

東西で有権者数が同じとして、西日本で議席の3分の1、東日本で議席の3分の2を選出するとしても、投票価値の平等が保障されるならば、全国レベルで民意を反映できるのです。そうではなく、東西で半々の議席を選出するとしても、例えば西日本で比例代表制、東日本で小選挙区制を採用するなどして、投票価値の平等が保障されないならば、民意を反映せず偽装的に平等な地域代表性が演出されるのみとなります。

後者の例で、仮に東日本が農業県なら、TPP推進の自民が議席を独占して民意に反し、平等な地域代表性が保障されるなどとはいえません。どの選挙区でもTPP反対の政党・候補を最小の死票で選出できれば、有権者数当たりの議席数に関係なく、全国レベルでTPP反対の民意を議席に反映できます。地域代表性といっても、辺野古基地反対の自民候補者が当選後に辺野古推進になるのが現状なのです。投票意思が反映されない地域代表性などあり得ません。

(3)2013年参議院選挙の無効請求訴訟

選挙区によって定数配分が異なることで投票価値に格差がもたらされる問題(「定数配分の格差」=「1議席当たりの有権者数の違い」の問題ではない)は、日本の訴訟でも争点にしています。

2013年参議院選挙の無効請求訴訟

[1] 訴状:投票価値論を展開。訴状ファイルには目次がありません。目次は下記ブログ記事本文で確認してください。
第23回参議院選挙無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=478
[2] 準備書面:供託金制度についての国会論議を詳しく振り返っている。
第23回参議院選挙無効請求訴訟の準備書面(2013年11月6日付)――戦後直後から最近までの国会審議を振り返る
http://kaze.fm/wordpress/?p=512
[3] 上告理由書:準備書面とかなり重複しているが、投票価値論について新たな説明を加えている。供託金制度についての主張は、上告理由書のまとめで手っ取り早く理解できる。
2013年参院選無効請求訴訟で上告――定数配分の格差の是正で投票価値の格差(死票率の格差)はさらに拡大する
http://kaze.fm/wordpress/?p=527

太田光征

袋小路の「1票の格差」論――定数配分の格差は地域属性(地域代表性)の問題であって、個人の投票価値の問題ではない

9月 6th, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 18:32:44
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) Comments Off 

日本で使われている「1票の格差」概念をめぐる混迷について、象徴的な記事がありました。

(1)スイスの政治学者は正しく投票価値論を展開

一票の格差、スイスの政治学者に聞く - SWI swissinfo.ch
http://www.swissinfo.ch/jpn/%E4%B8%80%E7%A5%A8%E3%81%AE%E6%A0%BC%E5%B7%AE-%E3%82%B9%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%81%AE%E6%94%BF%E6%B2%BB%E5%AD%A6%E8%80%85%E3%81%AB%E8%81%9E%E3%81%8F/36290172

以下はswissinfoからの抜粋です。

「ボクスラー : 「公平さ」で他に重要な基準は、自分がスイスのどこに住んでいようとも、他の人と同価値の選挙権を有しているということ。自分の一票が、他の人と同様に政党の議席配分に影響を与えるということだ。」

「ボクスラー : 例えば、比例代表制を採用しているチューリヒ州では、一つの自治体が一つの選挙区を形成しており、選挙区の人口の規模によって議員定数がかなり異なっている。そのため非常に小さな選挙区では、小さな政党は議席を得られなかった。

そこで連邦最高裁判所はチューリヒ州に対し、小さな政党にも議席獲得のチャンスを与えるよう命じた。また、選挙区の大きさにばらつきがありすぎることも批判した。そこでチューリヒ州は、選挙区を変えなくても最高裁の要求に応えられる「プーケルスハイム式(Doppelter Pukelsheim)」を採用することにした。」

「ボクスラー : 比例代表制では、各政党は得票率に応じて議席が配分される。得票率に正確に沿って議席を配分するとなると、小数点以下の値が問題になる。例えば、定数4人の選挙区でA党が50%、B党が30%、C党が20%得票したとする。正確に議席配分した場合、A党は2議席、B党が1.2議席、C党が0.8議席となるが、1.2議席や0.8議席は配分できない。そこで、小数点以下の値を処理する必要が出てくる。これにはさまざまな計算方法があるが、これまでのやり方ではいつも同じ政党に有利に働き、同じ政党が不利になるという問題があった。

プーケルスハイム式では、選挙区全体の得票数に応じて各政党に議席数を割り当て、その後、各政党が得た議席数を各選挙区に配分する。もし一つの政党が小数点以下の問題で一つの選挙区で議席を得られなかったとしても、それが他の選挙区でボーナスになるように計算されるため、得票率に応じた議席配分が州全体でできるようになっている。」

「swissinfo.ch : つまりこの方法では、一票の価値がどの選挙区でも同じになり、死票も減るため、民意が議席配分に反映されやすいのですね。しかし、計算方法がかなり難しそうです。有権者の理解は得られるのでしょうか。」

(抜粋ここまで)

ボクスラー教授が正しくも問題にしているのは「政党間1票格差」であって、選挙区ごとに定数が異なる定数配分(1議席当たりの有権者数の違いの問題ではなく、日本の参議院選挙のように、1人区から5人区までなど、定数の異なる選挙区がある問題)、実際には日本の衆議院比例ブロックのように定数が少なすぎて得票率に応じた比例配分が実現しない問題を問題だとしているのは、政党間1票格差に影響を与えるためだと、これも正しく認識しています。

「「一票の格差」の問題解決に向けて、日本では政治家たちがようやく重い腰を上げ始めた」と書き出しているswissinfoは、おそらく「定数配分の格差」(1議席当たりの有権者数の違い)と「政党間1票格差」を混同して理解しています。日本の有権者のほとんどがそうでしょう。

「1票の格差」というのは自然に読めば「1票の価値の格差」を意味しますが、日本では「1票の格差」が単なる「定数配分の格差」の意味でも使われています。ようやく重い腰を上げ始めた政治家がもっぱら取り組んでいるのは「定数配分の格差」の問題であって、「政党間1票格差」などの「1票の価値の格差」「投票価値の格差」の問題ではないのです。ただし、最高裁が「定数配分の格差」の問題を「投票価値の格差」だと認定してしまったところに大きな意義があります。

swissinfoはプーケルスハイム式なら「一票の価値がどの選挙区でも同じになり、死票も減る」と書いていますが、プーケルスハイム式であろうとなかろうと、どの選挙区を比べても1議席当たりの有権者数が同じならば、日本でいう意味の「1票の格差」=「定数配分の格差」は存在しません。swissinfoはここで、「一票の価値」を文字通り、投票の価値の意味で使っています。正しい。

(2)定数配分の格差は地域属性(地域代表性)の問題であって、個人の投票価値の問題ではない

定数配分の格差と投票価値の格差は、本質的には関係がありません。

例えば、衆議院選挙で東京の選挙区が25から26に増えても、1票が当選に及ぼす影響力は増えません。1票が当選に及ぼす影響力は、選挙区内の候補者の力関係で決まるからです。中国・四国地方の某選挙区と比べて1議席当たりの有権者数が多いから投票価値が低い、と嘆いている東京の某選挙区の民主党支持有権者が、定数配分の格差是正、つまり区割り変更で有権者数が2分の1の新選挙区の有権者になったとしても、旧選挙区の自民支持率が90%、新選挙区の自民支持率が90%なら、相変わらず自分の票は死票のままで、投票価値に変化は起きません。自民支持有権者にしても同様です。民主党支持有権者の数が2分の1に減るのと同様に自民支持有権者の数も同率で減るので、両有権者グループの力関係は変わらないのです。定数配分の格差是正、つまり区割り変更で政党支持率や有権者グループの力関係が変わるとすれば、それは地域の属性の違いが原因であって、1議席当たりの有権者数とは何の関係もありません。

小選挙区制を前提にする限り、定数配分の格差是正で変化するのは、東京という地域全体で選出する議員の数という地域属性、つまり地域代表性だけです。定数是正は個人の投票価値の領域に属する問題ではないのです。

