借金・多重債務の解決方法

7月 22nd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 17:13:51
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2008年7月19日に千葉県柏市内の私立高校で行われた弁護士・宇都宮健児氏講演会の要旨(ビデオあり)です。印刷用ファイルを用意していますので、皆さんの周りに借金・多重債務で困っている人がいたら、印刷して配って教えてあげてください。

太田光征
http://otasa.net/

[以下、講演要旨]

 宇都宮氏は、サラ金・クレジットによる借金・多重債務の問題に30年近く取り組んできた。多重債務問題の背景には貧困があり、反貧困ネットワークを立ち上げ、運動している。「ネットカフェ難民」やホームレスなどには、多重債務者が多い。多重債務者の定義は、複数から借り入れ、自分の収入で返済できない人のこと。

反貧困ネットワーク

 社会保障の不備をサラ金などが突いてきた。人口7万人の奄美大島でも主だったサラ金が進出しており、多重債務が問題になっている。

 サラ金業界は2000年に政治団体を結成し、自民や民主の主だった政治家に献金し、出資法の貸し出し上限金利を引き上げるよう、圧力を掛け始めた。

 米系サラ金2社(ゼネラル・エレクトリック・グループに買収後のほのぼのレイク、ユニマットなどの店舗名で営業しているCFJ)や、日本のサラ金株に投資している米投資ファンドも、上限金利を引き下げないよう、米政府を通じ圧力を掛けた。

 米政府による対日要求課題を書き連ねた、規制改革に関する年次改革要望書は、郵政民営化で有名になったが、2005年段階で、「グレーゾーン金利」※の有効化も盛り込まれていた。

 ※(「みなし弁済」の例外に基づく)グレーゾーン金利:旧出資法の上限金利年29.2%と、利息制限法の制限金利(元本10万円未満は年20%、元本10万〜100万円未満は年18%、元本100万円以上は年15%)の間の金利をいう。この超過分としてのグレーゾーン金利は、「無効」だが、刑事罰・行政処分がなかった。最高裁は、利息制限法を原則とし、グレーゾーン金利を無効とする判決を出していた。

 宇都宮氏らは、消費者団体や労働運動団体にも協力を呼びかけ、金利引下げの運動を広げた。金利引下げを求める340万の署名を国会に届け、47都道府県中、43の議会で、金利引下げ決議を勝ち取り、1830ある市町村議会のうち、1136議会からも同様の決議を引き出した。

 こうして、宇都宮氏も生きている間の実現を予想していなかった、金利規制と貸金業規制を大幅に強化する画期的な新貸金業法が、2006年12月13日、成立した。公布から3年を目途(政府答弁)とする第4段階までの施行で、出資法の上限金利を年29.2%から(利息制限法の)年20%に引き下げ(違反すれば行政処分)、年収の3分の1以上を貸さない「総量規制」などが実施される。

 サラ金利用者は1400万人(8〜9人に1人)で、多重債務者は200万人以上いる。弁護士会などの相談窓口にアクセスできているのは約40万人しかいない。

 全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会が、青木ヶ原樹海に「借金の解決は必ず出来ます!」という連絡先付きの看板を昨年立てたところ、3000件以上の相談電話がかかり、自殺志願者29人以上を救うことができた(2008年2月段階)。

 2005、2006年度、貯蓄ゼロ世帯は22〜23%。1998年から、自殺者は年間3万人を超え、そのうち、経済・生活苦が原因の自殺者は約4人に1人の割合(警察庁)。病気治療代を捻出するなどのために、サラ金から借りることになる。

 サラ金業者は、債務者が夜逃げしても、10年間は住民票の異動をチェックしている(元武富士社員の証言)。

 最近、公営住宅の家賃、授業料、給食料を払えるのに払わない、ということが言われているが、多重債務者の場合、払えない。厳しい取立てをするサラ金の支払いを優先してしまう。命を守る公務員、先生が滞納金の催促でサラ金化・ヤミ金化していいのか。

 多重債務を解決することで、滞納問題が解決した事例が実際にある。今、秋田県の多重債務対策協議会の事務局長を務めている方自身が、過去に多重債務者で、県営住宅家賃の滞納対策で、先に多重債務問題に取り組んだところ、成功している。昨年から今年、一番自殺者が減ったのは、秋田県である。

 弁護士法違反である「整理屋」が、NPO法人の資格を取って、悪徳弁護士と提携し、多重債務者を食い物にしている例がある。2000年に、弁護士の広告が自由化され、整理屋が電車内などで広告を出している。首都圏を中心にこうした悪徳弁護士が100人以上いる。弁護士会が斡旋する相談員は安全だ。

 弁護士広告といっても、債務整理の広告ばかり。弁護士広告の自由化は、日本政府の規制改革会議のほか、米国からの圧力によるもので、日本の弁護士内部からの要求はなかった。

 テレビでサラ金のCMが開始されるようになると、取り立ての酷さなど、サラ金問題が報道されなくなった。利息制限法を超える利息は違法であるから、払いたい人だけ払うように、というCMに変えるべきだ、とテレビ局に要求したが、受け入れてもらえない。テレビ局も共犯である。警察にヤミ金の相談に行くとよく言われるセリフ「借りたものは払うべきだ」は間違い。
 
 
熊本の被害者団体相談員とアイフル社員の会話
http://jp.youtube.com/watch?v=N6YkQum6rLM


 
 
 多重債務者の名簿が名簿業者を通じてヤミ金などに流れる。事件化された名簿売買では、大手サラ金の顧客情報を取り扱ったとする供述も得られている。ヤミ金の店長・従業員そのものは暴力団員ではなく、失職者などの就職弱者がリクルートされ、「巻き舌」などの訓練を受けた者達。彼らを統括しているのが暴力団。足を洗おうとすると、暴力団からリンチを受ける。
 
 
ヤミ金の取立て
http://jp.youtube.com/watch?v=RXFruPr9iuQ


 
 
 債権者が法人の場合、借金の時効は5年。滞納すると、一括請求される。この滞納開始の時点から起算し、完全滞納の5年をもって時効が成立する。裁判では出廷し、時効を主張しないと、債権者の言いなり判決になる。

