日本放送協会会長 籾井勝人様:1月25日記者会見での発言を謝罪し、NHK会長を辞任することを求めます(3月1日、再要求)

3月 1st, 2014 Posted by MITSU_OHTA @ 14:57:20
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日本放送協会(NHK)会長  籾井 勝人様

1月25日記者会見での発言を謝罪し、NHK会長を辞任することを求めます

 当団体は下記のような要望書をお送りし、2月26日までに回答を求めましたが、未だに返事をいただいておりません。NHKには同趣旨の何万という批判が寄せられているそうですが、改めて同じ内容の要望に対して3月12日必着の回答を求めます。
 新たな問題を指摘するなら、貴殿は就任直後、理事10人に対して日付け空欄の辞表を提出させていたそうですが、これは理事の自由を封じ、理事会の民主的運営を阻害するものです。
 また、貴殿の任免権を持つ経営委員会において再度、発言には注意するよう警告されましたが、同委員会で下記要望書にある発言について間違っていたか、よく読んでもらえば判るはずだと、発言内容を一端は釈明後も肯定する趣旨になっています。これはさらに会長不適格を示すものです。
 貴殿は国会でも、従軍慰安婦などの発言に関して「私の考えを取り消したわけではないが、私が申し上げたことは取り消した」などと不誠実、矛盾した見解で持論を固持しています。ですから一刻も早く公職から退いていただかなくてはなりません。
 衆知の通りNHKは視聴者の受信料で運営されています。それゆえNHKの職員は会長はじめ日本政府に雇われているのではありません。NHKをはじめマスコミは視聴者に事実・真実を伝えるのがその大きな任務です。その任務に反する貴殿の言動を私たちは認めるわけにはいきません。
 潔い返答を求めます。

2014年3月1日

「平和への結集」をめざす市民の風
http://kaze.fm/

(以下は2月14日付の要望書)

日本放送協会(NHK)会長  籾井 勝人様
     
1月25日記者会見での発言を謝罪し、NHK会長を辞任することを求めます

あなたがNHK会長に新任された1月25日の記者会見で、以下のような発言をされました:

1. 慰安婦問題:「(慰安婦は)戦時だからどこの国にもあったことですよね? (個人の見解として)韓国がやっていることで不満なのは、日本だけが強制連行したみたいなことを言っている。補償は日韓条約ですべて解決されている。」

2. 靖国神社参拝問題:「総理が信念で行かれたということで、いいじゃないか。淡々と総理は靖国に参拝されました、でピリオドだろう。」

3. 領土問題と国際放送問題:「領土問題については明確に日本の立場を主張するのは当然。外交もからむので、政府が右ということを左というわけにはいかない。」

4.特定秘密保護法問題:「通っちゃったんで、言ってもしょうがないと思う。」「世間が心配するようなことが政府の目的ということもないのではないか、あまりカッカする必要はないいと思うし、変なことが起きるとは考えにくい。」

                         
(1)慰安婦問題

 被害者女性・加害者日本軍人等の多数の証言、軍事的資料等があっても意図的に無視した安倍首相の「強制はなかった」発言、橋下大阪市長の「慰安婦は必要だった、どの国にもいた」発言等々、意図的とも言える歴史的事実否定を繰り返すことで、歴史を歪曲し、人間・女性の生命・聖性を無視・陵辱・侵害し、あまつさえ加害者に罪はなかったかのように不当な言い訳をし(軍が組織的に募集・徴用したのは日本独特)、謝罪をせず言い逃れをしている。韓国、朝鮮民主主義人民共和国、中国、フィリッピン、東チモール、オランダ等の「性的奴隷状態」化に軍隊により強制させられた被害者の生命・尊厳・権利等を二重にも三重にも侵害しています。あなたも被害者女性の生命・人権・尊厳を無視し、侮辱し、侵害し、関係者全てを新たに傷付けたのです。この事によりあなたは人間の根本的真理・倫理を欠き、知性・感性・品性を欠き、公共放送の長として不適格です。

(2)靖国神社参拝問題

 靖国神社には戦争犯罪人が合祀されており、一国の代表たる総理が参拝することは戦争犯罪人を礼拝して戦争犯罪を否定することになり、また政教分離の原則に違反します。それでなくても問題発言・行動で近隣諸国の反感を買って正常な国交が出来ていないのに、さらに欧米諸国から好戦的・挑戦的態度に対する反感を買い、これら諸国とも関係悪化になり、安倍総理が最友好国とする米国の国務・国防両長官からも懸念が表明され、原爆製造材料になる貸与プルトニウム返還要求などに発展しています。何十億の人間が反対・反感をもち、もちろん国内諸政党も内閣側近も反対したものです。「個人の信条」と「総理の職務」は統一人格として不可分のものであるから、上記全ての問題を引き起こしたのです。あなたはこの事でも真理・倫理を欠いており、公共放送の長として不適格です。

(3)領土問題と国際放送問題

 三権分立の外に第四権力としてメデイアが位置付けられ、しかも「公共」放送としては権力からの独立が求められており、放送法でも明確にNHKに「放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによって、放送による表現の自由を確保すること」を求めています。それにもかかわらず「政府が右ということを左というわけにはいかない」と言うのは時の政権への偏向姿勢を露骨に示し、常識違反・法律違反の重要発言です。公共放送を時の政権の追従者・代弁者・奴隷としてしまう思想を持ち、それに従って行動するあなたは、公共放送の真理・倫理を否定するもので、その長としては不適格です。

(4)特定秘密保護法問題

 真理と倫理は全ての者に要求される義務・権利であり、これらを秘密にすることは虚偽・不道徳であり(例え権力者でも)一部人間の占有とすべきではありません。権力者が虚偽・不道徳を秘密にして権力を保持・拡大し、専横・戦争などに走って来た事は歴史上も現在も枚挙にいとまが無く、諜報・投獄・粛清・独裁・汚職・破壊等、目の当たりにするところです。真理・倫理の情報を最も重んじ、秘密・虚偽・不正・不道徳を排除する上で最大の任務をもつメデイア、しかも公共放送の長たる者が過去の戦争突入の重要な手段となった「治安維持法」に比定され、非常に多くの国民から反対されている「特定秘密保護法」を「通ったから仕方がない」と言うのは、公共放送の本来の任務を怠り、権力に屈して公共放送の真理・倫理を否定するもので、あなたはその長として不適格です。

(5)「私的発言」問題

 あなたは公共放送の責任者としての記者会見での発言を、マスコミ・海外政府等の大反響のため、後日予算委員会で「個人意見」とか、「(従軍慰安婦発言を)私的な発言」などと釈明しました。不可分の統一人格として「私的」と「公的」を分けることはできません。分けられるとの思考・弁明は自己弁護・詭弁であり、(内面的には二重人格であり、外面的言い訳に過ぎず)、外から見れば同一人物の発言・行動です。「公的」職務遂行と「私的」意見・信条・行動が異なり、後者を優先させたい場合は前者を放棄すべきです。しかも記者会見では記者の質問に「行って調べてごらんなさいよ、(韓国だけでなく)ヨーロッパはどこでもあったでしょう、どうですか? 日本だけがやっていたように言われて…」とまくしたてるなど、「私的」意見に固執しているのであり、「公的」な公共放送NHKの長として、あなたは真理・倫理に違反して不適格です。

(6)公共放送視聴料問題

 上記に対してあなたの明確な謝罪と、NHK会長職の辞任を求めます。私たちは「独立・自由・真理・倫理を持ち、真に公共報道の役割を担っているNHK」を支持し、受信料を払っているのであり、それを果たさなければ支持・支払いの根拠・義務はありません。貴職の賢明な判断、文書回答を2月26日必着で求めます。

2014年2月14日

「平和への結集」をめざす市民の風
http://kaze.fm/

メディアは「身切り論」(国会議員定数の削減)から決別を

10月 17th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 11:54:43
under メディア , 選挙制度 [3] Comments 

メディアは「身切り論」(国会議員定数の削減)から決別を

2013年10月17日

朝日新聞御中
毎日新聞御中

 朝日新聞は10月2日、毎日新聞は10月3日に、消費税増税との引き替えで国会議員定数を削減すべきという「身を切る改革」を主張しました。

「身を切る改革」どこへ 定数削減進まず 消費増税決定
http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201310010676.html
選挙制度改革:3党実務協議で民主譲歩 増税控え合意急ぐ
http://mainichi.jp/select/news/20131004k0000m010087000c.html

