2013東京都議会議員選挙――結果分析

6月 30th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 23:23:58
under 選挙制度 , 2012年東京都知事選挙 , 2013年参議院選挙 1 Comment 

【7月1日訂正】 (1)の7段落目「2013年都議選から比べれば支持の回復」を「2009年都議選から比べれば支持の回復」に訂正しました。
【7月1日追加】 (2)の2段落目に「1人区を個別に見ると、民主党候補の有無に関係なく、共産党の得票率は島部の7.83%を除いて、すべて11%を超えています。 」を追加しました。

【使用データ】

  • 東京都選挙管理委員会 | 選挙結果&データ | 投開票結果
     http://www.senkyo.metro.tokyo.jp/data/data01.html
  • 総務省|選挙関連資料
     http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/index.html
  • 東京新聞:都議選2013(CHUNICHI Web)
     http://www.tokyo-np.co.jp/feature/togisen13/
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    【目次】
    (1) 自民・共産躍進の中身――維新を経由して民主の票が自民へ回帰し、民主・旧未来(生活・みどりの風)・社民の票が一部共産へ?
    (2) 共産党は2人区で1議席を獲得し、1人区でも2012衆院選1人区(東京)より得票率を伸ばす
    (3) 得票率で見ると、共産党は定数の多い選挙区で民主党に勝ったが、定数の少ない選挙区で負けた――共産党に対する死票心理の表れか
    (4) 中選挙区制(大選挙区制)は民意よりも候補者調整ないし票割りの巧拙を測定する

    【関連投稿】

  • 2009東京都議会議員選挙――結果分析
     http://kaze.fm/wordpress/?p=274

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    (1) 自民・共産躍進の中身――維新を経由して民主の票が自民へ回帰し、民主・旧未来(生活・みどりの風)・社民の票が一部共産へ?

    表1に選挙結果(全選挙区)を示しています。表2は2013年都議選とそれ以前の衆院選比例区(東京)、2009年都議選の間で得票率(%)の変化を見たもの、表3は1人区における得票率の変化を2013年都議選と2012年衆院選の間で比べたものです(2013都議選で民主党は総定数7のところ、3人しか擁立していないことに留意)。

    民主党が惨敗したとはいえ、得票率15.24%は2012年衆院選比例区(東京)の得票率15.42%から0.18ポイントしか減少していません(表2)。ただ、定数3以上では2012年衆院選比例区(東京)の得票率から数ポイント減少しています。選挙区の多い2人区で得票率24.11%を稼いだことで、相殺された形です。

    自民党は2009年都議選、2009年衆院選比例区(東京)、2012年衆院選比例区(東京)で25%前後の得票率を保ってきましたが(昨年、民主党の票は自民党にいかず、維新とみんなに流れた)、今回は得票率を36.04%へと大きく伸ばしました。ただ、維新との合計で見た得票率は2012年衆院選比例区(東京)の得票率から0.44ポイント減少しています。

    自民・民主・維新の合計得票率が昨年からほとんど変化せず、民主党の得票率もあまり変わらず、維新の得票率がガタ落ちということからして、自民大勝の票は維新から移動してきたものでしょう。もっとも、その維新の票は民主党由来でしたから、自民党の票が維新を経由して民主党から回帰したということでしょう。

    共産党は議席数の点で躍進しましたが、2013年都議選の得票率13.61%は2009年都議選の得票率12.56%から1ポイント程度増えたに過ぎません(今回の得票数616,722は2009年都議選の得票数707,602より少ない)。ただし、2012年衆院選比例区(東京)の得票率7.41%から比べて、5ポイント以上も増えています。

    2012年衆院選と比べ、共産党躍進の票はどこから来たのか。2013年都議選の投票率43.50%が2012年衆院選比例区(東京)の得票率62.20%と比べ低下したため、組織票を期待できる共産党に有利な状況といわれますが、まずこの点を検証します。

    2012年衆院選比例区(東京)の同党の得票数484,365を2013年都議選の全党派得票数4,532,280で割ると、10.69%となり、 今回の得票率13.61%より小さいことから、同党の得票率の伸びは低投票率だけからは説明されません。もっとも、今回の得票数自体が616,722票で、昨年より増えています。2012年衆院選と比べて実質的な支持の拡大があったと見るべきでしょう(2009年都議選から比べれば支持の回復)。

    民主党が定数3以上で2012年衆院選比例区(東京)と比べ得票率を落としていることからして、民主党と、候補者をほとんど立てていない旧未来の党(現生活の党・みどりの風)と社民党の支持者の一部の票が共産党へ移ったと推測されます。

    来る参院選では生活、みどりの風、社民が選挙区でそれなりの候補者を立てるので、共産党が参院選の選挙区で今回の都議選と同様の躍進を達成できる保証はありません。

    民意を反映しない選挙制度による共倒れの懸念がいつまでも付きまといます。護憲・脱原発の政党・候補者には、平等な国民主権の実現に最大の価値を置いて、選挙制度改正を最優先の結集軸に候補者調整をしていただきたいものです。現行選挙制度で選出された国会議員は主権者からの厳粛な信託を受けておらず、国会活動をする資格がなく、本来であれば選挙制度改正と選挙管理内閣の公約のみが許されます。


