原子力災害対策指針(改定原案)に対するパブリックコメント

2月 11th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 21:48:22
under 福島原発事故 , パブリックコメント No Comments 

原子力災害対策指針(改定原案)に対するパブリックコメントを提出しました。

皆さんもこちらを参考によろしくお願いします。

みんなのパブコメ:?原子力災害対策指針(2/12まで)、?新安全基準(2/28まで): 「避難の権利」ブログ
http://hinan-kenri.cocolog-nifty.com/blog/2013/02/212228-1567.html

原子力災害を防止するための最良の方法は原子炉を廃炉にすることです。準備段階の行動計画(8ページ)に廃炉を盛り込んでください。

緊急事態区分の判断は原子力事業者が行うとしていますが(11ページ)、これでは甘い事態区分の判断を招いてしまいます。第三者が判断すべきです。

12ページについて、EAL(緊急時活動レベル)の詳細は今後に検討するのでなく福島原発事故の検証に基づいて直ちに検討すべきだし、「標準的なEALの設定」を原子力事業者に求めるのでなく原子力事業者以外が設定すべきで、「格納容器といった放射性物質の主要な閉じ込め機能」に限定するのでなく放射性物質の全放出ルートを監視すべきです。

大事故が1回だけ起きるシナリオだけでなく、小事故が複数回起きて積算で大事故に匹敵する健康被害が発生するシナリオ、事故によらず通常稼働で健康被害が発生するシナリオについての防災指針を策定してください。

UPZ(緊急時防護措置を準備すべき区域)の目安30キロについては、「主として参照する事故の規模等を踏まえ(中略)継続的に改善していく必要がある」(18ページ)としていることから、福島原発事故以上の規模の大事故シナリオや上記シナリオが参照されない可能性があります。これらのシナリオを踏まえるべきです。

UPZを設定する目的は「確率的影響のリスクを最小限に抑えるため」(18ページ)とされていますが、低線量被ばくによる非がん性疾患リスクの最小化も目的に追加してください。

18ページの「UPZ外においても、プルーム通過時には放射性ヨウ素の吸入による甲状腺被ばく等の影響もあることが想定される」は、プルームによる影響が甲状腺被ばくだけとのイメージを抱かせてしまうので、「実際は、UPZ外においても、福島原発事故でプルームによる被ばくがあった」と変えてください。

放射線被ばくの防護措置の基本的考え方(7ページ)を国際放射線防護委員会(ICRP)等の勧告に基づくとしていますが、シーベルトは生体内での実際の線量分布を反映せず、組織・臓器当たりに平均化した仮想的吸収線量でしかなく、ICRPのリスクモデルは非がん性疾患や年齢の違いによる放射線感受性を無視しており、ICRP勧告では内部被ばくを適切に考慮した防護ができません。内部被ばくに関する防災指針は、シーベルトではなくベクレル数と健康被害の関係を基に策定してください。

菅前内閣の近藤駿介内閣府原子力委員長が福島原発事故「最悪シナリオ」で250キロの範囲で避難が必要になると推定していたことを考えても、UPZの目安30キロは狭すぎます。

複数あるOIL(運用時介入レベル)のうち、OIL1が20μSv/h(空間放射線量率)で1週間程度内を目途に一時移転となっています。

一般人の被ばく限度は年間1mSv、放射線管理区域の基準は0.6μSv/hであり、20μSv/hは高すぎます。原子力推進機関のIAEA(国際原子力機関)による国際基準よりも国内基準を優先すべきです。

WHO(世界保健機関)がIAEAの研究者も執筆者に加えて、福島原発事故後の日本内外における被ばく線量の評価に関して中間報告書( http://www.who.int/ionizing_radiation/pub_meet/fukushima_dose_assessment/en/index.html )を発表しています。

同報告書46〜47ページの表4によれば、最初の4カ月だけで、福島第一原発から30〜45キロ離れた飯舘村の子ども(10歳)の甲状腺預託等価線量は10〜100mSvと推定され(全員がというわけではない)、その50%が呼吸、30%が地面からの外部被ばくによるとしています(乳児でも甲状腺預託等価線量の推定値は同じですが、40%が呼吸、20%が地面からの外部被ばく)。この100mSvは1時間当たり35μSv/hとなります。