 借金も財産と同時に相続されるが、相続放棄を家庭裁判所に申請すれば、借金を相続しなくて済む。

 2000年に独仏の調査を行ったが、サラ金・ヤミ金がない。銀行が消費者金融を引き受けている。日本以上にセーフティネットが発達している。独では、社会保障の広報義務がある。日本では、ホームレスは「住民票がないから生活保護を受けられない」とはねつけられるが、そんな規定はなく、弁護士・司法書士が同行して申請すると、通る。ヨーロッパの路上生活者は生活保護を受けている。

低所得者に対する低利融資の制度

(1) 社会福祉協議会による生活福祉金の貸付(年利約3%)
(2) 母子家庭貸付金制度

借金・多重債務の具体的解決方法

1 取立ての停止 

弁護士などが「介入通知」(受任通知)を債権者に出すと、取立てを止めることができる。

2 債務整理の方法

(1) 任意整理

 弁護士に依頼する。利息制限法を超える利息は払う必要がないので(元本に充当される)、元本を超えた過払い金は返還請求できる。ヤミ金は完全に違法なので、元本も返還義務がないし、支払った分は返還請求できる。債権者との交渉が決裂すると、裁判になるが、過払い金に年利5%をつけて返還することができる。

(2) 特定調停

 任意整理と同じことを簡易裁判所を通じて行う。

(3) 自己破産

 地方裁判所に自己破産の申し立てをし、免責許可決定を受ければ、債務を免除される。

(4) 個人再生手続き

 地方裁判所に個人再生手続きの申し立てをし、認可された再生計画案どおり弁済すれば、元本の一部が免除される。

借金・多重債務の全国相談窓口

(1) 日本弁護士連合会 tel 03-3580-9841
(2) 法テラス(日本司法支援センター、弁護士費用の立替・事後払い可能) tel 0570-078374
(3) 日本司法書士連合会 tel 03-3359-4171
(4) 全国クレジット・サラ金被害者連絡協議会 tel 03-3255-2400

第1回活憲政治セミナー「地球温暖化問題から取り残される日本の政治」報告

6月 5th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 22:53:17
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開催日:2008年5月31日
主催:「平和への結集」をめざす市民の風

目次

・写真
・ビデオ
・発言要旨(Wordファイル
 1 平田仁子さん(気候ネットワーク)によるレクチャー
 2 質疑応答
 3 結語

 
 
第1回活憲政治セミナー3

講師 平田仁子さん(気候ネットワーク)
第1回活憲政治セミナー1

平和への結集・市民の風事務局長 竹村英明
第1回活憲政治セミナー2

part1/3
http://video.google.com/videoplay?docid=-8442140682838451809

part2/3
http://video.google.com/videoplay?docid=6628849199553092610

part3/3
http://video.google.com/videoplay?docid=6310920924315482674


 
 
1 平田仁子さん(気候ネットワーク)によるレクチャー

世界で多発する異常気象による被害

 異常気象によって、事例を挙げるときりがないくらい多くの被害が世界中で発生している。すべてが温暖化によると断定することは難しいが、最近でも、ギリシャでの山火事、南アジアの洪水、北朝鮮の洪水、中国の洪水が相次ぎ、ミャンマー(ビルマ)で巨大サイクロンにより10万人に及ぶ死者が出ている。温暖化の影響に関する予測に符号する。日本の新聞では出ないが、英字新聞などでは気候変動に関するニュースを頻繁に伝えている。

 

IPCCの第4次評価報告書―温暖化の科学的根拠

 IPCCは2007年、第4次評価報告書を発表した。同報告書によれば、過去100年間で0.74℃気温が上昇した。21世紀末には最大で6.4℃の上昇を予測。2030年まではすでに排出された温暖化ガスの影響で、10年当たり0.2℃の上昇が不可避となる。その他、熱帯低気圧の強度の上昇、北極海の晩夏の海氷が21世紀後半までにほぼ完全消滅、海洋の酸性化の進行、などが挙げられる。

 今後100年、温暖化の傾向は変えようがない。どの程度に抑制できるかというレベルにある。2100年以降になると、グリーンランドの氷が溶けて海面6メートル上昇とか、海底のメタンが噴き出して温暖化の悪循環に陥るなどの事態も想定される。

 

IPCCの第4次評価報告書―温暖化による影響

 地球の自然環境(全大陸とほとんどの海洋)の9割以上は温暖化の影響を受けている。気温上昇が1.5〜2.5℃を超えただけでも、最大30%の動植物が絶滅のリスクを被る。1〜3℃の気温上昇を超えると、穀物生産性の低下、サンゴの白化、洪水と暴風雨の増加、熱波・洪水などによる死亡率の増加、数億人規模での水不足などが予測される。

 

IPCCの第4次評価報告書―温暖化の緩和策

 温室効果ガスの排出量をどこかの時点でピークを迎えさせ、削減していかなければならない。気温の2℃上昇が不可逆的な影響をもたらす“Point of No Return”と言われている。最低の気温上昇シナリオ(2.0〜2.4℃)でも、二酸化炭素を2000年比で50〜80%削減する必要がある。同シナリオを達成する場合、日本は1900年比で、80〜95%の二酸化炭素を削減しなければならない。

 

国際動向―京都議定書まで

 国際的には、国連の場で世界の温暖化対策が議論され決定されてきた。気候変動枠組条約(1992年採択・1994年発効)や京都議定書(1997年採択・2005年発効)である。京都議定書は、2008年から2012年までに、先進国全体で少なくとも5%の削減を義務付けた。

 しかし、ブッシュ政権になってアメリカが離脱、またオーストラリアも離脱(今年、政権交代により参加)、カナダが目標達成を断念、ロシア・東欧諸国は目標を大きく下まわる排出レベルとなった。京都議定書の取組みは、温暖化対策としては不十分だが、重要な1歩であった。

 

国際動向―京都議定書以降

 2013年以降の野心的な取組みが必要で、現在交渉中である。次の目標設定と、米・豪の参加の確保、中国・インドなどの主要排出途上国による削減、温暖化の悪影響を受ける国々への対策が求められている。

 2007年12月のバリ会議では、先進国が2020年に、1990年比で25〜40%削減という目安が示されている。次の国際枠組みの合意は2009年末の予定。

 

国際動向―主要国首脳会議(G8)

 2005年の主要国首脳会議(G8)以降、イギリスのブレア首相がきっかけとなり、G8で気候変動が主要議題になってきている。2007年G8では、ドイツのメルケル首相も熱心で、「次の国際枠組み条約について2009年に合意を図る」と前向きな合意に至った。日本の安倍首相は就任直後、温暖化問題に関心がなかったが、欧州首脳らと接するうちに重要性に気づいた様子。“Cool Earth”(美しい星へのいざない)を発表した。福田首相はある程度、良識的な関心を持っていると思う。