     
     
    (2)  共産党は2人区で1議席を獲得し、1人区でも2012衆院選1人区(東京)より得票率を伸ばす

    2人区の文京区で共産党が1議席を獲得したことは注目に値します。今回、共産党最大の得票率15.41%はこの2人区で達成したものです(表4)。

    1人区でも共産党は2012衆院選1人区(東京)の9.13%から2013都議選1人区(7選挙区)の13.82%へと5ポイント近く得票率を伸ばしました(表3)。1人区を個別に見ると、民主党候補の有無に関係なく、共産党の得票率は島部の7.83%を除いて、すべて11%を超えています。

    共産党の得票率は1人区、2人区以外でも、全選挙区で2012衆院選比例区(東京)の得票率7.41%を上回っています(表3、表4)。


     
     
    (3) 得票率で見ると、共産党は定数の多い選挙区で民主党に勝ったが、定数の少ない選挙区で負けた――共産党に対する死票心理の表れか

    表4に2013年都議選の定数別の選挙結果を示しています。

    全選挙区計の得票率で比較すると民主党が共産党を上回っていますが、定数別に見ると少ない定数の選挙区と多い定数の選挙区で関係が違ってきます。

    1人区と2人区という定数の少ない選挙区では、どちらも得票率で民主党が共産党に勝っています。

    3人区と8人区では得票率で民主党が共産党を若干上回っています。ところが、4人区、5人区、6人区では共産党の候補者数が民主党より少ないにもかかわらず、得票率では共産党が民主党を上回っています。

    得票率を1〜2人区、3〜8人区でまとめると、次のようになります。

    1〜2人区の得票率 3〜8人区の得票率
    共産党 15.13 12.97
    民主党 23.01 12.00

    この結果は非常に興味深い。潜在的な支持の点で共産党は民主党を上回るものの、定数の少ない選挙区では共産党に対する票が死票になるとの恐れから、依然として民主党に集中しているのかもしれない。


     
     
    (4) 中選挙区制(大選挙区制)は民意よりも候補者調整ないし票割りの巧拙を測定する

    表4の定数別の結果で明らかなように、1人区と2人区はもちろんのこと、定数3以上でも各党の得票率と議席占有率に大きな乖離が見られます。今回の選挙は、2009年都議選と同様、民意よりも候補者調整ないし票割りの巧拙を測定したようなものです。

    2009東京都議会議員選挙――結果分析
    http://kaze.fm/wordpress/?p=274

    5人区まで得票率と議席占有率に大きな乖離が見られ、6人区でようやく差が縮小したと思いきや、8人区でまた乖離します。

    この8人区(2選挙区)は象徴的です。共産党と維新の得票率はまったく同じ9.45%であるものの、候補者と議席数(議席占有率)は各党でそれぞれ2人および2議席(12.50%)、4人および1議席(6.25%)と、候補者調整の巧拙が反映されています。民主党は共産・維新より得票率が10.69%と高いものの、やはり候補者調整がまずく、1議席しか獲得できませんでした。

    いくら定数が多い中選挙区(大選挙区)でも、候補者数が多くなれば、各党の得票率と議席占有率は乖離してきます。来る参院選の東京選挙区で脱原発候補が林立する模様ですが、心配されます。

    このような問題に対処できる選挙制度が、中選挙区比例代表併用制です。

    中選挙区比例代表併用制を提案する
    http://kaze.fm/wordpress/?p=164
     
     

    表1 2013都議選――結果(全選挙区)
    2013年 2009年 2013年 2009年
    得票数 得票率 得票数 得票率 議席数 議席占有率 議席数 議席占有率
    全党派計 4,532,280 100.00 5,634,323 100.00 127 100.00 127 100.00
    自由民主党 1,633,304 36.04 1,458,108 25.88 59 46.46 38 29.92
    民主党 690,623 15.24 2,298,495 40.79 15 11.81 54 42.52
    公明党 639,160 14.10 743,428 13.19 23 18.11 23 18.11
    日本共産党 616,722 13.61 707,602 12.56 17 13.39 8 6.30
    日本維新の会 374,109 8.25 2 1.57
    みんなの党 311,278 6.87 7 5.51
    無所属 118,450 2.61 250,869 4.45 1 0.79 2 1.57
    東京・生活者ネットワーク 94,239 2.08 110,407 1.96 3 2.36 2 1.57
    行革110番 18,470 3.32 7,183 0.13
    社会民主党 12,948 0.29 20,084 0.36
    生活の党 9,563 0.21
    みどりの風 6,463 0.14
    (元)葛飾区議長 3,306 0.41
    緑の党脱原発担当 3,224 0.40
    大統領会 421 0.04 688 0.01
    その他の党派 65,414 1.17
    幸福実現党 13,401 0.24

     
     

