2012年総選挙:日本共産党の公約
日本共産党の公約について
日本共産党が、脱原発を掲げながら、脱原発を党是として大同団結した新党「日本未来の党」と、どのように関わっていくか。そのような問題意識をもって、日本共産党の公約に関心をもった。原発にしぼる前に、全体の公約について俯瞰してみよう。もともとの「総選挙政策−日本共産党の政策」
http://www.jcp.or.jp/web_policy/html/2012-senkyo.html
では、40もの項目にわたる詳細な政策の積み重ねがある
ここでは、「総選挙政策 日本共産党の改革ビジョン」について検討したい。
総選挙政策 日本共産党の改革ビジョン 60年続いた「自民党型政治」のゆがみを断ち切り、「国民が主人公」の新しい日本を 「提案し、行動する。日本共産党」の躍進を訴えます - 日本共産党の政策
http://www.jcp.or.jp/web_policy/2012/11/20121126-1.Html 2012年11月26日 日本共産党
《目次》
?総選挙にあたって、国民のみなさんに訴えます
1、デフレ不況からどう抜け出すか――国民の所得を増やし、内需を活発にする
2、社会保障充実と財政危機打開――「消費税増税に頼らない別の道」を提案します
3、「即時原発ゼロ」の実現を――エネルギーと日本経済の未来をひらきます
4、TPPに絶対反対を貫き、主権を尊重する互恵・平等の経済関係を広げます
5、東日本大震災からの復興、国民のいのちと生活を守る災害対策に転換します
6、「いじめ」問題を解決し、競争教育をただし、教育への政治支配に反対します
7、米軍基地の異常をただし、安保条約を廃棄し、対等・平等の日米関係を築きます
8、領土紛争の解決は、歴史的事実と国際的道理に立った冷静な外交交渉で
9、小選挙区制廃止、民意が正しく反映する選挙制度に。政党助成金は廃止します
10、憲法改悪を阻止し、平和・人権・民主主義の原則を国政の全分野に生かします
いまこそ、「政党らしい政党」――日本共産党を大きく躍進させてください
この中で、原発に関わる3について見てみたい。改革ビジョンは、基本政策よりも簡潔にまとめてあるので、全文を掲載した後に、若干の感想を述べることとする。
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3、「即時原発ゼロ」の実現を――エネルギーと日本経済の未来をひらきます
日本共産党は、9月に「即時原発ゼロ」の提言を発表し、「再稼働反対」「原発なくせ」「いますぐなくせ」という、首相官邸前から全国各地に広がった広範な市民の運動と連帯し、行動しています。
政府も「過半の国民は原発に依存しない社会の実現を望んでいる」と認めざるをえなくなりました。ところが、口では「原発ゼロ」とか「脱原発依存」といいながら、大飯原発の再稼働を認め、大間原発の建設を再開し、新しい核燃料を作るための使用済み燃料の再処理をすすめるなど、現実には、原発推進政策を続けています。
国民の安全よりも、財界のもうけを優先させる「自民党型政治」に、国民のいのちを託すことはできません。
すべての原発からただちに撤退する政治決断を求めます
日本共産党は、つぎの諸点をふまえ、「即時原発ゼロ」の実現を提案します。
(1)原発事故の被害はなお拡大を続けており、二度と原発事故を起こしてはなりません。
(2)原発稼働を続ける限り、処理方法のない「核のゴミ」が増え続けます。
(3)原発再稼働の条件も、必要性も存在しません。
(4)国民世論が大きく変化し、「原発ゼロ」は国民多数の願いとなっています。
このように、ただちに原発の危険を除去する必要性、緊急性がいっそう切実になっています。
●日本共産党は、次の諸点を政府に求めます。
――すべての原発からただちに撤退する政治決断を行い、「即時原発ゼロ」の実現をはかること。
――原発再稼働方針を撤回し、大飯原発を停止させ、すべての原発を停止させたままで、廃炉のプロセスに入ること。
――青森県六ケ所村の「再処理施設」を閉鎖し、プルトニウム循環方式から即時撤退すること。
――原発の輸出政策を中止し、輸出を禁止すること。
「即時原発ゼロ」は可能です
過渡的な緊急避難として、火力での電力確保が必要ですが、その時期は5〜10年程度とし、その間に、再生可能エネルギーと低エネルギー社会への移行をはかります。
原発推進勢力は、原発をなくせば、経済も社会も大混乱するかのように言っています。しかし、国民は、全原発の停止も体験しましたが、推進勢力が言う混乱は何も起きませんでした。
電力不足は起きなかった……「猛暑の夏」を原発なしで乗り切りました。関西電力も、大飯原発を稼働しなくても電力は足りたことを認めました。