 毎日新聞は「国民に負担増を求める消費税率8%への引き上げを来春に控え、国会議員の『身を切る改革』は急務」と言いきり、朝日新聞はそこまで直接的ではないものの、「身を切る改革」を政党に迫っていることが明らかです。

 なぜメディアが「身を切る改革」にこだわるのか、<何の>改革を主張しているのか、分かりません。国会議員(というより政党)には身切りを迫りながら、メディアは消費税増税の対象から外してもらいたいというのだから、なおさらです。メディアは民主主義に欠かせないからと主張されたいなら、国会議員は何だというのでしょうか。メディアの皆さまは相当の高給取りという点でも、国会議員と変わりません。

 「身切り論」、とりわけ消費税増税との抱き合わせでの「身切り論」には大きな問題があります。当団体でも再三にわたって政党などにこの問題を訴えてきました。

民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書(実行委員会による)
http://kaze.fm/wordpress/?p=469
選挙権関連の格差は「定数配分の格差」だけではありません〜「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大する〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=468
「国民負担と引き替えの国会議員定数削減」「有権者の権利を縛るネット選挙法案」で各党議員に要望
http://kaze.fm/wordpress/?p=445

 朝日新聞は(消費税増税を前提に)「そもそも定数削減は、与野党のトップが自ら言い出した約束だった」と述べていますが、民意の支持を得ていない消費税増税を前提とする定数削減という約束も筋違いなら、「与野党のトップ」だけの勝手な約束に国民が縛られるのも筋違いというものです。

 オスプレイの押し付け、原発政策の維持という押し付け、生活保護費の切り下げという押し付けなど、政府が国民に強いる「国民負担」は数多くありながら、なぜか消費税増税という「国民負担」だけに限って身切り論が持ち出されます。

 消費税増税という国民負担と引き替えで国会議員が身を切るべきだ主張したいのなら、政党助成金の廃止や議員活動費に回される分以外の生活費としての議員歳費の減額などを主張すべきでしょう。毎年、引退議員が出るのであり、新人議員の立候補者数を減らせば現役議員の椅子が減ることはないのだから、定数を減らしたところで議員が身を切ることなどできないのです。

 何より問題なのは、定数削減が、国民の身を切ること、民意を削ぐこと、国民主権を切り縮めること――そのものだということです。定数削減により民意を削ぐことで、民意を無視した政治が行われ、国民に不利益な施策が押し付けられる可能性が考慮されていません。言い換えれば、民主主義の効用というものが無視されているに等しいのです。

 あたかも定数削減が国民にとって有益であるかのごとくメディアが主張することは、まったく考えられません。

 身切り論から決別されるとともに、以前からお願いしていますように、上記要望書を基にした懇談の機会を設けていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

「平和への結集」をめざす市民の風
http://kaze.fm/

シリア情勢をめぐる報道についての要望書

9月 4th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 11:27:23
under メディア , シリア No Comments 

9月3日、シリア情勢をめぐる報道について、「平和への結集」をめざす市民の風として朝日新聞と毎日新聞に要望に伺いました。以下は毎日新聞あての要望書です。

毎日新聞外信部御中

2013年9月3日

 シリア情勢をめぐる報道について面会で要望をさせていただきたいので、ご検討をよろしくお願いします。

 米国によるシリア軍事介入の「開戦日時」(2日付毎日一面トップ「シリア攻撃 9日以降」)を何の躊躇・批判もなくメディアが「報道」する神経はいかがなものでしょうか。米国議会が9日以降に米大統領の提案を審議すると報じれば済むはずです。米国の軍事介入を当然と認識しているのではありませんか。

 朝日新聞と毎日新聞は奇しくも米国によるシリア攻撃に関して「その時日本は」という文句を含む見出しの記事を書いています。米国の軍事介入を当然の前提として、単に米政府の開戦プロセスをひたすら解説し、「その時」の日本の対応を日本政府になり代わって解説するというもので、攻撃を受けるシリア国民がまったく不在です。「その前に日本」が何をなすべきかについて読者に判断の材料を与える内容になっていません。

 「(仏軍は)単独でアサド政権の化学兵器の使用能力を弱められない」(朝日9月2日付)、「限定攻撃 効果疑問も」(毎日9月2日付)などの記事も、西側によるシリアへの軍事介入が当然で、アサド政権の化学兵器のみが問題であると認識し、限定攻撃では不十分であると米国に指南しているかのようです。

 シリアにおける8月21日の「化学兵器攻撃」疑惑について、AP通信などに記事を書いてきたベテラン中東記者のデイル・ガヴラク氏が、ダマスカス郊外ゴウタ地区の住民や、反政府軍兵士とその家族などに数多くインタビューしたところ、反政府軍兵士が化学兵器と知らずに誤爆させたとの証言を引き出しています。

「シリア化学兵器攻撃」は反政府軍による誤爆で、化学兵器はサウジが提供――中東専門記者が現地住民にインタビュー
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/373646407.html

 CNNは2012年12月9日付の記事「米国が貯蔵化学兵器の確保でシリア反乱軍の訓練を支援」で、米国と欧州の同盟国がヨルダンとトルコで軍事請負会社を使って、シリアにおける貯蔵化学兵器の確保方法について、シリア反乱軍を訓練していると伝えています。

Sources: U.S. helping underwrite Syrian rebel training on securing chemical weapons – CNN Security Clearance - CNN.com Blogs
http://security.blogs.cnn.com/2012/12/09/sources-defense-contractors-training-syrian-rebels-in-chemical-weapons/

 アサド政権だけが化学兵器攻撃の責任を持つわけでないことを示す報道があるにもかかわらず、日本のメディアは一切伝えません。メディアは少なくとも、米国による軍事介入の前に、ガヴラク氏が引き出した証言が真実であるのかどうか、検証する責務が生じたといえます。(国連調査団の目的が化学兵器攻撃の実行者を特定することでないことはご存知でしょう。)

 メディアは米国によるシリアへの軍事介入が「限定的」でアサド政権の転覆が目的ではなく、政権による化学兵器使用能力を削ぐことが目的であるとする米国の発表をそのまま伝えています。

 しかし、8月29日付ガーディアンによれば、シリアのジハード集団(Ahrar Alsham Islamic Brigade)は当然にも、西側による空爆をアサド軍に対する攻撃に利用すると語っています。

Syrian rebels plan wave of attacks during western strikes | World news | The Guardian
http://www.theguardian.com/world/2013/aug/29/syrian-jihadi-fighters-attacks

 西側による軍事介入は明らかに政府軍の空軍能力を狙ったものであり、それが限定的であれ何であれ、効果は持続し、反政府軍を持続的に利するものです。

 表立った軍事介入が限定的であれ何であれ、西側による反政府軍への軍事支援は持続的に行われていますが、日本のメディアはこの点にほとんど触れません。

 日本のメディアがよく引用するニューヨーク・タイムズほかが数多くこの種の記事を書いていますが、日本のメディアは引用しないのです。海外での調査体制に問題があるとしても、海外メディアを引用することはできるはずです。

「CIAの支援によりシリア反政府軍への武器空輸が拡大」
Arms Airlift to Syrian Rebels Expands, With C.I.A. Aid - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2013/03/25/world/middleeast/arms-airlift-to-syrian-rebels-expands-with-cia-aid.html?pagewanted=all&_r=1&

「米国および欧州がザグレブ経由でのシリア反乱軍に対する武器の大規模空輸に関与」
US and Europe in ‘major airlift of arms to Syrian rebels through Zagreb’ - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/9918785/US-and-Europe-in-major-airlift-of-arms-to-Syrian-rebels-through-Zagreb.html

 英国が過去2年間にわたってシリアに化学兵器の原料となるフッ化ナトリウムを輸出してきたことも問題にされなければなりません。(英国議会報告書、2013年7月18日付フィガロ)

Londres vend des armes à la Syrie
http://www.lefigaro.fr/international/2013/07/18/01003-20130718ARTFIG00482-londres-vend-des-armes-a-la-syrie.php