    表2 得票率(%)の変化(全選挙区)
    2013都議選 2012衆院選比例区(東京) 2009衆院選比例区(東京) 2009都議選
    自民 36.04 24.87 25.47 25.88
    民主 15.24 15.42 40.98 40.79
    公明 14.10 10.14 10.35 13.19
    共産 13.61 7.41 9.61 12.56
    維新 8.25 19.86
    みんな 6.87 11.67 6.06
    社民 0.29 2.09 4.32 0.36
    生活 0.21
    みどりの風 0.14
    旧未来の党 6.86

     
     

    表3 得票率(%)の変化(1人区)
    2013都議選で民主党は総定数7のところ、3人しか擁立していないことに留意
    2013都議選1人区
    (7選挙区)
    2012衆院選1人区
    (東京)
    自民 52.21 39.03
    民主 17.95 22.25
    共産 13.82 9.13
    10.22
    みんな 4.75 7.43
    維新 1.05 13.48

     
     

    表4 2013都議選――結果(定数別)
    候補者数 得票数 得票率 議席数 議席占有率
    1人区(7選挙区) 24 236,132 100.00 7 100.00
    自民 7 123,294 52.21 7 100.00
    民主 3 42,389 17.95 0 0.00
    共産 7 32,636 13.82 0 0.00
    5 24,121 10.22 0 0.00
    みんな 1 11,221 4.75 0 0.00
    維新 1 2,471 1.05 0 0.00
    候補者数 得票数 得票率 議席数 議席占有率
    2人区(16選挙区) 72 1,096,161 100.00 32 100.00
    自民 17 449,124 40.97 17 53.13
    民主 16 264,234 24.11 10 31.25
    共産 16 168,924 15.41 1 3.13
    維新 11 108,126 9.86 1 3.13
    みんな 4 34,972 3.19 0 0.00
    3 26,204 2.39 1 3.13
    公明 1 20,203 1.84 1 3.13
    ネットワーク 1 19,367 1.77 1 3.13
    生活 2 4,586 0.42 0 0.00
    NPO法人理事長 1 421 0.04 0 0.00
    候補者数 得票数 得票率 議席数 議席占有率
    3人区(5選挙区) 33 540,930 100.00 15 100.00
    自民 7 167,888 31.04 7 46.67
    公明 5 117,649 21.75 5 33.33
    民主 5 69,337 12.82 1 6.67
    共産 5 65,720 12.15 2 13.33
    維新 5 54,073 10.00 0 0.00
    3 29,961 5.54 0 0.00
    みんな 2 29,839 5.52 0 0.00
    みどりの風 1 6,463 1.19 0 0.00
    候補者数 得票数 得票率 議席数 議席占有率
    4人区(6選挙区) 46 806,269 100.00 24 100.00
    自民 9 250,306 31.04 9 37.50
    公明 6 153,055 18.98 6 25.00
    共産 6 120,681 14.97 6 25.00
    民主 8 109,710 13.61 1 4.17
    みんな 6 84,506 10.48 2 8.33
    維新 6 69,136 8.57 0 0.00
    3 12,345 1.53 0 0.00
    (元)葛飾区議長 1 3,306 0.41 0 0.00
    緑の党脱原発担当 1 3,224 0.40 0 0.00
    候補者数 得票数 得票率 議席数 議席占有率
    5人区(3選挙区) 25 615,842 100.00 15 100.00
    自民 6 208,021 33.78 6 40.00
    公明 3 125,909 20.45 3 20.00
    共産 3 82,266 13.36 3 20.00
    みんな 3 73,183 11.88 3 20.00
    民主 4 73,121 11.87 0 0.00
    維新 2 26,502 4.30 0 0.00
    3 21,863 3.55 0 0.00
    生活 1 4,977 0.81 0 0.00
    候補者数 得票数 得票率 議席数 議席占有率
    6人区(3選挙区) 27 680,870 100.00 18 100.00
    自民 7 252,768 37.12 7 38.89
    公明 4 124,234 18.25 4 22.22
    共産 3 93,466 13.73 3 16.67
    民主 4 72,362 10.63 2 11.11
    維新 5 61,232 8.99 0 0.00
    みんな 2 38,479 5.65 1 5.56
    ネットワーク 2 38,329 5.63 1 5.56
    候補者数 得票数 得票率 議席数 議席占有率
    8人区(2選挙区) 27 556,071 100.00 16 100.00
    自民 6 181,901 32.71 6 37.50
    公明 4 98,110 17.64 4 25.00
    民主 4 59,469 10.69 1 6.25
    共産 2 53,027 9.54 2 12.50
    維新 4 52,569 9.45 1 6.25
    みんな 2 39,078 7.03 1 6.25
    ネットワーク 2 36,543 6.57 1 6.25
    行革110番代表 1 18,470 3.32 0 0.00
    社民 1 12,948 2.33 0 0.00
    1 3,956 0.71 0 0.00

     
     

    太田光征
    http://otasa.net/

    民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書

    6月 20th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 23:35:01
    under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 96条改憲 No Comments 

    「民意と乖離しない政治・報道を求める要望書実行委員会準備会」として検討してきた要望書を以下の通り確定させます。会合参加者の皆さま、ありがとうございました。

    各党の幹部、選挙制度担当者などに打診した結果、第1回目の要望行動として、生活の党副代表の森裕子参議院議員、共産党委員長の志位和夫衆議院議員、社民党幹事長の又市征治参議院議員(いすれも秘書対応)に応じていただきました。6月21日に各議員の国会事務所を訪ねて要望します。

