中選挙区比例代表併用制を提案する
10月 17th, 2007 Posted by MITSU_OHTA @ 20:55:02under 選挙制度 [2682] Comments
日本は小選挙区制の下で保守二大政党制が完成されつつあります。二大政党制の落とし穴は、アメリカ、特に大統領選の民主党候補予定者が、象徴的に表しているのではないでしょうか。
核兵器廃絶を公約に掲げるバラク・オバマ氏ですが、原発企業から献金を受けています。ヒラリー・クリントン氏も、マイケル・ムーア監督作品『シッコ』で批判された民間医療保険会社から献金を受けているのです。民主・共和のどちらに転んでも財界党。二大政党制は献金攻勢などで財界政治を保障するのに都合のよい仕組みといえます。
海外では、全候補者に順番をつけて投票する選挙制度も見られます。日本と比べればオタク的とも思えるほど民意の反映に腐心しているのです。民主主義の土台としては当然でしょう。
民意を切り捨てながら二大政党制に誘導する小選挙区制は廃止しなければなりません。中選挙区比例代表併用制が、選挙制度改革論議のたたき台になればと思います。
小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215
小選挙区比例代表併用制の問題点
http://kaze.fm/wordpress/?p=220
大選挙区制(中選挙区制)の問題点 〜連記投票制の落とし穴〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=232
比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション
http://kaze.fm/wordpress/?p=229
【追記:2008年8月5日】 制度(6) 無所属候補に対する余剰票の処理と解説(8) 無所属候補を政党と見なすだけの比例代表制は比例代表制とはいえない――無所属候補に対する余剰票の処理を追加しました。
【目次】
要点
具体例
制度
(1) 中選挙区比例代表併用制
(2) 無所属候補の当選決定方法と一票の格差を防止するための措置
(3) 比例区選挙における議席配分数の決定方法
(4) 政党内当選順位の決定方法
(5) 候補者数が議席配分数に満たない政党の扱い
(6) 無所属候補に対する余剰票の処理
解説
(1) 二種類の一票の格差を解消する
(2) なぜ中選挙区制と比例代表制の<並立>制ではなく<併用>制か
(3) 中選挙区選挙の位置づけ
(4) 選挙区定数と総定数は開票後に確定する――無所属候補に関する格差を防止するための措置
(5) 比例区選挙の方法
(6) 比例区選挙における政党内当選順位の決定方法
(7) 政党・無所属別の格差
(8) 無所属候補を政党と見なすだけの比例代表制は比例代表制とはいえない――無所属候補に対する余剰票の処理
3つの選挙制度の主な違い | |||
小選挙区比例代表 併用制(ドイツ) |
小選挙区比例代表 並立制(日本) |
中選挙区比例代表 併用制 |
|
総定数 | 比例区定数に同じ。 | 選挙区定数と比例区定数の合計。 | 中選挙区に割り振られた数の合計。 |
定数関係 | 比例区定数の中に小選挙区定数の全部または一部が組み込まれている。 | 選挙区定数と比例区定数が分離している。 | 従来の意味での定数は存在しない。 総定数から中選挙区における無所属の総当選者数を差し引いた数が、比例区での議席割り当て数にな る。 |
公平性 | 比例区定数は小選挙区定数を上回っており、比例区は政党の優先枠的性格。 | 比例区は政党の完全な独占枠。 | 同じ総定数を政党と無所属が争うので、無所属が全議席を独占することも可能。 |
死票の多寡 | 超過議席を認めるため、完全な比例代表制ではなく、大政党に有利。無所属の死票が生じやすい。 | 政党、無所属を問わず死票が多い。 | 政党については完全な比例代表制。無所属の死票は抑制的。 |
【要点】
1. 総定数をすべて無所属候補でも当選可能な中選挙区に割り振る。
2. すべての候補者は選挙区と全国比例区の両方から立候補する。比例区名簿は非拘束式。
3. 有権者は一人二票を持ち、一票を選挙区候補者に、もう一票を比例区候補者に投票する。
4. 無所属候補は主に選挙区で選出し、政党候補は比例区で選出する。
5. 総定数から無所属の総当選者数を差し引いた数の議席を政党に割り当てる。
