衆議院選挙の選挙協力についてのお願い

9月 24th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 17:58:08
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 すでに7月28日、民主党、日本共産党、社会民主党、国民新党、日本新党および新党大地に「那覇市長選へ向けた『4党合意』を歓迎します」を郵送していますが、総選挙が近づいてきた9月22日、改めて野党間選挙協力を求める要望書を郵送しました。

2008年9月22日

 ●●様

衆議院選挙の選挙協力についてのお願い

 日頃、市民のための政治へのご奮闘・ご活躍に心より敬意を表します。
私たち「『平和への結集』をめざす市民の風」は平和を望む市民を結集し、選挙において「平和共同候補」の擁立を求めるなどの運動をする市民団体であります。

 昨年7月に実施されました第21回参議院選挙においては、与党が大敗し、民主党は参議院での第1党となり、参議院では与野党の逆転が実現しました。
これは、自公政権からの政権交代を国民が望んでいる現われであると思われます。

 9月1日に福田首相が辞意を表明しました。安倍首相に続いての政権の投げ出しであります。これらはもはや自民党の政権担当能力のなさを露呈していると思われます。

 福田首相は辞任にあたって「国民のため」と強調していましたが、自民党が今国民のためになすべきことは、自民党内の政権たらい回しではなく、野党第一党に政権を譲り選挙管理内閣によって衆院解散・総選挙で民意を問うべきことであると考えます。
 ところが今回もまた自民党は「憲政の常道」を無視し、9月24日に予定されている臨時国会で、自民党の新総裁を首相に指名し自民党・公明党による連立内閣を誕生させようとしております。

 現在私たち国民の大多数は、大幅な物価高、食料不安、年金問題、増税、地域医療の崩壊、後期高齢者医療制度の発足、低賃金労働、無責任なリストラ等々数え切れないほどの悪い環境の中で、苦しい生活を強いられているのが実態であります。

 これらを改善し国民生活を向上させるためには、野党連合による政権交代の実現が急務であると考えます。
 そして一番大事なことは、政権交代により国民の大多数が、自公政権の時代より「生活が良くなり安心して暮らせるようになった」という実態が伴わなくてはならないと思います。

 各政党におかれましてはそれなりのお考えがあろうかと存じますが「子供からお年寄りまで、だれもが安心して暮らせる平和な日本」の実現のため、一部においては野党間の選挙協力は実現しておりますが、各野党におかれましては更なる選挙協力について積極的に話し合いをされますようお願いをする次第であります。

 このことが今国民の願っている最大の関心事でありましょう。具体的には、野党候補が競合しない小選挙区で、お互いに推薦し合うなどが考えられます。
 難しいお願いを申し上げてまことに恐縮では有りますが、選挙協力の実現なくしては、万人が平和に暮らしていける日本国は実現できないと思い、あえてお願い申し上げます。皆様のご賢察を切にお願いいたします。

 本件に対するご連絡は下記までお願い申し上げます。

 連絡先:「市民の風」衆議院選挙選挙協力問題担当  太田光征 宛

「平和への結集」をめざす市民の風
事務局長 竹村英明
執行委員 小林正弥

大選挙区制(中選挙区制)の問題点 〜連記投票制の落とし穴〜

9月 18th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 15:08:11
under 選挙制度 [5] Comments 

 複数の候補者を選ぶ大選挙区制(中選挙区制)では、複数の議席を選ぶのだから、定数分の票を投じる連記投票制(有権者1人複数票)が、一見合理的なように思われます。実は日本でも、1946年の1回だけ、連記投票制を組み合わせた大選挙区制で選挙が行われました。ところが、連記投票制の大選挙区制(中選挙区制)は、小選挙区制と同様に大量の死票を生み出すことがあります。