    この要望書で示した論点は2013年参院選で大きく問われるべきものであり、参院選前に全党の幹部らに対しての面談要望は実現しそうになく残念ですが、議員や有権者とのあらゆる接点で要望書を生かしていただければ幸いです。

    今後、政党・議員に対しての第2回目以降、そしてメディアに対しての第1回目を追究していきます。

    要望書ファイル(Word)はこちら:
    http://kaze.fm/documents/Request%20to%20Parties%20and%20Media(20130620).doc

    民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書

    〜国民主権の格差を拡大する96条改憲でなく、選挙制度と公職選挙法の改正で憲法の平等主義の実現を/「普天間県外」の旧政権を「迷走」、「原発再稼働」の安倍政権を「安全運転」は公正か〜

    要旨:

    [政党へ]

    2012年12月の衆院選は、原発・憲法・消費税などの最重要政策に関して民意と結果がことごとく乖離した異常な選挙。小選挙区での死票率は56.0%で、投票者2人に1人以上の票の価値がゼロ、すなわち平等な国民主権が保障されていない。

    「国民の厳粛な信託」(憲法前文)を越えた権限の行使が、一般法の立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)にまで拡大されようとしている。現選挙制度のまま改憲発議要件を緩和することは、改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差をさらに拡大してしまう(1.24倍から2.02倍へ)。

    政党・国会議員は、真っ先に平等な国民主権の保障(選挙制度と公職選挙法の抜本的な改正)に取り掛かり、脱原発などの民意を反映した政治を行うべき。

    [メディアへ]

    民主党の前首相らに対しては「迷走」「嘘つき」、安倍現首相に対しては「アベノミクス」「安全運転」。安倍政権は既に脱原発という大民意からの「大迷走」であり「大噓つき」(公明党は脱原発の公約を選挙後に脱原発依存に変更)の「暴走」状態にある。メディアは不公正なレッテルやイメージ言語の提供ではなく、多様で公正な見解の提供に努めるべき。

    「自民圧勝」の事前予測が選挙結果に与えた影響などについて、独自に検証を行うべき。

    自民党改憲案が国防軍の新設や発議要件の緩和だけでなく、1)平和的生存権、2)国民主権、3)基本的人権、4)天皇制、5)立憲主義、6)地方自治など、広範な事項に及び、現憲法の基本的な考え方に根底的変更を加え、国民生活に広く影響を与えるものであることを、参院選の前から批評していくべき。

    本文:

    2012年の衆議院選挙は、異常な選挙でした。戦後最低の投票率(小選挙区)59.3%が強調されていますが、小選挙区での死票率が56.0%という異常な数値を示したことこそ、民主主義政治の基盤をゆるがすものとして、もっと強調されるべきであると考えます。

    自民党の比例区得票率は27.6%で、民主党にぼろ負けした2009年衆院選のときの26.7%とほとんど変わっていません。これでは、自民党が有権者の支持を回復したなどとは言えないでしょう。にもかかわらず政権奪取を成し遂げることができたのは、民主党政権に対する国民の幻滅に加えて、小選挙区制の弊害が新党の増加といった外的事情で増幅され、民意をはるかに超える議席を獲得したからです。

    選挙直後の世論調査でも「自民の政策を支持」はわずか7%しかなく(12月18日付朝日新聞)、最も重要な政策(原発推進、憲法9条の改変、集団的自衛権に関する政府解釈の変更、憲法改正要件の緩和、消費税増税、公共事業費の増額、米軍普天間飛行場の辺野古への移設、オスプレイの沖縄への配備など)に関しては民意と選挙結果がことごとく乖離しています。

    直近の世論調査でも同様で、朝日新聞が2013年5月2日付で発表した憲法世論調査の結果によれば、96条改憲反対、9条改憲反対、非核3原則の見直し反対、武器輸出の拡大反対、武力行使を伴う国連軍への自衛隊の参加反対、自衛隊の国防軍化反対、集団的自衛権の行使反対、定数配分の格差(マスコミ用語では1票の格差)が是正されないままでの改憲発議反対が、民意なのです。

    2012年衆院選は憲法前文が要請する「正当な選挙」や「国民の厳粛な信託」という議会制民主主義を保障する選挙の本質から完全に逸脱しています。

    このように悲惨な結果を2012年衆院選がもたらした後であっても、なお、現行の選挙制度を改正して主権者に平等な国民主権を保障しようといった機運は、メディアが盛んに報道しているような政党からは、いっこうに出てきません。

    選挙制度それ自体だけではありません。公職選挙法は、立候補の段階から選挙運動までがんじがらめに制限しています。インターネット選挙「解禁」でも有権者の権利は制限されたままになっています。国民主権が極度に毀損されているのです。