6. 政党と無所属に議席配分をめぐる公平な土俵を設定。
7. 選挙区で無所属に投じた票が死票の場合、比例区での投票先がその死票の委譲先になる。
8. 比例区の投票では第二希望も記入し、死票を縮減。
【具体例】
全国を仮定数5の選挙区に区割りした場合を説明します。その内のある選挙区で、投票の結果、1位から4位までを政党候補が占め、5位に無所属候補がついたとします。
この段階で、無所属候補の当選は確定ですが、1位から4位までの政党候補については、当選はまだ確定しません。ただし、政党全体に割り当てられる比例区議席数の内、4が確定します。
総定数から無所属候補の総当選者数を差し引いた数の議席を政党に割り当てるのです。政党候補にとっての選挙区選挙は、政党全体に対する議席割り当て数を獲得する戦いという意義を持ちます。
そもそも、政党候補と無所属候補が公平に議席を争う設定が必要です。現行の小選挙区比例代表<並立>制では、政党候補にとって、比例区定数分は、無所属候補と戦わずして割り当てが確保されています。これは非常に不公平な制度です。この不公平さは、ドイツ下院の小選挙区比例代表<併用>制でも排除しきれていません。
各政党に対する議席割り当て数は、比例区選挙の得票数に応じた比例配分で決定します。各政党内における当選順位の決定は、各候補者の比例区得票実績に基づきます。要するに、現在の参院と同じ制度です。ただし、比例区の大きさについては、ブロック制も考えられるし、政党内における当選順位の決定についても、中選挙区選挙の得票実績(惜敗率など)などに基づく方法もあり得ます。
【制度】
(1) 中選挙区比例代表併用制
仮総定数はすべて有権者数に比例した仮定数を持つ選挙区に配分する。選挙区の仮定数は5以上を目安とし、なるべく揃える。本定数は(2)の措置に基づき、開票後に確定する。選挙区の定数は、実際上、無所属の当選上限枠を意味する。
無所属候補を含むすべての候補者は選挙区と全国比例区の両方から立候補する。有権者は一人二票を持ち、一票を選挙区候補者に、もう一票を比例区候補者に投票する。比例区名簿は非拘束式とする。
比例区の投票では、第一希望の他に、第二希望の候補者名も記入することができる。第二希望の候補者は、第一希望の候補者と同じ政党に所属する候補者であってはならない。第一希望の無所属候補または政党が議席を獲得できなかった場合、その死票を第二希望の候補者に委譲する。
政党候補は、比例区選挙で選出する。無所属候補は、選挙区または比例区選挙で選出する。
(2) 無所属候補の当選決定方法と一票の格差を防止するための措置
無所属候補は、選挙区または比例区のいずれかでの当選をもって当選とする。選挙区と比例区の両方で当選した場合は、選挙区での当選を優先する。無所属に関する選挙区別の一票の格差を防止するため、以下の措置を取る。
投票者数当たりの仮定数が一番多い選挙区を基準に、仮定数の少ない選挙区の定数を、投票者数に比例して増やす。この措置の結果、各選挙区の本定数を決定する。これにともない総定数を確定させる。
(3) 比例区選挙における議席配分数の決定方法
全政党に対する議席割り当て数は、総定数から無所属候補の総当選者数を差し引いた数とする。各政党または無所属候補に対しては、その比例区得票数を基に、ヘア・ニーマイヤー式などで議席数を配分する。
(4) 政党内当選順位の決定方法
政党候補は、その比例区得票数の多い順に当選させる。
(5) 候補者数が議席配分数に満たない政党の扱い
政党所属の候補者数が、当該政党に配分された議席数に満たない場合、無所属候補と同様の扱いとし、当該候補者のみを当選させる。当該候補者数を無所属候補の総当選者数に繰り入れた上で、議席配分を再度実施する。
(6) 無所属候補に対する余剰票の処理
当選した無所属候補が選挙区選挙または比例区第1希望投票で獲得した票数のうちいずれか大きい票数が、比例区当選者1人分の当選に要する当選基数分の票数を上回る場合、以下の措置を取る。
有効な比例区第2希望投票数が、「『選挙区選挙または比例区第1希望投票で獲得した票数のうちいずれか大きい票数』から当選基数を減じた票数」よりも小さい場合、第2希望投票を第2希望投票先政党へそのまま移譲する。
有効な比例区第2希望投票数が、「『選挙区選挙または比例区第1希望投票で獲得した票数のうちいずれか大きい票数』から当選基数を減じた票数」よりも大きい場合、後者の票数を比例区第2希望投票に基づいて第2希望投票先の政党に比例配分する。
【解説】
