2007年亥年。今年は、統一地方選と参院選が重なる12年に1度の「政治決戦」の年。すでに昨日の1月4日には、山梨、愛媛、宮崎の3県では知事選がスタートし、18日には愛知県、21日には北九州市でも県知事選、市長選が告示されます。亥の年(*)の政治決戦の火蓋はもう切られています。
*亥年の参院選では自民党は苦戦を強いられるという。亥年現象。
その4月の統一地方選、7月の参院選へと続く政治決戦の「4月の戦い」の中でもとりわけ注目されるのが東京都知事選です。
石原慎太郎氏というきわめて個性的な人物(*)を知事に頂き、1200万人もの人口を擁するニッポンの首都の政治決戦、であるということはもちろん、保革の逆転があるかどうか、今夏の参院選の行方を占う絶好のリトマス紙(試金石)ともみなされているからです。
*タカ派、国粋主義者、ポピュリスト、ファシストなどとも呼ばれる。
しかし、その都知事選。今度も石原現知事の「出来レース」か、というのが、これまでの一般的な見方でした。が、ここにきて石原都政2期8年間の公私混同ぶりが次々と表面化し、最近では、石原都知事と三男・宏高父子への「2000万円ウラ献金疑惑」も浮上するなど、石原都政はいまほとんどレイム・ダック(死に体)化しています。マスメディアの石原相場もすっかり冷え込み(*)、総値崩れといった状態です。
*例えば産経新聞のコラム。「石原都知事の弁明はやはり見苦しい。リーダーは身内に厳しくあれ」と酷評されている(2006/12/13)。
石原知事は、これまでも「ババア発言」や「三国人発言」などの暴言、失言を繰り返し、その度に東京都民だけでなく、マスメディアからも批判され続けてきました。が、一方で、どんなに非難されても容易には謝罪しない石原氏の態度を「毅然としている」と評価する都民もいて、都知事としての人気を保ってきました。しかし、もはやその命脈は尽きかけているいうべきでしょう。
「きっこの日記」(2006/12/23)にその石原都政にとどめを刺すかのような記事が載っています。石原氏四男の延啓氏の欧州渡航疑惑に関する石原知事の「余人をもって代えがたい」発言は世間の失笑を買いましたが、石原氏は、四男の「現代美術」を評価するその同じ眼で、都主催の「カルティエ現代美術財団コレクション展」の開幕セレモニーの席上、同展に展示されている現代美術界の巨匠たちの作品を「笑止千万なもの」と言って、カルティエの関係者や海外からのゲストが多数いる会場をシーンと静まりかえらせた。石原都知事は「東京の恥、ニポンの恥」を世界に晒して「得意満面」だったというのです。招待客の怒りはいかばかりだったか。
石原都政の終わりと新知事の誕生を願う都民は、いま絶好の機会を迎えているといってよいでしょう。東京都民の心は、確実に「脱・石原都政」を志向しています。
昨年末に、《今度こそ! みんなで統一候補を!》のスローガンを掲げて開かれた「Close it 石原都政! 11.26大胆シンポジウム」(主催:東京。をプロデュース2007)は、そうした東京都民の「脱・石原都政」の声を結集した市民自身の手によるきわめてタイムリーな企画として注目されます。
同シンポジウムには、石原都政の対抗軸として、東京都民からその「統一」が期待されているすべての政党が出席しました。民主党から同党都連会長代行の田中良氏、革新都政をつくる会(共産党系)からすでに立候補を表明している吉田万三氏、社民党から同党都連代表の中川直人氏、新社会党から同党都連副書記長の橘幸英氏、都議会・生活者ネットから同ネット幹事長の大西ゆき子氏が出席し、呼びかけ人で弁護士の内田雅敏氏、同シンポ主催者代表の楠典子氏、コーディネーターで編集者の熊谷伸一郎氏を交えて、出席政党間の「統一」の可能性について議論を交わしました。
同シンポジウムを終えるにあたって、コーディネーターの熊谷氏は、「市民が動かないと政党は動かない。沖縄の参院選で統一できたのは、市民のパワーに政党としてもそうせざるを得なかった」からであると述べ、「統一」には“市民パワー”が欠かせないことを強調しました。さらに「今日のシンポジウムは第一回目にすぎない。今後、継続して統一に向けて取り組む」必要がある、と民主党、共産党、社民党、新社会党、都議会・生活者ネットの各政党とシンポジウム参加者に訴えました。
