居住政策の貧困:反貧困ネットワーク主催「反貧困世直しイッキ大集会」住まい分科会の報告

 10月19日に開催された反貧困ネットワーク主催の「反貧困世直しイッキ大集会」に私も参加してきました。「大集会」には平和への結集・市民の風も賛同しています。

2008年12月1日は「湯浅誠さんと考える格差・貧困問題」(活憲政治セミナー第2回)があります!

反貧困大集会1

反貧困大集会2

反貧困大集会3
 
 
 宇都宮健児氏、雨宮処凛氏らによる開会挨拶、反貧困全国キャラバンゴール到着イベントに立ち会うことはできませんでしたが、その後に続く”STAND UP TAKE ACTION”と様々な分科会の1つである住まい分科会、最後のパレードに参加しました。
 貴重な、画期的な報告ですから、住まい分科会での12人の方による発言をまとめておきたいと思います。私自身、知らないことが多く驚きました。
 住宅福祉を促進するなどと宣伝されて導入された定期借家制度が貧困ビジネスを助長する。表向きの野宿者支援策が、定期借家制度と相まって、公共圏からの野宿者の追い出しに使われる。ネットカフェ難民に対する融資制度を利用すると、保証人代行業者の詐欺に遭うかもしれない。さくらハウス殺人事件に見られる悪質な第二種宿泊施設の問題。居住権を侵害する保証人制度。さらに今、貸主の都合で更新拒絶を可能にする借地借家法改悪の企てが…。
 ハウジングプアの前にはどうも居住政策の貧困が立ちはだかっています。居住政策が居住権を保障するというより、むしろビジネスの保護に偏っているわけです。
 翻って選挙制度。現在の小選挙区制も、主権を保障するというより、二大政党制という単なる政治論を実現するために導入された制度です。
 小選挙区制−二大政党制が住まいや労働の貧困を解消する方向に働くでしょうか。これまでの日本と、アメリカの先進的なお手本を見れば分かるように、その逆です。(印刷用ファイル
 
 
太田光征
http://otasa.net/
 
 
報告者(発言順)

土田政彦さん(スマイルサービス事件裁判原告)
草間幸彦さん(「ホームレス地域生活移行支援事業裁判」を支える会)
細谷紫郎さん(東京借地借家人組合連合会)
戸館佳之さん(弁護士、スマイルサービス被害対策弁護団事務局長)
Kさん(車椅子利用者、個人)
横山晃久さん(車椅子利用者、自立生活センターHANDS世田谷)
鈴木卓郎さん(精神障害者地域生活支援 とうきょう会議)
「しんぐるまざぁず・ふぉーらむ」会員の女性
鈴木俊志さん(「国内保証援助会」被害者、なかまユニオン)
稲葉剛さん(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい)
カナダ人の小学校教師の女性
山谷福祉会館活動委員会の方
 
 

土田政彦さん(スマイルサービス事件裁判原告)

 派遣会社の寮をでなければならなくなったが、貯えがなかった。敷金・礼金ゼロの部屋を探し、契約時の諸費用が3万円で済むということで、スマイルサービスを借りることにした。そのときの仕事先は別の派遣会社で、給与支払い日は家賃納付締め切り日の1ヵ月後。家賃を払えなかったので、施設再利用料15,650円と、家賃の10%を取られてしまった。普通の不動産屋ではあり得ない話だ。
 1回目を払って2か月後、納付日に払えなかった。仕事から帰宅してみると、部屋のカギが開かない。スマイルサービスは、家賃未納のため、カギを交換したと説明した。
 1年6、7ヶ月住んだが、14回ほど、カギの交換、業者による無断立ち入りを受けた。就寝中に入り込まれ、追い出されたこともある。
 