OIL1の20μSv/hは第5 回検討会資料4の「実効線量20mSv/年、胎児等価線量20mSv/子宮内発育期間」に対応しますが、WHO中間報告書ではUPZの目安30キロを超える飯舘村でその5倍の100mSv(甲状腺預託等価線量)の可能性があるとしていることからしても、UPZの外側にPPA(プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域)を設けるとはいえ、UPZの目安30キロは狭すぎます。しかもそのPPAの詳細が今後の検討課題とあっては、実効的な防災指針となりません。

「確定的影響」(11ページ)はたいてい、高線量による非がん性疾患リスクを意味します。低線量被ばくによる非がん性疾患リスクを考慮してください。

パブコメ期間を延長し、被災者の意見を取り入れ、パブコメを指針に反映させてください。

太田光征

11/14(水)東京を変えるキックオフ集会 宇都宮けんじさんとともに人にやさしい東京を!@なかのZERO 大ホール

11月 13th, 2012 Posted by MITSU_OHTA @ 18:30:24
under 福島原発事故 , 2012年東京都知事選挙 No Comments 

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□■□■  東京を変えるキックオフ集会   □■□■
■□■ 宇都宮けんじさんとともに人にやさしい東京を! □■□
□■   11.14(水)19:00〜なかのZERO        □■
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━□

宇都宮さんは、多重債務問題をはじめとして、弁護士として貧困問題に長くかかわってきました。リーマン・ショックのあった2008年暮れから翌年にかけておこなわれた「年越し派遣村」では名誉村長をつとめました。その後、完全無派閥の弁護士としては初めて日弁連会長となり、人権擁護活動や、東日本大震災と原発事故の被災者・被害者支援などに積極的に取り組んできました。

都民みんなの声を集めて、宇都宮さんとともに、「人にやさしい東京」をつくっていきましょう!

◆東京を変える4つの柱◆
1 原発のない社会へ――東京から脱原発政策を進めます。
2 誰もが人らしく生きられるまち、東京をつくります。
3 子どもたちのための教育を再建します。
4 憲法のいきる東京をめざします。

★日時:11月14日(水)19:00 (開場18:30)

★会場:なかのZERO 大ホール
    中野区中野2-9-7
    ※JR・東京メトロ「中野」駅 南口徒歩7分
    http://www.nicesnet.jp/access/zero.html

★出演:宇都宮けんじ

★応援出演予定者
雨宮処凜(作家)、松元ヒロ(コメディアン)ほか多数。

★集会の日時が迫っています。
1000名以上が入れる会場を埋めつくしましょう。
呼びかけの輪を広げてください。
メールだけでなく、電話などで声をかけあっていらして、ご家族・ご友人などとご一緒にいらしてください。

★主催・問い合わせ先
人にやさしい東京をつくる会
東京都中央区銀座6-12-15 COI銀座612ビル 7F階東京市民法律事務所内
TEL.03-3571-6051
携帯電話 080-6724-6746
http://utsunomiyakenji.com
twitter:@utsunomiyakenji

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以上、転載

太田光征

放射性物質汚染対処特措法施行規則の改正案(廃棄物管理基準の緩和)に対するパブリックコメント

10月 4th, 2012 Posted by MITSU_OHTA @ 0:06:53
under 福島原発事故 , パブリックコメント No Comments 

環境省 報道発表資料−平成24年9月4日−放射性物質汚染対処特措法施行規則第二十八条、第三十条及び第三十一条の一部を改正する省令案に対する意見の募集(パブリックコメント)について(お知らせ)
http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=15654

環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課御中

「放射性物質汚染対処特措法施行規則第二十八条、第三十条及び第三十一条の一部を改正する省令案に対する意見」

[1] 氏名  太田光征
[2] 住所
[3] メールアドレス otasa@nifty.com
[4] 意見

1.背景?の「事故由来放射性物質(セシウム134・137)の放射能濃度の合計が8,000Bq/kg 以下の廃棄物については、通常行われている処理方法によって、周辺住民、作業者のいずれにとっても安全に処理することが可能であると考えられる」について
(意見の要約)8000Bq/kgという基準に合理的根拠がない。
(理由および根拠)原子炉等規制法に基づくクリアランスレベルは100Bq/kgであり、同法案が議論されていた当時は10Bq/kgにすべきとの見解もあったくらいで、少なくとも100Bq/kgを超える廃棄物は厳重に管理しなければならないとされているのであるから、事故由来放射性廃棄物について100Bq/kgを超える基準を設定すべき根拠はない。