 では単記投票制(有権者1人1票)の大選挙区制(中選挙区制)はどうかというと、最も好まれた候補者を落選させるコンドルセのパラドックスを発生させます。

 以下、大選挙区制(中選挙区制)の問題点を解説しておきます。(印刷用ファイル

共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」賛同募集中
 
 
【目次】

(1) 単記投票制の大選挙区制(中選挙区制)では最も好まれた候補者を落選させるコンドルセのパラドックスが発生する
(2) 
連記投票制の大選挙区制(中選挙区制)は小選挙区制のように大量の死票を生み出す
(3) 
連記投票制の大選挙区制(中選挙区制)は小政党に有利か

【関連投稿】

小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215
中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
小選挙区比例代表併用制の問題点
http://kaze.fm/wordpress/?p=220
比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション
http://kaze.fm/wordpress/?p=229

【参考文献】

西平重喜『比例代表制』(中公新書、1981年)
 
 

(1) 単記投票制の大選挙区制(中選挙区制)では最も好まれた候補者を落選させるコンドルセのパラドックスが発生する

 具体例で考えてみましょう。定数が2で、A、B、Cの3候補が立候補し、投票者数は約30万人、A、B、Cの得票率はほとんど変わらないとします。つまり、それぞれ約10万票を得たとします。ただ、少しだけ得票数に開きがあり、単記投票制の場合の得票順位がA、B、Cだったとします。したがって単記投票制の場合の当選者はAとBの2人です。

 投票の「中身」をもっと詳しく見ていきます。Aが一番好きだとする有権者の中では、BよりCが好きだという有権者が100%、Bが一番好きだとする有権者の中でも、AよりCが好きだという有権者が100%、Cが一番好きだとする有権者の中でも、AよりBが好きだという有権者が100%であったとします。

 すると、もしも連記投票制で2票を投じることができる場合、第1希望と第2希望でAに投じる有権者は約10万人、第1希望と第2希望でBに投じる有権者は約20万人、第1希望と第2希望でCに投じる有権者は約30万人いると考えられます。したがって連記投票制なら、C、Bの順に当選し、単記投票制でトップ当選したAは落選します。

 このように、大選挙区制(中選挙区制)の場合、単記投票制では民意を反映しない場合があります。小選挙区制で有名なコンドルセのパラドックスと同じ原理です。では、大選挙区制(中選挙区制)に連記投票制を採り入れればいいかというと、次のような問題点があります。
 
 

(2) 連記投票制の大選挙区制(中選挙区制)は小選挙区制のように大量の死票を生み出す

 具体例で考えます。定数が10で有権者1人10票を投じ、与党Aから10候補が立ち、野党Bからも10候補が立ったとします。与党支持の有権者はすべて与党の10候補に投票し、野党支持の有権者もすべて野党の10候補に投票したとします。さて、野党支持の投票者数が、与党支持の投票者数より1だけ多いとします。すると連記投票制の場合、野党の10候補はすべて与党の10候補より1だけ得票数が多いことになります。結果は、10議席すべてを野党Bが独占します。

 もしも上記のケースで比例代表制が採用されていれば、与党Aと野党Bはほぼ5議席ずつを分け合うことになるでしょう。

 このように、大選挙区制(中選挙区制)に連記投票制を組み合わせると、著しく民意からかけ離れた選挙結果を生じることがあります。小選挙区制と同様、大量の死票を生み出します。

 英国で過去に実例があります。「イギリスのノルウィッチ選挙区は、一九四五年まで二議席で、二名連記投票制だった。…このような二議席の選挙区がイギリスには一九四五年まで一一区あったが、この最後の選挙では、一一区とも全部一党によって独占され、一議席ずつ分けあったところはない」(西平重喜『比例代表制』、中公新書、p24、1981年)。

 「フランスの小さな町村は、日本の大字ていどの規模のものが多いが、そこでの町村議会は、連記投票制に近い方式で、議会全体を一つのグループにゆだねようとしている」(同上書、p25)。