現在は別の会社の寮に住んでいる。仕事とリンクしており、いつ仕事に呼び出されるか分からず、自分の予定が組めない。安心した住み心地がせず、会社と離れたところがいいのかな、と思っている。
 スマイルサービスの場合、仮利用契約を結ばされた。普通の賃貸契約ではなかった。(司会者:施設仮利用契約で、借地借家法を脱法するシステム。)
 10月8日、スマイルサービスを提訴した。違約金などの徴収をやめ、普通の賃貸契約を採用し、違約金を取られた被害者に謝罪し、社会に対して違法行為の責任を取ってほしい。

 

草間幸彦さん(「ホームレス地域生活移行支援事業裁判」を支える会)

 2004年、主に東京の23区で、野宿からアパートへの移行を支援する事業として始まったのが、「ホームレス地域生活移行支援事業」。特定の公園で野宿していた方に、月額約3千円の低家賃で2年間、都が借り上げた民間アパートなどの部屋を貸すのが内容。公園を出て行くか、アパートに移るか、の二者択一を強制的に迫られる方もいた(追い出し政策)。
 普通の借家契約では、よほど借主に落ち度がなければ、契約期間が終了しても、契約を更新することができる。ところが、この「支援事業」の契約は、契約期間の2年間が過ぎると、自動的(強制的)に終了する「定期借家契約」だった。ところが、事業開始時には、更新が可能であるとの触れ込みだった。
 十分な説明のないままこうした不利な契約を押し付けるのは不当であるとして、事業利用者が原告となって、裁判に踏み切った。公的な居住政策として、借家人に不利な「定期借家契約」を野宿者に押し付けるのはおかしいと思う。

 (次回公判は、11月17日午前10時半から、東京地裁615法廷。傍聴行動に参加できる方は、当日朝9時半に、霞ヶ関の弁護士会館1階ロビー集合。)

 

細谷紫郎さん(東京借地借家人組合連合会)

 「借地借家法」は居住の安定を図るのが目的。借地借家法が改悪されて「定期借家制度」が2000年に導入され、貧困ビジネスに利用されている。定期借家制度では、契約期間の終了で無条件に部屋を明け渡す必要がある。大家が半年以上前に通告すれば、借家人は無条件に出なければならない。
 定期借家制度は、不動産業界の圧力で、政官財と一部マスコミが大宣伝して導入された。「良質な借家の供給が増える」「家賃が安くなる」「借家人の利益を増進させる」「借家市場の活性化」「住宅福祉の促進」などと宣伝された。
 98年、借地借家法の改正が法務委員会で審議されていた。ところが1年間まったく審議されず、建設委員会で「良質な賃貸住宅等の供給促進に関する特別措置法」が制定されてしまった。不動産業界は約2億3千万円を政治家に献金したと聞いている。
 「良質な賃貸住宅等の供給促進に関する特別措置法」は、公共賃貸住宅の供給・良質な賃貸住宅の供給、定期借家制度を導入させるという目的がある。「良質な賃貸住宅の供給」は努力義務に過ぎない。
 制度導入から8年経つが、日本の借家は、面積が持ち家の3分の1しかない。欧米では7分の1だ。劣悪な狭さは改善されていない。
 この8年間、東京都で都営住宅の新規建設はゼロ。2006年の5月、都営住宅の入居募集は50万と4倍に増えている。公団住宅(機構住宅)も削減、売却されている。公営住宅は努力どころか後退しているのが現実。
 定期借家契約は現実には普及していない。不動産屋は、貸し手にとって魅力がなく空き家になる可能性がある、普通借家契約で特段の不都合はない、審査が厳格であれば普通借家契約でトラブルを回避できる、などの理由を挙げている。
 借家人を追い出す目的で、現行の定期借家制度に問題があるとする見解がある。2000年3月以前に普通借家契約をした場合、定期借家契約に切り替えることはできないが、それを可能にしようという動き。「定期借家推進協議会」は、正当事由制度(借家の明け渡しに正当な理由を求める制度で、貸主の都合だけで明け渡しはできない)をなくし、定期借家制度一本にすべきと主張している。
 
定期借家制度は、良質な賃貸住宅の供給とは無縁で、借家人を追い出し、貧困ビジネスを助長するもので、廃止すべきだ。

 