原発こそ高コスト……「コストが高くなる」と原発推進勢力は言いますが、再生可能エネルギーは、大規模な普及と技術開発がすすめばコストは大幅に下がります。原発こそ、いったん大事故が起きれば、ばく大な経済的損失が発生し、電力会社の負担も巨額になります。
再生可能エネルギーへの転換で、日本経済と産業の新たな可能性を開きます……再生可能エネルギーの潜在量は、原発の発電能力の約40倍にものぼります。ドイツでは、原発関連の雇用は3万人ですが、再生可能エネルギー関係は38万人です。雇用効果も、地域経済への波及効果も、原発よりはるかに大きな可能性をもっています。
エネルギーの国産化で「資源のない国」からの転換がすすみます。再生可能エネルギーは、これからもさまざまな分野で技術開発、実用化がすすめられる産業であり、技術革新の大きな起爆剤になります。
●電力体制の改革にただちに着手します……発送電の分離など、再生可能エネルギーの大規模普及にふさわしい電力供給体制の改革をすすめます。
福島の被災者支援と復興に、総力をあげて取り組みます
政府が昨年12月に行った福島原発事故「収束宣言」を撤回させます。賠償と除染、生活支援、復興支援で、不当な「線引き」をせずに、すべての被災者・被害者を対象にすることを求めます。生活と生業(なりわい)が再建され、希望する人が故郷に帰り、命と健康を守る医療や介護、子どもたちの教育を保障し続け、「原発事故前の安全・安心の福島県」をとりもどすまで、そのすべての過程で、国の責任で復興を支援します。
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【所感】
日本共産党は、「自民党型政治」との対決を今回の衆院選の基本的姿勢としている。確かに、原発問題で、原発必要を訴える「維新の会」の石原慎太郎代表や自民党の安部晋三総裁は、明確な原発依存派と言えるだろう。また現政権の野田民主党も、あいついで変転している。脱原発を年度を決めて、実施する方針で有識者に脱原発に関するプランをまとめさせながら、ついに中座させ、今も言葉では脱原発の3文字を残しつつ、実態として、福島原発被災者救済の現実的プログラムはあまりに遅々としている。野田民主党政権も、ほぼ「自民党型政治」の亜流と言っても言い過ぎではあるまい。
「日本共産党の政策」のなかで、市民派との共闘について、述べた箇所がある。事実、日本共産党は、脱原発全国連合官邸前再稼働反対行動や脱原発1000万人署名アクション行動大集会などに側面から共闘し、闘い続けた。
これらの集会などの記事は、初期の内から「しんぶん赤旗」日曜版などでも丁寧に報道してきた。
では、これらの抗議行動や大集会のなかで作家の大江健三郎氏や鎌田慧氏などの知識人らをはじめ脱原発基本法制定全国ネットワークが、脱原発基本法を上程し、市民運動と議会運動とを両輪として、脱原発の闘いを構想して取り組んでいることに、日本共産党はどのようなスタンスで対応するのだろうか。このことは、脱原発基本法制定全国ネットワークをほぼ同様の母体として、東京都知事選挙に有力な日弁連の宇都宮健児氏が立候補したことや、嘉田滋賀県知事を代表として、脱原発を実現化しあわせて日本全土の環境保護とを合わせてめざして、新党「日本未来の党」を結成し、民主党、自民党に続く現有国会議員勢力第3党が起動しはじめたこととも関連する。
日本政党史上最長の伝統をもつ日本共産党が、他党に合流したり名称を変えたりすることを要求しているわけではない。「自民党型政治」と闘う際に、もっとほかの脱原発勢力の市民運動や政党との共同闘争路線を提起すべきではないのか。共産党自身の公約の内容自体が、日本共産党一党の政治的実践力で実現するとは到底思えないことがらが公約に記載されている。脱原発ゼロそのものが、実現するためには、脱原発勢力の総力を結集して、「市民党型政治」と闘うのでなければ、実現は無理としか思えない。
もっとも民衆のために闘い続けてきた日本共産党が、今の福島原発による理不尽な不幸を自らの責任とは全く無縁な凶暴な人為的欠陥を機縁とした大災害のために、貴重な人生に多大な不幸を背負った苦悩を詳細に理解して、救済策を提示している。それを「実現するために」広範な脱原発の本物の闘争的主体としての市民運動や政党、政治団体と共闘することを、もっと打ち出してよいのではあるまいか。それは、総選挙後に提起する準備があるとしたら、大いに期待して応援したい。できれば、
総選挙闘争のさなかにでも提案されんことを切望する。そのように強く感じた。
櫻井智志
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