下掲の[3]から抜粋しておきます。

「定数配分の格差では、都市部が地方より議員1人当たりの有権者数が多いことが問題とされる。しかし実際には、例えば2012年衆議院選挙の場合、鳥取第1区の当選者の得票数は124,746票で、生票率は 85%、神奈川1区の当選者の得票数は101,238票で、生票率は41%、東京1区の当選者の得票数は82,013票で、生票率は29%となっている。つまり、これら選挙区に限れば、生票を投じることで実質的に投票に参加している有権者数はむしろ地方より都市部の方が少なく(都市部では立候補者数が多く、死票率が高いことなどが原因と考えられる)、生票を投じる有権者に限れば、都市部が地方より投票価値が低いとはいえないのが実態である。ただし、都市部ほど死票を投じる有権者が多いという点で、都市部の方が投票価値は低いといえる。」

ただ実際は、自民が強い中国・四国地方に議席が多く配分されているなど、政党支持率の違いと定数配分の格差の組み合わせがランダムでないことによる相乗効果で、定数配分の格差が政党間1票格差に影響を与える場合があります。これこそが問題です。そうでない場合、定数配分の格差は純粋に地域代表性の格差に他なりません。しかし、定数配分の是正が地域代表性に与える影響についても、東京の場合、25から26ではほとんど意味がありません。

東西で有権者数が同じとして、西日本で議席の3分の1、東日本で議席の3分の2を選出するとしても、投票価値の平等が保障されるならば、全国レベルで民意を反映できるのです。そうではなく、東西で半々の議席を選出するとしても、例えば西日本で比例代表制、東日本で小選挙区制を採用するなどして、投票価値の平等が保障されないならば、民意を反映せず偽装的に平等な地域代表性が演出されるのみとなります。

後者の例で、仮に東日本が農業県なら、TPP推進の自民が議席を独占して民意に反し、平等な地域代表性が保障されるなどとはいえません。どの選挙区でもTPP反対の政党・候補を最小の死票で選出できれば、有権者数当たりの議席数に関係なく、全国レベルでTPP反対の民意を議席に反映できます。地域代表性といっても、辺野古基地反対の自民候補者が当選後に辺野古推進になるのが現状なのです。投票意思が反映されない地域代表性などあり得ません。

(3)2013年参議院選挙の無効請求訴訟

選挙区によって定数配分が異なることで投票価値に格差がもたらされる問題(「定数配分の格差」=「1議席当たりの有権者数の違い」の問題ではない)は、日本の訴訟でも争点にしています。

2013年参議院選挙の無効請求訴訟

[1] 訴状:投票価値論を展開。訴状ファイルには目次がありません。目次は下記ブログ記事本文で確認してください。
第23回参議院選挙無効請求訴訟を提起
http://kaze.fm/wordpress/?p=478
[2] 準備書面:供託金制度についての国会論議を詳しく振り返っている。
第23回参議院選挙無効請求訴訟の準備書面(2013年11月6日付)――戦後直後から最近までの国会審議を振り返る
http://kaze.fm/wordpress/?p=512
[3] 上告理由書:準備書面とかなり重複しているが、投票価値論について新たな説明を加えている。供託金制度についての主張は、上告理由書のまとめで手っ取り早く理解できる。
2013年参院選無効請求訴訟で上告――定数配分の格差の是正で投票価値の格差(死票率の格差)はさらに拡大する
http://kaze.fm/wordpress/?p=527

太田光征

定数配分の格差(1票の格差)の理解のために

8月 7th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 1:46:47
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) No Comments 

【要旨】

現在の小選挙区制のように単純な相対多数代表制(得票率30%などでも得票率第1位なら当選)の場合、1票の価値は選挙区と選挙区の間ではなく、選挙区内の力関係で決まり、定数配分の格差の是正でも有権者1人が当選に影響を与えることができる候補者数は1人なので、定数配分の格差を是正しても、投票価値に変化はあまりない。
投票価値に違いが生ずるのは、地域によって政党支持率などに違いがあり(中国地方で自民が強いなど)、そのような地域に定数が偏って配分されるような場合に限られる。
そうでない場合、定数配分の格差は、単に地域選出の議員が人口ないし有権者数当たりで多いか少ないかという地域属性の問題であって、有権者一般の1票の価値の属性とは言えない。
比例区ブロックの場合、定数配分の格差があれば、これこそ当選者数に影響を与える1票の価値の格差といえる。

【参考】
選挙権関連の格差は「定数配分の格差」だけではありません〜「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大する〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=468

まず、原告の山口邦明弁護士グループが正しく主張しているように、「1票の格差訴訟」ではなく「定数是正訴訟」と呼ぶべきだ。

「1票の格差」訴訟の意義
http://kaze.fm/wordpress/?p=451
2013/03/26 「一票の格差」訴訟 東京高裁「違憲」判決 記者会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/70047

また、2012年の最高裁判決も、法の下の平等を「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」に適用しているのであって、投票価値の格差が定数配分の格差だけだと判断しているわけではない。

平成23年(行ツ)第64号 選挙無効請求事件
平成24年10月17日 大法廷判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121017181207.pdf
「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される」(7ページ)

以下、現在の小選挙区制のように単純な相対多数代表制(得票率30%などでも得票率第1位なら当選)の場合の話。

自民党支持の有権者9人と民主党支持の有権者1人の1人区Aと、自民党支持の有権者90人と民主党支持の有権者10人の1人区Bがあるとする。メディア用語で言うところの「1票の格差」(定数配分の格差)は選挙区Bがひどく、選挙区Bの有権者の「1票の価値」は選挙区Aの有権者のそれより小さいとされる。

そうだろうか。選挙区Aでは、自民支持者と民主支持者の1票の影響力は、(9分の1)対(1分の1)、選挙区Bでは、(90分の1)対(10分の1)=(9分の1)対(1分の1)で、選挙区Aと何ら変わらない。

候補者を当選させる1票の影響力は、選挙区と選挙区の間の候補者当たりの有権者数で決まるものではなく、1つの選挙区の中で、どの候補を支持する票かで決定される。

日本全体で見れば、自民党の支持率がトップだから、選挙区の有権者数が多いほど、自民に有利であることは確率的に明らかである。

一般的に、選挙区当たりの有権者数が少ない方が、自民候補より非自民候補の当選確率が高まるだろう。

例えば、2013年参院選沖縄選挙区で糸数慶子氏が当選したが、もしも沖縄選挙区が鹿児島選挙区などと合区されていれば、自民候補が当選していた確率が極めて高い。

だから、定数配分の格差の是正は、投票価値の実質的な格差をまったく是正しないとも言えない。

ただ、31しかない参院小選挙区とは違って衆院小選挙区のように300も選挙区がある場合、2倍程度+の定数配分の格差を是正したところで、各党の当選確率が変化するかどうか、分からない。

選挙区の違いによって政党支持率などに違いがあることを前提に、「定数配分の格差」(選挙区の間で候補者当たりの有権者が異なること)は実質的な格差をもたらし得る。自民が強い中国地方で候補者当たりの有権者数が少ない、従って定数が多いことが問題となる。

選挙区の違いによって政党支持率などに違いがない場合、選挙区の間で「定数配分の格差」があっても、「1票の価値の格差」が生じるわけではない。

選挙区の違いによって政党支持率などが著しく異ならない限り、定数配分の格差は、単なる地域代表性の格差(ある地域の有権者数当たりの議員数と別の地域の有権者数当たりの議員数の格差)に他ならない。

中国地方や四国地方から1人区の議席1人分を東京や千葉に持ってきても、東京や千葉の有権者が等しく1票の影響力が高まったといって、喜べるわけでもない。1議席当たりの有権者数が少なくなるので、全国レベルで優位にある自民の落選確率が少しは高まる可能性があるが。

1人区で1人の有権者が1票で影響力を行使できるのは、候補者1人の当選だけだ。定数配分の格差が是正されても、それは変わらない。単に都市部選出の議員が増えるだけであって、それは1票の価値が高まったことが原因ではなく、単に議席の割り当てが増えたからに他ならない。