戸館佳之さん(弁護士、スマイルサービス被害対策弁護団事務局長)

 スマイルサービス被害対策弁護団で事務局長をしている。居住利益を著しく侵害する事態が広がっていることをこの問題を通じて知った。東京都の3千円アパート裁判でも代理人になっている。新宿区のホームレス生活保護申請に関する裁判でも弁護活動をしている。 
 社会福祉法の第二種施設、さくらハウスで2008年1月に起きた殺人事件でも弁護人をしている。これは、1月1日、居住者の方が突然、寮長から退寮宣告を受け、寮長を殺害したという事件。社会福祉法の第二種施設は野宿者を受け入れている極めて劣悪な施設で、さくらハウス事件は社会的背景のある事件だと思っている。
 スマイルサービス事件では、カギを変えられる、荷物を撤去される、部屋の荷物を返してもらえない、荷物が廃棄される、といったことが起きている。プライバシーが保護され安心して生活する利益を侵害している。契約書(仮の一時使用契約)にサインしたことの「自己責任」で済まされるのは問題だ。
 反貧困の運動が住宅問題でつながることの意義は深い。

 

Kさん(車椅子利用者、個人)

 世田谷区で車椅子を利用し、ホームヘルパーを入れた生活をしている。車椅子利用者のバス利用を支援する活動に関わっていた。両親などと同居していると、活動のため帰宅時間が遅くなり、支障がでていた。そこで、1人暮らしを始めるため、自立生活体験施設を体験してみた。帰宅時間が遅いなどと怒られることなどがあり、予定の1年を待たずに施設を出て、民間の部屋探しをすることになった。
 不動産屋には、24時間、介護者が入ること、スロープなどの住宅介助を設置しても、入居後に現状回復することを話すのだが、そういう物件がないとか、区役所に相談に行くよう言われた。現状回復してもらえなかった例があったので、大家が貸したくないというケースもあった。
 20件ほどの不動産屋を回ったが、話し合ってもらえず、見つけてくれた物件は2、3件くらいだった。ただ、車椅子の重量が耐えられないというので、諦めた。
 現在の部屋を借りようとした際、当初、親の名義でないと無理だと言われたが、本人名義だと公的住宅補助が出ると説明することで、借りることができた。住宅介助もできたが、福祉用具店の方に一筆書いてもらったお陰だった。住宅介助の助成金は東京都から約30万円出た。
 住宅補助金は6万9千8百円で、家賃は8万2千円。この家賃を役所にそのまま訴えたが、役所は早く出ろ、早く出ろと言った。自分は福祉制度がないと生活できない、福祉制度は市区町村でまったく違う、生まれた世田谷で暮らしたいと主張し、指導を取りやめさせた。住宅介助の修理費が、重度障害者の場合、風呂桶については生活保護費から出せるが、それ以外は明記されておらず、問題だ。
 体の不自由な方が車椅子で過ごすことを認めていない。障害者のありのままの姿を認めようとしない施策がある。障害は悪いことなのだというイメージを払拭していかなければ、住宅問題は解決しないと思う。
 できないということは、恥ずかしいことではない。できなければヘルパーに遠慮なく頼んでいい。雇用を生み出すことにもなる。
 生まれてきたありのままの姿で生きていけることが、生存権、居住権のはじめになっていくのではないかと思う。

 

横山晃久さん(車椅子利用者、自立生活センターHANDS世田谷)

 まず、この集会は画期的だと思う。障害者が自立する上で、住宅、介助、年金という3つの補助が必要といわれてきた。
 住宅に関しては、絶対に地域で住みたい。最近は不動産屋などでようやく人間扱いされるようになった。しかし以前は、不動産屋を訪ねても門前払いか、障害者には貸さないよ、と言われた。人間扱いされなかった。たまたまいい不動産屋に部屋を紹介されても、大家から障害者には貸さないと言われた。やっと部屋を借りることができても、生活保護申請のことを大家に説明するのに3日もかかる。
 重度障害者が人間扱いされるところまでくると、私たちが普通に生活できる、と言うのだが、周りが認めてくれない。まだまだ障害者差別が残っている。
 これまで、障害者が弱者(の象徴)であったが、この集会に集まっている皆さんが弱者だ。だからここに来た。障害者の運動で大事なのは自己主張だ。皆さんもそれができるようになってきた。皆さんも自己主張をして世の中を変えていくべき。障害者が暮らせるいい社会はみんなが暮らせる社会だ。声を大にして頑張っていこう。