 また、シリアの首都ダマスカス近郊ジョバルでサリンが使用されたとフランスが公式に認めた6月4日の前に、なぜフランスが抗サリン薬を自由シリア軍が支配する対トルコ国境のバブアルハワに輸送したのかも、追求されてしかるべきでしょう。(2013年6月24日付フィガロ)

Un camion de médicaments français contre le gaz sarin
http://www.lefigaro.fr/international/2013/06/24/01003-20130624ARTFIG00573-un-camion-de-medicaments-francais-contre-le-gaz-sarin.php

 さらに、8月28日付フィガロ・ブログが、西側外交筋の話として、米国当局者が国連に対して化学兵器調査団の活動を延長しない方がよい、と伝えたと書いています。この問題もメディアは追求すべきです。

Syrie: les Américains ont demandé à l’ONU de ne pas poursuivre sa mission − De Bagdad à Jérusalem : L’Orient indiscret
http://blog.lefigaro.fr/malbrunot/2013/08/syrie-les-americains-ont-deman.html

 8月29日付ガーディアンは、予定よりも早い国連武器調査団の出国は、米国のサダム・フセイン体制に対する空爆が差し迫っているという西側諜報当局の情報を受けて、10年以上前にイラクから同様に急いで出国したことを想起させる、と書いています。まさにその通りです。

UN orders its inspectors out of Syria in anticipation of strikes | World news | The Guardian
http://www.theguardian.com/world/2013/aug/29/un-inspectors-syria-strikes

 8月27日付ガーディアン記事「シリアに対する攻撃は戦争と殺戮を拡大するだけだろう」で、Seumas Milne氏は明確に軍事介入に反対しています。このような論調が29日の英国議会による軍事介入否決につながったと考えます。日本のメディアに求められるのもまさにこれです。

An attack on Syria will only spread the war and killing | Seumas Milne | Comment is free | The Guardian
http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/aug/27/attack-syria-chemical-weapon-escalate-backlash

 Milne氏は、シリア人権監視団が8月21日の「化学兵器攻撃」による死亡者数を322人とした一方で、エジプト(軍事政権)が2日間で1295人以上を殺害したことを取り上げ、ケリー米国務長官はエジプト軍が民主主義を回復しているとして、オバマは米国が肩入れしないと言明したことを指摘しています。

 米国による軍事介入が恣意的であることを指摘する論調が、日本のメディアではあまり見られません。

 加えてMilne氏は、英国政府による開戦プロセスを解説するのではなく、反政府軍が神経ガスのサリンを使用したことが具体的に強く疑われると国連人権理事会調査官のカルラ・デル・ポンテ氏が指摘し(8月以前の攻撃について)、その後すぐにトルコの保安当局がシリアへ向かっていたアルカイダ系アル・ヌスラからサリンを押収したこと、反政府軍がシリア北東部からイラク国境にかけて数多くのクルド人に対して民族浄化を働いていることを指摘し、読者に判断材料を与えています。

 シリア民衆の独裁体制に対する蜂起が宗派間・地域代理戦争に変質してしまっているというMilne氏の基本的な認識さえ、日本のメディアでは押さえられていないようです。

 「人道に対する犯罪」を罰しないままにしておく訳にはいかないという米国の理屈は成り立ちません。Milne氏も記事の中で取り上げている劣化ウラン弾や白リン弾、枯れ葉剤を使用してきた米国が人道介入を語る資格がないのは明白です。

 サダム時代の方がマシだったと一部が語る現在のイラク。この10年間にイラクで殺された外国部隊の兵士(約4800人)とほぼ同じ人数の市民が毎年、命を奪われています。このような事態を招く「人道介入」などあり得るわけがありませんが、このような指摘も日本のメディアではほとんど見られません。

 シリア情勢をめぐる報道では、海外のメディアと日本のメディアで明らかに落差があり、日本のメディアは本来の使命を果たしているとは思えません。日本政府をして軍事介入への「支持表明」に向かわせる世論作りに貢献しているように見えてしまいます。

 日米政権の意向だけを伝えるのでなく、調査報道にさらに力を割かれ、読者がシリア情勢を理解することでシリアに対する軍事介入の是非を判断できる材料を提供していただきたいと思います。

「平和への結集」をめざす市民の風

公正な報道を求めるオンライン署名 〜衆参のねじれより、民意とのねじれ、二枚舌のねじれの解消を争点に〜

7月 14th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 23:50:58
under メディア , 2013年参議院選挙 No Comments 

メディアがさかんに煽っている「衆参のねじれ解消」は必要ありません。投票日まで残りわずかですが、不公正なメディアに要望書を送る取り組みです。ご賛同と拡散をよろしくお願いします。

署名サイト:http://goo.gl/Wxm3M (http://www.change.org/を利用)

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インターネット・エクスプローラーをお使いの場合、ツール>インターネットオプション>プライバシーの順にクリックし、「すべてのCookieを受け入れる」という設定にしてみてください。

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メディア各位

2013年参議院選挙とその報道も終盤を迎えました。ごくごく3点に絞って、公正な報道を要望しますので、ご返答と実践をお願いします。

(1) 衆議院と参議院のねじれの解消

 脱原発や96条改憲などをめぐって国民の多数意見と国会議員の多数意見が乖離しています。この種のねじれの解消こそが国民主権の政治で最も重要です。
 民意を生かすという基準に背を向けるから「決められない政治」となります。「決められない政治」の理由を衆参のねじれに求めることは、こうした基準をないがしろにして、党利による国会支配を認めることです。
 メディアは衆参のねじれ解消を争点に掲げないでください。

(2) 政党間で不公正な扱い

 ねじれといえば、自由民主党は少なくとも米軍普天間飛行場( http://goo.gl/x4Z2M )、原発( http://p.twipple.jp/vU8×9 )、TPP( http://fb.me/Zrj96Ys6 )という3大政策で、地元選挙対策向けと本部との間で内部に相当のねじれを抱えています。世間では通常、これを二枚舌と言います。
 鳩山由紀夫前首相が同じく普天間飛行場の県外・国外移設をめぐって政権・与党内でねじれを呈したことをもって、「迷走」したとさんざん批判されました。
 そのわりに、選挙民を欺く自民党内のねじれには「二枚舌」などの特別な言葉が用意されるわけでもなく、さして批判されません。
 政党間で不公正な扱いをすることなく、公正な報道をお願いします。

(3) 政府の宣伝

 安倍政権の「アベノミクス」は「3本の矢」(金融緩和・財政出動・成長戦略)と宣伝されていますが、実態経済としての裏付けがない、と指摘されています。
 「アベノミクス」は、F15戦闘機の改修などを含む「緊急経済対策」、生活保護費の切り下げ、倫理なき原発輸出など、安倍政権の経済政策の本質を覆い隠すものです。
 東京新聞は政府用語「アベノミクス」を引用以外に使用しない方針を取っています。他のメディア各社も見習っていただきたいと思います。

賛同者一同
呼び掛け:「平和への結集」をめざす市民の風(http://kaze.fm/)

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賛同者の皆さまへ

 この要望書は7月15日の午前中にメディア各社へファクス送信します。皆さまのお名前やメールアドレスは先方に伝えず、コメントに目を通すように求めます。

 特に参院選の投票日前に公正な報道を促すことが目的なので、15日の正午あたりまでに圧倒的な数の賛同署名が集まることが鍵を握ります。16日一杯まで署名を募り、17日に再度、電話で促します。

 どうぞ、渾身の拡散と賛同署名をよろしくお願いします。

東京新聞は政府用語「アベノミクス」を使用せず

7月 9th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 10:47:14
under メディア , 選挙制度 , 福島原発事故 No Comments 

6月27日、東京新聞政治部の方と3人でお会いし、要望を伝えてきました。

平和への結集ブログ » 民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書
http://kaze.fm/wordpress/?p=469

何党と何党の対決などといった偏った取り上げ方ではなく、各党の主張を公平に紹介する方針を取っている。自社の記事では引用を除いて政府用語「アベノミクス」を使用しないのが自慢ということで、他紙も見習ってもらいたいところです。

東京新聞の世論調査によれば、原発の再稼働に賛成する人の中で一番の理由になっているのが「電力不足」。

東京新聞:6割原発再稼働反対 自民支持層も半数 世論調査:参院選2013(TOKYO Web)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/senkyo/sanin2013/all/CK2013060402000280.html

