借金・多重債務の解決方法
7月 22nd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 17:13:51under 一般 [215] Comments
2008年7月19日に千葉県柏市内の私立高校で行われた弁護士・宇都宮健児氏講演会の要旨(ビデオあり)です。印刷用ファイルを用意していますので、皆さんの周りに借金・多重債務で困っている人がいたら、印刷して配って教えてあげてください。
太田光征
http://otasa.net/
宇都宮氏は、サラ金・クレジットによる借金・多重債務の問題に30年近く取り組んできた。多重債務問題の背景には貧困があり、反貧困ネットワークを立ち上げ、運動している。「ネットカフェ難民」やホームレスなどには、多重債務者が多い。多重債務者の定義は、複数から借り入れ、自分の収入で返済できない人のこと。
社会保障の不備をサラ金などが突いてきた。人口7万人の奄美大島でも主だったサラ金が進出しており、多重債務が問題になっている。
サラ金業界は2000年に政治団体を結成し、自民や民主の主だった政治家に献金し、出資法の貸し出し上限金利を引き上げるよう、圧力を掛け始めた。
米系サラ金2社(ゼネラル・エレクトリック・グループに買収後のほのぼのレイク、ユニマットなどの店舗名で営業しているCFJ)や、日本のサラ金株に投資している米投資ファンドも、上限金利を引き下げないよう、米政府を通じ圧力を掛けた。
米政府による対日要求課題を書き連ねた、規制改革に関する年次改革要望書は、郵政民営化で有名になったが、2005年段階で、「グレーゾーン金利」※の有効化も盛り込まれていた。
※(「みなし弁済」の例外に基づく)グレーゾーン金利:旧出資法の上限金利年29.2%と、利息制限法の制限金利(元本10万円未満は年20%、元本10万〜100万円未満は年18%、元本100万円以上は年15%)の間の金利をいう。この超過分としてのグレーゾーン金利は、「無効」だが、刑事罰・行政処分がなかった。最高裁は、利息制限法を原則とし、グレーゾーン金利を無効とする判決を出していた。
宇都宮氏らは、消費者団体や労働運動団体にも協力を呼びかけ、金利引下げの運動を広げた。金利引下げを求める340万の署名を国会に届け、47都道府県中、43の議会で、金利引下げ決議を勝ち取り、1830ある市町村議会のうち、1136議会からも同様の決議を引き出した。
こうして、宇都宮氏も生きている間の実現を予想していなかった、金利規制と貸金業規制を大幅に強化する画期的な新貸金業法が、2006年12月13日、成立した。公布から3年を目途(政府答弁)とする第4段階までの施行で、出資法の上限金利を年29.2%から(利息制限法の)年20%に引き下げ(違反すれば行政処分)、年収の3分の1以上を貸さない「総量規制」などが実施される。
サラ金利用者は1400万人(8〜9人に1人)で、多重債務者は200万人以上いる。弁護士会などの相談窓口にアクセスできているのは約40万人しかいない。
全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会が、青木ヶ原樹海に「借金の解決は必ず出来ます!」という連絡先付きの看板を昨年立てたところ、3000件以上の相談電話がかかり、自殺志願者29人以上を救うことができた(2008年2月段階)。
2005、2006年度、貯蓄ゼロ世帯は22〜23%。1998年から、自殺者は年間3万人を超え、そのうち、経済・生活苦が原因の自殺者は約4人に1人の割合(警察庁)。病気治療代を捻出するなどのために、サラ金から借りることになる。
サラ金業者は、債務者が夜逃げしても、10年間は住民票の異動をチェックしている(元武富士社員の証言)。
最近、公営住宅の家賃、授業料、給食料を払えるのに払わない、ということが言われているが、多重債務者の場合、払えない。厳しい取立てをするサラ金の支払いを優先してしまう。命を守る公務員、先生が滞納金の催促でサラ金化・ヤミ金化していいのか。