    こうした状況で、投票者の2分の1の支持も得ていない政党が一般法を成立させることだけでも問題なのに、まして、投票者の3分の2の支持を得ていない政党が、改憲発議を行うための要件(衆参各院議員の3分の2以上の賛成を要するという要件)の緩和を狙うとはなにごとでしょう。

    憲法とは、国家運営の要路にある権力者たちが民意に背かないように、国民が国家(の要路者)に与える命令です(立憲主義)。このように重要な法であるからこそ、それを変更しようとする改憲発議には各院議員の3分の2以上の賛成を要するという厳しいハードルを敢えて設けて(硬性憲法規定96条)、改憲プロセスには立法プロセスより厳格な国民主権原理の適用を求めているのです。

    にもかかわらず、一部の政党・議員は、平等な国民主権の保障(選挙制度と公職選挙法の抜本的な改正)はほったらかしにしたまま、「国民の厳粛な信託」を越えた権限の行使を一般法の立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)にまで拡大しようとしています。

    広島高裁岡山支部は2012年衆院選の「定数是正訴訟」で、「『国民の多数意見と国会の多数意見の一致』をもって国民主権が保障できる」と判断しました。

    「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」という条件は、憲法前文にある「国民の厳粛な信託」を客観化・定量化した1つの条件といえ、この条件を満たさない小選挙区制は国民主権を保障しない、ということになるでしょう。

    小選挙区制のもとでは、国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離(客観的指標は各党の議席占有率を比例区得票率で割った値)が生じるのです。国民の間どうしから見れば、「国民主権の格差」が存在する、ということになります。

    「国民の厳粛な信託」を越えた権限は、「違憲権限」というべきです。

    このように平等な国民主権を保障しない法のもとで、はたして、民主主義政治が成り立つでしょうか。

    特に、小選挙区制を中心とする現行選挙制度のまま改憲発議要件を緩和することの意味は、重層的に深刻です。違憲権限の行使の領域が立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)へと拡大するにとどまらず、改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差が拡大してしまうからです(理由は最後に詳述)。

    このような改憲発議はまさに「壊憲」発議とも言うべきでものであり、国民主権をさらに切り縮めるという点で、首長の権限を著しく強化しようという動きと軌を一にするものではないでしょうか。

    各党のみなさん、国会議員のみなさんにお願いします。なによりもまず、国民主権の平等性を保障してください。公職選挙法の全面改正に取り掛かってください。と同時に、脱原発などの民意を政治に反映させてください。

    なお、議員定数の削減について申し上げるなら、国民の多様な意思を国会にできるだけ的確に反映させるためには、しかるべき議員定数が必要であり、日本の議員定数は国際比較すると大幅に少ないことから、定数削減の必要性はまったくありません。

    現行制度のまま小選挙区の定数を削減するなら無所属候補(およびその支持者)に対する差別を拡大することに他ならず、比例区での削減なら少数政党(およびその支持者)に対する差別の拡大に他なりません。このように差別を押し付けるやりかたは、よしんば民意であるとしても、民意とは認められません。

    国会議員自身が率先して「身を切らなければならない」などといった議論があります。政治家の「身切り論」は虚偽であり、身を切られるのは、代表を選ぶ権利を縮減されてしまう一般国民の方です。こうした「身切り論」が日本国以外の国々から、いったい、どのように見られているのか。このような点についてもご配慮をお願いしたいものです。

    メディアも必要な情報をきちんと国民に伝えているとは言えないのではないでしょうか。なるほど、選挙区がどこかによって「1票の重み」に格差があるという問題点は指摘することがあっても(ちなみに、これは「地域」を代表する上での格差であって、「主権者」における1票の格差とは、厳密には言えないでしょう)、もっと本質的な問題すなわち政党間の1票格差(議員1人を当選させるために必要な票数の違いとして定義され、たとえば、2012年衆院選の比例区では、社民党が自民党の4.87倍)や、 生票と死票との間の1票格差などを強調することはありません。

    仮に選挙区のあいだでの1票格差が解消したとしても、小選挙区制を中心とする現行選挙制度をこのまま放っておくなら、主権者の間に1票の格差のある状態も、国民主権と乖離した政治が行われていく問題も、決して解決されはしないのです。

    日本新聞協会は1月15日の「軽減税率を求める声明」で「多様な意見・論評を広く国民に提供する」のが新聞の役割であるとしていますが、各紙は選挙制度や1票格差の報道に限っても、上記のように重要な論点を提示できていません。

    軽減税率を求める声明||声明・見解|日本新聞協会
    http://www.pressnet.or.jp/statement/130116_2234.html
    http://www.pressnet.or.jp/statement/pdf/keigen_zeiritsu.pdf

    さて、この「声明」は、新聞が「民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与」するとして、新聞などに対する「知識課税強化」に反対するものです。

    しかしながら、たとえば消費税増税の必要性に関して説得力のある論評がどこにも見あたらないなかで、「知識課税強化」に対してだけ反対するというのでは、その姿勢はきわめてバランスを欠いていると言わざるをえないのではないでしょうか。

    原発に関する報道でも、マスメディア各社は、電力の供給が需要に追いつかないという、政府や電力会社からリリースされた情報だけを、各社独自の検証を併記することなく、何度も何度も流して、電力不足を煽ったではありませんか。