 単記投票制であれば比例代表制に近くなる大選挙区制(中選挙区制)が、連記投票制を組み合わせることで、大量の死票を生み出す小選挙区制のような制度に変質する。かといって単記投票制の大選挙区制(中選挙区制)では、原理的に民意を反映しない。大選挙区制(中選挙区制)の本質的矛盾です。
 
 

(3) 連記投票制の大選挙区制(中選挙区制)は小政党に有利か

 連記投票制であれば、1人の候補者に票を集中させることで、小政党の候補者でも当選させることができるのではないか、とも考えられます。簡単なシミュレーションを行ってみましょう。

 定数が3で有権者1人3票制とし、大政党Aが候補者2人を立て、支持率50%、大政党Bも候補者2人を立て、支持率40%、小政党Cが候補者1人を立て、支持率10%とする。大政党Aを支持する有権者はすべて大政党Aの候補者2人に投票し、大政党Bを支持する有権者はすべて大政党Bの候補者2人に投票し、小政党Cを支持する有権者はすべて小政党Cの候補者1人に投票したとする。

 上記のケースでは、大政党Aの候補者2人の平均得票率は75%(50% × 3 ÷ 2)、大政党Bの候補者2人の平均得票率は60%(40% × 3 ÷ 2)、小政党Cの候補者1人の得票率は30%(10% × 3)となる。したがって選挙結果は、大政党Aに2議席、大政党Bに1議席という公算が大きい。

 もしも上記のケースで、大政党Aの支持率は50%のまま、大政党Bの支持率を30%、小政党Cの支持率を20%に変えれば、大政党Bは議席を得られず、小政党Cが3議席目を獲得できる可能性が高くなる。確かに小政党に有利といえるが、民意を反映した選挙結果ではなくなります。

 さらに最初のケースで、大政党Aの候補者を3人に変えてみます。すると、大政党Aの候補者と大政党Bの候補者の平均得票率が逆転し、大政党Bに2議席、大政党Aに1議席という可能性が大きくなります。大政党Aによる「票割り」(候補者調整と票の割り当て)の失敗例です。

 以上のように、連記投票制の大選挙区制(中選挙区制)は、とても民意を反映した選挙結果をもたらすとはいえません。小政党に有利なケースが生まれたとしても、例えば定数3なら、比較第3党までしか議席は獲得できないでしょう。
 
 
太田光征
http://otasa.net/

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い(第3回、鳩山由紀夫氏あて)

9月 13th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 16:24:29
under 一般 [19] Comments 

民主党幹事長 鳩山由紀夫様

 私どもは、小選挙区制の廃止などを目指して活動している平和への結集・市民の風と申します。度々、表題のお願いをさせていただいております。

 報道によりますと、鳩山幹事長は、次期衆院選のマニフェストに、衆院議員定数の2割削減を盛り込む方針とのことです。

 貴党の従来からの主張からすると、この2割削減は、比例区定数の削減を意味するものと察します。定数2割削減の理由として、鳩山幹事長は、「行政改革をやるために、まずは自分の身を切るところからスタートさせたい」という点を挙げられています。

 しかし、比例区定数の削減が総合的な見地から、行政改革につながるのかどうか、厳密な検討が必要であると考えます。特に、民意を反映する選挙制度であるか否かと、議会経費削減に留まらない総合的な行政改革を断行できる議会との関係は、議論すべき点が多いと思われます。

 私どもは、各党の議員をお招きして、小選挙区制を見直す集会を、9月以降に企画しております。つきましては、上記の問題などを議論するために、鳩山幹事長を始め、貴党の見解を伺える方の参加を検討していただきたく、お願い申し上げます。日程につきましては、各党との調整の上、決定させていただきます。

2008年8月19日

「平和への結集」をめざす市民の風

選挙制度問題担当 太田光征

(以上は2008年8月20日、民主党本部に郵送しました)

比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション

9月 3rd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 18:34:12
under 選挙制度 [2877] Comments 

 