 北海道・洞爺湖サミットは、温暖化を論議する一つの場にすぎないが、サミットが国際的な次期枠組み合意の後押しの役割を果たせるか、足を引っ張るかが注目される。アメリカがブッシュ大統領である以上、どれほどの成果が上がるかは疑問だが、日本が温暖化問題でリーダーシップを取ることで、日本が変わるきっかけになり得る。日本の福田首相は、所信表明演説でも「低炭素社会」を言い、ダボス会議へも出席して温暖化問題を訴え、「地球温暖化問題に関する懇談会」を設置してきている。もし、日本がサミットでリーダーシップをとるとすれば、日本が率先して行動しないと説得力がなくなる。

 

国際動向―地方都市など

 世界を見た場合、都市が国よりも先行して取り組んでいる事例が多い。例えばカリフォルニア州は、2050年までに1990年比80%削減を掲げており、IPCCの削減目標にほぼ沿っている。

 アメリカの連邦裁判所は、政府に対して、自動車からの二酸化炭素排出規制をしないのは大気浄化法に反するとの判決を下している。

 

日本の動向―排出量の推移

 アメリカは、世界の温室効果ガス排出量の4分の1を占め、日本は世界で4番目の排出国である。日本は京都議定書の目標を達成できていないどころか、2006年度、基準年比6.2%の増加で、−6%という目標との差は12.2%もある。

 2010年の国内削減目標は基準年比−0.6%だが、森林吸収や排出権取引などの京都メカニズムの活用、原発の積極利用、「その他」の削減により目標を達成しようとしている。しかし、原発は想定通り動かなかった場合や「その他」削減見込み量の過大評価などを考慮すると、わずか−0.6%の目標さえ達成は厳しい。

 

日本の動向―二酸化炭素排出量の内訳

 二酸化炭素排出量の内訳を日本独自の「間接排出量」で見ると、2005年度、1990年比で、産業部門は5.5%減少しており、業務部門は44.6%増加、家庭部門は36.7%増加となっている。「産業は努力しているが、家庭は努力が足らない」と見られてしまう。

 しかし、世界的な捉え方である「直接排出量」で見ると、エネルギー転換部門の排出量増加が顕著であることが分かる。2005年度、1990年比で、石炭火力発電による排出量が3倍になったからである。

 また日本では、大規模事業所が大量の二酸化炭素を排出している。わずか200事業所で日本全体の二酸化炭素排出の50%を占めている。家庭は5%、中小企業は11%、運輸(車)は17%である。これら200事業所の取組みが重要。

 

日本の国内対策(1)―京都議定書目標達成計画

 政府は、2005年に「京都議定書目標達成計画」を策定し、4度改定している。しかし過去10年間、進展はなく、小手先対策にしかなっていない。追加政策への産業界の根強い反対によって、産業界の取組みは今も「自主行動計画」にとどまっている。原子力発電所に大きく依存しているが、稼働率は見込めず、結局、化石燃料による発電で排出量が増えてしまう。排出量の抑制を直接促したり、規制したりする政策はほとんど導入されておらず、排出量取引・炭素税もない。

 

日本の国内対策(2)―啓発運動

 そこで政府は、啓発運動に傾倒。1人1日1kg削減というモットーを掲げた「国民運動」キャンペーンを展開している。これで京都議定書の目標を達成するつもりか!? 目標達成できなかったら、「国民の努力が足りなかった」ということになるだろう。まるで「1億総懺悔」。排出責任が曖昧で、政府の責任回避では? 産業界が反対するから個人に押し付けているのが実情。

 

日本の現状

 政府対策の現状として、中長期的なビジョンや数値目標がなく、炭素税や自然エネルギーの普及などの抜本的な政策が全て先送りされている。このままではIPCCの100%削減はおろか、京都議定書第一約束期間の6%削減達成も危うい。温暖化を防止しながら築くべき社会のビジョンが欠如している。

 

日本が克服すべき課題

 第一に、排出の多い工場や発電所を持つ企業に対して確実に削減を求めること。現在の「自主的な取組」まかせを放置しないことが重要。

 第二に、発電部門において石炭火力発電所を減らすこと。1990年以降、石炭火力発電所が3倍に増えている。これを一時的には天然ガス、さらに太陽光、風力などに転換すべき。

 第三に、炭素に価格をつけ、企業や個人の確実な行動を促すこと。経済システムを二酸化炭素削減型に変えることが必要。

 

世界から取り残される日本

 世界では国内の排出量取引・炭素税を制度化している国が多く、気候保護法を制定しているところもある。アメリカですら、一部州で排出量取引を導入している。世界の中で日本は、「低炭素社会(クールアース50など)」を発信しながら、いまだ国内策を講じていない“不思議な国”。

 

気候ネットワークが提案する気候保護法案

 イギリス、アメリカ、EUでもある同じトレンドを上回る法案を気候ネットワークが提案している。政治家の口約束ではなく、法律にして責任を持たせるのが狙い。

 短期・中期・長期における削減数値目標を設定し、それらを直線で結びつける排出経路の数値をもって、毎年の排出目標とする。1990年比で、中期目標は2020年に30%削減、長期目標は2050年に80%削減。

 2020年までに再生可能エネルギーの一次エネルギーに対する比率を20%とする。

 温室効果ガスの排出に価格をつけ、必要な投資を行うための仕組みとして、国内排出量取引制度や炭素税などを導入する。

 他にも、再生可能エネルギー促進政策や排出量報告の公表、民生・運輸の規制と公共交通の自治体支援などを行う。政党にも法案制定の動きが出ている。

 

日本が“失敗の10年”から脱却するために

 第一に、国際的圧力が必要になるだろう。温暖化論議が消えなかったのは、京都議定書のおかげ。次期の国際的枠組みで、より大きな総量削減目標を合意することが、国内への強い圧力となる。

 第二に、東京都千代田区などの先進自治体が率先して国を牽引することが期待される。

 第三に、個別企業の社会的責任に基づく行動が期待される。経団連は温暖化防止に反対してきたが、個々の企業の中にはそれが不利であることに気付いているところがあり、経団連の分断が見られる。