1人区における定数配分の格差は、有権者の1票が持つ属性ではなく、その選挙区が含まれる地域の属性であると言った方がいい。

定数配分の格差が意味を持つのは、1人区ではなく、複数定数区や比例区ブロックの場合。格差の是正で死票率や党派の議席占有率の変化につながる確率が高まる。

一票の格差は比例代表制で解消するしかない
http://kaze.fm/wordpress/?p=142

例えば、2007参院選。有権者数からいって千葉選挙区が定数3なら大阪選挙区は定数4であるべきだった。が、定数3であるために、千葉選挙区で得票数477,402票の加賀谷健候補が当選し、大阪選挙区で次点4位の宮本岳志候補が得票数585,620票で落選した。

今回の参院選の大阪選挙区で共産党の辰巳孝太郎候補が4位で当選したのも、まさに定数配分の格差是正のおかげといえる。

1票の格差とは何か
http://kaze.fm/wordpress/?p=381#disparity2

衆院の11ある比例区ブロックで、有権者当たりの定数が異なれば、「議員1人を当選させるに要する票数」が異なるから、この場合こそ正しく定数配分の格差が1票の価値の格差になる。

太田光征

民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書

6月 20th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 23:35:01
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 96条改憲 No Comments 

「民意と乖離しない政治・報道を求める要望書実行委員会準備会」として検討してきた要望書を以下の通り確定させます。会合参加者の皆さま、ありがとうございました。

各党の幹部、選挙制度担当者などに打診した結果、第1回目の要望行動として、生活の党副代表の森裕子参議院議員、共産党委員長の志位和夫衆議院議員、社民党幹事長の又市征治参議院議員(いすれも秘書対応)に応じていただきました。6月21日に各議員の国会事務所を訪ねて要望します。

この要望書で示した論点は2013年参院選で大きく問われるべきものであり、参院選前に全党の幹部らに対しての面談要望は実現しそうになく残念ですが、議員や有権者とのあらゆる接点で要望書を生かしていただければ幸いです。

今後、政党・議員に対しての第2回目以降、そしてメディアに対しての第1回目を追究していきます。

要望書ファイル(Word)はこちら:
http://kaze.fm/documents/Request%20to%20Parties%20and%20Media(20130620).doc

民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書

〜国民主権の格差を拡大する96条改憲でなく、選挙制度と公職選挙法の改正で憲法の平等主義の実現を/「普天間県外」の旧政権を「迷走」、「原発再稼働」の安倍政権を「安全運転」は公正か〜

要旨:

[政党へ]

2012年12月の衆院選は、原発・憲法・消費税などの最重要政策に関して民意と結果がことごとく乖離した異常な選挙。小選挙区での死票率は56.0%で、投票者2人に1人以上の票の価値がゼロ、すなわち平等な国民主権が保障されていない。

「国民の厳粛な信託」(憲法前文)を越えた権限の行使が、一般法の立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)にまで拡大されようとしている。現選挙制度のまま改憲発議要件を緩和することは、改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差をさらに拡大してしまう(1.24倍から2.02倍へ)。

政党・国会議員は、真っ先に平等な国民主権の保障(選挙制度と公職選挙法の抜本的な改正)に取り掛かり、脱原発などの民意を反映した政治を行うべき。

[メディアへ]

民主党の前首相らに対しては「迷走」「嘘つき」、安倍現首相に対しては「アベノミクス」「安全運転」。安倍政権は既に脱原発という大民意からの「大迷走」であり「大噓つき」(公明党は脱原発の公約を選挙後に脱原発依存に変更)の「暴走」状態にある。メディアは不公正なレッテルやイメージ言語の提供ではなく、多様で公正な見解の提供に努めるべき。

「自民圧勝」の事前予測が選挙結果に与えた影響などについて、独自に検証を行うべき。

自民党改憲案が国防軍の新設や発議要件の緩和だけでなく、1)平和的生存権、2)国民主権、3)基本的人権、4)天皇制、5)立憲主義、6)地方自治など、広範な事項に及び、現憲法の基本的な考え方に根底的変更を加え、国民生活に広く影響を与えるものであることを、参院選の前から批評していくべき。

本文:

2012年の衆議院選挙は、異常な選挙でした。戦後最低の投票率(小選挙区)59.3%が強調されていますが、小選挙区での死票率が56.0%という異常な数値を示したことこそ、民主主義政治の基盤をゆるがすものとして、もっと強調されるべきであると考えます。

自民党の比例区得票率は27.6%で、民主党にぼろ負けした2009年衆院選のときの26.7%とほとんど変わっていません。これでは、自民党が有権者の支持を回復したなどとは言えないでしょう。にもかかわらず政権奪取を成し遂げることができたのは、民主党政権に対する国民の幻滅に加えて、小選挙区制の弊害が新党の増加といった外的事情で増幅され、民意をはるかに超える議席を獲得したからです。

選挙直後の世論調査でも「自民の政策を支持」はわずか7%しかなく(12月18日付朝日新聞)、最も重要な政策(原発推進、憲法9条の改変、集団的自衛権に関する政府解釈の変更、憲法改正要件の緩和、消費税増税、公共事業費の増額、米軍普天間飛行場の辺野古への移設、オスプレイの沖縄への配備など)に関しては民意と選挙結果がことごとく乖離しています。

直近の世論調査でも同様で、朝日新聞が2013年5月2日付で発表した憲法世論調査の結果によれば、96条改憲反対、9条改憲反対、非核3原則の見直し反対、武器輸出の拡大反対、武力行使を伴う国連軍への自衛隊の参加反対、自衛隊の国防軍化反対、集団的自衛権の行使反対、定数配分の格差(マスコミ用語では1票の格差)が是正されないままでの改憲発議反対が、民意なのです。

2012年衆院選は憲法前文が要請する「正当な選挙」や「国民の厳粛な信託」という議会制民主主義を保障する選挙の本質から完全に逸脱しています。

このように悲惨な結果を2012年衆院選がもたらした後であっても、なお、現行の選挙制度を改正して主権者に平等な国民主権を保障しようといった機運は、メディアが盛んに報道しているような政党からは、いっこうに出てきません。

選挙制度それ自体だけではありません。公職選挙法は、立候補の段階から選挙運動までがんじがらめに制限しています。インターネット選挙「解禁」でも有権者の権利は制限されたままになっています。国民主権が極度に毀損されているのです。

こうした状況で、投票者の2分の1の支持も得ていない政党が一般法を成立させることだけでも問題なのに、まして、投票者の3分の2の支持を得ていない政党が、改憲発議を行うための要件(衆参各院議員の3分の2以上の賛成を要するという要件)の緩和を狙うとはなにごとでしょう。

憲法とは、国家運営の要路にある権力者たちが民意に背かないように、国民が国家(の要路者)に与える命令です(立憲主義)。このように重要な法であるからこそ、それを変更しようとする改憲発議には各院議員の3分の2以上の賛成を要するという厳しいハードルを敢えて設けて(硬性憲法規定96条)、改憲プロセスには立法プロセスより厳格な国民主権原理の適用を求めているのです。

にもかかわらず、一部の政党・議員は、平等な国民主権の保障(選挙制度と公職選挙法の抜本的な改正)はほったらかしにしたまま、「国民の厳粛な信託」を越えた権限の行使を一般法の立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)にまで拡大しようとしています。

広島高裁岡山支部は2012年衆院選の「定数是正訴訟」で、「『国民の多数意見と国会の多数意見の一致』をもって国民主権が保障できる」と判断しました。

「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」という条件は、憲法前文にある「国民の厳粛な信託」を客観化・定量化した1つの条件といえ、この条件を満たさない小選挙区制は国民主権を保障しない、ということになるでしょう。

小選挙区制のもとでは、国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離(客観的指標は各党の議席占有率を比例区得票率で割った値)が生じるのです。国民の間どうしから見れば、「国民主権の格差」が存在する、ということになります。

「国民の厳粛な信託」を越えた権限は、「違憲権限」というべきです。

このように平等な国民主権を保障しない法のもとで、はたして、民主主義政治が成り立つでしょうか。

特に、小選挙区制を中心とする現行選挙制度のまま改憲発議要件を緩和することの意味は、重層的に深刻です。違憲権限の行使の領域が立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)へと拡大するにとどまらず、改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差が拡大してしまうからです(理由は最後に詳述)。

このような改憲発議はまさに「壊憲」発議とも言うべきでものであり、国民主権をさらに切り縮めるという点で、首長の権限を著しく強化しようという動きと軌を一にするものではないでしょうか。