政府・電力会社発の情報に盛り込まれる「電力の安定供給」という文句。電力不足を想起させるこの文句が世論に大きな影響を与えている可能性があります。読者に誤解を与えない書き方を要望しておきました。

選挙予測の事前報道。これが投票行動に影響を及ぼすかどうかについては、以前から自身のテーマだと話されていましたが、難しいものがあるとの見解。ある選挙予測につながる世論調査が、一方向だけでなく、正逆の両方向で作用する可能性があるので、世論調査があるのにそれを伝えないのもどうかと。学者と組んでの検証活動を要望しておきました。

その後、アポなしで訪問できるということで、「NHKハートプラザ」に出向きましたが、政治部に文書を送るようにとのこと。再度、面談を求めていきます。

太田光征(民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書実行委員会/「平和への結集」をめざす市民の風)

朝日新聞の憲法世論調査(2013年5月2日)

5月 5th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 11:51:27
under メディア , 選挙制度 , 2013年参議院選挙 No Comments 

朝日新聞による憲法世論調査の結果が5月2日付で掲載されました。自民党などが掲げる改憲などの主張がことごとく民意から乖離していることが分かります。以下は抜粋です。

◇ 96改憲(改憲要件3分の2以上から過半数への緩和)、賛成が38%、反対が54%。
◇ 9条改憲、変えるが39%、変えないが52%。
「変える」の理由としては、「日米同盟の強化や東アジア情勢の安定につながるから」が41%、「今の自衛隊の存在を明記すべきだから」が37%、「自衛隊を正式な軍隊にすべきだから」が17%。
◇ 非核3原則、維持すべきが77%、見直すべきが18%。
◇ 武器輸出の拡大、賛成が14%、反対が71%。
◇ 武力行使を伴う国連軍への自衛隊の参加、賛成が34%、反対が58%。
◇ 自衛隊の国防軍化、賛成が31%、反対が62%。
◇ 集団的自衛権、「行使できるようにする」が33%、「行使できない立場を維持する」が56%。
◇ 「1票の格差」(定数配分の格差)が是正されない状態で選ばれた議員が改憲の提案をすること、問題だが54%、問題ではないが38%。

朝日は「入口の96条」「本音の9条は封印」「改憲 手続き論先行」という見出しで、96条改憲が単なる手続きの変更だけ、自民の改憲の狙いが9条だけ、のような印象を与える書き方をしています。

3日から始まった朝日の「憲法はいま 変化の潮流」の「下」でようやく小さく「9条以外にも」という見出しで、自民改憲案が9条だけでないことを指摘していますが、改憲の全体像に迫っているとはいえません。

加えて、「好調アベノミクス」という言い方まで使って、安倍政権の宣伝に寄与しています。

朝日に限らず、新聞が世論調査で取り上げないのが、選挙制度です。選挙だけで政策・法案の成否が決まるわけではないとはいえ、これらに重大な影響を与える選挙制度の在り方を深く追求しません。

いくら原発関連で脱原発派が溜飲を下げるような記事・情報を掲載しても、社説で脱原発を主張しても、民意と選挙結果を大きく乖離させることで政治を大きくゆがめる選挙制度については掘り下げないのです。

毎日新聞も5月1日に「<国会>終盤戦へ 大きな課題は0増5減だけ」という見出しで、個人番号(マイナンバー)法案が成立の見通しなどと書き、いつもの既定路線告知「決まりますよ」です。

国会議員による法案審議や改憲論議に国民が影響を与えることができるよう、それこそ主権者の側からの「変化の潮流」が可能となるようなメディアになっていません。

今回の朝日世論調査の結果についても、詳細な解説は参院選後の8月9日に発行される雑誌に掲載するとのこと。なぜ「選挙前」ではないのか。選挙結果の事前予測はさんざん行うのに。

この調子では、自民改憲案の詳細な批評も、選挙後のことになると懸念しています。

そういうこともあり、国民主権の尊重や参院選前に自民改憲案の全面的な批評を行うことなどを政党とメディアに求める要望書の取り組みを「平和への結集」をめざす市民の風が提案しています。案がこちらにありますので、ご意見をください。

【2月14日初会合】ポスト2012衆院選の国民主権運動の呼び掛け
http://kaze.fm/wordpress/?p=441

太田光征

2012衆院選――結果分析

1月 1st, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 23:08:42
under メディア , 選挙制度 , 2012年衆議院選挙 1 Comment 
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(1) 選挙の体を成していない2012衆院選――小選挙区の死票率56%、自民の比例区得票率28%、主権を毀損し民意と乖離

(2) 主権を毀損し民意と乖離した選挙を鋭く批判しないメディア

(3) メディアによる争点隠し――「イデオロギー」のレッテル貼りで外交・軍事・改憲・教育を生活・経済・景気から切り離す

(4) メディアによる次期参院選の予測と誘導――自民対野党の構図で護憲政党を国会から放逐へ

(5) 生活の党は安倍政権にくみする改憲、集団的自衛権、米軍普天間飛行場、小選挙区制・定数削減などについて態度を明らかにすべき

(6) メディアは小選挙区制の矛盾を指摘しても(定数3の寡占的)中選挙区制止まり、比例代表制には否定的

(7) 選挙区間1票格差(地域代表性格差)だけでなく生票・死票間1票格差や政党間1票格差に目を向けるべき――「0.2票」より「0票」(小選挙区の56%)の方が深刻

(8) 2012衆院選の最大1票格差――小選挙区が日本未来の党の13.83倍、比例区が社民党の4.87倍

(9) 2012衆院選――小選挙区がなく全国1区の比例代表制だったら自民はたったの132議席

(10) 2012衆院選――比例区で未来の票を共産・社民に統合すると3議席増える

(11) 2012衆院選――比例区で共産・未来・社民の票を統合すると10議席増える

(12) 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし、改選定数48)――護憲政党の獲得議席はわずか4議席

(13) 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減あり、改選定数28)――護憲政党の獲得議席はわずか2議席、最大1票格差は「定数削減なし」より拡大

(14) 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし、改選定数48)――共産・未来・社民の票を統合しても1議席しか増えない(統一名簿の必要性?)

(15) 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減あり、改選定数28)――共産・未来・社民の票を統合しても1議席しか増えない(統一名簿の必要性?)

(16) 次期衆院選比例区のシミュレーション(定数が75削減されて105になった場合)――社民は議席をなくし、共産の1票格差は1.58倍から3.88倍に拡大

(17) 選挙区間1票格差(地域代表性格差)が政党間1票格差に有利に働く例――自民は中国地方で支持率が高く、同地域は人口当たりの議員数が多いので、選挙区間1票格差は自民に有利


(1) 選挙の体を成していない2012衆院選――小選挙区の死票率56%、自民の比例区得票率28%、主権を毀損し民意と乖離

2012年衆議院選挙(第46回総選挙)は、自民党・公明党が予算関連法案を人質に衆議院解散を求めて実現したもので、最初から異常だった。

小選挙区での死票は56%、約3730万票(時事、12月17日)にも上った。過半数という膨大な数の主権者の主権が認められていないのだから、選挙の体を成していない。

投票時刻の繰り上げが行われた投票所は全投票所の約30%に当たる1万6000カ所に上った(NHK、12月15日)。投票時間の繰り上げを知らずに投票機会を逃した有権者が多いのではないか。これではボッタクリだ。

自民党の比例区得票率27.62%は2009年に民主党に大敗した時の26.73%とほとんど変わっていない。東京新聞が伝えているように、得票数を投票者数ではなく有権者数で割った絶対得票率でみると、自民党は小選挙区で24・67%、比例区で15・99%に過ぎない。

自民党が支持を回復したわけではない。民主党が今度の選挙で有権者から見放され、その票が多くの党に分散したことで、自民党が小選挙区で漁夫の利を得ただけだ。見かけ上の「圧勝」であり、偽装勝利と言っていい。

「自民の政策を支持」はわずか7%しかない(朝日新聞、12月18日)。国民世論は、脱原発が78%、憲法9条改正反対が52%、集団的自衛権を行使できるよう現行の憲法解釈を変更することに反対が37%(賛成は28%)、憲法改正の条件を緩めることに反対が43%(賛成は41%)、消費税増税に反対が52%(賛成は41%)、公共事業費の増額に反対が53%(賛成は37%)、米軍普天間飛行場の沖縄辺野古への移設に反対が60%以上などとなっているが、選挙結果は真逆となってしまった。「当選議員の3分の1が核武装に前向き」…ふざけるな!