2.要件見直しの考え方(案)?および?の「事故由来放射性物質の放射能濃度が6,400Bq/kg を超える廃棄物が排出されておらず、事故由来放射性物質により一定程度に汚染された廃棄物の多量排出が今後見込まれないと考えられる」について
(意見の要約)「6,400Bq/kg以下」「多量排出が今後見込まれない」の両条件が成立しても放射性物質の環境動態は不明であるから、両条件をもって要件の見直しはできない。
(理由および根拠)6,400Bq/kg以下の廃棄物が少量ずつでも、長年にわたって集積すれば大量になり、その大量になった廃棄物の環境動態が不明であるから、「6,400Bq/kg以下」「多量排出が今後見込まれない」の両条件が同時に満たされるとしても、基準緩和をしてよい理由にならない。

2ページ脚注「天日乾燥は機械による脱水・乾燥に比べて乾燥の期間が長く、昨年生じた汚泥が放射性物質汚染対処特措法施行規則施行後も乾燥汚泥として排出されているためと考えられる」について
(意見の要約)この推定は信頼できず、これに基づく要件見直しも同様。
(理由および根拠)学校プールを昨年除染しても、今年測定すると線量が高くなっている事例が千葉県白井市などで確認されており、砂塵によって放射性物質が供給されたことを意味していると考えられることから、天日乾燥と機械乾燥の違いの原因についてもさらなる検討が必要である。

図2 「特定一廃・特定産廃要件見直し概要」の「廃稲わら」および「廃堆肥」について
(意見の要約)廃稲わらおよび廃堆肥については特別な基準を設けること。
(理由および根拠)廃稲わらおよび廃堆肥などのバイオマスは分解によって容量が激減し、放射性物質濃度が激増するから、バイオマスについての廃棄物基準と無機物についての廃棄物基準が同じでよいはずはなく、バイオマス分解後の放射性物質濃度と環境挙動を考慮しなければならない。

図2の「汚泥」「除染廃棄物」について
(意見の要約)「汚泥」の主成分は土壌であると推定され、同じく土壌を主成分とする「除染廃棄物」と同様に扱うのが合理的。
(理由および根拠)同上。

3ページ脚注および3.その他?の 「公共下水道及び流域下水道の流動床炉から生ずるばいじんについては、溶出率が極めて低いとの知見」について
(意見の要約)同知見は信頼できず、同知見に基づく要件見直しも同様。
(理由および根拠)同知見は極めて限られた時間内での物質挙動に関するものであり、長期間にわたって多様な物質と混合した状態での挙動に関しては不明である。

4.今後の予定の「平成24年10月頃を目途に公布し、速やかに施行する予定」について
(意見の要約)十分な知見が得られるまで、要件の緩和は行わないこと。
(理由および根拠)上述した通り。

脱原発選挙の論点

8月 22nd, 2012 Posted by MITSU_OHTA @ 1:24:41
under 選挙制度 , 福島原発事故 No Comments 

(1)福島原発事故の震源

過疎地であれば原発を建ててもよいとする差別政治――規制組織による過酷事故対策の不在は矮小化(過疎地への立地が事故対策)。沖縄に米軍基地を押し付けてきた差別と通底。自民は旧新憲法草案で95条を削除。95条とは、国会による自治体差別立法を抑止するため、自治体を対象とする法案の成立条件として、当該自治体における住民投票を義務付けたもの。差別政治が政治潮流。

(2)3.11後の現状

差別政治の責任追及は不問(自民は頭を高くして民主を批判)
原発事故 → 脱原発=単なる一政策課題の転換に矮小化

(3)3.11後の視座

脱原発=脱差別・民主主義の政治思潮・目標設定 → 政党間の本質的差異の顕在化

「福島原発事故の被害者が心から脱原発少数政党に投じる1票の価値を現在よりさらに減じてしまう比例区定数の削減」が、3.11後の通常国会で早々に改めて民主党から宣言。主権者の基幹的な権利を切り崩し、2重の差別を押し付けようとしながら、「被災者の救援」。一体、被災者・国民はこうした政治から何を恩恵として得られるか。

「脱原発=脱差別・民主主義」政治潮流をめぐる最大の土俵 → 選挙制度改革(政党も市民運動も不戦敗)

膨大な数の主権者に対して1票の価値をまったく認めない差別制度としての小選挙区制

小選挙区制・定数削減に反対 →「脱原発を包括する脱差別・民主主義」「脱原発派議員の最大化」

(4)脱原発選挙アンケート――脱原発だけの質問でよいか?