各党のみなさん、国会議員のみなさんにお願いします。なによりもまず、国民主権の平等性を保障してください。公職選挙法の全面改正に取り掛かってください。と同時に、脱原発などの民意を政治に反映させてください。

なお、議員定数の削減について申し上げるなら、国民の多様な意思を国会にできるだけ的確に反映させるためには、しかるべき議員定数が必要であり、日本の議員定数は国際比較すると大幅に少ないことから、定数削減の必要性はまったくありません。

現行制度のまま小選挙区の定数を削減するなら無所属候補(およびその支持者)に対する差別を拡大することに他ならず、比例区での削減なら少数政党(およびその支持者)に対する差別の拡大に他なりません。このように差別を押し付けるやりかたは、よしんば民意であるとしても、民意とは認められません。

国会議員自身が率先して「身を切らなければならない」などといった議論があります。政治家の「身切り論」は虚偽であり、身を切られるのは、代表を選ぶ権利を縮減されてしまう一般国民の方です。こうした「身切り論」が日本国以外の国々から、いったい、どのように見られているのか。このような点についてもご配慮をお願いしたいものです。

メディアも必要な情報をきちんと国民に伝えているとは言えないのではないでしょうか。なるほど、選挙区がどこかによって「1票の重み」に格差があるという問題点は指摘することがあっても(ちなみに、これは「地域」を代表する上での格差であって、「主権者」における1票の格差とは、厳密には言えないでしょう)、もっと本質的な問題すなわち政党間の1票格差(議員1人を当選させるために必要な票数の違いとして定義され、たとえば、2012年衆院選の比例区では、社民党が自民党の4.87倍)や、 生票と死票との間の1票格差などを強調することはありません。

仮に選挙区のあいだでの1票格差が解消したとしても、小選挙区制を中心とする現行選挙制度をこのまま放っておくなら、主権者の間に1票の格差のある状態も、国民主権と乖離した政治が行われていく問題も、決して解決されはしないのです。

日本新聞協会は1月15日の「軽減税率を求める声明」で「多様な意見・論評を広く国民に提供する」のが新聞の役割であるとしていますが、各紙は選挙制度や1票格差の報道に限っても、上記のように重要な論点を提示できていません。

軽減税率を求める声明||声明・見解|日本新聞協会
http://www.pressnet.or.jp/statement/130116_2234.html
http://www.pressnet.or.jp/statement/pdf/keigen_zeiritsu.pdf

さて、この「声明」は、新聞が「民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与」するとして、新聞などに対する「知識課税強化」に反対するものです。

しかしながら、たとえば消費税増税の必要性に関して説得力のある論評がどこにも見あたらないなかで、「知識課税強化」に対してだけ反対するというのでは、その姿勢はきわめてバランスを欠いていると言わざるをえないのではないでしょうか。

原発に関する報道でも、マスメディア各社は、電力の供給が需要に追いつかないという、政府や電力会社からリリースされた情報だけを、各社独自の検証を併記することなく、何度も何度も流して、電力不足を煽ったではありませんか。

米軍普天間飛行場の県外・国外移設も脱原発も、広範な民意の支持を得ていたにもかかわらず、これらを推進しようとした鳩山由紀夫首相(当時)と菅直人首相(当時)の辞任とともに道連れにされ、うやむやになってしまいました。この問題でもメディアが一定の役割を果たしたことは否定できません。

野田住彦前首相による国会解散すなわち実質的辞任についても同じことが言えるでしょうが、しかし、この場合には、逆に、民意の支持を受けていない消費税増税法の成立が許された後のことです。なんという対照でしょうか。

「民主主義を支える公共財として一定の要件を備えた新聞」(「声明」)と自認されるのなら、民主主義に反した政策の誘導に手を貸していないか、自ら検証してしかるべきでしょう。

世論調査に基づき事前に何回も「自民圧勝」と報道したことによって、非自民支持者の投票意欲をそいで史上最低の投票率を招き、また逆に勝ち馬に乗ろうという心理も引き出して、「自民圧勝」の誘因となったのではないでしょうか。メディア各社による選挙の世論調査報道が世論誘導につながっていないかどうかについても、検証が必要だと考えます。

メディアは、民主党の前首相らに対しては「迷走」「嘘つき」などといった常套語を繰り返し流し、ネガティブキャンペーンと言っていい状態を作り出していました。

脱原発という大きな世論を受けて前民主党政権が決定した「2039年までの脱原発」との方針を、安倍新政権はあっさりと捨て去りました。公明党は公約で「可能な限り速やかに原発ゼロを目指します」と謳っていたのに、自民党との連立協議の結果、「可能な限り原発依存度を減らす」と変えてしまいました。これでは単に依存度を減らすことにしかならず、明らかな公約違反です。

それなのに、メディアは、民主党政権時の前首相らに繰り返し投げつけていた「迷走」や「嘘つき」といったレッテル貼りはしません。それどころか、安倍政権は今夏の参院選までは「安全運転」を続けるだろうなどといった言い方をします。あたかも安倍政権が現在、国民にとって安全な状態にあるかのようなポジティブイメージを与え続けています。安倍政権が、実際には、脱原発などの大民意からの「大迷走」であり「大噓つき」の「暴走」状態にあるにもかかわらず、です。

メディアは、選挙制度や原発、消費税などの重要政治課題に関しては核心部を避けて報道し、自民党・公明党などに有利な方向へ世論を誘導する姿勢を取ってきたと言わざるを得ません。

参院選に向けては、この他にも、メディアは「アベノミクス」などといった言葉を繰り返し用いて安倍政権の経済政策に対してポジティブイメージを与えようとしています。そういったイメージ言語を提供するのではなく、安倍政権の政策の中身についての分析・批評を、また、自民党・公明党と他の党派の経済政策の異同を解説してくださるようお願いします(違わないのなら「アベノミクス」などとまるで特別な政策であるかのような呼称を使用しても意味がない)。

自民党改憲案の内容に関しても、メディアは、国防軍の新設や発議要件の緩和といった問題ばかりを伝えていますが、この改憲案は、実は1)平和的生存権、2)国民主権、3)基本的人権、4)天皇制、5)立憲主義、6)地方自治など広範な事項にわたって、現憲法の基本的な考え方に根底的変更を加え、国民生活に広く影響を与えるものです。メディアには、これらを参院選前から批評していく公共的な責任があるのではないでしょうか。

メディア各社には、「声明」にあるように、「多様な意見・論評を広く国民に提供することによって、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与」されることを願っています。

御党、御社より本要望書に対してご見解をいただければ幸いです。

<小選挙区制の下で改憲発議要件を緩和すると改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差が拡大する理由>

自民党・日本維新の会・みんなの党は2012年衆院選で総定数の76.25%となる366議席を獲得しましたが、比例区得票率の合計は57.72%に過ぎません。自民党単独では比例区得票率27.62%で総定数の61.25%となる294議席を獲得しています。

およそ想像がつきますが、3党が衆院で3分の2(66%)の320議席を獲得するには、どのくらいの比例区得票率(投票での支持率)が必要でしょうか。

2012年衆院選の結果をもとに、3党が同じ割合で比例区得票率と小選挙区得票率を落として、3党が計320議席を獲得できるような場合の自民党の比例区の得票率Zを推計してみましょう。

小選挙区での得票率Xと議席占有率Y(X、Y、Zはいずれも%)の関係を自民党と民主党のデータを使って直線で近似すると、次のようになります。

Y=3.4653X - 70.045

3党の比例区議席数は比例区得票率に応じて減り、自民党の小選挙区議席数は上記の式に従い、維新とみんなの小選挙区での獲得議席数は昨年と変わらず18議席と仮定します。

昨年、自民党は小選挙区得票率が43.01%、比例区得票率が27.62%で、3党の比例区における獲得議席数は計111議席でした。小選挙区の定数は300です。

(Z/27.62) x 111 + [(Z/27.62) x 3.4653 x 43.01 - 70.045] / 100 x 300 + 18 = 320

この式を解くと、Zは25.34%となり、対応する3党全体の比例区得票率は52.96%となります。

つまり、3党が衆院の議席の3分の2を獲得するには、比例区選挙でほぼ2分の1の支持を得るだけよいのです。発議要件「3分の2以上」を「2分の1以上」に緩和したいといっても、小選挙区制を中心とする現行選挙制度のもとでは、有権者の支持という点で、既に「2分の1以上」が実現しているのです。