朝日新聞デジタル:世論調査―質問と回答〈12月26、27日実施〉
http://www.asahi.com/politics/update/1227/TKY201212270894.html
本社世論調査:9条改正「反対」52%− 毎日jp(毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20121228k0000m010108000c.html
朝日新聞デジタル:総選挙どう見た
http://www.asahi.com/area/kyoto/articles/MTW1212252700004.html
「辺野古反対」県内9割 全国6割「県外・国外」 - 琉球新報 - 沖縄の新聞、地域のニュース
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-190959-storytopic-1.html
毎日新聞による2012衆院選の分析:当選議員の3分の1が核武装に前向き
http://senkyo.mainichi.jp/news/20121218ddm010010186000c3.html

沖縄では自民公認候補4人が普天間飛行場の県外移設を訴えて戦い、比例当選者を含め全員が当選した。福島で脱原発を掲げていた自民候補も同様だった。これらの議員が党中央の方針に逆らうことはほぼ無理だろうし、そうしたところで何の力もない。

選挙結果と民意は明らかに著しくかけ離れている。何のための選挙か分からない。

一時期、憲法審査会が始動しないことを国民主権の軽視だと批判するおためごかしの議論があった。まったく逆だ。民意とは真逆の議員構成の国会で改憲発議をするなど、国民主権を最高度に侵害する。このような国会で改憲発議をして「自主憲法」を制定しようとすることを恥ずかしく思わないのか。

メディアはこの間、自民・民主・「第3極」ばかりを取り上げ、脱原発では一番確かな共産・社民を無視してきた。選挙前から明らかだったが、少なくとも比例区で脱原発票を共産・社民に統一していれば、確かな脱原発派議員の数は最大化できた。メディアは<護憲政党を排除することで脱原発派議員と護憲派議員の最小化>に貢献しただろう。毎日新聞は12月18日、漫画家に「反対ガンバロー」などと共産・社民の党首・委員長に語らせる絵を描かせ、護憲政党に対するネガティブキャンペーンを続けていくと宣言している。

メディアはまた、自民・公明による「野田首相は嘘つきキャンペーン」に乗って衆院解散・総選挙の実現を後押ししたが、「できるだけ早い時期の脱原発」を公約に掲げた公明党が自民党と「可能な限り原発依存度を減らす」(原発を1基だけ減らすのでもいい)ことで合意し、公約を反故にしても、何ら批判しない。ここでもあからさまな差別がある。

2012年12月30日は新宿で今年最後の訴えをしてきた。来年の通常国会は、小選挙区制の廃止を含む選挙制度改正から始めるべきだ、と。

そもそも、投票所に足を運ぶ段階で投票権が実質的に剥奪されている方々もいる。

福島第一原発収束作業員の方からの投稿
http://ameblo.jp/hiko1956/entry-11439216028.html

主権者の主権を保障しないで政治も何もない。

(2) 主権を毀損し民意と乖離した選挙を鋭く批判しないメディア

今回の選挙結果の本質を分かりやすく目立つ形で報道した全国一般紙がない中で、東京新聞の2012年12月18日付の1面と3面の記事は優れていた。

1面トップ大見出し
東京新聞:小選挙区24% 比例代表15% 自民 民意薄い圧勝
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012121802000130.html
3面トップ大見出し
自民 比例219万票も減  乱立棚ぼた これでも勝てた
小選挙区制 多大な貢献
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2012121802000139.html

本格的な選挙結果分析が掲載された12月18日、他紙は選挙結果をどのように伝えただろうか。

産経新聞は1面の見出し「小選挙区制の“魔力”」で比較大政党の間で議席獲得数が大きく揺れることを強調しているが、自民党の比例区での得票率がわずか28%であることを伝えていない。同党が「他党の追随を許さない」勝利を収めたと同紙は評価するが、民意をまったく無視している。

朝日新聞は1面で「『1強8弱』化の危機〈政権再交代〉」として小選挙区制に触れているが、同制度によって平等な主権が侵害されていることを心配しているわけではなく、二大政党制や多党制など政党政治に対する影響に言及しているだけだ。自民党の比例区得票率については、天声人語で小さく紹介している程度に過ぎない。

日経は7面で自民党の比例区得票率が惨敗の前回並みであることを伝えているが、扱いは大きくない。

毎日新聞は2面で「自公325 比例は前回並み」と見出しに掲げているが、大きくはない。16面で「民意の『揺れ幅』大きく」との見出しを掲げ、あたかも民意が自民党を支持する方向に変化したかのような印象を与えかねない書き方をする一方で、より小さな見出しで「自民 比例票伸びず」と伝えている。どの見出しにも自民の比例区得票率が28%であったことが含まれていない。

読売新聞は19面で自民・民主の2000年選挙以来の比例区得票率をグラフで示しているが、わざわざグラフの軸を斜め(右肩上がり)にしているから、2009年からほぼ横ばいであることが読み取りにくい。しかも2005年の自民「圧勝」時との比較を強調しているだけで、惨敗した2009年と変わらないことが一目で分かりにくい。

同紙「衆院選座談会」では、東工大准教授の谷口尚子氏が得票率と議席率の乖離を指摘し、比例代表併用制などに言及している一方で、経済同友会代表幹事の長谷川閑史氏は「民自公の3党合意という新しい(政策決定)モデルができたわけだし、維新の会や民主党は自公政権に対して是々非々で臨む姿勢なのだから、次期衆院選までは現行制度でよいのではないか。新しい政策決定モデルが定着すれば、今までのような(選挙のたびの民意の)振れが徐々に修正される可能性がある。選挙制度改革は短絡的にやるべきではない。特に(法案再可決が可能な)『3分の2』の議席を活用してやることは避けるべきだ。」と述べている。

この長谷川氏は選挙区間1票格差を批判している人物だ。なのに、どうして小選挙区制による生票・死票間1票格差を問題にしないのだろう。民自公など特定の一部政党による恣意的な政策決定モデルがあるから選挙制度改革を急ぐ必要がない、という認識は考えられない。選挙制度とは平等な主権を保障する制度なのであり、恣意的な政策決定モデルなどに左右されることなく主権者の側にあるのである。

(3) メディアによる争点隠し――「イデオロギー」のレッテル貼りで外交・軍事・改憲・教育を生活・経済・景気から切り離す

メディアは一貫して外交・軍事・改憲・教育などに「イデオロギー」のレッテルを貼って、あたかも私たちの生活・経済・景気に関係ないかのように争点からずらしてきた感がある。当選議員3分の1が核武装に前向きともなれば、税支出の観点からしても、私たちの生活に影響しないわけにはいかない。

自民党政府は民主党政権が「仕分け」で縮減していた道徳副教材「心のノート」の配布を復活させるという。福島原発事故の責任を取ってもいない連中が税金を使って道徳を説く。

自民党はもちろん自衛隊装備の増強を公約している。タダではない。生活保護費から1000億円は削減するが、米軍思いやり予算1881億円は削減しない。

石原慎太郎前都知事による尖閣諸島の購入計画を発端に中国で暴動が起こり、日本企業が膨大な損失を被ったが、メディアはこの問題も取り上げない。

(4) メディアによる次期参院選の予測と誘導――自民対野党の構図で護憲政党を国会から放逐へ

時事通信の試算によれば、来夏の参院選(総議席242議席のうち121議席が改選)では、自民党が31ある1人区すべてを制覇するなどして62議席を獲得し、非改選を含めると自民・公明両党の合計は過半数の127議席を超えるという。

参院選で「ねじれ解消」=自民62、民主17―衆院選得票で試算
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201212/2012122300059

読売も試算で同様の結果を出している。読売は野党が選挙協力した場合も予想していて、維新とみんなが選挙協力すると、定数2で民主を破って6議席を上積みするものの、自民の獲得議席に大きな影響はないという。

数字の上で興味深いのは、共産を除く野党が1人区で候補を一本化すれば野党が1人区で25勝し、自民の議席は37議席に減る。その結果、自公は非改選議席を合わせても過半数に満たない。