個別政策レベル(脱原発)の質問 → 議員は主権者の手をすり抜けてしまうので、脱差別・民主主義の土俵に引きずり込む

現状、原発即廃止などいないから、厳密な「再稼働反対」議員はいない → 種々の質問で脱原発度をグレード分け

・原子力基本法の目的「原子力の推進」「安全保障に資すること」
・山下俊一体制、「学会許可なしの健康影響調査をするな」文科省・厚生労働省通達
・再稼働を縛る方向での規制委員会設置法の改正
・第2期国会事故調で国会議員の責任
・脱原発の足を引っ張るISDS条項付きのTPP

太田光征

エジプトの小選挙区比例代表並立制は違憲!

6月 15th, 2012 Posted by MITSU_OHTA @ 21:13:42
under メディア , 選挙制度 , 福島原発事故 No Comments 

日本の国会では6月15日、原発廃炉も決めていない段階で、「原発内の専門的知見が必要な判断」を行う権限を政治家から奪い、廃炉40年を覆す意図を明確にした原子力規制委員会法=原発温存委員会法が衆院を通過した。

一方、エジプトでは、「軍部によるクーデター」だと非難する声もあるが、日本と同じ小選挙区比例代表並立制は無所属が比例区に立候補できず機会の平等に反して違憲だとする憲法裁判所の判決で、民主主義的健全性を示している。

日本のメディアは、例によって重要法案にそっぽを向けて捕物帳や芸能ネタ、今回はオウム某の逮捕をクローズアップし、エジプト憲法裁判所の判決も「混乱」という見方しか提供できない。

6.15再稼働抗議「危険な原発やめてくれ!」官邸前で怒り爆発!
http://www.youtube.com/watch?v=iepmVN2YKww

テレビは今回、原子力規制委員会法の審議を中継すべきだったし、活字媒体も「エジプト憲法裁判所による小選挙区比例代表並立制の違憲判決は、日本における1票格差是正と選挙制度の論議に影響を与えそうだ」くらい書くべきだろう。

1票格差の是正といって、民主党支持者ないし自民党支持者としての有権者が選出する議員の選挙区が、鳥取や島根から神奈川や千葉に変わるだけの選挙区間1票格差の是正に、何の意味があるか。格差・差別の本体を放っておいて。国会の論議がまずおかしいが、それを追求しないメディアもおかしい。

それにしても、脱原発政党・社民党の重野安正幹事長が、小選挙区比例代表連用制を条件に無所属に対する差別を拡大する「0増5減」を認めるとは。原発、沖縄米軍基地、小選挙区比例代表並立制…すべての根っこにあるのが差別で、これらの突破口が脱差別だというのに。でなければ脱原発などは単なる一政策課題の選択問題に矮小化され、政治潮流の変革につながらない。

社民は「0増5減」を認めるべきでない
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/258503915.html

日本より人口の少ないエジプトの人民議会の定数は508であるのに対し、日本の衆議院の定数は480しかない。日本では国会の定数削減でなく、エジプトのように格差・差別をなくす選挙制度改正が必要なのである。
 
 
太田光征
 
 
時事ドットコム:原子力規制委法案、衆院通過=今国会で成立の見込み
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2012061500047
「原発内の専門的知見が必要な判断は規制委が行い、首相は覆せない。」

「廃炉40年」に見直し規定…民自公が修正合意
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20120613-OYT1T00905.htm