また、同シンポ参加者からは、
都民の声1:「来場の皆さんが統一候補で石原を変えようという思いが伝わってきました」
都民の声2:「情勢が逼迫してきている折に、1党1派の都合や理屈を乗り越えて、大きく『統一』することが肝要です。主催者としてはそれぞれの『顔を立て』ながら、何とか『統一候補』」実現を図ろうと努力されている様子がよく分かりました」
都民の声3:「いずれにしても統一を願う市民運動の盛り上がり次第ですね」
などの声が聞かれました。
各政党、都民に共通した感想は、「やっぱ、割れたら勝てない」というもの。石原都政の対抗軸としての「統一候補」の実現は、各政党、都民に共通した悲願なのです。
その石原現知事がかつて在籍した自民党のいまの領袖である安倍首相は、「政治決戦」の年である亥年の年頭所感で、「憲法が施行されてから60年。新しい時代にふさわしい憲法を、今こそ私たちの手で書き上げていくべき」だと強調しました。
「戦後レジーム(体制)からの脱却」を掲げて新首相となった安倍氏は、昨年、その戦後レジームの象徴としてあった教育基本法を「改正」し、さらに自衛隊の海外派遣を「本来任務」とする防衛省昇格法を一気に成立させましたが、この安倍所感は、今年はいよいよ本丸の憲法9条改正論議を本格化させるという決意表明なのでしょう。
石原現知事も「自衛隊のことを『陸・海・空三軍』と呼ぶ」名うての憲法9条「改正」論者です。石原知事はまた、そのスパルタ式の教育(体罰)で訓練生を死亡させたこともある戸塚ヨットスクールを支援する会の会長であり、これまた名うての教基法「改正」論者でもありました。いまも学校教職員に国旗・国歌を強制して、同教職員の思想・良心の自由を奪い続けています(東京地裁は、国旗・国歌の強制は、思想・良心の自由を侵害するという判決を出しています)。
いま、この「国」とこの「国」の首都では、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重といった日本国憲法の根幹にもかかわる戦後民主主義的なものの岩盤が、「戦後レジームからの脱却」という為政者の片肺的ともいえる「保守思想」によって、いとも簡単に切り崩されようとしています。
今春の東京都知事選で「今度こそ、統一候補を」実現させようという東京都民の声は、戦後民主主義的なものを根こそぎ簒奪しようとする者への市民の怒りの表明、これ以上の逆流を絶対に許さない、という市民の側の決意の年頭所感でもあるのです。
こうした時期だからこそ気をつけなければならないことがあります。
《決して民主党主導の候補者選びであってはならないこと》
同じように、
《決して共産党主導の候補者選びであってはならないこと》
同じように、
《決して○○党主導の候補者選びであってはならないこと》
しかし、政党と協働した市民主導の「統一候補」の実現を模索しましょう!
そのために知恵を出し合いましょう!
《参考》
●「亥年現象」(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A5%E5%B9%B4%E7%8F%BE%E8%B1%A1
●「リーダーは身内に厳しくあれ」(産経新聞)
http://www.sankei.co.jp/shakai/wadai/061213/wdi061213001.htm
●「暴言しんちゃん絶体絶命!」(きっこの日記)
http://www3.diary.ne.jp/logdisp.cgi?user=338790&log=20061223
●「安倍総理年頭所感」(首相官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/abespeech/2007/01/01syokan.html