もちろん、改憲派野党が選挙協力して自民の議席を減らしても改憲派の数は減らない。護憲派もそれなりにいる民主党の前原誠二氏などは、それを狙っているだろう。脱原発を中途半端に掲げながら自民に勝つという大義を掲げ、維新・みんな・生活の党(旧日本未来の党)などと協力することで、共産・社民などの護憲政党から「護憲+脱原発票」を引きはがし、護憲派議員の放逐を図ると思われる。

メディアもおためごかしに、自民に勝つために野党は一丸となるべきだと、憲法を争点から外した虚構の構図を煽っていくだろう。

自公は再議決に必要な3分の2の議席を衆議院で確保したから、今度の参院選で脱原発派議員が大勝して参議院の過半数を制しても、残念ながら一般法の成立で脱原発派議員の力が発揮される保証はない。従って、来夏の参院選では改憲発議の阻止が最大の目標になると思う。

参院で改憲発議を阻止するためには242議席の3分の1となる80議席以上を確保しなければならない。国会に確かな護憲派議員は数えるほどしかいないから(当選した公明党衆院議員の中にも改憲発議要件を緩和する改憲に賛成の議員は19%いる = 2012年12月18日付読売)、今度の参院選のハードルは非常に高い。

参院選まであと7カ月しかない。護憲派有権者1人1人が自分の周囲で確実に味方を増やしていく活動がもう欠かせないと思う。人数など具体的な目標を立てて、実践していきたいと思う。

(5) 生活の党は安倍政権にくみする改憲、集団的自衛権、米軍普天間飛行場、小選挙区制・定数削減などについて態度を明らかにすべき

日本未来の党は亀井静香氏と阿部知子氏が抜けて生活の党になった。護憲派の阿部氏を共同代表にする案が小沢一郎氏派から否定されたが、これは一面で生活の党議員の改憲に対する姿勢を示しているのではないかと思う。

生活の党の当選した衆議院議員は、毎日新聞の「ボートマッチ」によれば、憲法改正、集団的自衛権の行使を禁じた政府の憲法解釈の変更、米軍普天間飛行場の国外ではなく国内への移設、国会議員定数の削減に賛成する議員が多い。

http://mainichi.jp/votematch/

集団的自衛権の行使や米軍普天間飛行場の国内移設は「対米従属」そのものだと思うが、生活の党は対米従属を主張するのだろうか。また同党は安倍政権の改憲にくみするのか。これだけ弊害の明らかとなった小選挙区制を廃止する気はないのか。世界に恥をさらして民意を切り縮める定数削減を進めるのか。来る参院選に向けてはっきりしてもらわなければ困る。

脱原発と、米軍の戦争に加担する集団的自衛権の行使および普天間基地の容認は、まったく相いれない。日本に住む者が原発事故で死ぬのは認めないが、他国で他人を殺すことは構わないという差別思想は、脱原発と無縁だ。

主権者の平等な主権を認めようとしない国会議員は全国民を代表しているとは言えず、そのような国会議員が打ち出す政策は信用できない。脱原発・反TPP・反消費増税などの個別政策を語る前に、まず脱差別を公約していただきたいものだ。

(6) メディアは小選挙区制の矛盾を指摘しても(定数3の寡占的)中選挙区制止まり、比例代表制には否定的

メディアもさすがに小選挙区制の矛盾に目をつぶることができなくなった。しかし相変わらず、主権者の平等な主権を保障するためではなく、これこれの政治を実現するため、という動機で選挙制度を語っている。読売の社説が典型だ。

衆院小選挙区制 得票と議席の差が開き過ぎる(読売新聞、12月24日)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20121223-OYT1T00933.htm

「民意を集約することで安定した政権ができやすい」など、相変わらず小選挙区制についての誤解から抜けていない。小選挙区制については下記ブログ記事を参照されたい。

小選挙区制の廃止へ向けて
http://kaze.fm/wordpress/?p=215

メディアによる小選挙区制見直し論の限界と狙いは、読売社説の次の段落に象徴されていると思われる。

「菅前首相のように、小選挙区で敗れたのに、重複立候補した比例選で復活当選する仕組みが今なお続くのも納得しがたい。」
「与野党からは、こうした問題点を踏まえ、中選挙区制の復活を求める声も出ている。それも排除すべきではないだろう。」

比例代表制に対して否定的な印象を与えている。中選挙区制といっても定数3など、自民・民主・維新などしか当選できない寡占的制度に持っていきたいのだろう。

比例代表制の本質は、当選議員1人当たりの得票数(当選基数と呼ぶ)を同じくする究極の1人1票の選挙制度にある。

究極の1人1票の選挙制度は単純だ。当選に要する票をあらかじめ決めておき、複数段階の投票を設定するなどして、「過剰な生票」や死票を生かす仕組みを組み込めばよい。1つの政党の支持者グループは、当選基数よりも多くの票を獲得した候補から当選基数に満たない候補に票を移譲するし、死票を集約して生票にする。その結果は、比例代表制と同じになる。つまり、比例代表制は、当選議員の得票数を同じくするというプロセスを簡略化したものに他ならない。

小選挙区ではなく、広い選挙区を採用するだけでも、各候補の得票数は当選基数に近づく。広い選挙区が比例代表制の前提であり、小選挙区を前提にした候補の選好度は投票者の比例代表制的民意ではない。読売社説の感覚は間違っている。

私自身は中選挙区比例代表併用制を提案している。

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164

(7) 選挙区間1票格差(地域代表性格差)だけでなく生票・死票間1票格差や政党間1票格差に目を向けるべき――「0.2票」より「0票」(小選挙区の56%)の方が深刻

一人一票実現国民会議は1票格差を放置したまま実施された今回の選挙を違憲状態選挙だとして全国の高裁・高裁支部に提訴した。訴状では「憲法は人口比例の選挙を求めており、国民の意思が等しく国会に反映されなければ国民主権とは言えない」(毎日新聞、12月18日)と訴えている。

同会議で活躍されている升永英俊弁護士の考え方がIWJの岩上安身氏によるインタビューでよく分かる。

升永英俊弁護士 インタビュー, Recorded on 2012/12/21
http://www.ustream.tv/recorded/27903148#utm_campaign=t.co&utm_source=27903148&utm_medium=social

冒頭、自民党が比例区で全有権者の15パーセントからしか支持されていないことを岩上氏から伝えられ、民意と議席数の乖離はおかしいと認識された升永氏だが、選挙制度本体は1票格差の問題ではないから、60年かかって改正してもいい、と発言している。

また升永氏は「都民の私は0.2票しか持っていない」と語られる。しかし、千葉何区の有権者が等しく高知何区の有権者の何分の1の価値の票しか持っていない、という表現と同様に正しくない。千葉の当該選挙区で生票を投じた有権者は、高知の当該選挙区で死票を投じた有権者より、1票の価値が高い(ある)のは、当然である。

1票が価値を持つかどうかは、議員1人当たりの有権者数に依存するのではなく、どの政党を支持するかでほぼ決まってしまう。

(小選挙区の)選挙区間1票の格差を是正したところで、地方で選出されていた二大政党の候補が、都市部から選出されるようになるに過ぎない。少数政党の支持者のいる小選挙区の選挙区間1票格差が改善されても同支持者にとっての1票価値は生まれず、大政党の支持者のいる小選挙区の選挙区間1票格差が他の選挙区と比べて改善されても、競合する他の大政党の支持者の1票格差も同時に改善されるので、1票価値が自分の選挙区内でも、他の選挙区と比べても、高まるということはない。

議員1人当たりの有権者数ばかりを問題にしても、1票格差は解消しない。純粋な1票格差の問題は選挙区間1票格差よりむしろ生票・死票間1票格差あるいは政党間1票格差にこそある。ただし、選挙区間1票格差が政党間1票格差を生み出す場合もある。

「民主主義は多数派支配」と語る升永氏。小選挙区の死票率56%は選挙結果が多数派支配ですらないことを示している。「0.2票」より「0票」の方が深刻だ。升永氏はじめ一人一票実現国民会議の皆さまには、小選挙区制による生票・死票間1票格差にも目を向けていただきたいと思う。

[参考]
1票の格差とは何か
http://kaze.fm/wordpress/?p=381

(8) 2012衆院選の最大1票格差――小選挙区が日本未来の党の13.83倍、比例区が社民党の4.87倍

シミュレーションや1票格差などの計算のプロセスは下記「議席配分表」に記載している。

議席配分表
http://otasa.net/documents/2012_gisekihaibun.xls

2012衆院選の結果は、表1 2012年衆議院選挙の結果にまとめた。

1票の価値を比較する場合、選挙区間1票格差だけを考えればいいというわけにはいかない。生票・死票間1票格差あるいは政党間1票格差も考える必要があり、むしろこちらの方が重大だ。