 第四に、NGO・研究者や賢明な市民の力が期待される。客観的提案を支持する大多数の市民が政治を変える。

 

MAKE the RULEキャンペーン

 今は、日本の政治を変えるチャンスだと考えられる。サミットで格好がつかないという点から、政治的に動かざるをえない状況が出てきている。経団連は変わっていないが、これからの低炭素社会を生き抜くためには規制も必要と声をあげる企業も出てきている。気候変動関係のニュースが一般市民の関心を高めているという側面もある。

 MAKE the RULEキャンペーンを構想している。関心を持つ人達をつなぎ、世論を動かし、政治を動かすことが、今なら可能なのではないか。

 そのために、NGOも変革しなくてはいけない。過去と同じ10年を過してはもはや手遅れである。10年後、悲壮感漂う影響が目に見えてくるだろう。多くの市民と力を合わせ、政治を変えていくNGOにならなくてはいけない。海外NGOの成功を見て痛感する。化学変化を起こすぐらいの心づもりでいる。分野の違いを超えてサポートし合いたい。

 
 
2 質疑応答

Q バイオ燃料は、農作物を奪うのみならず、肥料由来の窒素酸化物が二酸化炭素に比べはるかに高い温室効果をもたらすという問題がある。アメリカ上院では2022年までにトウモロコシを原料としたエタノール生産を7倍にするという法案が検討されていて、大変だ。

(平田) アメリカのトウモロコシ由来のエタノールは、石油よりも結果的に二酸化炭素を出す。バイオ燃料は世界的には軌道修正の方向にある。バイオ燃料生産地(途上国)の原住民、経済などに配慮した持続可能な生産を可能にする生産ガイドラインの制定が必要。EUなどもそれを認識している。

 

Q サマータイムはエネルギー節約になるか?

(平田) 環境省が二酸化炭素の削減見込み量を計算上は出しているが、ライフスタイルがどう変化するのか分からず、温暖化にどういう影響を与えるかは読めない。

 

Q 『成長の限界』が出版された1972年に地球温暖化は言われていなかったのか?

(平田) 二酸化炭素の観測データが蓄積され、一部の研究者の間で認識が生まれていたが、まだ共有認識ではなかった。それは1980年代になってからで、さらに国際政治のステージに上ってくるのが80年代後半ということになる。

 気候変動枠組み条約ができた1992年に科学者の話しを聞いていれば、今とは違った社会を築けていたかもしれず、苛立たしい。“Too Late”もう手遅れだと断定する人もいる。しかし何をなすべきか分かっている。行動するだけだ。秒針の一歩手前くらいにはあると思う。

 

Q 日本の太陽光パネルのメーカーは海外で工場を建設するなど活発だが、日本国内ではどうか?石油燃料による発電と比べた場合のコストは?民主党ではどんな動きがあるのか?

(竹村) 太陽光のほうがまだ高い。風力は石油に太刀打ちできるくらいに安くなっているが、政策的に邪魔されている。太陽光はコンピュータと原料(シリコン)の取り合いで、この3〜4年は値段が下がっていない。むしろ去年から今年は上がっている。ヨーロッパでは需要が大きくなって供給が足らない状況が続いていることが背景にある。

 供給が少ないのは、設備投資が遅れたことによる。設備投資が完了すれば劇的に価格も下がるだろう。グリーンピース・ジャパンが1997年に行った世論調査によると、一軒(3〜4KW)あたり、100万円を切れば爆発的に普及するとの結果が出ている。現在、1KWあたり60万円前後。

 政府は、一般家庭への補助を去年、打ち切ってしまった。ヨーロッパでは固定価格買い取り制度があり、風力だと3倍、太陽光では4倍で買い取ることが電力会社に義務付けられている。10年でもとがとれると事業として成立し、ヨーロッパでは爆発的に普及した。

 太陽光パネルは、去年までシャープがトップだったが、去年、ドイツのキューセルに抜かれた。来年は、中国のサンテックにも抜かれる。

 環境エネルギー政策研究所では、「1億人のグリーンパワー」という運動を企画している。自然エネルギーの割合を10〜20%にすることは必須で、ヨーロッパでは実現している。風力や太陽は「きれいな電気」なのに、日本では蔑まれている。価値に見合った価格になっていない。「グリーンパワー(きれいな電力)」はそういう電気の価値を正しく評価、普及しようという運動。

 現在、こうした電力を買っているのは主に大企業で、200社程度。市場は10億円規模。仕組みづくりにはソニーや東京電力なども関わっている。環境エネルギー政策研究所などが、その「グリーンパワー」を供給する発電機(風力、太陽光)を設置し、事業として成立している。通常の1.5倍で売れるので、コスト回収が早まる。

 ドイツは2030年までに45%を自然エネルギーでまかなおうとしている。中国も2020年までに20%にまでしようとしている。ところが、日本は2014年までに1.63%だ。この値は、1.3億人が1ヶ月当たり1日10KWHの電力を節約ないし「グリーンパワー」で代替するのに等しい。したがって政府目標の達成は難しくない。

 キャンペーンとしては、専用のサイトを立ち上げ、そこで購入契約以前の意思表示(クリック)をしてもらい、その集積で1.63%、160億KWHを一気に達成したい。

(平田) 民主党は地球温暖化を時期総選挙での争点の一つにしたいようだ。気候ネットワークに似た法案を考えている(先日、提出した)。長期の削減目標を60%以上と低く設定しているが、排出量取引制度などを盛り込んでいる。他野党も作るのではないか。ただ、ガソリン税を下げた今回の対応は、炭素税の考え方と対立しており、党内がまとまっているとはいえない。自動車関係労組への配慮などもあり、民主党が政権を取ればこの問題で万全の対策ができるというわけではないだろう。

 

Q 石炭液化・ガス化の現状は?
 
(平田) 経済産業省では力を入れている。排出される二酸化炭素を地中、海底に埋める技術とセットで開発されている。EU指令、アメリカの法案、日本でも、排出二酸化炭素を埋める技術とセットでなければ石炭火力は認めない、というシグナルを与えており、実用化すれば、この流れに向かう可能性がある。

 しかし、温暖化対策はこれまで脱化石燃料の動きとしてあったのであり、自然エネルギーをおろそかにするのは優先順位を覆す。ただ、トレンドは地中埋め立てに向かっている。

 

Q 「持続可能な発展」ではなく「持続可能な撤退」が必要であるとの主張がある。ある程度は、地中埋め立てのようなこともやっていかなくてはならないのか?