区割り選挙を独立して行う結果生じる一票の格差には、二種類あります。一つは、選挙区ごとに定数当たりの有権者数あるいは投票者数が異なることで生じる格差です。選挙区別の有権者間格差といえます。一票の格差という場合、どういうわけか、普通はこちらのみを指します。具体例についてはこちらを参照してください。
一票の格差は比例代表制で解消するしかない
http://kaze.fm/wordpress/?p=142
もう一つは、政党の得票率と議席獲得率に乖離が生じる格差です。野党が票数の上では与党に勝っても、議席数で負けるなどの事態が発生します。政党別の有権者間格差と呼べます。
政党所属の国会議員が国会の採決でどう振る舞うかは、選挙時の得票数の多寡ではなく、党が決めた方針に大きく左右されます。国会政治がこうした政党政治である現実を考慮すれば、政党別の有権者間格差は非常に不合理といえます。
これらの格差を生じさせない選挙制度が必要です。また、政党候補と無所属候補の間の格差についても、留意しなければなりません。
(2) なぜ中選挙区制と比例代表制の<並立>制ではなく<併用>制か
区割り選挙を独立して行えば、二種類の一票の格差は避けられません。政党候補に限れば、これらの格差をなくす最も合理的な制度は、全国一区の比例代表制でしょう。しかし比例代表制を採用する場合は、政党と無所属の間の公平性を確保しなければなりません。
比例代表制では、政党が複数の候補者を立てて一人を当選させるパターンが可能ですが、無所属にはそれができません。定数が大きすぎる選挙区選挙では逆に、一部の政党候補者に票の集中現象が起きることで、無所属に有利となる場合があり得ます。
したがって、比例代表制とともに、適切な規模の区割り選挙を併用するのが合理的です。そこで、無所属でも当選可能な中選挙区に区割りして、総定数をすべて中選挙区に割り振り、すべての候補者に中選挙区制と比例代表制を適用します。こうして政党と無所属が同じ総定数をめぐって競う制度が、最も公平であるといえます。
日本の現在の制度は選挙区比例代表<並立>制です。この制度は、総定数を二つに分けて、それぞれに選挙区制と比例代表制という異なる制度を適用しているにすぎません。これに対して、ドイツの下院などが採用している小選挙区比例代表<併用>制は、比例代表制の中に小選挙区制を組み込んだもので、小選挙区の候補者に対して、小選挙区制と比例代表制を同時に適用します。比例代表制で政党への議席配分数を決定し、小選挙区の当選者を優先的に当選させる制度です。
中選挙区比例代表併用制は、ドイツの制度における小選挙区を中選挙区に置き換えただけの制度ではありません。選挙区と比例区の関係が逆転している点で、両制度は大きく異なります。
中選挙区比例代表併用制では、総定数をすべて中選挙区に割り振り、政党候補と無所属候補が同じ総定数をめぐって争います。選挙区における無所属の当選者数に応じて、主に政党に対する比例区の議席割り当て数が変動します。そのため、選挙区にも比例区にも、従来の意味での定数は存在しません。選挙区の定数は、実際上、無所属の当選上限枠を意味します。
これに対して、ドイツの制度では、比例区定数が総定数であり、比例区定数の中に小選挙区定数の全部または一部が組み込まれています。実際は比例区定数が598で、半数の299が小選挙区定数になっています。小選挙区の当選者が比例区での議席配分数を上回る場合は、「超過議席」として認められます。このため、総当選者数が総定数を上回ることがあります。
比例区選挙は無所属に不利なので、ドイツの制度における比例区は、政党優先枠の性格が強いといえます。日本の並立制における比例区は、完全な政党独占枠になっています。ところが中選挙区比例代表併用制では、政党優先枠が存在しません。
同併用制では、同じ総定数をめぐって政党候補と無所属候補が中選挙区で競い合います。したがって原理的には、無所属が全議席を独占することも可能です。政党と無所属に議席配分をめぐる公平な土俵を設定しているわけです。
小選挙区制では、第二位以下がすべて切り捨てられるので、特に無所属については民意を反映する制度とはいえません。中選挙区以上にすることで、低順位の無所属も当選可能となります。
全国一区の比例区を設けることで原則的な平等性を、総定数を中選挙区に割り振ることで実際的な公平性を担保するのが、中選挙区比例代表併用制といえます。