エジプト議会 再選挙の可能性 NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120615/k10015842511000.html
「去年11月からことし1月にかけて行われたエジプトの議会選挙を巡っては、無所属の候補者が小選挙区でしか立候補できないのに対し、政党に所属する候補者は比例代表と小選挙区の両方に立候補でき、不公平だという申し立てがありました。」
「これについて、エジプトの憲法裁判所は14日、機会の平等に反し、違憲だという判断を下しました。」
「議会が解散される可能性が出てきたことに、議会を権力基盤としてきたムスリム同胞団が激しく反発することは必至で、投票が迫った大統領選挙の行方にも影響を与えそうです。」

東京新聞:エジプト国会 選挙やり直しの可能性 憲法裁判所が違憲判断
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2012061502000102.html
「大統領選の決選投票を十六〜十七日に控え、民政移管の工程に混乱が生じることになる。」

エジプト憲法裁、議会選を一部無効と判断
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1405X_U2A610C1000000/
「再選挙を実施すれば同国の内政は一層混乱しそうだ。」

エジプト憲法裁、議会に「無効」判断 選挙違反を指摘
http://www.afpbb.com/article/politics/2884208/9117473?ctm_campaign=txt_topics
「国内の活動家や政治家らは、憲法裁判所の判断を軍部による「クーデター」だと非難している。」

大飯原発3、4号機の再稼働はできない

5月 22nd, 2012 Posted by MITSU_OHTA @ 14:01:18
under 福島原発事故 1 Comment 

福井県知事 西川一誠様
福井県原子力安全専門委員会委員の皆さま

[要旨]
・原発の通常稼働による健康被害を「安全性」論議に含めるべき
・福島原発事故の検証では、地震の影響(津波襲来前の放射線モニタリングポストの警報など)が未解明
・オール電化をいまだに進め、原発の再稼働は需給バランスに関係ないと明言する不誠実な関電と「安全性」論議は不可能

原発再稼働のことで日々悩まれていることと思います。

過酷事故が起こらなければ原発は安全だという前提で原発再稼働論議が進められていますが、私は違和感を覚えます。

15カ国の核労働者40万人以上を対象にした大規模な疫学調査で過剰死亡リスクが認められているし、米国の核施設周囲で乳がん発生率が上昇していることをJM・グールドが綿密な疫学調査で見いだしています。さらに、米国で8基の原発が閉鎖された後、各原発の風下ないし原発から64キロメートル内で地元産ミルク中ストロンチウム90濃度と乳児死亡率が急減したことをJJ・マンガーノらが実証しています。

低線量放射線による健康影響に関しては、こちらもご参照ください。

[仮称]松戸市放射能対策総合計画(案) に対する意見
http://2011shinsaichiba.seesaa.net/article/266897022.html

西日本は福島原発事故の影響をあまり受けていないため、原発の全基停止をこのまま維持すれば、健康被害が減少することが期待されます。

「過酷事故が起こらなければ原発は安全」という前提で原発再稼働を認めるとしても、福島原発事故の検証がまったくできていません。

福島原発事故では津波が来る前に、1号機から約1500m 離れたモニタリングポストMP3で警報が鳴り、1号機では15:37に全交流電源を喪失して約2時間後の17:50に、建屋入口で検出限界を超えるほどの放射能、「シューシュー音」が確認されています。

地震による配管損傷(破断)でIC(非常用復水器)が機能せず、炉心溶融へ至った可能性
http://www.liveinpeace925.com/nuclear/fukushima1_1_ic111029.htm

これらはすべて地震の揺れによる影響であると考えられますが、政府も国会も東電も原因を明らかにしていません。いくら電源を確保したところで、冷却系配管が破壊されれば、メルトダウン事故に至ります。福島原発事故の検証で一番重要な部分が欠落しているのです。

関電には誠実さがありません。東電でさえ緊急設置電源として221万kWを確保しましたが、関電はわずかに2万kWだけです。

【関電】準備してれば足りていた。わざと停電を長引かせることも!? (テレ朝モーニングバード、5月17日)
http://www.youtube.com/watch?v=RVBAUWGt9NM

さすがに東電は福島原発事故の後でオール電化の新規営業を中止しましたが、関電はいまだに続けています。

関西電力:オール電化住宅なお促進(毎日新聞、2012年05月05日)
http://mainichi.jp/select/news/20120505k0000e020162000c.html