自民と民主は議席獲得率が増加し
小数野党は議席獲得率が減少する

 民主党は衆院選比例区の定数を80削減して100にしようとしています。比例区定数が100になった場合、各党の獲得議席はどうなるのか。2007参院選比例区のデータを使ってシミュレーションを行いました。

 議席比例配分の計算方法として現行のドント式を前提にすると、現行定数規模のブロック式が小政党に不利であることなども解説しておきます。(印刷用ファイル

共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」賛同募集中
 
 

【関連投稿】
小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215
中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
小選挙区比例代表併用制の問題点
http://kaze.fm/wordpress/?p=220
大選挙区制(中選挙区制)の問題点 〜連記投票制の落とし穴〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=232

【参考文献】
西平重喜『比例代表制』(中公新書、1981年)

【目次】

1 比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション(2007参院選比例区データ使用、現ブロック構成で2005年国勢調査に基づき定数配分)
2 議席比例配分の計算方法と票数集計単位の比較〜ドント式と定数の少ない現行ブロック式の組み合わせは小党に不利〜
3 議席比例配分の計算方法
   ヘアー式と最大剰余法
   ドループ式とハーゲンバッハ・ビショフ式
   ドント式
   サント・ラゲ(サン・ラグ)式
   イタリア2段式
 
 

1 比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション(2007参院選比例区データ使用、現ブロック構成で2005年国勢調査に基づき定数配分)

 11ある各ブロックへの定数は、2005年国勢調査の県別人口に比例して配分し直しました。定数配分の方法は最大剰余法です。各ブロックにつき、その人口比率に総定数180を掛け、その積の整数部分をまず当該ブロックに配分します。積はほぼ例外なく小数なので、配分し切れない残余定数が発生します。これらの残余定数は、積の小数点以下が大きいブロックから順に1つずつ配分していきます。

 以上は2008年9月2日、総務省に電話で確認した方法ですが、本法の正式名称のようなものはあるかとの質問には、ない、とのことでした。ただ本法は、ヘアー式の最大剰余法と同一であるため、最大剰余法と呼んでおきます。ちなみに、こうした具体的な計算方法は、公職選挙法には記載されていません。

 議席配分の方法はドント式(第3節で説明)です。シミュレーション結果を表1Aに示します。
 
 

表1A 衆院選比例区シミュレーション

2007参院選比例区データ使用、2005年国勢調査に基づき定数配分




















北海道 1 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4
東北 3 4 1 0 0 0 0 0 0 0 0 8
北関東 4 5 1 1 0 0 0 0 0 0 0 11
南関東 4 6 1 1 0 0 0 0 0 0 0 12
東京 3 5 1 1 0 0 0 0 0 0 0 10
北陸信越 3 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6
東海 4 6 1 1 0 0 0 0 0 0 0 12
近畿 4 7 3 2 0 0 0 0 0 0 0 16
中国 2 3 1 0 0 0 0 0 0 0 0 6
四国 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3
九州 4 5 2 0 1 0 0 0 0 0 0 12
33 49 11 6 1 0 0 0 0 0 0 100
全国一括式 29 41 13 7 4 2 3 0 0 0 1 100
得票率 28.1 39.5 13.2 7.5 4.5 2.2 3.0 0.3 0.5 0.3 1.1 -



















北海道 2 5 1 0 0 0 0 0 0 0 0 8
東北 5 7 1 0 0 0 0 0 0 0 0 13
北関東 6 9 3 1 1 0 0 0 0 0 0 20
南関東 7 10 3 1 1 0 0 0 0 0 0 22
東京 5 8 2 2 0 0 1 0 0 0 0 18
北陸信越 4 6 1 0 0 0 0 0 0 0 0 11
東海 6 11 3 1 0 0 0 0 0 0 0 21
近畿 7 12 5 3 1 0 1 0 0 0 0 29
中国 4 5 2 0 0 0 0 0 0 0 0 11
四国 2 3 1 0 0 0 0 0 0 0 0 6
九州 7 9 3 1 1 0 0 0 0 0 0 21
55 85 25 9 4 0 2 0 0 0 0 180
議席獲得率 30.6 47.2 13.9 5.0 2.2 0 1.1 0 0 0 0 -
全国一括式 52 73 24 13 8 3 5 0 0 0 2 180
得票率x定数 50.5 71.1 23.7 13.5 8.1 3.9 5.4 0.5 0.8 0.5 2.1 -