(平田) 応急措置として原発回帰がヨーロッパでも起こっており、地中埋め立ても環境影響評価を前提にし方がないとするNGOもある。好きな対策ばかりを選ぶことはできず、諸対策のリスクを比較した上で選択しなければならないのかもしれない。だが、対策とそのリスクの選択肢が私達に説明されないまま、偏った技術(原発、埋め立て)に税金が既定路線のようにつぎ込まれている。

(竹村) 自然エネルギーのキャパシティはどれくらいあるか。ドイツでは既に10%が達成されている。日本の風力発電協会は、少なく見積もって風力で10%程度はまかなえるだろうと言っている。太陽光は諸説あるが、分散型であるので、日本の5分の1の屋根につければ太陽光だけでまかなえると、NEDOが1970年代に試算している。

 

Q 自然エネルギー事業に対する妨害とは?

(竹村) 新エネルギー利用特措法(RPS法)を境に風力発電の設置件数は激減した。同法は、固定買い取り制度ではなく、自然エネルギーの一定割合(1.63%)の供給を電力会社に義務付ける内容。 例えば北海道電力はすでに義務量をクリアしていたので、それ以上の自然エネルギーを買わなくなった。

 ヨーロッパでは自然エネルギーで発電された電気を電力会社が買い取ることが義務付けられている。しかし日本ではそうした法律がなく、風力事業者が風車を立てても、送電線との連結や電池の設置を風力事業者が自己負担しなければならない。ヨーロッパに比べ高いコストを強いられ、事業が促進されない。

 

Q NGOが社会を変えるということについて

(平田) イギリスで気候変動法が成立した際、国際環境NGO・FOE による“Big Ask”という大掛かりなキャンペーンがその成功の原因になった。有名なRadio Headというロックバンドを引き込んだりして、幅広い支持を集めることに成功した。日本のNGOにはそうした力がない。サポート会員が少なく、政治を動かせない。今後は寄付を集めることなどにも積極的に取り組む必要がある。それが成功すればNGO元年になるだろう。

 

Q 政党に申し入れた際、共産党や社民党の反応はどうだったか?

(平田) 前向きである。早いうちから連携することができなかったが、働きかけを始めた。今は法案を持っていないが、今後、作ってくれるのではないか。各党議員を招いての話でも、(共産の)笠井氏、(社民の)福島氏も前向きだった。

 温暖化防止で民主党案、NGO案、共産・社民の案が競争し、法案の形には出てこないかもしれないが、自民も福田ビジョンで何か言ってくる可能性がある。これらをどう波に乗せていけるかだ。

 

Q 原油高は温暖化防止を後押ししているか?

(平田) 定量的なことは言えないが、コスト削減のために対策が行われている面がある。しかし、原油は価格が変動するので、炭素税と同様に安定的な効果があるかというと、分からない。

(竹村) 木質バイオマス(木から作るペレット燃料など)については、石油より安くなっているが、ストーブやボイラーが高価であるため、今一つ普及していない。それらを購入しても、元は取れるのだが。温室栽培を行っている農家には注目されている。

 ピークオイル(生産頂点)がすでに来ているという説がある。すでにないので投機資金が値上がり率を倍増させているのだろう。投機活動のみが高騰の原因ではない。

 世界的には石油代替燃料の生産が必要だという流れにある。また、アメリカにおける食物由来燃料の生産は、穀物産業が生産に必要な特許技術を売り込むためという側面がある。

 

Q 地球温暖化防止のためには、原発などあらゆるものを取り入れる必要があるのではと思うと、つらくなるが。

(平田) 原発や地中埋め立てが良いと言っているわけではない。2030年に30%削減という目標の場合、経済スタイルの変更などで、原発や地中埋め立てに依存せずに目標達成が可能。グリーンピースの試算では、自然エネルギーと省エネで75%削減は可能としている。2050年の80%以上削減という目標が迫られる段階になれば、原発や地中埋め立ての検討が必要になるのかもしれない。しかし現在、そこに至るまでに取るべき対策を取っていない。

 
 
3 結語

結語(平田さん)

 地球温暖化の問題は、きわめて政治の問題であり、きわめて私たち当事者の問題であり、平和の問題でもある。この問題によって物理的にたちゆかなくなる前に、社会パニックが来るのではないかと思う。みなさんが地域で輪を広げていくことを期待している。

結語(竹村さん)

 日本社会でよく指摘される「タコツボ」ではなく、視野を拡げて、政治につなげることが大事。今日は横のつながりを作る第一歩になったのではないかと思う。

 
 
太田光征
http://otasa.net/

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い(野党国会議員への要請第2回)

5月 23rd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 21:52:18
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「風」では小選挙区制を見直すセミナーを企画しています。このセミナーに参加していただく国会議員を募るため、4月に野党国会議員の皆さんに要請文を送付しました。

ところが応じていただける議員がいませんでしたので、5月23日、再度、以下の要請文を野党国会議員にFAXとメールで送付しました。

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い
第1回活憲政治セミナー
「地球温暖化問題から取り残される日本の政治」のご案内

野党国会議員の皆様

 4月23、24の両日にわたりお送りした要請文「小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い」はお読みいただけましたでしょうか。

 与野党の一部からは相変わらず政界再編へ向けたと思われる動きが伝えられています。例えば、平沼赳夫氏は、「自民、民主の橋渡し」を目指した保守系新党の結成を公然と示唆しています。いわば「大連立を見かけ上の野党の立場」から促進しようとする動きといえます。

 こうした誘いを野党が断固拒否するという空気は伝わってきていません。平沼氏の動きは、野党の信頼性を損なう働きといえ、そのような誘いに野党が動くならば、有権者は再度、野党に対して不信の目を向けることになるのではないでしょうか。

 最近言われだしている選挙制度改定は、こうした政界再編がらみの思惑、ないしは自公の生き残りを狙いとしたものと思われ、民意を反映したものではありません。

 有権者が野党に期待しているのは、民意を反映した政権交代です。そのためには、野党を分断し、民意をゆがめ、自公に勝利をもたらす小選挙区制を廃止し、同時に、大連立や自公延命のための選挙制度改定をも阻む必要があります。