 

鈴木卓郎さん(精神障害者地域生活支援 とうきょう会議)

 グループホーム(社会福祉法第一種)という精神障害者の入所施設で働いている。日本は先進国の中で突出した強制収用国家だ。
 精神科の病院が多いが、患者本人の同意がなくても入院させることができる。国指定の医師と家族の同意があれば可能。長い方で50年間も入院しっぱなしで、地域に戻ることができないでいる方が多い。東京でも西の青梅、八王子など、山の中に精神科の単科病院がたくさんあり、窓には鉄格子が付き、ベッドもなく畳敷きの布団で就寝するような所だ。
 グループホームでは、こうした長期入院を強いられている精神障害者の方が地域で生活できるよう、一般のアパートを借り上げ、入居してもらう活動をしている。
 ただ、3年ほどで普通のアパートに移る必要がある。精神障害者の方は、家族や親類と関係が希薄な方が多く、保証人を確保するのが難しい。
 精神科への通院とか、生活保護の受給という事実を不動産屋に説明しなければならない現状がある。そういう方を大家も入居を拒否する。偏見・差別がある。保証人制度は居住の権利、生存権を侵害する制度であり、なくすべきだ。

 

「しんぐるまざぁず・ふぉーらむ」会員の女性

 5年前に離婚し、小2、小4の娘がいる。前夫に暴力を振るわれたりしても、実家に頼ることができず、離婚から現在までに、4回の引越しをした。
 1回目は、離婚のための引越し。家付きの仕事に就いたが、非もないのに2ヶ月で解雇され、2回目の引越しをすることに。保証人は40歳以上の男性がいいとか、子供づれだと、2DK以上がいいとか、言われた。
 仕事の無理がたたってうつ病になり、生活保護を申請した。家賃が住居費規定を超えるというので、無理やり、東京都の母子生活支援施設(母子寮)に入所させられた。これが3回目の引越し。
 休職してうつ病から回復し、母子寮から出たいとケースワーカーに相談したが、民間アパートはダメ、と言われた。そこで自力で民間アパートを契約することにし、4回目の引越しをした。民間アパートがいけない、というのは、本人が他の区に移ることで、ケースワーカーも訪ねなければならなくなることが嫌だったためだと、後から感じている。
 母子寮を説明すると、入居者用に個別の郵便受けはない。部屋には呼び出し専用の電話機があるだけで、通話は詰め所で行う。風呂はなく、簡単なキッチンとトイレが付いている。門限は午後10時。門限を過ぎると鉄格子の門が閉まり、中に電話しないと入れてもらえない。1つあるシャワー室は申告制で、15分間以内に掃除と水分ふき取りまで済まさなければならないので、ほとんど使わなかった。子供の保育園の距離が2倍になるなど、つらい時期だった。

 

鈴木俊志さん(「国内保証援助会」被害者、なかまユニオン)