議席占有率66%を比例区得票率52.96%で割ると1.24倍となり、これが多くの政党・議員の賛成を求める硬性憲法規定96条の下での改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差の目安となります。

次に見るように、小選挙区制のもとで発議要件を「2分の1以上」に緩和すると、有権者の4分の1にも満たない支持でも発議できるようになり、国民主権の格差はさらに拡大します。

自民党は比例区得票率27.62%で比例区・小選挙区全体の61.25%の議席を獲得しました。

上記と同様に、自民党が衆院の議席の2分の1となる240議席を獲得する場合の自民党の比例区の得票率を推計すると、24.66%となります。

議席占有率50%を比例区得票率24.66%で割ると2.02倍となり、これがたった1つの政党による発議を許してしまう発議要件「2分の1以上」の下での「国民主権の格差」の目安です。「1票の格差」訴訟(定数是正訴訟)で違憲の目安とされる2倍を超えています。

自民党などが単独で投票者の4分の1未満の支持でも発議できるようになる一方で、投票者の4分の1超の支持を得ている政党連合(2012衆院選でいえば公明党、共産党、社民党、旧未来など)でも改憲発議できなくなります。これは明白な「改憲発議権の格差」「国民主権の格差」です。

安倍首相は96条改憲の理屈として、「2分の1に変えるべきだ。国民の5割以上が憲法を変えたいと思っても、国会議員の3分の1超で阻止できるのはおかしい」(4月16日付読売新聞)と述べ、いかにも国民の権利を思ってのように語ります。

安倍首相は「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」が見られないことを問題にしているわけですが、小選挙区制を中心とする現行選挙制度によって既にそのような事態が生じていることを、まず問題視しなければりません。

国民の7割以上が脱原発を望んでも、比例区でたった28%の支持しか得ていない自民党が民意の実現を阻止しているのです。現在、国民の5割以上と国民の5割以上の支持を得た国会議員が共に支持している改憲条項はないでしょう。

国民主権を尊重するなら、国民主権の格差を拡大する96条改憲ではなく、小選挙区制を中心とする現行選挙制度を真っ先に改正しなければなりません。

民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書実行委員会

連絡先:
「平和への結集」をめざす市民の風
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46-2 さつき荘201号
Tel/fax:047-360-1470
http://kaze.fm/
join@kaze.fm

選挙権関連の格差は「定数配分の格差」だけではありません〜「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大する〜

6月 20th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 8:44:40
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) [3] Comments 

選挙権関連の格差は「定数配分の格差」だけではありません
〜「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大する〜

2013年6月20日

 国会では「選挙区間での(有権者数当たりの)定数配分の格差」(メディア用語で「1票の格差」)を是正するための「0増5減」(与党案)や 「18増23減」(みんなの党案)などが議論されています。

 裁判所は選挙権関連の格差を<選挙区間>の「定数配分の格差」だけと判示したわけではありません。

平成23年(行ツ)第64号 選挙無効請求事件
平成24年10月17日 大法廷判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121017181207.pdf
「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される」(7ページ)

 現行選挙制度は無所属候補の比例区への立候補を認めていません。その結果、政党候補は比例区の180議席と小選挙区の300議席を当選枠として確保できる一方で、無所属候補は小選挙区の300議席しか当選枠がありません。現行選挙制度は無所属候補(とその支持者)に対するあからさまな差別です。

 0増5減なる「格差」是正策は小選挙区の定数だけを削減するもので、無所属候補(とその支持者)に対する差別の拡大に他なりません。だからといって小選挙区と比例区で同議席ずつ削減すれば平等かといえば、そのようなことはありません。

 無所属候補の立候補権とその支持者としての主権者の選挙権を比例区で完全に認めないことは、一種の制限選挙であり、立場の違いによらず立候補権や選挙権を認めた上での「選挙区間での定数配分の格差」より重大です。あるいは、「政党候補(とその支持者)と無所属候補(とその支持者)の間での定数配分の格差」という点で、「選挙区間での定数配分の格差」と同じ構造を持っています。

 「選挙区間」での格差だけを問題にすればよい、という根拠はありません(日本国憲法第14条)。ある種の格差を解消しようとして別の格差を拡大するのは本末転倒というものです。

 メディアの中からも、選挙区間での定数配分の格差以外に、選挙権関連の格差があることを認める記事が出始めています。例えば、読売新聞は、自民党の細田博之衆議院議員が提案している衆院比例区「中小政党優遇枠」を評価するに当たり、<政党間>での「1議席あたりの<得票数>」の格差を用いています。

自民案、312万票と200万票が同じ議席数に
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20130323-OYT1T00298.htm

 産経にいたっては、同案が「政党間での一票の格差」を新たに生み出し、「投票価値の平等」に反すると明確に書いています。

「選挙制度改革どこまで本気? 有識者に議論を委ねた方が…」:イザ!
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/642480/

 「政党間での一票の格差」は何も新しいものではなく、2012衆院選の比例区(全国集計)で、社会民主党は議員1人を当選させるのに自由民主党の4.87倍もの票が必要でした。「政党間での一票の格差」4.87倍は「選挙区間での定数配分の格差」2倍よりはるかに重大です。

細田案が浮き彫りにする「政党間1票格差」(社民党支持者の1票の価値は、公明党支持者の1票の0.45票分)の違憲性
http://kaze.fm/wordpress/?p=449

 また、参議院の選挙制度では、選挙区によって小選挙区制および中選挙区制という異なる制度を設定している点が、独自の問題となっています。これは選挙区によって死票率、従って1票の価値の格差を確率的に固定化する差別に他なりません。

 たとえ議員1人当たりの有権者数が多くとも(1票の価値が低いとされる)、1人区の小選挙区より、生票となり1票の価値を確保できる確率が高い5人区などの中選挙区を望む有権者は多いことでしょう。議員1人当たりの有権者数を選挙区間だけで比較しても、1票の価値を比較することにはならないのです。

 選挙区の定数削減が無所属候補(とその支持者)に対する差別を拡大することについては、既に今年3月、各党幹部・選挙制度担当者の方にお知らせしています。

「国民負担と引き替えの国会議員定数削減」「有権者の権利を縛るネット選挙法案」で各党議員に要望
http://kaze.fm/wordpress/?p=445

 今回また、その他の類型の格差とともにお示ししました。これらの格差を認識しながら放置・拡大する形の「選挙区間での(有権者数当たりの)定数配分の格差」是正だけに固執されるのであれば、新たな提訴が起こされるだけでしょう。

「平和への結集」をめざす市民の風
http://kaze.fm/

「民意と乖離しない政治・報道を求める要望書」第2回会合のお知らせ

6月 1st, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 16:55:47
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 96条改憲 1 Comment 

小選挙区で56%もの票が死票となり、諸々の政策で完全に民意と乖離した結果をもたらした2012年衆議院選挙を受けても、国会議員は平等な国民主権の保障に取り掛かろうとしません。それどころか、国民主権の格差を拡大する96条改憲を狙っています。メディアにしても、本来は暴走運転なのに安倍政権を安全運転と形容するなど、不公正な報道をしています。

国民主権と民主主義に背を向ける政党とメディアに対して、基礎的な要求を突き付けていくことが必要だと考え、要望書をまとめ、政党・メディアと懇談する機会を作るための取り組みを始めました。

第1回目の相談会を2月に開催しましたが、下記の要領で第2回を開催します。皆さんのご参加を呼び掛けます。

第1回目の後、要望書案の内容を修正しました。主に2点あります。

まず、「定数是正訴訟」(マスメディア用語で「1票の格差訴訟」)の広島高裁岡山支部判決で、「『国民の多数意見と国会の多数意見の一致』をもって国民主権が保障できる」と判断されたことから、この考え方を援用しています。また、小選挙区制の下で改憲発議要件を緩和すると国民主権の格差が拡大する理由を詳細に説明しました。