    米軍普天間飛行場の県外・国外移設も脱原発も、広範な民意の支持を得ていたにもかかわらず、これらを推進しようとした鳩山由紀夫首相(当時)と菅直人首相(当時)の辞任とともに道連れにされ、うやむやになってしまいました。この問題でもメディアが一定の役割を果たしたことは否定できません。

    野田住彦前首相による国会解散すなわち実質的辞任についても同じことが言えるでしょうが、しかし、この場合には、逆に、民意の支持を受けていない消費税増税法の成立が許された後のことです。なんという対照でしょうか。

    「民主主義を支える公共財として一定の要件を備えた新聞」(「声明」)と自認されるのなら、民主主義に反した政策の誘導に手を貸していないか、自ら検証してしかるべきでしょう。

    世論調査に基づき事前に何回も「自民圧勝」と報道したことによって、非自民支持者の投票意欲をそいで史上最低の投票率を招き、また逆に勝ち馬に乗ろうという心理も引き出して、「自民圧勝」の誘因となったのではないでしょうか。メディア各社による選挙の世論調査報道が世論誘導につながっていないかどうかについても、検証が必要だと考えます。

    メディアは、民主党の前首相らに対しては「迷走」「嘘つき」などといった常套語を繰り返し流し、ネガティブキャンペーンと言っていい状態を作り出していました。

    脱原発という大きな世論を受けて前民主党政権が決定した「2039年までの脱原発」との方針を、安倍新政権はあっさりと捨て去りました。公明党は公約で「可能な限り速やかに原発ゼロを目指します」と謳っていたのに、自民党との連立協議の結果、「可能な限り原発依存度を減らす」と変えてしまいました。これでは単に依存度を減らすことにしかならず、明らかな公約違反です。

    それなのに、メディアは、民主党政権時の前首相らに繰り返し投げつけていた「迷走」や「嘘つき」といったレッテル貼りはしません。それどころか、安倍政権は今夏の参院選までは「安全運転」を続けるだろうなどといった言い方をします。あたかも安倍政権が現在、国民にとって安全な状態にあるかのようなポジティブイメージを与え続けています。安倍政権が、実際には、脱原発などの大民意からの「大迷走」であり「大噓つき」の「暴走」状態にあるにもかかわらず、です。

    メディアは、選挙制度や原発、消費税などの重要政治課題に関しては核心部を避けて報道し、自民党・公明党などに有利な方向へ世論を誘導する姿勢を取ってきたと言わざるを得ません。

    参院選に向けては、この他にも、メディアは「アベノミクス」などといった言葉を繰り返し用いて安倍政権の経済政策に対してポジティブイメージを与えようとしています。そういったイメージ言語を提供するのではなく、安倍政権の政策の中身についての分析・批評を、また、自民党・公明党と他の党派の経済政策の異同を解説してくださるようお願いします(違わないのなら「アベノミクス」などとまるで特別な政策であるかのような呼称を使用しても意味がない)。

    自民党改憲案の内容に関しても、メディアは、国防軍の新設や発議要件の緩和といった問題ばかりを伝えていますが、この改憲案は、実は1)平和的生存権、2)国民主権、3)基本的人権、4)天皇制、5)立憲主義、6)地方自治など広範な事項にわたって、現憲法の基本的な考え方に根底的変更を加え、国民生活に広く影響を与えるものです。メディアには、これらを参院選前から批評していく公共的な責任があるのではないでしょうか。

    メディア各社には、「声明」にあるように、「多様な意見・論評を広く国民に提供することによって、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与」されることを願っています。

    御党、御社より本要望書に対してご見解をいただければ幸いです。

    <小選挙区制の下で改憲発議要件を緩和すると改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差が拡大する理由>

    自民党・日本維新の会・みんなの党は2012年衆院選で総定数の76.25%となる366議席を獲得しましたが、比例区得票率の合計は57.72%に過ぎません。自民党単独では比例区得票率27.62%で総定数の61.25%となる294議席を獲得しています。

    およそ想像がつきますが、3党が衆院で3分の2(66%)の320議席を獲得するには、どのくらいの比例区得票率(投票での支持率)が必要でしょうか。

    2012年衆院選の結果をもとに、3党が同じ割合で比例区得票率と小選挙区得票率を落として、3党が計320議席を獲得できるような場合の自民党の比例区の得票率Zを推計してみましょう。

    小選挙区での得票率Xと議席占有率Y(X、Y、Zはいずれも%)の関係を自民党と民主党のデータを使って直線で近似すると、次のようになります。

    Y=3.4653X - 70.045

    3党の比例区議席数は比例区得票率に応じて減り、自民党の小選挙区議席数は上記の式に従い、維新とみんなの小選挙区での獲得議席数は昨年と変わらず18議席と仮定します。

    昨年、自民党は小選挙区得票率が43.01%、比例区得票率が27.62%で、3党の比例区における獲得議席数は計111議席でした。小選挙区の定数は300です。

    (Z/27.62) x 111 + [(Z/27.62) x 3.4653 x 43.01 - 70.045] / 100 x 300 + 18 = 320

    この式を解くと、Zは25.34%となり、対応する3党全体の比例区得票率は52.96%となります。

    つまり、3党が衆院の議席の3分の2を獲得するには、比例区選挙でほぼ2分の1の支持を得るだけよいのです。発議要件「3分の2以上」を「2分の1以上」に緩和したいといっても、小選挙区制を中心とする現行選挙制度のもとでは、有権者の支持という点で、既に「2分の1以上」が実現しているのです。