 保証人代行詐欺の被害が広がっている。 Google検索でトップに来る業者を例に説明する。保証人が必要な者どうしを付き合わせ、会費・手数料を徴収し、保証人に連帯責任が及んだ場合、保証人代行業者が代わりに代弁済をするので、100%リスクはないと謳っている。保証人は業者から5千円もらえ、保証人を得た者は業者に5万円を支払うというシステム。
 しかし実際には保証人が紹介されず年会費5万円の掛け捨てになる。中には、解約に多額の手数料を徴収されたとか、保証人が見つかっても成功報酬として30万円を請求されたとか、連帯保証人として家主から数百万円を請求されたという事例がある。業者が代弁済を行ったという記録はない。
 職業訓練の受講を条件に生活費15万円をネットカフェ難民に融資する制度が始まった。自分も挑戦しようと思った。過去1年間の所得が150万円未満の受講者は返済が免除されるので、実質的に勉強しながらただでお金がもらえる制度。
 東京、大阪、愛知にあるネットカフェ難民の駆け込み寺、国のNPO救済機関、チャレンジネットに申請者が出向き、書類審査で所得の有無などが調べられ、ネットカフェ難民の認定が行われる。きちんとした住まいを借りることを条件に訓練校への入校指示、給付となる。
 自分で保証人を立てて部屋を借りる際に、保証人代行詐欺に遭うケースがある。チャレンジネットは、保証人を探すネットカフェ難民のために、保証人を手配していると、ホームページで説明している。掘り下げて聞いてみると、当初、東京チャレンジネットで安心できる保証会社を紹介するので大丈夫との説明だった。どの程度保証会社を把握しているかを問うと、保証人がいないという方には、保証人代行会社があるらしいので、自己責任で探すようにということで対応していることが分かった。申請者がどの保証会社を利用したかも把握していないという。国の救済機関が、実質、悪質な保証人代行業者に丸投げ。
 わずか3ヶ月の座学で12冊、10万円のテキストを買わせたり、受講生10人のところ300人と水増しして補助金を詐取したりと、訓練校にも問題が山済み。
 「国内保証援助会」で情報開示をかけたところ、国民生活センターに600万もの被害が寄せられていた。自分で小額訴訟をやり、勝訴したという経験がある。
 偽装請負を告発する非正規ネットのメンバーでもあり、職場復帰のための署名運動も行っており、こちらにも協力をお願いしたい。
 青森の方から、ライフリカバリー社で保証人になったが、代弁済がされず、自己破産を迫られているという相談を受けた。弁護士に相談しても代弁済は無理ということだ。
 こうした被害の存在をもっと広めていただきたいと思う。

 

稲葉剛さん(NPO法人自立生活サポートセンター・もやい)

 10月1日、大阪の個室ビデオ店で放火事件が起き、16名がなくなったが、その中にはそこで生活せざるを得ない人々が多かったという現実がある。個室ビデオ店難民という言葉もできた。この事件を受け、10月3日、東京都の石原知事が、山谷では200円、300円で泊まれる宿がある、という発言を行った。大阪の事件を格差問題に結びつけないでくれ、という文脈の発言だと思う。まさにミスター自己責任論だ。ネットカフェなどに泊まるのはファッションなのであり、もっと安い宿に泊まればいいではないか、という主旨の発言。彼の山谷に対する認識は、『太陽の季節』から変わってないようだ。200円、300円というのは明らかな事実誤認で、撤回を迫られた。
 こうしたネットカフェ難民、個室ビデオ店、スマイルサービス、野宿といった問題は、貧困ゆえに居住権が侵害されやすいハウジングプアという問題である。住まいの貧困という問題を訴えていく必要がある。
 ワーキングプアの問題とハウジングプアの問題は90年代以降、パラレルで進行してきた。1999年に派遣業法の業種が拡大され、2000年に定期借家契約が導入された。ビジネスチャンスがあるというので規制緩和が行われ、グッドウィルとかスマイルサービスのような会社が入ってきたのである。
 2002、3年ころから保証会社が広がってきた。保証会社によって、入居しやすくなった面もあるが、退去が迫られ、居住権が侵害されるケースが多いと思う。通常の賃貸借契約は借地借家法で守られているので、1、2ヶ月の家賃滞納で追い出されることがあってはならない。
 保証会社が代弁済をするので、大家に代わって居住者に対して取立てを行う。「独自の債権回収ノウハウ」を持つとホームページで謳っているフォーシーズが悪質で有名。中には、1、2ヶ月滞納しただけで延滞金やアパートへの出張料を徴収する保証会社もある。大家に代わって居住者を追い出し、ホームレス化が促進された面もあるのではないかと思う。
 住まいと労働は生活の両輪であり、労働分科会に負けないくらい、住まい分科会を盛り上げていきたい。