政党間1票格差を<「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値>と定義する。だから1議席も取れない政党については、この定義での政党間1票格差を計算できないが、政党間1票格差が最大の党よりも死票率が高い政党が存在する。

今回、小選挙区は日本未来の党の13.83倍、比例区は社民党の4.87倍が最大の政党間1票格差となる(表1 2012年衆議院選挙の結果)。

比例区でなぜ4.87倍もの1票格差が生じるかといえば、現在の小選挙区比例代表並立制の比例区が全国1区ではなく11のブロックに分かれ、各ブロックの定数が少ないために議席配分の結果が比較大政党に有利となっていることに原因がある。

比例区をブロック制でなく全国1区にすると、表2 比例区がブロック制でなく全国1区だったらのように得票率と議席占有率がほぼ一致するようになる。従って1票格差もほとんどなくなる。

(9) 2012衆院選――小選挙区がなく全国1区の比例代表制だったら自民はたったの132議席

比例区得票率がわずか27.62%の自民党は、実際の結果において比例区と小選挙区を合わせて294議席(議席占有率61.25%)を獲得したが、小選挙区がなく全国1区の比例代表制だったら、たったの132議席(議席占有率27.50%)しか獲得できなかったことになる(表3 小選挙区がなく全国1区の比例代表制だったら)。

(10) 2012衆院選――比例区で未来の票を共産・社民に統合すると3議席増える

今回は脱原発票が分散してしまった。比例区で未来の票を共産・社民に統合したらどうなるだろうか。未来の比例区票を各ブロックごとに共産・社民に按分配分してみた。

すると、共産8、未来7、社民1の計16議席から、共産17、社民2の計19議席へと3議席増える(表4 2012衆院選比例区で未来の票を共産・社民に統合したらどうなるか)。

(11) 2012衆院選――比例区で共産・未来・社民の票を統合すると10議席増える

では、比例区で共産・未来・社民の票を統合したらどうなるか。共産・未来・社民の各党が単独の場合の計16議席と比べ、10議席増の26議席となる(表5 2012衆院選比例区で共産・未来・社民の票を統合したらどうなるか)。

(12) 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし、改選定数48)――護憲政党の獲得議席はわずか4議席

次期参院選のシミュレーションは比例区・選挙区とも時事などが実施している。独自に比例区について計算してみると、獲得議席は共産3、未来2、社民1となる(表6 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし))。護憲政党の議席はわずか4議席しかない。

比例区における最大の1票格差は未来の1.44倍となる。参議院の比例区は衆議院とは違い、ブロック制ではなく全国1区なので、このように格差はあまり大きくない。

(13) 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減あり、改選定数28)――護憲政党の獲得議席はわずか2議席、最大1票格差は「定数削減なし」より拡大

民主党の方針のように、参院比例区の定数を40削減(改選定数28)したらどうなるか。獲得議席は共産2、未来1、社民0となり、護憲政党はわずか2議席しか獲得できない(表7 次期参院選比例区のシミュレーション([定数40]=[改選数20]削減))。

比例区における最大の1票格差は未来の1.85倍となり、定数削減しない場合の1.44倍より格差が拡大する。従って、格差を拡大するような定数削減=選挙制度改定は行うべきでない。

(14) 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし、改選定数48)――共産・未来・社民の票を統合しても1議席しか増えない(統一名簿の必要性?)

参院は衆院と違って比例区は全国1区で死票が少ないが、一応、脱原発政党の票を統合することで議席が増えるかどうか計算してみる。

まず、未来の票を共産・社民に統合した場合(表8 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし、未来の票を共産・社民に統合))。共産・未来・社民の各党が単独の場合の計6議席と比べ、1議席増の7議席となる。

次に、共産・未来・社民の票を統合した場合(表9 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし、共産・未来・社民を統合))。この場合も獲得議席は7議席となる。

(15) 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減あり、改選定数28)――共産・未来・社民の票を統合しても1議席しか増えない(統一名簿の必要性?)

では、参院の定数が削減された場合に、共産・未来・社民の票を統合する効果はあるだろうか(表10 次期参院選比例区のシミュレーション([定数40]=[改選数20]削減、共産・未来・社民を統合))。獲得議席は4議席で、各党単独の場合(表7)の3議席から1議席しか増えない。

以上から、参院比例区では統一名簿などをつくって各党の票を統合しても議席増の効果はないことを確認できる。ただし、統一名簿によって得票数増をもたらす効果はあるかもしれない。

(16) 次期衆院選比例区のシミュレーション(定数が75削減されて105になった場合)――社民は議席をなくし、共産の1票格差は1.58倍から3.88倍に拡大

これだけ小選挙区制の反民主主義性が明らかになっても、各党はまだ小選挙区制の廃止はおろか、小選挙区制の特性を強める比例区定数の削減方針を撤回していない(小選挙区なら定数を削減してよいわけではない)。民主主義後進国としてさらに恥をかきたいのだろうか。国連などで例の身切り論をぶってみてくれないか。

[参考]
各国議会の定数について:
上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場 : 小選挙区選挙は廃止しかない(その4:完全比例代表制がベストだ)
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51704249.html
国会議員の身切り論について:
消費税増税を強いる前に国会議員は身を切るべきだ?
http://kaze.fm/wordpress/?p=422
消費税増税を強いる前に国会議員は身を切るべきだ?(2)
http://kaze.fm/wordpress/?p=425

民主党の方針通り、衆院比例区の定数が180から75削減されて105になったら、各党の獲得議席数と1票格差はどうなるだろうか。表11 次期衆院選比例区のシミュレーション(定数が75削減されて105になった場合)に示した。

社民は現行定数でかろうじて1議席を獲得していたが、定数削減で議席をなくし、上記定義の1票格差は計算できなくなる。そして、共産の1票格差は1.58倍から3.88倍に拡大する。ブロック制のため、定数削減でも、共産より全国得票率の低い未来が共産より獲得議席が多く、1票格差も小さくなるという現象も起きる。

選挙区間1票格差(地域代表性格差)2倍が違憲であるなら、真の1票格差である政党間1票格差3.88倍や生票・死票間1票格差(小選挙区の死票率56% = 2人に1人以上は主権がない)は論理必然的に違憲である。定数を削減しなくとも社民の1票格差は既に4.87倍であり、これ以上の定数削減は考えられず、逆に定数を増やすしか選択肢はない。

(17) 選挙区間1票格差(地域代表性格差)が政党間1票格差に有利に働く例――自民は中国地方で支持率が高く、同地域は人口当たりの議員数が多いので、選挙区間1票格差は自民に有利

表12 2012衆院選における政党・比例区ブロック別得票率(%、各党の地域別支持率の比較)を見ていただきたい。自民と共産の得票率(支持率)は東京ブロックと中国ブロックで好対照をなしている。