また関電は、原発の再稼働は需給バランスに関係ない(経営のため)と明言しています。環境エネルギー政策研究所の飯田哲也氏は、中部・北陸・中国電力は猛暑でも電力供給力に900万kW、つまり原発9基分の余剰が生じるとみています。どうやったら関電管内で停電が起きるというのでしょうか。

電気が足りないから再稼働するのではない。関電が明言(テレ朝モーニングバード、5月3日)
http://www.youtube.com/watch?v=mXoeCl5zW9c

日本でまた原発事故を起こせば、日本に対する信用は完全に地に落ちます。「電気が足りなくなる夏季限定の再稼働」ではいつまで経っても変わらないでしょう。原発を安定的に稼働させるための方便です。

原発事故を起こした側の国や電力会社が原発の再稼働を主導することは非常識です。ドイツのメルケルは福島原発事故後に倫理委員会を立ち上げて原発全廃を決めました。

原発がなければ経済が成り立たないという主張は、エネルギー量にして石油より少ないウランが枯渇すれば経済が成り立たなくなるという主張と同じで、真に受けるわけにはいきません。

独ルブミンの原発跡地:風力発電設備企業などが進出し、寂れた町は少しずつ立ち直っていった
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/268717602.html
電力会社を追い出した町(NHK「時任三郎 エネルギーの旅」、2012年4月30日)
http://www.youtube.com/watch?v=8WknCBjM0fw

電力需給見通しをコロコロ変える不誠実な関電や、まともな原発事故検証もできない政府と原発の再稼働を議論できるでしょうか。まずは市民と向き合っていただきたいと思います。

2012年5月22日

太田光征

NHKは選挙制度・定数削減、原発事故・再稼働の問題で公平・中立・多様な情報の提供を

5月 7th, 2012 Posted by MITSU_OHTA @ 21:23:18
under メディア , 選挙制度 , 福島原発事故 No Comments 

NHK御中

いつも優れた番組の制作ありがとうございます。本日は選挙制度・原発事故に関連した貴局の番組・報道について意見を述べます。

貴局は2012年4月30日に「双方向解説 そこが知りたい!『どうなる消費税・一体改革の行方は』」を放映されました。

NHK双方向解説が「議員定数削減」に反対する意見を報道せず
http://alcyone-sapporo.blogspot.jp/2012/04/nhk_30.html

上記ブログでも明らかにされているように、私も知るある方が国会議員の定数削減に反対する意見を出したものの、賛成意見のみが番組で紹介されました。このような番組運営は公平・中立・多様性を要請する放送法に反しています。

安達宜正解説委員による解説も、少数政党に不利に働く不公平な説明と言えます。

ここに注目! 「通常国会あす召集・焦点は」 | おはよう日本 「ここに注目!」 | 解説委員室ブログ:NHK(2012年01月23日)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/300/107162.html

「具体化するかどうかはこれからですが、いまの小選挙区比例代表並立制から、連用制に改めることです。簡単に言いますと、比例の選出方法を改めて、小選挙区で得た議席の少ない政党に優先的に議席を配分するという制度です。」

この説明は小選挙区比例代表連用制の本質を誤解させかねません。小選挙区比例代表連用制は、比例区の得票数を基に、議席配分を全体として比例代表制による結果に近づけるようにしたものです。考え方が小選挙区比例代表並立制とは完全に違うもので、少数政党だけを優遇することが狙いではありません。

大政党は小選挙区における議席占有率が得票率を上回る場合が多く、小選挙区では大政党に「優先的」に議席が配分されるので、小選挙区比例代表連用制の比例区では小選挙区で得た議席を比例区で得たものと見なし、大政党に対する過剰な議席配分を修正します。

そのため、小選挙区比例代表連用制における比例区の議席配分では、例えば小選挙区で100議席を獲得した大政党Aは101、102、103…で得票数を割っていき、小選挙区で議席数0の少数政党Bは1、2、3…で得票数を割っていくという修正ドント式を採用するのです(A党が101議席を獲得するとして1議席当たりに要する得票数と、B党が1議席を獲得するとして1議席当たりに要する得票数を比較し、1議席当たりに要する得票数の大きい方の政党に議席を配分する。比例区定数の議席が配分されるまでこうした計算を続ける)。