多重債務を解決することで、滞納問題が解決した事例が実際にある。今、秋田県の多重債務対策協議会の事務局長を務めている方自身が、過去に多重債務者で、県営住宅家賃の滞納対策で、先に多重債務問題に取り組んだところ、成功している。昨年から今年、一番自殺者が減ったのは、秋田県である。
弁護士法違反である「整理屋」が、NPO法人の資格を取って、悪徳弁護士と提携し、多重債務者を食い物にしている例がある。2000年に、弁護士の広告が自由化され、整理屋が電車内などで広告を出している。首都圏を中心にこうした悪徳弁護士が100人以上いる。弁護士会が斡旋する相談員は安全だ。
弁護士広告といっても、債務整理の広告ばかり。弁護士広告の自由化は、日本政府の規制改革会議のほか、米国からの圧力によるもので、日本の弁護士内部からの要求はなかった。
テレビでサラ金のCMが開始されるようになると、取り立ての酷さなど、サラ金問題が報道されなくなった。利息制限法を超える利息は違法であるから、払いたい人だけ払うように、というCMに変えるべきだ、とテレビ局に要求したが、受け入れてもらえない。テレビ局も共犯である。警察にヤミ金の相談に行くとよく言われるセリフ「借りたものは払うべきだ」は間違い。
熊本の被害者団体相談員とアイフル社員の会話
http://jp.youtube.com/watch?v=N6YkQum6rLM
多重債務者の名簿が名簿業者を通じてヤミ金などに流れる。事件化された名簿売買では、大手サラ金の顧客情報を取り扱ったとする供述も得られている。ヤミ金の店長・従業員そのものは暴力団員ではなく、失職者などの就職弱者がリクルートされ、「巻き舌」などの訓練を受けた者達。彼らを統括しているのが暴力団。足を洗おうとすると、暴力団からリンチを受ける。
ヤミ金の取立て
http://jp.youtube.com/watch?v=RXFruPr9iuQ
債権者が法人の場合、借金の時効は5年。滞納すると、一括請求される。この滞納開始の時点から起算し、完全滞納の5年をもって時効が成立する。裁判では出廷し、時効を主張しないと、債権者の言いなり判決になる。
借金も財産と同時に相続されるが、相続放棄を家庭裁判所に申請すれば、借金を相続しなくて済む。
2000年に独仏の調査を行ったが、サラ金・ヤミ金がない。銀行が消費者金融を引き受けている。日本以上にセーフティネットが発達している。独では、社会保障の広報義務がある。日本では、ホームレスは「住民票がないから生活保護を受けられない」とはねつけられるが、そんな規定はなく、弁護士・司法書士が同行して申請すると、通る。ヨーロッパの路上生活者は生活保護を受けている。
低所得者に対する低利融資の制度
(1) 社会福祉協議会による生活福祉金の貸付(年利約3%)
(2) 母子家庭貸付金制度
借金・多重債務の具体的解決方法
1 取立ての停止
弁護士などが「介入通知」(受任通知)を債権者に出すと、取立てを止めることができる。
2 債務整理の方法
(1) 任意整理
弁護士に依頼する。利息制限法を超える利息は払う必要がないので(元本に充当される)、元本を超えた過払い金は返還請求できる。ヤミ金は完全に違法なので、元本も返還義務がないし、支払った分は返還請求できる。債権者との交渉が決裂すると、裁判になるが、過払い金に年利5%をつけて返還することができる。
(2) 特定調停
任意整理と同じことを簡易裁判所を通じて行う。
(3) 自己破産
地方裁判所に自己破産の申し立てをし、免責許可決定を受ければ、債務を免除される。
(4) 個人再生手続き
地方裁判所に個人再生手続きの申し立てをし、認可された再生計画案どおり弁済すれば、元本の一部が免除される。
借金・多重債務の全国相談窓口
(1) 日本弁護士連合会 tel 03-3580-9841
(2) 法テラス(日本司法支援センター、弁護士費用の立替・事後払い可能) tel 0570-078374
(3) 日本司法書士連合会 tel 03-3359-4171
(4) 全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会 tel 03-3255-2400
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