無所属候補は比例区での当選が困難なので、選挙区で当選しただけでも当選を確定させます。ただし、選挙区で無所属が落選しても、比例区で当選することが原理的にはあり得るので、無所属も比例区で立候補することにしています。政党候補も選挙区で無所属と戦いますが、選挙区における政党候補の得票実績は、候補者個人の当落に直接的には関係しません。
全政党に対する議席割り当て数は、総定数から無所属の総当選者数を差し引いた数としています。無所属の総当選者数には、比例区での当選者数も原理的には含まれますが、わずかであると思われます。
したがって、中選挙区比例代表併用制における選挙区選挙は、無所属の選出と、全政党への議席割り当て数を概略決定するための選挙と位置づけられます。
無所属で当選後、政党に鞍がえするケースが頻出すれば、比例代表制ではなくなります。そのような鞍がえは認めないことが必要でしょう。
(4) 選挙区定数と総定数は開票後に確定する――無所属候補に関する格差を防止するための措置
政党候補に関しては、比例代表制を採用することで二種類の格差が解消されます。しかし、中選挙区に区割りしているため、無所属候補については、選挙区別の有権者間格差が生じ得ます。そこで、選挙区の開票前の定数は、その選挙区の有権者数に比例した仮定数とし、本定数は開票後に確定させます。
具体的には、投票者数当たりの仮定数が一番多い選挙区を基準に、仮定数の少ない選挙区の定数を、投票者数に比例して増やします。これに伴い、総定数が確定します。
(2)で指摘したように、選挙区の定数は、実際上、無所属の当選上限枠を意味します。
政党候補と無所属候補はすべて全国一区の比例区にも立候補します。政党の候補者名簿は非拘束式です。各政党または無所属候補への議席配分数は、各政党または無所属候補が比例区で獲得した票の合計を基に、ヘア・ニーマイヤー式などで決定します。政党内当選順位は、各候補の比例区得票数が多い順とします。地域代表の性格を強めたいのであれば、全国一区ではなく、ブロック制にするのがよいでしょう。
選挙区の政党候補は、無所属候補と競う必要があり、選挙区選挙の運動を軽視できません。全国一区の比例区選挙のために、他選挙区での運動に比重を割けないという意味です。
比例区得票数を政党内当選順位の決定に利用する場合、候補者にとって選挙区別の格差が生じ得ます。各候補の比例区得票数は、選挙区の投票者数に影響を受けると考えられ、投票者数は選挙区によって異なるからです。また、全国一区の比例区にだけ立候補できる政党候補を認めても、比例区得票数の点で、選挙区候補との間に不平等が生じる可能性があります。
そこで、政党候補は選挙区のみから立候補し、選挙運動も選挙区内に限定すべきという考え方ができます。この場合、比例区選挙では政党名で投票し、政党内当選順位は、選挙区での得票実績に基づいて決定することになります。
ところが、現在の並立制で全国一区の比例区から立候補する候補でも、実際は選挙運動地盤が限定されています。したがって、選挙区から立候補する政党候補に関しても、全国一区の比例区得票数を基準に政党内当選順位を決定することは、不合理とはいえないでしょう。この場合、有権者は全国の政党候補者の中から選択できるので、選択権が拡大するというメリットが生じます。
以上の理由から、中選挙区比例代表併用制における政党内当選順位の決定は、比例区得票数に基づくことにしています。
以下は、参考までに、政党候補の当選順位を選挙区の得票実績で決定する方法です。
選挙区での得票実績としては、得票率が考えられます。しかし、候補者が乱立した場合など、第一位候補でも当選できないことが起こり得ます。また、例えば、A選挙区で第一位候補の得票率が40%、第二位候補の得票率が30%、B選挙区で第一位候補の得票率が50%、第二位候補の得票率が30%とします。同じ得票率30%でも、A選挙区の第二位候補は、第一位候補との差がB選挙区の場合より小さく、得票実績が高いと評価するのが妥当です。
したがって、単純な得票率に基づく当選順位の決定は不適切と考えられます。政党候補の得票実績としては、第二位以下の候補の場合、第一位候補を基準にした得票数の比を採用するのが妥当でしょう。第一位候補については、第二位候補を基準にした比を用います。
政党候補については、政策的統一性が認められるため、比例代表制で各党に議席配分する方法が合理的です。政党候補に関する格差は、この方式で解消されます。しかし、政党候補に投票した有権者と無所属候補に投票した有権者の間でも、一票の格差が生じ得ます。無所属候補の死票が政党候補に比べて多い場合、何らかの手当てを考慮しなくてよいのか、という問題があるからです。