 
 
 まず、ドント式を前提にすると、現行定数規模のブロック式比例代表制は、少政党に不利である点が改めて明瞭に示されています。大政党が得票率を超える議席を獲得しているのに対して、小政党は得票率未満の議席しか獲得できていません。

 定数(比例配分する議席数)が少ないほど、大政党に有利であるのが比例代表制の特徴で、比例代表制本来の制度思想から逸脱してしまいます。

 具体的に見てみましょう。表1Aから各党の最終的な獲得議席数を抜き出しておきます。
 

衆院選比例区予測――定数100(現ブロック構成で2005年国勢調査に基づき定数配分)

ブロック定数: 北海道4 東北8 北関東11 南関東12 東京10 北陸信越6 東海12 近畿16 中国6 四国3 九州12
ブロック式: 自民33 民主49 公明11 共産6 社民1
全国一括式: 自民29 民主41 公明13 共産7 社民4 国民2 日本3 女性1

 
 定数100の場合、全国一括式であれば、民主党を除く野党の獲得議席数は全体で17議席です。ところが、ブロック式であれば、民主党を除く野党は、全体でも7議席しか獲得できず、一桁政党に勢力を落とします。全国一括式であれば議席を獲得できる国民新党と新党日本は、ブロック式の場合、議席数ゼロです。逆に自民と民主は両党合わせると、ブロック式では、全国一括式に比べ12議席も多い82議席を獲得します。

 民主党は2004年に、衆院選比例区定数を80削減し100とするとともに、中国・四国ブロックを統合する公職選挙法改正案を提出しました。そこで、両ブロックを統合した場合を予測してみました。統合ブロックの定数は両旧ブロックの合計9議席と同じになり、議席配分も、統合ブロックで自民が1議席増え、民主が1議席減るほかは、変わりません。

 次に、総定数は180のまま、2005年国勢調査に基づき新たに定数配分し直した場合も予測しました(表1A)。現在の定数配分と比べると、東京ブロックで1議席増え、東北ブロックで1議席減る、1増1減になっています。表1Aから最終結果を抜き出しておきます。
 

衆院選比例区予測――定数180(現ブロック構成で2005年国勢調査に基づき定数配分)

ブロック定数: 北海道8 東北13 北関東20 南関東22 東京18 北陸信越11 東海21近畿29 中国11 四国6 九州21
ブロック式: 自民55 民主85 公明25 共産9 社民4 国民0 日本2
全国一括式: 自民52 民主73 公明24 共産13 社民8 国民3 日本5 女性2

 
 定数180(新定数配分)の場合も、民主党を除く野党は全国一括式であれば全体で31議席獲得できるのに対して、ブロック式であれば、16議席も少ない15議席しか獲得できません。自民と民主はこのケースでも、ブロック式では、全国一括式より15議席も多い140議席を獲得できます。

 比例区定数が180から100に削減された場合、主要政党とその組み合わせの比例区における議席獲得率がブロック式でどのように変化するかを、表1Bにまとめました。個別政党の議席獲得率は表1Aに記載してあります。定数が100の場合、総議席獲得数(ブロック式の「計」)が議席獲得率になります。

 自民と民主は、定数が180から100に削減されるに伴い、両党合わせると、4.2ポイント議席獲得率が上昇します。その一方で、公明は2.9ポイント減少し、共産、社民、国民新党、新党日本も、合わせて1.3ポイント減少します。