日時 : 2013年6月8日(土)午後6時30分〜9時
会場 : 明石町区民館5号室

住所 : 東京都中央区明石町14番2号
TEL : 03-3546-9125
アクセス : 東京メトロ日比谷線築地駅下車3番出口 徒歩7分
東京メトロ有楽町線新富町駅下車4番出口 徒歩10分
都バス
「東15甲・乙 東京駅八重洲口−深川車庫」
聖路加病院前下車 徒歩1分
中央区コミュニティバス(江戸バス)
[南循環]聖路加国際病院5番 3分程
地図:http://chuo7kuminkan.com/about/akashi.html
日比谷線築地駅の場合、3番出口を出て、日刊スポーツ新聞社と聖路加国際病院を通過し、信号を渡り直進、区立リサイクルハウス「かざぐるま」の奥隣り。

呼び掛け :民意と乖離しない政治・報道を求める要望書実行委員会準備会

連絡先:
「平和への結集」をめざす市民の風
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46-2 さつき荘201号
http://kaze.fm/
join@kaze.fm
tel/fax:047-360-1470

「民意と乖離しない政治・報道を求める要望書」案

ファイル(Word)はこちら:
「民意と乖離しない政治・報道を求める要望書」案(6月1日)
http://kaze.fm/documents/Request%20to%20Parties%20and%20Media(20130601).doc

要望書タイトルに「僕も私も無視された」を追加する案も。

タイトル案:政党とメディアに対する要望書:96条改憲による国民主権の格差の拡大より平等な国民主権の保障を/民意からの「迷走」内閣にふさわしい報道を

要旨:

[政党へ]

2012年12月の衆院選は、原発・憲法・消費税などの最重要政策に関して民意と結果がことごとく乖離した異常な選挙。小選挙区での死票率は56.0%で、投票者2人に1人以上の票の価値がゼロ、すなわち平等な国民主権が保障されていない。

「国民の厳粛な信託」(憲法前文)を越えた権限の行使が、一般法の立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)にまで拡大されようとしている。現選挙制度のまま改憲発議要件を緩和することは、改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差をさらに拡大してしまう(1.24倍から2.02倍へ)。

政党・国会議員は、真っ先に平等な国民主権の保障(選挙制度と公職選挙法の抜本的な改正)に取り掛かり、脱原発などの民意を反映した政治を行うべき。

[メディアへ]

民主党の前首相らに対しては「迷走」「嘘つき」、安倍現首相に対しては「アベノミクス」「安全運転」。安倍政権は既に脱原発という大民意からの「大迷走」であり「大噓つき」(公明党は脱原発の公約を選挙後に脱原発依存に変更)の「暴走」状態にある。メディアは不公正なレッテルやイメージ言語の提供ではなく、多様で公正な見解の提供に努めるべき。

「自民圧勝」の事前予測が選挙結果に与えた影響などについて、独自に検証を行うべき。

自民党改憲案が国防軍の新設や発議要件の緩和だけでなく、1)平和的生存権、2)国民主権、3)基本的人権、4)天皇制、5)立憲主義、6)地方自治など、広範な事項に及び、現憲法の基本的な考え方に根底的変更を加え、国民生活に広く影響を与えるものであることを、参院選の前から批評していくべき。

本文:

2012年の衆議院選挙は、異常な選挙でした。戦後最低の投票率(小選挙区)59.3%が強調されていますが、小選挙区での死票率が56.0%という異常な数値を示したことこそ、民主主義政治の基盤をゆるがすものとして、もっと強調されるべきであると考えます。

自民党の比例区得票率は27.6%で、民主党にぼろ負けした2009年衆院選のときの26.7%とほとんど変わっていません。これでは、自民党が有権者の支持を回復したなどとは言えないでしょう。にもかかわらず政権奪取を成し遂げることができたのは、民主党政権に対する国民の幻滅に加えて、小選挙区制の弊害が新党の増加といった外的事情で増幅され、民意をはるかに超える議席を獲得したからです。

選挙直後の世論調査でも「自民の政策を支持」はわずか7%しかなく(12月18日付朝日新聞)、最も重要な政策(原発推進、憲法9条の改変、集団的自衛権に関する政府解釈の変更、憲法改正要件の緩和、消費税増税、公共事業費の増額、米軍普天間飛行場の辺野古への移設、オスプレイの沖縄への配備など)に関しては民意と選挙結果がことごとく乖離しています。

直近の世論調査でも同様で、朝日新聞が2013年5月2日付で発表した憲法世論調査の結果によれば、96条改憲反対、9条改憲反対、非核3原則の見直し反対、武器輸出の拡大反対、武力行使を伴う国連軍への自衛隊の参加反対、自衛隊の国防軍化反対、集団的自衛権の行使反対、定数配分の格差(マスコミ用語では1票の格差)が是正されないままでの改憲発議反対が、民意なのです。

2012年衆院選は憲法前文が要請する「正当な選挙」や「国民の厳粛な信託」という議会制民主主義を保障する選挙の本質から完全に逸脱しています。

このように悲惨な結果を2012年衆院選がもたらした後であっても、なお、現行の選挙制度を改正して主権者に平等な国民主権を保障しようといった機運は、メディアが盛んに報道しているような政党からは、いっこうに出てきません。

選挙制度それ自体だけではありません。公職選挙法は、立候補の段階から選挙運動までがんじがらめに制限しています。インターネット選挙「解禁」でも有権者の権利は制限されたままになっています。国民主権が極度に毀損されているのです。

こうした状況で、投票者の2分の1の支持も得ていない政党が一般法を成立させることだけでも問題なのに、まして、投票者の3分の2の支持を得ていない政党が、改憲発議を行うための要件(衆参各院議員の3分の2以上の賛成を要するという要件)の緩和を狙うとはなにごとでしょう。

憲法とは、国家運営の要路にある権力者たちが民意に背かないように、国民が国家(の要路者)に与える命令です(立憲主義)。このように重要な法であるからこそ、それを変更しようとする改憲発議には各院議員の3分の2以上の賛成を要するという厳しいハードルを敢えて設けて(硬性憲法規定96条)、改憲プロセスには立法プロセスより厳格な国民主権原理の適用を求めているのです。

にもかかわらず、一部の政党・議員は、平等な国民主権の保障(選挙制度と公職選挙法の抜本的な改正)はほったらかしにしたまま、「国民の厳粛な信託」を越えた権限の行使を一般法の立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)にまで拡大しようとしています。

広島高裁岡山支部は2012年衆院選の「定数是正訴訟」で、「『国民の多数意見と国会の多数意見の一致』をもって国民主権が保障できる」と判断しました。

「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」という条件は、憲法前文にある「国民の厳粛な信託」を客観化・定量化した1つの条件といえ、この条件を満たさない小選挙区制は国民主権を保障しない、ということになるでしょう。

小選挙区制のもとでは、国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離(客観的指標は各党の議席占有率を比例区得票率で割った値)が生じるのです。国民の間どうしから見れば、「国民主権の格差」が存在する、ということになります。

「国民の厳粛な信託」を越えた権限は、「違憲権限」というべきです。

このように平等な国民主権を保障しない法のもとで、はたして、民主主義政治が成り立つでしょうか。

特に、小選挙区制を中心とする現行選挙制度のまま改憲発議要件を緩和することの意味は、重層的に深刻です。違憲権限の行使の領域が立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)へと拡大するにとどまらず、改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差が拡大してしまうからです(理由は最後に詳述)。

このような改憲発議はまさに「壊憲」発議とも言うべきでものであり、国民主権をさらに切り縮めるという点で、首長の権限を著しく強化しようという動きと軌を一にするものではないでしょうか。

各党のみなさん、国会議員のみなさんにお願いします。なによりもまず、国民主権の平等性を保障してください。公職選挙法の全面改正に取り掛かってください。と同時に、脱原発などの民意を政治に反映させてください。

なお、議員定数の削減について申し上げるなら、国民の多様な意思を国会にできるだけ的確に反映させるためには、しかるべき議員定数が必要であり、日本の議員定数は国際比較すると大幅に少ないことから、定数削減の必要性はまったくありません。