    議席占有率66%を比例区得票率52.96%で割ると1.24倍となり、これが多くの政党・議員の賛成を求める硬性憲法規定96条の下での改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差の目安となります。

    次に見るように、小選挙区制のもとで発議要件を「2分の1以上」に緩和すると、有権者の4分の1にも満たない支持でも発議できるようになり、国民主権の格差はさらに拡大します。

    自民党は比例区得票率27.62%で比例区・小選挙区全体の61.25%の議席を獲得しました。

    上記と同様に、自民党が衆院の議席の2分の1となる240議席を獲得する場合の自民党の比例区の得票率を推計すると、24.66%となります。

    議席占有率50%を比例区得票率24.66%で割ると2.02倍となり、これがたった1つの政党による発議を許してしまう発議要件「2分の1以上」の下での「国民主権の格差」の目安です。「1票の格差」訴訟(定数是正訴訟)で違憲の目安とされる2倍を超えています。

    自民党などが単独で投票者の4分の1未満の支持でも発議できるようになる一方で、投票者の4分の1超の支持を得ている政党連合(2012衆院選でいえば公明党、共産党、社民党、旧未来など)でも改憲発議できなくなります。これは明白な「改憲発議権の格差」「国民主権の格差」です。

    安倍首相は96条改憲の理屈として、「2分の1に変えるべきだ。国民の5割以上が憲法を変えたいと思っても、国会議員の3分の1超で阻止できるのはおかしい」(4月16日付読売新聞)と述べ、いかにも国民の権利を思ってのように語ります。

    安倍首相は「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」が見られないことを問題にしているわけですが、小選挙区制を中心とする現行選挙制度によって既にそのような事態が生じていることを、まず問題視しなければりません。

    国民の7割以上が脱原発を望んでも、比例区でたった28%の支持しか得ていない自民党が民意の実現を阻止しているのです。現在、国民の5割以上と国民の5割以上の支持を得た国会議員が共に支持している改憲条項はないでしょう。

    国民主権を尊重するなら、国民主権の格差を拡大する96条改憲ではなく、小選挙区制を中心とする現行選挙制度を真っ先に改正しなければなりません。

    民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書実行委員会

    連絡先:
    「平和への結集」をめざす市民の風
    〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46-2 さつき荘201号
    Tel/fax:047-360-1470
    http://kaze.fm/
    join@kaze.fm

    選挙権関連の格差は「定数配分の格差」だけではありません〜「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大する〜

    6月 20th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 8:44:40
    under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) [3] Comments 

    選挙権関連の格差は「定数配分の格差」だけではありません
    〜「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大する〜

    2013年6月20日

     国会では「選挙区間での(有権者数当たりの)定数配分の格差」(メディア用語で「1票の格差」)を是正するための「0増5減」(与党案)や 「18増23減」(みんなの党案)などが議論されています。

     裁判所は選挙権関連の格差を<選挙区間>の「定数配分の格差」だけと判示したわけではありません。

    平成23年(行ツ)第64号 選挙無効請求事件
    平成24年10月17日 大法廷判決
    http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121017181207.pdf
    「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される」(7ページ)

     現行選挙制度は無所属候補の比例区への立候補を認めていません。その結果、政党候補は比例区の180議席と小選挙区の300議席を当選枠として確保できる一方で、無所属候補は小選挙区の300議席しか当選枠がありません。現行選挙制度は無所属候補(とその支持者)に対するあからさまな差別です。

     0増5減なる「格差」是正策は小選挙区の定数だけを削減するもので、無所属候補(とその支持者)に対する差別の拡大に他なりません。だからといって小選挙区と比例区で同議席ずつ削減すれば平等かといえば、そのようなことはありません。

     無所属候補の立候補権とその支持者としての主権者の選挙権を比例区で完全に認めないことは、一種の制限選挙であり、立場の違いによらず立候補権や選挙権を認めた上での「選挙区間での定数配分の格差」より重大です。あるいは、「政党候補(とその支持者)と無所属候補(とその支持者)の間での定数配分の格差」という点で、「選挙区間での定数配分の格差」と同じ構造を持っています。

     「選挙区間」での格差だけを問題にすればよい、という根拠はありません(日本国憲法第14条)。ある種の格差を解消しようとして別の格差を拡大するのは本末転倒というものです。

     メディアの中からも、選挙区間での定数配分の格差以外に、選挙権関連の格差があることを認める記事が出始めています。例えば、読売新聞は、自民党の細田博之衆議院議員が提案している衆院比例区「中小政党優遇枠」を評価するに当たり、<政党間>での「1議席あたりの<得票数>」の格差を用いています。