 小選挙区の定数はそのままで、比例区定数だけ削減された場合、小政党の小選挙区と比例区合わせた議席獲得率が減少することは明らかです。ところが、比例区だけに限定してみても、比例区定数削減は、小政党に不利であることが分かります。
 
 

表1B  衆院選比例区(現行ブロック式)シミュレーション:議席獲得率(%)の変化

2007参院選比例区データ使用、2005年国勢調査に基づき定数配分

自民 民主 自民+民主 公明 共産+社民+国新+日本
得票率 28.1 39.5 67.6 13.2 17.1
議席獲得率
(定数180)
30.6 47.2 77.8 13.9 8.3
議席獲得率
(定数100)
33.0 49.0 82.0 11.0 7.0

 
 
 同じデータで現行制度のまま衆院選比例区を予測すると、「定数180(現ブロック構成で2005年国勢調査に基づき定数配分)」と比べ、ブロック式で、共産が東北で1増して10議席、新党日本が東京で1減して1議席のほかは、変わりません。
 

衆院選比例区予測――定数180(現行制度)

ブロック定数: 北海道8 東北14 北関東20 南関東22 東京17 北陸信越11 東海21近畿29 中国11 四国6 九州21
ブロック式: 自民55 民主85 公明25 共産10 社民4 国民0 日本1
全国一括式: 自民52 民主73 公明24 共産13 社民8 国民3 日本5 女性2

 
 このように、ドント式かつ定数の少ないブロック式の現行比例代表制は、小選挙区制と同じで、大政党の議席を偽装的に増幅します。その結果、与党の延命を手助けする、言い換えれば政権交代を阻害することがあります。野党が比例区で支持率・得票率で与党に勝っても、議席数で負ける場合もあるのです。

 小選挙区制をそのままにし、比例区定数を削減する、民主党の現在の選挙制度案は、政権交代を促すという観点からは矛盾しています。民意の縮図となる議会構成を実現する選挙制度なら、政権交代も無理なく実現可能です。
 
 

2 議席比例配分の計算方法と票数集計単位の比較〜ドント式と定数の少ない現行ブロック式の組み合わせは小党に不利〜

 「ドント式は小党に不利」とか、「ブロック式は小党に不利」という言い方をよく見かけますが、これらは正確ではありません。西平重喜『比例代表制』(中公新書、1981年)から、議席比例配分の計算方法と票数集計単位を比較した表を転載しておきます。
 
 

表2 議席比例配分の計算方法と票数集計単位の比較

出典:西平重喜『比例代表制』(中公新書、1981年)から表現を一部改変
























得票率、四捨五入 257 79 72 44 36 4 8 11 511
ヘアー、最大剰余式 257 80 72 44 36 4 7 11 511
ドント式 259 80 72 44 36 3 6 11 511
サント・ラゲ式 257 80 72 44 36 4 7 11 511
イタリア2段式 269 75 72 43 33 3 5 11 511


ドント式 305 73 63 33 24 1 1 15 511
サント・ラゲ式 258 81 77 40 36 2 6 11 511













得票率、四捨五入 248 100 47 51 36 16 4 11 511
ドント式 250 100 47 51 34 15 3 11 511
サント・ラゲ式 252 102 48 54 35 16 4 10 511
イタリア2段式 258 101 48 50 33 16 3 2 511


ドント式 280 104 38 44 26 13 2 4 511
サント・ラゲ式 243 99 49 47 37 17 3 16 511
中選挙区制(実際) 284 107 33 29 32 12 3 11 511

 
 
 この表2から分かるように、比例区定数が十分多い場合、議席比例配分の計算方法に関係なく、各党の獲得議席数はほとんど同じです。議席比例配分の計算方法としてドント式を前提にすると、県単位のように定数(比例配分する議席数)が少なくなる票数集計単位を採用した場合、小党に不利となります。

 サント・ラゲ(サン・ラグ)式のように、全国一括でも県単位でもあまり獲得議席数に変化がない議席比例配分の計算方法もあります。ただしサント・ラゲ式は、後述のように、理論的な方法ではありません。