しかし、小選挙区比例代表連用制でも大政党に有利であることに変わりはありません。

小選挙区比例代表連用制
http://kaze.fm/wordpress/?p=346

次に、太田真嗣解説委員による解説を取り上げます。

時論公論「どうする一票の格差・選挙制度」 | 時論公論 | 解説委員室ブログ:NHK(2011年10月25日)
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/99270.html

「言うまでもなく、憲法が要請する『投票価値の平等』は、民主主義の基本にかかわるもので、最高裁の判決を踏まえ、一日も早く、格差を解消することは政治の務めです。しかし、政治への信頼が問われている今、定数削減の問題や、選挙制度そのものをめぐる議論も避けて通れないのは明らかです。」

前半部分は正しいと思いますが、小選挙区制による選挙区間1票の格差を問題とするなら、小選挙区制において生票と死票を投じる主権者の間で生じる格差をどう評価するのか、格差解消の優先度はどちらが高いのかについても、解説していただきたいものです。小選挙区Aの主権者1万人が議員1人を当選させることができる一方で、小選挙区Bの主権者1万人すべての票が死票になるような事態をもたらすのが小選挙区制であり、こちらの格差の方がはるかに問題です。

また、政治に対する信頼と定数削減の関連を当然視する見解は納得できません。公共放送による解説であれば、放送法で規定されているように、多様な論点の提示が求められます。政治的多数派の主張や国民多数の見解だけを紹介すればよいというわけにはいきません。

現在の定数削減論は大政党が主導し、少数政党を国会から排除する方向のものであり、国会活動のほとんどに責任を持つ大政党が身を切ることなく生き残り、少数政党が排除されることで政治に対する信頼性が回復されるとする論は成り立ちません。また、定数が削減されても新人議員の立候補者数を削減すればよいだけなので、国民に信頼されていないとされる現役議員の身を切ること、それによって政治に対する信頼を回復するなどということも、ほとんどあり得ません。

福島原発事故に関する番組でもまったく同様の問題があります。

2011年10月22日に「“食の安全”をどう取り戻すか」と題する市民討論会がNHKスペシャルとして実施されました。広瀬隆『第二のフクシマ、日本滅亡』(朝日選書、211ページ)によれば、「その後、私の知人たちが、ベクレル表示に要する費用は東京電力が負担するべきだ、という意見を視聴者として送っていたことも分かった。それをNHKは一切紹介しなかったのである。」

ちなみに、西日本新聞の社説なども、同様に不公平なものになっています。

衆院選挙制度 定数削減は国民の要請だ  西日本新聞2012年1月19日: 社説
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/282775
「公明党や社民党が少数政党に議席配分が有利な比例代表の連用制や併用制を主張し、みんなの党や共産党が全議席比例代表選挙の導入を求めているのも、議席を失いたくないからだ。」

西日本新聞よ、貴紙は民主のメディア支部かね 1 バランスを欠く選挙制度(議席削減)の社説 | 児玉昌己 研究室
http://masami-kodama.jugem.jp/?eid=3053
「民主は比例制に換えれば、即座に100名以上の議席を失う。同様に、それが怖いからだ、とどうして社説氏は書かないのかね。」

もちろん、「定数削減は国民の要請だ」などと単純に断じることはできません。米軍基地の沖縄への押し付け、原発の地方への押し付けを多くの国民が要請したとしても認められないのと同様に、主権者の主権を不平等に切り崩すような選挙制度改定・定数削減は、単純な多数決で決定することができないからです。

現在、日本の原発は全基が停止しています。原発再稼働を考えるにあたっての最大の論点は(低線量)被ばくによる健康被害であると思いますが、原発の再稼働をめぐる攻防では電力の需給関係が重要な論点の1つになっています。

原発が停止した場合の電力需給がどうなるのかについて、メディアはもっぱら電力会社や政府が発表した見解をそのまま報道するだけです。この問題について貴局には、原発再稼働に反対する立場の方々の見解も交えて、独自の検証番組を制作・放映していただくようにお願いしたいと思います。

選挙制度・定数削減の問題であれ、原発事故・再稼働の問題であれ、貴局を含むメディアは民主的な決定に資するよう、公平・中立・多様な情報の提供に努めていただきたいと思います。

太田光征
http://otasa.net/