 改めて、小選挙区制を見直す集会へのご参加を検討していただきたく思います。よろしくお願い申し上げます。

 なお、5月31日には、第1回活憲政治セミナー「地球温暖化問題から取り残される日本の政治」を行います。ご参加の上、発言、提言をしていただければ幸いです。詳細は公式サイトでご確認をお願いいたします。

2008年5月23日

「平和への結集」をめざす市民の風

太田光征

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い(野党国会議員への要請第1回)

5月 23rd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 21:35:02
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「風」では小選挙区制を見直すセミナーを企画しています。このセミナーに参加していただく国会議員を募るため、4月23、24の両日にわたり、以下の要請文を野党国会議員にFAXとメールで送付しました。

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い

国会議員の皆様

 2005年郵政選挙の見せ掛け上の「圧勝」にも関わらず、その後の2007参院選でも退潮傾向が明らかになった自民党と公明党の与党連合は、小選挙区比例代表並立制では民意をゆがめた勝利が不確実になったと判断していることでしょう。現在の与党の枠組みを超えた政界再編を見込んで、新たな党略的生き残りのための選挙制度を模索する動きもあるようです。

 自民党と公明党が提唱する中選挙区制といっても、定数は3以下であると予想され、得票率を上回る議席獲得率を得る仕掛けを何が何でも狙ってくると思われます。

 得票率で示される与野党の力関係は、野党が優勢になっていると見られますので、死票の出ない、民意を反映した選挙制度ならば、野党連合の勝利はますます確実になってきました。今となっては、小選挙区制は、民意を逆転させる自公の延命装置にもなり、野党を分断させる危険な選挙制度になっています。

 反民主的な選挙制度で現在の与党の延命に手を貸すのか、それとも民主的な選挙制度改正で当然の政権交代を実現するのか、問われていると思われます。

 民意を反映した民主的な選挙制度は、与野党問わず受け入れられるべきものであり、政権交代も担保するものです。「平和への結集」をめざす市民の風は、独立した小選挙区制に反対し、民意を反映した選挙制度改正を実現する立場から、そのような趣旨のシンポジウム/政治セミナーを企画したいと考えています。

 付きましては、上記の趣旨にご賛同し、シンポジウム/政治セミナーにご参加いただける国会議員の皆様を募らせていただきたいと思います。集会の実施日時は皆様の都合に合わせます。下記連絡先までお知らせいただければ幸いです。ご検討よろしくお願い申し上げます。

2008年4月24日

「平和への結集」をめざす市民の風

太田光征

9条は世界史の本流:9条世界会議の報告

5月 7th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 12:24:22
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〜1945年:重慶、東京、広島、長崎…
1945年広島

1947年5月3日:日本国憲法施行
9条は人類への贈り物

2008年5月4日:9条世界会議
9条世界会議
 
 
 
2008年5月4日から6日まで千葉県の幕張ほかで行われた「9条世界会議」(http://whynot9.jp/)の初日全体会議に参加してきました。企画、実務に携わった方々に感謝します。海外スピーカーの多くが9条世界会議を世界史的だと形容。池田香代子さんも6日の総会で、9条が世界史の本流に位置すると述べられましたが、このことに確信を持ってよいと思います。

当初、ベアテ・シロタ・ゴードンさんにインタビューしたいと思い、取材登録したものの、ご高齢のため、メディアの取材は一切受けないということになり、残念。何分、貧乏アマチュア記者なもので、手持ちの借り受けたビデオは、会議全体の様子を収めるだけの機能を持ち合わせていません。スピーカーすべての方の写真を紹介できていないのは、そのため。発言内容の要旨を中心に報告します。

ナターシャ・グジーさんの透き通るような歌声ほか、アーティストのパフォーマンスの紹介も、残念ながら割愛しなければなりません。

【追記】 5月22日
初日全体会議の報告としては、別に、片山佳代子さんによるものが詳しい。

9条世界会議 報告
http://homepage1.nifty.com/kayoko/9jousekai.htm

池田香代子さんの発言要旨に以下を追加しました。国名の記憶が不確かだった部分です。

「エクアドルの制憲議会は4月1日、外国軍基地や外国軍の駐留を認めないとする新憲法条項案を可決した(国民投票は今年後半の予定)」

太田光征
http://otasa.net/
 
 
 
開会挨拶:吉岡達也さん (「9条世界会議」日本実行委員会共同代表/ピースボート)
吉岡達也さん

マイレッド・マグワイア (北アイルランド/1976年ノーベル平和賞受賞)
マイレッド・マグワイアさん

日本の平和憲法と第9条を放棄しようとする動きに多くの人が憂慮の念を抱いている。日本の再軍備、軍事化はアジアの人々の中に恐怖を増長させ、軍拡の引き金になり得る。

2003年5月、ブッシュ米大統領は戦争の再定義を行い、世界はさらに危険になった。戦争目的を、敵国の侵略と体制変革とする宣言。先制攻撃は予防戦争であると位置づけ、それに対するアメリカの独占権を主張。これは国際法と多国間合意に反する。アメリカ帝国の戦争再定義にはっきりと反対の意思を示す必要がある。

あらゆる形態の暴力に対しても闘いを挑んでいかなければならない。その端緒として、心の中から武装解除を始めていく必要がある。

日本が平和憲法をないがしろにするなら、被爆者に対する重大な侮辱である。アメリカの新しい核ドクトリンは軍事戦略のなかで核兵器の使用に焦点を当てている。アメリカは、核兵器が、予防戦争を含めて、どのような戦争であっても、それが使われる可能性があると主張。核兵器が不可欠であり、性能向上を図っていかなければならないとアメリカが言うとき、イギリス同様、核拡散防止条約の義務を無視している。

イスラエルに対して、中東の非核化でリーダーシップを求めるべき。アジアでの核兵器の蓄積、拡散に対しても反対していく必要がある。軍拡競争の宇宙への拡大を懸念する。テロが世界の安全保障上の最大の脅威であるとする西側の一部の主張は間違いであると思う。安全保障の名の下に人権侵害が行われ、テロが増幅され、安全どころかより危険になった。国家による人権侵害などをやめさせ、人間の安全保障を政府に要求するべき。

イギリス政府は、アイルランド共和国軍、ロイヤリスト武装グループとの対話を行い、北アイルランドにおける停戦、平和協定締結の手助けをすることができた。祖国北アイルランドの30年にわたる暴力に終止符が打たれ、平和を手に入れることができた。

ピース・ピープルを立ち上げて以来、暴力的手段は機能せず、対話のみが機能することを経験的に学んだ。簡単な解決策がないことも。長い期間の決意が必要。

平和を作ることは可能であり、北アイルランドがそのモデルになることを願う。2007年、ノーベル平和賞受賞者が暴力無き平和のための憲章を制定した。誰もが殺されることのない権利を持ち、誰も殺してはならない責任を持つとするもの。”This vision is possible. Thank you to the Japanese people for being part of it.”