 県単位を前提にすると、サント・ラゲ式はドント式より小党に有利ですが、県単位サント・ラゲ式が中小政党にとって全国一括式の得票率式やサント・ラゲ式より不利になる場合があることに注意しなければなりません。

 このように、比例代表制で議席配分数に影響を与える因子には、議席比例配分の計算方法と票数集計単位(定数=比例配分する議席数の規模)があるので、両者を同時に考慮する必要があります。同書は次のように定式化しています。
 

全国得票率式
   ‖
全国ドント式 ≠ イタリア2段式 ≠ 県単位ドント式 ≒ 中選挙区制
   ‖                   ↓異なる↑
全国サント・ラゲ式     ≒     県サント・ラゲ式

 

3 議席比例配分の計算方法

 比例代表制には欠かせないのが、得票数に基づいて議席を配分するための計算方式です。定数に小数の得票率を掛けただけではほぼ小数しか生じないので、何らかの確定的な手続きを定めておかなければなりません。以下、いくつかの方法を説明します。

ヘアー式と最大剰余法

 総投票数を議員定数で割った商は、議員1人を当選させるに要する平均得票数と見なすことができます。この平均得票数をヘアーの当選基数と呼びます(少数点以下は一応切り上げておく)。各党の議席数は、各党の総得票数をヘアーの基数で割った商――得票率に議員定数を掛けた積の整数部分ともいえる――とする方法が考えられ、これをヘアー式といいます。

 ヘアー式で定数全部を配分できるとは限りません。その際は、ヘアーの基数で得票数を割ったときの剰余の大きい順に、残った議席を1つずつ割り当てることにします。これを、最大剰余法といいます。

 ところがこの最大剰余法には、「アラバマのパラドックス」が存在します。1881年、アメリカでは、州議員の定数を人口に基づいてヘアー式の最大剰余法で各州に割り当てる作業が行われました。総議席を300前後に変更しようとしたのですが、アラバマ州の定数は、総議席を299にすると8議席なのに、総議席を300にすると、7議席になってしまったのです。

ドループ式とハーゲンバッハ・ビショフ式

 議員1人を当選させるための十分条件となる得票数を考えてみます。定数が1なら、投票数の2分の1を1票でも超えた得票数の候補は、1人しか存在しません。定数が2なら、投票数の3分の1を1票でも超えれば確実に当選できます。

 このように、総投票数を定数+1で割った商より1票でも大きい票数を獲得できれば当確です。この商(票数)をドループの当選基数と呼びます。商が小数であれば、小数点以下を切り上げ、割り切れれば、1を加える必要があります。

 各党の議席数は、それぞれの得票数をドループの基数で割ったときの商とします。このドループ式でも議席すべてを配分できるとは限りません。残余議席は次の方法で配分します。

 例えば、表3で示す事例のように、ドループ式で定数6のところ、自民に1議席、民主に2議席がまず配分できたとする。3議席が配分できずに残っています。そこで、自民が2議席以上獲得した場合の平均得票数を考えてみる。民主についても、3議席以上獲得した場合の平均得票数を算出する。その他の党についても、ドループ式で配分された議席数を超えて配分された場合の平均得票数を計算する。この平均得票数の大きい順に、残った議席を1つずつ配分していきます。同じ党が複数の残余議席を独占するパターンもあります。この方式は、1議席当たりの重み(票数)を重視するもので、ハーゲンバッハ・ビショフ式と呼びます。

 このハーゲンバッハ・ビショフ式の配分結果は、次に説明するドント式と常に同じになります。
 
 