自民は中国ブロックで支持率が高いが、東京ブロックでは支持率が低い。対して共産は逆の関係を示している。従って、選挙区間1票格差は自民に有利だ。

選挙区間1票格差を解消すべき理由としては、地域代表性格差より、政党支持率が地域によって違うことで政党間1票格差が発生してしまうことの方が重要である。

表1 2012年衆議院選挙の結果
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
( )内は2009年衆院選の結果
議席配分表
得票数 得票率(%) 議席数 議席占有率(%) 1票格差
小選挙区 自民 25,643,309 43.01(38.68) 237 79.00(21.33) 1.00
維新 6,942,353 11.64(-) 14 4.67(-) 4.58
民主 13,598,773 22.81(47.73) 27 9.00(73.67) 4.65
公明 885,881 1.49(1.11) 9 3.00(0.00) 0.91
みんな 2,807,244 4.71(0.87) 4 1.33(0.67) 6.49
共産 4,700,289 7.88(4.22) 0 0.00(0.00) -
未来 2,992,365 5.02(-) 2 0.67(-) 13.83
社民 451,762 0.76(1.95) 1 0.33(1.00) 4.18
大地 315,604 0.53(-) 0 0.00(-) -
幸福 102,634 0.17(1.53) 0 0.00(0.00) -
改革 - - - - -
国民 117,185 0.20(1.04) 1 0.33(1.00) 1.08
無所属 1,006,468 1.69(2.81) 5 1.67(2.00) 1.86
59,626,567 100 300 100 -
比例区 自民 16,624,457 27.62(26.73) 57 31.67(30.56) 1.00
維新 12,262,228 20.38(-) 40 22.22(-) 1.05
民主 9,628,653 16.00(42.41) 30 16.67(48.33) 1.10
公明 7,116,474 11.83(11.45) 22 12.22(11.67) 1.11
みんな 5,245,586 8.72(4.27) 14 7.78(1.67) 1.28
共産 3,689,159 6.13(7.03) 8 4.44(5.00) 1.58
未来 3,423,915 5.69(-) 7 3.89(-) 1.69
社民 1,420,790 2.36(4.27) 1 0.56(2.22) 4.87
大地 346,848 0.58(0.62) 1 0.56(0.56) 1.19
幸福 216,150 0.36(0.66) 0 0.00 -
改革 134,781 0.22(0.08) 0 0.00(0.00) -
国民 70,847 0.12(1.73) 0 0.00(0.00) -
60,179,888 100 180 100 -
小選挙区+比例区 自民 - - 294 61.25 -
維新 - - 54 11.25 -
民主 - - 57 11.88 -
公明 - - 31 6.46 -
みんな - - 18 3.75 -
共産 - - 8 1.67 -
未来 - - 9 1.88 -
社民 - - 2 0.42 -
大地 - - 1 0.21 -
幸福 - - 0 0.00 -
改革 - - 0 0.00 -
国民 - - 1 0.21 -
無所属 - - 5 1.04 -
- - 480 100 -


 
 

表2 比例区がブロック制でなく全国1区だったら

1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産 未来 社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 51 37 29 21 16 11 10 4 1 0 0 0 180
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 6.13 5.69 2.36 0.58 0.36 0.22 0.12
議席占有率 28.33 20.56 16.11 11.67 8.89 6.11 5.56 2.22 0.56 0.00 0.00 0.00
1票格差 1.00 1.02 1.02 1.04 1.01 1.03 1.05 1.09 1.06


 
 

表3 小選挙区がなく全国1区の比例代表制だったら

総定数:480(5議席を無所属候補が獲得、残り475議席を政党に配分)
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産 未来 社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 132 98 77 56 41 29 27 11 2 1 1 0 475
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 6.13 5.69 2.36 0.58 0.36 0.22 0.12
議席占有率 27.50 20.42 16.04 11.67 8.54 6.04 5.63 2.29 0.42 0.21 0.21 0.00
1票格差 1.00 0.99 0.99 1.01 1.02 1.01 1.01 1.03 1.38 1.72 1.07


 
 

表4 2012衆院選比例区で未来の票を共産・社民に統合したらどうなるか(未来の比例区票を各ブロックごとに共産・社民に按分配分)

比例区定数:180
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産 社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 54 39 30 23 14 17 2 1 0 0 0 180
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 10.24 3.94 0.58 0.36 0.22 0.12 100
議席占有率 30.00 21.67 16.67 12.78 7.78 9.44 1.11 0.56 0.00 0.00 0.00 100
1票格差 1.00 1.02 1.04 1.01 1.22 1.18 3.85 1.13


 
 

表5 2012衆院選比例区で共産・未来・社民の票を統合したらどうなるか

比例区定数:180
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産・未来・社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 52 36 30 21 14 26 1 0 0 0 180
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 14.18 0.58 0.36 0.22 0.12 100.00
議席占有率 28.89 20.00 16.67 11.67 7.78 14.44 0.56 0.00 0.00 0.00 100.00
1票格差 1.00 1.07 1.00 1.06 1.17 1.03 1.08


 
 

表6 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし)

改選定数:48
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産 未来 社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 14 10 8 6 4 3 2 1 0 0 0 0 48
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 6.13 5.69 2.36 0.58 0.36 0.22 0.12
議席占有率 29.17 20.83 16.67 12.50 8.33 6.25 4.17 2.08 0.00 0.00 0.00 0.00
1票格差 1.00 1.03 1.01 1.00 1.10 1.04 1.44 1.20


 
 

表7 次期参院選比例区のシミュレーション([定数40]=[改選数20]削減)

改選定数:28
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産 未来 社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 9 6 5 3 2 2 1 0 0 0 0 0 28
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 6.13 5.69 2.36 0.58 0.36 0.22 0.12
議席占有率 32.14 21.43 17.86 10.71 7.14 7.14 3.57 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00
1票格差 1.00 1.11 1.04 1.28 1.42 1.00 1.85


 
 

表8 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし、未来の票を共産・社民に統合)

改選定数:48
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産 社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 14 10 8 5 4 5 2 0 0 0 0 48
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 10.24 3.94 0.58 0.36 0.22 0.12
議席占有率 29.17 20.83 16.67 10.42 8.33 10.42 4.17 0.00 0.00 0.00 0.00
1票格差 1.00 1.03 1.01 1.20 1.10 1.04 1.00


 
 

表9 次期参院選比例区のシミュレーション(定数削減なし、共産・未来・社民を統合)
改選定数:48
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産・未来・社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 14 10 8 5 4 7 0 0 0 0 48
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 14.18 0.58 0.36 0.22 0.12
議席占有率 29.17 20.83 16.67 10.42 8.33 14.58 0.00 0.00 0.00 0.00
1票格差 1.00 1.03 1.01 1.20 1.10 1.03


 
 

表10 次期参院選比例区のシミュレーション([定数40]=[改選数20]削減、共産・未来・社民を統合)
改選定数:28
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産・未来・社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 8 6 5 3 2 4 0 0 0 0 28
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 14.18 0.58 0.36 0.22 0.12
議席占有率 28.57 21.43 17.86 10.71 7.14 14.29 0.00 0.00 0.00 0.00
1票格差 1.00 0.98 0.93 1.14 1.26 1.03


 
 

表11 次期衆院選比例区のシミュレーション(定数が75削減されて105になった場合)
定数:105
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、自民党の「1議席当たりの得票数」で割った値
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産 未来 社民 大地 幸福 改革 国民
議席数 35 24 19 11 8 2 5 0 1 0 0 0 105
得票率 27.62 20.38 16.00 11.83 8.72 6.13 5.69 2.36 0.58 0.36 0.22 0.12 100
議席占有率 33.33 22.86 18.10 10.48 7.62 1.90 4.76 0.00 0.95 0.00 0.00 0.00 100
1票格差 1.00 1.08 1.07 1.36 1.38 3.88 1.44 - 0.73


 
 

表12 2012衆院選における政党・比例区ブロック別得票率(%、各党の地域別支持率の比較)
議席配分表
自民 維新 民主 公明 みんな 共産 未来 社民 大地 幸福 改革 国民
北海道 26.44 12.75 18.23 11.04 5.94 6.99 3.13 1.85 13.25 0.40 0.00 0.00
東北 28.55 16.71 18.57 9.18 7.06 5.92 9.02 3.70 0.00 0.34 0.96 0.00
北関東 28.14 18.09 15.11 12.68 12.18 5.68 5.99 1.83 0.00 0.31 0.00 0.00
南関東 26.43 18.89 17.31 10.61 12.45 5.86 6.25 1.93 0.00 0.27 0.00 0.00
東京 24.87 19.86 15.42 10.14 11.67 7.41 6.86 2.09 0.00 0.25 1.43 0.00
北陸信越 31.69 19.29 18.60 8.38 7.51 5.73 4.86 3.50 0.00 0.43 0.00 0.00
東海 27.56 19.02 18.53 10.93 9.03 5.43 7.16 1.91 0.00 0.42 0.00 0.00
近畿 23.86 30.76 12.03 12.66 6.52 7.52 4.94 1.36 0.00 0.34 0.00 0.00
中国 34.53 17.75 16.28 14.08 5.98 4.98 4.03 1.96 0.00 0.41 0.00 0.00
四国 30.66 21.32 16.05 14.97 5.03 5.78 3.45 2.31 0.00 0.44 0.00 0.00
九州 29.91 18.17 14.89 15.64 6.37 5.06 3.91 4.51 0.00 0.48 0.00 1.06

太田光征