無所属全体を仮想党派とみなして、議席数を政党と同様に比例配分することも形式的には考えられます。しかし、無所属については政策上の一致点でくくることが困難なため、合理性を欠きます。
例えば、無所属を与党系と野党系に分けて考えます。与党系については、個々の得票実績は高いが総得票数は少なく、野党系については、個々の得票実績は低いが総得票数が多いとします。このような場合、比例配分することで、むしろ政策上の民意が損なわれる結果になるでしょう。
このように、無所属全体を一つの党派とみなして比例代表制を適用することには、無理があります。そこで代替措置として、無所属に投じられた死票を、政策の近い政党に譲ることが考えられます。(逆に政党から票を減らすという発想もできます。)
実際、有権者は同じ総定数の枠内で選挙区票と比例区票を持ち、かつ比例区で第二希望の投票もできることから、それが可能になっています。選挙区または比例区の第一希望で無所属に投じた票が死票になったとします。この場合、比例区での第一希望または第二希望の投票先が、死票の委譲先になり得ます。現在の並立制では、選挙区の定数と比例区の定数が分離しているため、比例区の投票に死票委譲の意味合いはありません。選挙区の死票は死票のままです。
過去3回の参院選を振り返ってみます。2007年参院選では、実質的な民主・社民統一型の無所属候補が各地で当選しました。その結果、選挙区では、政党全体においても、無所属全体においても、それぞれ得票率と議席獲得率がほぼ一致しています。ところが、2001年、2004年参院選の場合、無所属は得票率よりも低い議席獲得率を記録しています。下記は得票数/基数でみた結果です。
2007年参院選(選挙区)――政党・無所属別一票の格差 | |||
得票数 | 得票数/基数 * | 当選者数 | |
政党 | 54,252,460 | 66.73 | 66 |
無所属 | 5,095,168 | 6.26 | 7 |
2004年参院選(選挙区)――政党・無所属別一票の格差 | |||
得票数 | 得票数/基数 * | 当選者数 | |
政党 | 50,412,346 | 65.5 | 68 |
無所属 | 5,696,505 | 7.4 | 5 |
2001年参院選(選挙区)――政党・無所属別一票の格差 | |||
得票数 | 得票数/基数 * | 当選者数 | |
政党 | 48,679,572 | 65.3 | 70 |
無所属 | 5,658,911 | 7.6 | 3 |
* 基数:(政党全体と無所属全体の総得票数)/ 定数(73)
現在の小選挙区主体から中選挙区に変更し、無所属がより多く当選できるようにすることで、無所属の得票率と議席獲得率の乖離は縮小すると予想されます。
中選挙区比例代表併用制では、その基本的構成で、政党・無所属別の格差がかなり解消されるものと期待できます。
(8) 無所属候補を政党と見なすだけの比例代表制は比例代表制とはいえない――無所属候補に対する余剰票の処理
(7)では無所属候補に対する死票を考えましたが、逆のケースも問題になります。例えば、野党系の無所属候補Aが、野党系候補数人分の得票数を1人で稼いで当選した結果、与党の(仮)当選者数を増やしてしまったケースなどです。
もしも単純中選挙区制や単純大選挙区制、単純比例代表制の場合、「野党系無所属党A」は、このケースでもたった1人しか当選者を出せません。これは、与党に不当に有利であるといえるでしょう。
中選挙区比例代表併用制であればどうか。選挙区選挙または比例区第1希望投票で無所属候補Aに投じた有権者が、比例区第2希望投票で政党(野党)に投票したとします。
無所属候補Aが獲得した、本人の当選に寄与しない余剰票を、比例区第2希望投票先の政党に(比例)配分します。無所属候補に投じられた余剰票を政党に委譲する形で比例代表制に組み込むわけです。
このように、無所属候補を政党と見なしても、候補者が1人であることに変わりはなく、無所属候補に単純比例代表制を適用しても、比例代表制が期する民意の反映は実現できません。また解説(7)で指摘したように、比例区における無所属候補の死票を生かす措置も必要です。
無所属候補に比例代表制を適用する場合、中選挙区制と併用しなくとも、比例区第2希望投票などが最低限必要でしょう。
太田光征
http://otasa.net/
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