コーラ・ワイス (アメリカ/ハーグ平和アピール代表)
コーラ・ワイスさん

コスタリカ憲法の第12条も常備軍を禁じている。パナマの憲法も軍隊の排除を謳っている。ボリビアでも、戦争を放棄し、軍隊を拒否する憲法改正の国民投票をまもなく行う予定。

コスタリカにこんなTシャツがある――「空軍は鳥で十分、陸軍は蟻で十分、海軍は魚で十分」と書かれている。コスタリカでは24歳の法学生が、イラク戦争を支持した政府を相手取り、違憲訴訟を起こした。学生は勝訴し、イラク戦争を支持するリストからコスタリカの名前は削除されることになった。

1999年のハーグ平和会議で、9条の価値が確認された。人類は奴隷制、植民地主義、女性参政権の禁止法を廃絶した。それまで尊重されてきた制度を廃絶することは無理ではない。

女性・平和・安全保障に関する国連安保理決議1325には、人類の命運がかかった大きな決定の場には女性が参加すべきと規程されている。

世界の軍事費は年間1兆ドル。アフガニスタン・イラク戦争では3兆ドルが費やされている。貴重な財源の犯罪的な配分ミスである。

アクションの提案をする。9条の大使となって、今よりできることを1つ増やそう。核兵器のない世界を実現するための法的、技術的、政治的手段を提供するモデル核兵器協定がある。日本はその国連での採択に向けて先頭に立てるはず。

池田香代子(日本/ 「9条世界会議」日本実行委員会共同代表、翻訳家)

池田香代子さん

エクアドルの制憲議会は4月1日、外国軍基地や外国軍の駐留を認めないとする新憲法条項案を可決した(国民投票は今年後半の予定)。

問題の解決に手段は2つしかない。戦争をはじめとする暴力か、話し合いかの2つ。話し合い、つまり民主主義は、戦争を否定して初めて本物になることを今いちど銘記しなければならない。

お金のグローバリゼーションではない、市民が縦横につながるオルタグローバリゼーションの大波で、世界を覆い尽くしましょう。

土屋公献(日本/ 元日弁連会長)

同じ9条の採用を各国に呼びかけたいが、おこがましいだろうか。

エマニュエル・ボンバンデ (ガーナ/西アフリカ平和構築ネットワーク)

アフリカほど9条が必要とされるところはない。日本の指導性に期待する。

ベアテ・シロタ・ゴードン (アメリカ/元GHQ日本国憲法起草者)

日本国憲法の草案作成には世界中の憲法を参考にした。民間の憲法研究会、社会党、共産党からも案が提案されている。日本国憲法は世界の英知が詰まったもの。日本国憲法は米国憲法よりすばらしい。押し付けであるとは思わない。

李 錫兌(イ・ソクテ) (韓国/弁護士、人権活動家)

アジアでは、日本が漢字を輸入するなど、文物の交流に重きが置かれてきた。仏独は、争いのない関係に利益を見出した。日本は、理性的な政策に背を向けてはならない。

カルロス・バルガス (コスタリカ/国際反核法律家協会副会長)

1980年代、アメリカはニカラグア侵略のために米軍基地をコスタリカ国内に建設しようと圧力をかけたが、常備軍を拒否した12条を持つコスタリカ憲法を根拠に跳ね除けることができた。1983年、コスタリカは中立宣言(コスタリカの永世的、積極的、非武装中立に関する大統領宣言)で、国内における外国の軍事活動を禁止している。

アン・ライト (アメリカ/元陸軍大佐・外交官)

軍需産業ではなく、平和でもうかる産業を。

エイダン・デルガド (アメリカ/イラク帰還兵)

911テロ後、何かをやりたい思いから入隊した。アメリカで軍人は貴い職とされる。戦争の美点とされるものはすべて嘘だと分かり、兵役を拒否した。
戦争に反対するだけでは認めているも同然。周りに話していくことにした。

カーシム・トゥルキ (イラク/人道支援ワーカー)

国を守るために武器を取ったが、敵対関係にならないことが最良。軍事活動と人道支援は混同される。人道支援でも、スパイの疑いをかけられ、誘拐された。非武装支援がよい。

雨宮処凜 (日本/作家)

イラクへは2回訪問した。イラクでも派遣会社が活動している。子供を産み育てることができる職業として自衛隊がリクルート。食うために自衛隊へ、はアメリカ貧困層が入隊する状況に似ている。

高遠菜穂子 (日本/イラク支援ボランティア)

2004年4月、イラクで武装勢力に拘束された。日本が「9条を突破」したから人質になったのだろう。丸腰、対話、支援という「9条実践」をしていたから解放されたのだと思う。

[以下、9条ピース・ウォーク参加者の写真]

ピース・ウォーク

ピース・ウォーク

ピース・ウォーク

ピース・ウォーク

ピース・ウォーク

ピース・ウォーク

第1回活憲政治セミナー:地球温暖化問題から取り残される日本の政治

5月 7th, 2008 Posted by Keiss1979 @ 8:42:42
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「平和への結集」をめざす市民の風
活憲のための政治セミナー
当日の写真から・・・詳しい報告はしばらくお待ちください(6月3日)。

第1回活憲政治セミナー3

第1回活憲政治セミナー1

第1回活憲政治セミナー2

衆議院山口2区補選で民主党候補が大勝しました。国民の多くが福田政権に「ノー」を突きつけつつあります。福田総理は7月の洞爺湖サミットで、世界に向けリーダーシップを発揮、汚名挽回して政権維持をと考えているようです。しかし、その肝心の地球温暖化対策、日本はボロボロで世界から取り残されつつあるのです。

1997年の京都会議で、世界の先進国は2012年までに温室効果ガスを削減すると約束しました。ところが日本は削減どころか排出量を増やしています。この10年間、何にも有効な対策を打ってこなかったからです。経済界の既得権を重視し、産業界に厳しい制度をことごとく排除してきたからです。