 

カナダ人の小学校教師の女性

 私はカナダの学校から日本に派遣されました。国際スクールで全教科を英語で教えることができるライセンスを持っていたからです。カナダからはるばる日本へ来させるために、学校側は魅力的な内容の契約を申し出ました。高額の給料と住宅補助金です。もちろん、日本へ行くことにしました。
 日本に来て、学校に近いところに住んだのですが、残念なことに、最も家賃の高いところの1つでした。2年後、学校でパワハラを受けてしまいました。東京都に問題解決の仲裁を頼むことにしました。学校は問題を解決するのではなく、自分をトラブルメーカーと見なし、解雇しました。アパートからすぐに退去し、カナダに戻るよう言われました。
 そうくると思って、高い給料で買ったすごく安全なカギに交換しておきました。学校側は私を物理的に追い出せなくなり、イライラしています。
 外人が日本でどれくらい住みにくいか説明したいのですが、日本語を読んだり話したりできないので、私のようなケースでどう対処すべきか分からず、困りました。
 よい国というのは、疎んじられた人々を大事にする国のことです。外国人の視点で言っておかなければならないのは、日本の状況はもっと改善が必要だということです。ありがとうございました。

 

山谷福祉会館活動委員会の方

 山谷、隅田川、上野公園など東京東部地域で野宿している人の半分は日雇いの仕事をしており、仕事や暮らしの仕方が独特で、相互扶助的で、反権力的ですばらしい方たちだ。
 生活保護から排除されている野宿者が、集団でアパートに移る要求をし、これまでに約200名の仲間がアパート生活を獲得した。
 役所窓口で生活保護の申請を拒否する水際作戦は野宿者に対してきつく、若いとか健康であるとかの理由で門前払いされる。野宿者に特化した収容施設ができてしまっている。
 悪質な第二種宿泊施設の問題がある。これは野宿からアパートへ移る間の中間施設、一時施設のはずだが、実質、ケースワーカーにより強制入居を強いられている。生活保護費13万円のうち、10万円が施設費としてピンハネされる。本人の生活費は3万円で、相部屋であり、プライバシーはほとんどない。朝4時に起きて仲間の食事を用意するなどの理不尽な規則がある。暴力支配が蔓延していて、そういう中で(さくらハウスのような)殺人事件が起きてしまい、生活保護を受ける上での制約になっている。役所としては防波堤として使えるということで、[聞き取れない]の段階で60億の金が動いているという報告がある。
 衣食住と労働が一体となり、奴隷労働の温床になりやすい飯場が、野宿者を専門に人を集めている。飯場アンケートの結果によると、そもそも賃金を払う気がなく野宿者を集めるケースが多い。食費・宿泊費を取るため、1日働いて3日休まされると、手元に残らない。
 5、6年前、朝日建設の飯場で野宿者3人が殺害されたが、無賃労働に抗議したことが原因だという。暴力団が支援者に暴力を加えた件で現在、労働争議が進行中。ほかにも支援者に対し脅迫電話がかけられるなど、極端な暴力が日常化している。野宿者の小屋は、奴隷労働を拒否し、自分たちの生活ペースを守っていくという意味がある。
 野宿者の公共地からの排除は、対策とセットで行われる。2年間限定のアパートに入るか、公共地から出て行け、と迫られる。公共地に小屋を構える必要のある人はそうする。また生活保護のまともな運用、野宿からアパートへの要求もしていく。一晩だけ役所前に100ほどの野宿者と支援者が寝るという行動に引き続き、集団でアパート入居の要求、生活保護の申請を行った。
 生活保護は取り方が大事で、1人では声を挙げられないところを、集団で動き、共通の体験を確認し、確信を深め、声を挙げ、顔を上げ、胸を張って、生活保護を取っていく、公共圏に小屋を作る、という活動を行ってきた。これからも続けていく。

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