現行制度のまま小選挙区の定数を削減するなら無所属候補(およびその支持者)に対する差別を拡大することに他ならず、比例区での削減なら少数政党(およびその支持者)に対する差別の拡大に他なりません。このように差別を押し付けるやりかたは、よしんば民意であるとしても、民意とは認められません。

国会議員自身が率先して「身を切らなければならない」などといった議論があります。政治家の「身切り論」は虚偽であり、身を切られるのは、代表を選ぶ権利を縮減されてしまう一般国民の方です。こうした「身切り論」が日本国以外の国々から、いったい、どのように見られているのか。このような点についてもご配慮をお願いしたいものです。

メディアも必要な情報をきちんと国民に伝えているとは言えないのではないでしょうか。なるほど、選挙区がどこかによって「1票の重み」に格差があるという問題点は指摘することがあっても(ちなみに、これは「地域」を代表する上での格差であって、「主権者」における1票の格差とは、厳密には言えないでしょう)、もっと本質的な問題すなわち政党間の1票格差(議員1人を当選させるために必要な票数の違いとして定義され、たとえば、2012年衆院選の比例区では、社民党が自民党の4.87倍)や、 生票と死票との間の1票格差などを強調することはありません。

仮に選挙区のあいだでの1票格差が解消したとしても、小選挙区制を中心とする現行選挙制度をこのまま放っておくなら、主権者の間に1票の格差のある状態も、国民主権と乖離した政治が行われていく問題も、決して解決されはしないのです。

日本新聞協会は1月15日の「軽減税率を求める声明」で「多様な意見・論評を広く国民に提供する」のが新聞の役割であるとしていますが、各紙は選挙制度や1票格差の報道に限っても、上記のように重要な論点を提示できていません。

軽減税率を求める声明||声明・見解|日本新聞協会
http://www.pressnet.or.jp/statement/130116_2234.html
http://www.pressnet.or.jp/statement/pdf/keigen_zeiritsu.pdf

さて、この「声明」は、新聞が「民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与」するとして、新聞などに対する「知識課税強化」に反対するものです。

しかしながら、たとえば消費税増税の必要性に関して説得力のある論評がどこにも見あたらないなかで、「知識課税強化」に対してだけ反対するというのでは、その姿勢はきわめてバランスを欠いていると言わざるをえないのではないでしょうか。

原発に関する報道でも、マスメディア各社は、電力の供給が需要に追いつかないという、政府や電力会社からリリースされた情報だけを、各社独自の検証を併記することなく、何度も何度も流して、電力不足を煽ったではありませんか。

米軍普天間飛行場の県外・国外移設も脱原発も、広範な民意の支持を得ていたにもかかわらず、これらを推進しようとした鳩山由紀夫首相(当時)と菅直人首相(当時)の辞任とともに道連れにされ、うやむやになってしまいました。この問題でもメディアが一定の役割を果たしたことは否定できません。

野田住彦前首相による国会解散すなわち実質的辞任についても同じことが言えるでしょうが、しかし、この場合には、逆に、民意の支持を受けていない消費税増税法の成立が許された後のことです。なんという対照でしょうか。

「民主主義を支える公共財として一定の要件を備えた新聞」(「声明」)と自認されるのなら、民主主義に反した政策の誘導に手を貸していないか、自ら検証してしかるべきでしょう。

世論調査に基づき事前に何回も「自民圧勝」と報道したことによって、非自民支持者の投票意欲をそいで史上最低の投票率を招き、また逆に勝ち馬に乗ろうという心理も引き出して、「自民圧勝」の誘因となったのではないでしょうか。メディア各社による選挙の世論調査報道が世論誘導につながっていないかどうかについても、検証が必要だと考えます。

メディアは、民主党の前首相らに対しては「迷走」「嘘つき」などといった常套語を繰り返し流し、ネガティブキャンペーンと言っていい状態を作り出していました。

脱原発という大きな世論を受けて前民主党政権が決定した「2039年までの脱原発」との方針を、安倍新政権はあっさりと捨て去りました。公明党は公約で「可能な限り速やかに原発ゼロを目指します」と謳っていたのに、自民党との連立協議の結果、「可能な限り原発依存度を減らす」と変えてしまいました。これでは単に依存度を減らすことにしかならず、明らかな公約違反です。

それなのに、メディアは、民主党政権時の前首相らに繰り返し投げつけていた「迷走」や「嘘つき」といったレッテル貼りはしません。それどころか、安倍政権は今夏の参院選までは「安全運転」を続けるだろうなどといった言い方をします。あたかも安倍政権が現在、国民にとって安全な状態にあるかのようなポジティブイメージを与え続けています。安倍政権が、実際には、脱原発などの大民意からの「大迷走」であり「大噓つき」の「暴走」状態にあるにもかかわらず、です。

メディアは、選挙制度や原発、消費税などの重要政治課題に関しては核心部を避けて報道し、自民党・公明党などに有利な方向へ世論を誘導する姿勢を取ってきたと言わざるを得ません。

参院選に向けては、この他にも、メディアは「アベノミクス」などといった言葉を繰り返し用いて安倍政権の経済政策に対してポジティブイメージを与えようとしています。そういったイメージ言語を提供するのではなく、安倍政権の政策の中身についての分析・批評を、また、自民党・公明党と他の党派の経済政策の異同を解説してくださるようお願いします(違わないのなら「アベノミクス」などとまるで特別な政策であるかのような呼称を使用しても意味がない)。

自民党改憲案の内容に関しても、メディアは、国防軍の新設や発議要件の緩和といった問題ばかりを伝えていますが、この改憲案は、実は1)平和的生存権、2)国民主権、3)基本的人権、4)天皇制、5)立憲主義、6)地方自治など広範な事項にわたって、現憲法の基本的な考え方に根底的変更を加え、国民生活に広く影響を与えるものです。メディアには、これらを参院選前から批評していく公共的な責任があるのではないでしょうか。

メディア各社には、「声明」にあるように、「多様な意見・論評を広く国民に提供することによって、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与」されることを願っています。

御党、御社より本要望書に対してご見解をいただければ幸いです。

<小選挙区制の下で改憲発議要件を緩和すると改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差が拡大する理由>

自民党・日本維新の会・みんなの党は2012年衆院選で総定数の76.25%となる366議席を獲得しましたが、比例区得票率の合計は57.72%に過ぎません。自民党単独では比例区得票率27.62%で総定数の61.25%となる294議席を獲得しています。

およそ想像がつきますが、3党が衆院で3分の2(66%)の320議席を獲得するには、どのくらいの比例区得票率(投票での支持率)が必要でしょうか。

2012年衆院選の結果をもとに、3党が同じ割合で比例区得票率と小選挙区得票率を落として、3党が計320議席を獲得できるような場合の自民党の比例区の得票率Zを推計してみましょう。

小選挙区での得票率Xと議席占有率Y(X、Y、Zはいずれも%)の関係を自民党と民主党のデータを使って直線で近似すると、次のようになります。

Y=3.4653X - 70.045

3党の比例区議席数は比例区得票率に応じて減り、自民党の小選挙区議席数は上記の式に従い、維新とみんなの小選挙区での獲得議席数は昨年と変わらず18議席と仮定します。

昨年、自民党は小選挙区得票率が43.01%、比例区得票率が27.62%で、3党の比例区における獲得議席数は計111議席でした。小選挙区の定数は300です。

(Z/27.62) x 111 + [(Z/27.62) x 3.4653 x 43.01 - 70.045] / 100 x 300 + 18 = 320

この式を解くと、Zは25.34%となり、対応する3党全体の比例区得票率は52.96%となります。

つまり、3党が衆院の議席の3分の2を獲得するには、比例区選挙でほぼ2分の1の支持を得るだけよいのです。発議要件「3分の2以上」を「2分の1以上」に緩和したいといっても、小選挙区制を中心とする現行選挙制度のもとでは、有権者の支持という点で、既に「2分の1以上」が実現しているのです。

議席占有率66%を比例区得票率52.96%で割ると1.24倍となり、これが多くの政党・議員の賛成を求める硬性憲法規定96条の下での改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差の目安となります。

次に見るように、小選挙区制のもとで発議要件を「2分の1以上」に緩和すると、有権者の4分の1にも満たない支持でも発議できるようになり、国民主権の格差はさらに拡大します。