今年のはじめには、沖縄での米兵による少女暴行、護衛艦「あたご」の衝突など、日米関係や自衛隊そのものを問う事件が続きました。消えた年金はさっぱり解決せず、追い討ちをかけるように特別高齢者医療制度、原油や穀物の値上がりによる物価高騰、自暴自棄の凶悪犯罪や自殺が増えています。国民生活は大ピンチなのに、国会は空転し有効な対策を打てていません。平和問題も、社会福祉・高齢者問題、経済政策も、そして地球温暖化問題でも「いきあたりばったり」なのです。

そこで、現在の政治の行き詰まりを打ち破る展望を探るため、私たちは政治セミナーを企画します。人類を脅かす環境問題、国民を脅かす格差・貧困の問題、民意をゆがめる小選挙区制の問題、そして平和にとっての憲法9条の価値などについて、一緒に考えてみませんか。

第1回 地球温暖化問題から取り残される日本の政治
       ―洞爺湖サミットで何をなすべきか―

平和問題、社会福祉・高齢者問題、経済政策・・・
地球温暖化問題でも「いきあたりばったり」!

講師:平田 仁子(ひらた きみこ、NPO法人 気候ネットワーク運営委員)

1970年生まれ。米国環境NGO「Climate Institute」で地球温暖化に関する活動に携わる。98年6月より気候ネットワークに参加。
NGOの立場から、国内外の地球温暖化に関する政策研究・政策提言・情報提供などを行う。共著『よくわかる地球温暖化問題 改訂
版』(気候ネットワーク編・中央法規出版)
気候ネットワーク:国内の地球温暖化問題に取り組む約160の団体、600の個人が参加する環境NGO(http://www.jca.apc.org/kikonet/)。

日時:2008年5月31日(土)14:00〜17:00
会場:神田公園区民館 神田司町2−2 電話 03-3252-7691
    JR・東京メトロ銀座線神田駅から徒歩5分
    東京メトロ丸の内線淡路町駅から徒歩5分
    都営新宿線小川町駅から徒歩5分
    ※会場は「みどりの会」で予約しています
地図:http://www.city.chiyoda.lg.jp/service/00065/d0006550.html
参加費:800円(前売り500円)

2回目以降の予定

第2回 「拡大する格差社会と失われゆく憲法の精神」
    〜ワーキングプアと政治の無策〜 (2008年7月下旬開催予定)
第3回 「小選挙区制は政治を良くできたか」
    〜あるべき選挙制度を考える〜 (2008年9月開催予定)
    ※現職議員を招いたパネルディスカッションを予定
第4回 「東アジア共同体としての平和政策」
    〜憲法9条と北朝鮮問題〜(2008年11月開催予定)
広島・長崎へのオプショナルツアー(2008年8月予定)

主催:「平和への結集」をめざす市民の風
後援:地球平和公共ネットワーク
協力:みどりの会
お問い合わせ先:政治セミナー実行委員会 電話番号:080-5373-0575(末次)
メール:join@kaze.fm 
URL:http://kaze.fm/

山口衆議院2区補選について

4月 27th, 2008 Posted by take @ 10:55:26
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本日は衆議院山口2区の補欠選挙投票日です。
この選挙は事実上、衆議院では初の「平和への結集」が実践された選挙です。

私自身のブログに、そのことを少し書きましたので転載します。

さて今日は、山口県では衆院山口2区補選の投票日です。
この選挙は民主党の平岡秀夫氏と自民党の山本しげたろう氏の一騎打ちとなっています。
岩国米軍基地の拡張とNLP(戦闘機の夜間離発着訓練)移転の是非を問う、先の岩国市長選挙に自民党の衆議院議員福田良彦氏の辞任に伴うもの。岩国市長選では僅差で福田氏が現職の井原氏を敗ったが、山口2区はその岩国市を含む選挙区、補選でも岩国基地問題が焦点になっても良さそうなものです。ところがガソリン税の暫定税率問題に、後期高齢者医療制度などが社会的な焦点となり、岩国基地問題は早くもどこかに吹き飛ばされた気配です。

この選挙の特徴は民主党と自民党の一騎打ちになっていること。つまり、いつもなら必ず候補者をたてる共産党が候補者をたてなかったことです。過去の選挙結果を見ると、当選者がだいたい10万票ちょっとで、共産党の得票は1万票ちょっと。選挙結果には関係ないと思われるかもしれません。ところがここは、過去3回の選挙がどれもトップと2位の差が1万票前後という激戦区なのです。

平岡氏が福田氏に破れた2005年選挙では、その差は500票ほどでした。共産党票は13000票あまりあり、この票が平岡氏に入っていれば、確実に勝っていたというわけです。

共産党は、最近になって、全選挙区に候補者をたてるというこれまでの方針を見直すという方向性を出しました。その第一号適用がこの選挙区と言っても良いかと思います。共産党は「自由投票」ということで、平岡氏を推薦したり、応援したりすることはしていませんが、共産党に投票していた人が自民党に入れることはあまりないでしょう。平岡氏は、大きな援軍を得たのです。

平岡氏の政治姿勢は、民主党の中では「平和派」と呼べるものです。民主党内の護憲を掲げる議員集団として旗揚げした「リベラルの会」の中心人物として、近藤昭一議員とともに名前を出しています。民主党内に「平和派」は数多くいるのですが、民主党の支持勢力が必ずしも平和=護憲派には限らないという事情のため、あえて表に公表しない議員が多いのです。平岡氏はその中にあって、選挙区事情もあるのでしょうが、それを公然と表している信念を持った政治家とも言えます。

共産党が、これを評価して候補者擁立を見合わせたのだとすれば、これは私が参加する「平和への結集をめざす市民の風」の求める結集が「衆議院選挙ではじめて」実践された事例ということができます。共産党はその点についての表明はしないでしょうが、これはとても「粋な計らい」、今後の日本の政治が大きく動き始める予感を感じさせる「さわやかな出来事」ではないかと思います。

とはいえ、平岡氏はまだ当選したわけではありません。マスコミ等の報道によれば、例によって僅差で、わずかに平岡氏リードと伝えられています。おそらく共産党支持者の人たちの「粋な投票」が、この福田内閣最初の国政選挙の敗北を決定づけるだろうと思います。

以上です。
これ以上書くと選挙違反にもなりかねませんので、あとはお察しください。

「市民の風」事務局 竹村英明