表3  ドループ式とハーゲンバッハ・ビショフ式

2007参院選比例区四国のデータ使用、定数6の場合
1,932,065÷(5+1)=322,010.8 → ドループ基数D=322,011

得票数
v
ドループ式
q=v÷D
ハーゲンバッハ・ビショフ式 議席数
v÷(q+1) v÷(q+2)
自民 588,147 1+余り v÷2=294,073
[1]
v÷3=196,049 2
民主 728,465 2+余り v÷3=242,821
[3]
v÷4=182,116 3
公明 291,065 0+余り v÷1=291,065
[2]
- 1
共産 131,119 0+余り v÷1=131,119 - 0
社民 74,507 0+余り - - 0
国新 36,598 0+余り - - 0
日本 40,324 0+余り - - 0
新風 4,262 0+余り - - 0
9条 16,069 0+余り - - 0
共生 4,187 0+余り - - 0
女性 17,322 0+余り - - 0
1,932,065 3+余り - - 6

 
 


ドント式

 この方式は、1議席当たりの重み(票数)を重視するハーゲンバッハ・ビショフ式と同じ考え方に基づくもので、そのため最大平均法とも呼ばれます。ハーゲンバッハ・ビショフ式が、ドループ式で大方の議席を配分した後の、残余議席に対する処理手続きであるのに対して、ドント式は、全議席を最初から重み付けしながら配分していきます。

 具体的には、表4の事例のように、各党の得票数を整数(1、2、3…)で順次割っていき、その商をリストしておく。このドント商は、それぞれの整数の議席を配分された場合の平均得票数なので、1議席の重み付けという意味合いを持ちます。そうして、ドント商が1番目に大きい政党に1議席目を配分し、ドント商が2番目に大きい政党――1議席目を配分された政党と同じこともある――に2議席目を…というように、順次議席を配分していきます。
 
 

表4  ドント式

2007参院選比例区四国のデータ使用、定数6の場合

自民 民主 公明 共産 社民 国新 日本
v÷1 588,147
[2]
728,465
[1]
291,065
[5]
131,119 74,507 36,598 40,324
v÷2 294,073
[4]
361,332
[3]
145,532 - - - -
v÷3 196,049 262,821
[6]
- - - - -
議席数 2 3 1 0 0 0 0

 
 


サント・ラゲ(サン・ラグ)式

 表2でも示されるように、定数が少ない選挙区での比例代表制は小党に不利なので、救済策が考えられました。サント・ラゲは、ドント式で各党の得票数を整数で割っていったところを、整数ではなく、奇数(1、3、5…)で割る方法を提案したのです。そのためサント・ラゲ式は奇数式とも呼ばれます。

 ただサント・ラゲ式は、「ドント式のような理論的な意味はなく、ただドント式のイミテーションとして、奇数で割り、小党に議席がゆきやすいようにしたのである」(同書、p95)。偶数の隙間を作り、そこに小党が割り込みやすくするわけです。

 ところがこれでは小党に有利すぎるというので、1の代わりに1.5で最初に割る案が考えられました。しかしスカンジナビア(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)では、やはり小党に厳しすぎるからと、妥協案として、1.5ではなく、1.4で最初に割る変形サント・ラゲ式が採用されています。


イタリア2段式

 (選挙区定数が少ない場合に)小党に不利な比例代表制の特性を改善しようという考え方は、イタリアの2段式にも見られます。イタリアの選挙方法をすべて記述すると長くなるので、比例配分の手続きに関する部分だけ、解説しておきます。

 選挙区は中選挙区から大選挙区まであり、各党は選挙区ごとに候補者リストを提出します。

 第1段階として、有権者はこのリストに投票し、選挙区ごとに変形ドループ式――有効投票数を「選挙区定数+2」で割った値を当選基数とする――で各党に議席を配分します。この段階でほぼ例外なく配分し切れない残余議席と剰余票(死票、ドループ割り算の余りに相当)が発生します。

 そこで第2段階として、各選挙区の残余議席を全国で一括集計し、また各党ごとに各選挙区の剰余票を合算し、これらにヘアー式の最大剰余法を適用して、残余議席を配分します。
 
 

太田光征
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