自民党は比例区得票率27.62%で比例区・小選挙区全体の61.25%の議席を獲得しました。

上記と同様に、自民党が衆院の議席の2分の1となる240議席を獲得する場合の自民党の比例区の得票率を推計すると、24.66%となります。

議席占有率50%を比例区得票率24.66%で割ると2.02倍となり、これがたった1つの政党による発議を許してしまう発議要件「2分の1以上」の下での「国民主権の格差」の目安です。「1票の格差」訴訟(定数是正訴訟)で違憲の目安とされる2倍を超えています。

自民党などが単独で投票者の4分の1未満の支持でも発議できるようになる一方で、投票者の4分の1超の支持を得ている政党連合(2012衆院選でいえば公明党、共産党、社民党、旧未来など)でも改憲発議できなくなります。これは明白な「改憲発議権の格差」「国民主権の格差」です。

安倍首相は96条改憲の理屈として、「2分の1に変えるべきだ。国民の5割以上が憲法を変えたいと思っても、国会議員の3分の1超で阻止できるのはおかしい」(4月16日付読売新聞)と述べ、いかにも国民の権利を思ってのように語ります。

安倍首相は「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」が見られないことを問題にしているわけですが、小選挙区制を中心とする現行選挙制度によって既にそのような事態が生じていることを、まず問題視しなければりません。

国民の7割以上が脱原発を望んでも、比例区でたった28%の支持しか得ていない自民党が民意の実現を阻止しているのです。現在、国民の5割以上と国民の5割以上の支持を得た国会議員が共に支持している改憲条項はないでしょう。

国民主権を尊重するなら、国民主権の格差を拡大する96条改憲ではなく、小選挙区制を中心とする現行選挙制度を真っ先に改正しなければなりません。

民意と乖離しない政治・報道を求める要望書実行委員会準備会

連絡先:
「平和への結集」をめざす市民の風
〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46-2 さつき荘201号
Tel/fax:047-360-1470
http://kaze.fm/
join@kaze.fm

「1票の格差」訴訟の意義

4月 3rd, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 3:03:58
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) No Comments 

【要旨】「投票価値の格差」は「定数配分の格差」だけではない。「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」をもって国民主権が保障できるとする判決は、小選挙区制を違憲とする。

広島高裁岡山支部は3月26日、2012衆院選の岡山2区の選挙を憲法違反として無効とする判決を下しました。判決文は http://bit.ly/YEZzrO です。

判決は国民主権と法の下の平等を「投票価値」に適用し、「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」をもって国民主権が保障できると判断しました。私の表現でいう「平等な国民主権」と無縁ではありません。

日本国憲法は第14条で「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定しています。

投票価値の平等は定数配分だけで決まるものではありません。投票価値の格差には、選挙区・政党間の死票率の違いなど、多様な切り口があります。

2012年の最高裁判決も、法の下の平等を「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」に適用しているのであって、投票価値の格差が定数配分の格差だけだと判断しているわけではありません。

平成23年(行ツ)第64号 選挙無効請求事件
平成24年10月17日 大法廷判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121017181207.pdf
「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される」(7ページ)

例えば、議員1人当たりの人口が厳密に同じであっても、参院選の1人区と5人区で投票価値が平等だなどとは、決して言えません。

死票率の格差が両選挙区の間で明確に存在し、有権者にとっての投票価値は明らかに1人区で低くなっています。参院選の区割りは明白に違憲です。

神戸学院大学の上脇博之教授(@kamiwaki)も、「投票価値の平等」について、投票前だけではなく投票時(後)も保障すべきと指摘しています。http://goo.gl/NKRBp

ただ、上脇教授は「投票価値の平等」を「定数配分の平等」の意味で使っています。投票後に得票数に応じて定数を決めるべき、という考え方です。

「投票後」の「1票の格差」(ここでは「定数配分の格差」ではなく「投票価値の格差」)に相当するものを、私は政党間1票格差や生票・死票間1票格差などと表現しています。

広島高裁岡山支部判決は、「選挙区制を採用する際は、投票価値の平等(すなわち、選挙区(国民の居住する地)によって投票価値に差を設けないような人口比例に基づく選挙区制)を実現するように十分に配慮しなければならない」としています。

同判決は、訴状の争点に従って、区割り選挙を前提にするなら人口比例選挙をせよ、と求めたのです。人口比例選挙だけ実施すれば平等な投票価値が実現する、と判断したわけではありません。ここが重要です。

小選挙区制の下、2012衆院選の小選挙区における死票率は実に56%でした。自民は比例区得票率28%、小選挙区得票率43%で全議席の61%を占めました。国会の多数意見は国民の少数意見でしかありません。

「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」をもって国民主権が保障できるとする同判決は、実質的に小選挙区制を違憲としているのです。

「1票の格差」という言葉を「定数配分の格差」という意味で独占するのは不当です。原告の山口邦明弁護士グループも「1票の格差訴訟」ではなく「定数是正訴訟」と呼ぶべきだと主張しています。

2013/03/26 「一票の格差」訴訟 東京高裁「違憲」判決 記者会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/70047

メディア用語の「1票の格差」は多義的で、これを「定数配分の格差」という意味だけで使用するのは不適切です。

選挙区間1票格差やそれをもたらす選挙制度の仕組み(小選挙区の区割りにおいて都道府県にまず定数1を割り当てる1人別枠方式など)が違憲であるなら、それより重大な政党間1票格差や生票・死票間1票格差とそれらもたらす選挙制度の仕組み(小選挙区制、ブロック制比例代表制の定数配分、1人区と5人区の同居など)なども論理必然的に違憲となります。

判決は憲法の規定通り、選挙制度では定数、選挙区、投票方法、その他について国会の裁量を認めながらも、1人別枠方式などの区割り方式がもたらす格差について口出ししているわけで、選挙制度のその他の要素がもたらす格差についても裁判所は口出しできるはずです。

平等な国民主権に照らせば、中選挙区制などがあるのに投票価値の平等を犠牲にしてまで最悪の小選挙区制を採用する合理的な理由はありません。

2012衆院選の小選挙区で死票を投じた56%の有権者グループと生票を投じた44%のグループの間にある格差、議員1人を当選させるための票数の格差(同小選挙区で旧未来は自民の13.83倍、同比例区で社民は自民の4.87倍)は、解消する方法があるにもかかわらず放置されているので、違憲です。

小選挙区制を前提にするとしても、何らかの決選投票方式を採用すれば、現在ほどの56%対44%の格差は生じません。1人別枠方式を違憲とする判断が可能なら、少なくとも小選挙区制における単記投票制をオーストラリアの優先順位付連記投票制などに改正することくらい、裁判所は訴えられれば求めることができるはずなのです(以上だけでは本質的にまったく不十分ですが。下記参照)。

オーストラリア下院の選挙制度は優れているか?
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/89557778.html
議会制民主主義 - オーストラリアについて
http://www.australia.or.jp/aib/country.php

同様に、衆院のブロック式比例代表制の場合でも、ドイツのように全国集計した票で各党に議席を配分する方式があるのだから、裁判所は比例区の票数集計・議席配分方式についても、平等な国民主権の観点から憲法判断ができるはずです。

得をした選挙区からみて損をした選挙区だけ選挙を無効とし、得をした選挙区での選挙の無効を免除とすることは、差別にほかなりません(損得については選挙区間1票格差以外も考慮する必要あり)。投票価値の不平等はセットで発生しているのですから、いずれも無効とすべきです。

岡山2区の選挙だけを無効とする岡山支部判決も、無効判決としなかったその他の判決と同様に、事情判決というしかありません。格差是正訴訟で新たな差別を生むとは、皮肉です。

[参考]

1票の格差とは何か
http://kaze.fm/wordpress/?p=381

2012衆院選――結果分析(2012衆院選での政党間1票格差について:表1)
http://kaze.fm/wordpress/?p=435

細田案が浮き彫りにする「政党間1票格差」(社民党支持者の1票の価値は、公明党支持者の1票の0.45票分)の違憲性
http://kaze.fm/wordpress/?p=449

「1票の格差」是正の再選挙で政党間1票格差が拡大する可能性も
http://kaze.fm/wordpress/?p=450

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164

太田光征