    自民案、312万票と200万票が同じ議席数に
    http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20130323-OYT1T00298.htm

     産経にいたっては、同案が「政党間での一票の格差」を新たに生み出し、「投票価値の平等」に反すると明確に書いています。

    「選挙制度改革どこまで本気? 有識者に議論を委ねた方が…」:イザ!
    http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/642480/

     「政党間での一票の格差」は何も新しいものではなく、2012衆院選の比例区(全国集計)で、社会民主党は議員1人を当選させるのに自由民主党の4.87倍もの票が必要でした。「政党間での一票の格差」4.87倍は「選挙区間での定数配分の格差」2倍よりはるかに重大です。

    細田案が浮き彫りにする「政党間1票格差」(社民党支持者の1票の価値は、公明党支持者の1票の0.45票分)の違憲性
    http://kaze.fm/wordpress/?p=449

     また、参議院の選挙制度では、選挙区によって小選挙区制および中選挙区制という異なる制度を設定している点が、独自の問題となっています。これは選挙区によって死票率、従って1票の価値の格差を確率的に固定化する差別に他なりません。

     たとえ議員1人当たりの有権者数が多くとも(1票の価値が低いとされる)、1人区の小選挙区より、生票となり1票の価値を確保できる確率が高い5人区などの中選挙区を望む有権者は多いことでしょう。議員1人当たりの有権者数を選挙区間だけで比較しても、1票の価値を比較することにはならないのです。

     選挙区の定数削減が無所属候補(とその支持者)に対する差別を拡大することについては、既に今年3月、各党幹部・選挙制度担当者の方にお知らせしています。

    「国民負担と引き替えの国会議員定数削減」「有権者の権利を縛るネット選挙法案」で各党議員に要望
    http://kaze.fm/wordpress/?p=445

     今回また、その他の類型の格差とともにお示ししました。これらの格差を認識しながら放置・拡大する形の「選挙区間での(有権者数当たりの)定数配分の格差」是正だけに固執されるのであれば、新たな提訴が起こされるだけでしょう。

    「平和への結集」をめざす市民の風
    http://kaze.fm/

    民主党:歴史修正主義者の放逐という真の「身を切る」改革で自民と対抗を

    6月 12th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 16:39:04
    under 一般 No Comments 

    民主党:歴史修正主義者の放逐という真の「身を切る」改革で自民と対抗を

    2013年6月12日

    民主党執行部の皆さま

     自由民主党との差別化に苦心している様子がありありと実感されます。橋下徹大阪市長ら日本維新の会の従軍慰安婦をめぐる発言に対して攻勢的な批判が貴党から聞こえてこないのも、その苦心と理由を同じくしているように思われてなりません。

     それもそのはず。貴党の中にも従軍慰安婦制度の強制性を否定する歴史修正主義者が少なからずいるからです。

    村野瀬玲奈の秘書課広報室 |民主党 慰安婦問題と南京事件の真相を検証する会(仮称)呼びかけ人国会議員 名簿 (衆議院・参議院混合、五十音順) (2007年3月7日)
    http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-119.html
    村野瀬玲奈の秘書課広報室 |2007年6月14日 ワシントンポスト紙 従軍慰安婦(性奴隷)強制文書否定広告署名国会議員(衆議院、参議院、五十音順) (2007年6月15日作成) 和文表記
    http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-266.html
    日本軍「慰安婦」 強制を否定/安倍首相が賛同/米紙に意見広告 4閣僚も/国内外の批判は必至/昨年11月
    http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-06/2013010601_01_0.html

     上記リストに名を連ねてはいないものの、野田佳彦前首相も、慰安婦制度の強制性を認めた河野談話に関し「強制連行したとの記述を文書で確認できず日本側の証言もないが、いわゆる従軍慰安婦の聞き取りを含めて談話ができた背景がある」(2012年8月28日産経)と述べ、橋下氏と同じ認識を一部共有しています。また、首相就任前にも「日本の首相の靖国神社参拝や歴史教科書に対して中国や韓国は必ず干渉してくる。事あるごとに中国は南京大虐殺を持ち出し、韓国は従軍慰安婦を持ち出すが、そのたびに日本政府は頭を垂れて謝罪を繰り返している有様だ」(2012年8月18日産経)とも語っています。

     この野田前首相による橋下発言批判で唯一確認できるのが、自身の公式サイトの「かわら版」に掲載した「ナショナリストを気取ったポピュリストの軽口は国益を損ねます」という認識です。これも橋下発言と通底するもので、元慰安婦の方々、沖縄県民の気持ちに寄り添う姿勢がまったく見られません。

    かわら版 No.907 『56歳の決意』
    http://www.nodayoshi.gr.jp/leaflet/detail/21.html

     「売春婦がウヨウヨ」「(社会民主党時代の辻元清美衆議院議員らに対して)お前が強姦されとってもオレは絶対に救っとらんぞ」の西村真悟衆議院議員も貴党の仲間でした。

     自党を含む日本の上位3政党すべてに、首相経験者・(共同)代表・党首を含め、「慰安所」を実際に設営した者、従軍慰安婦制度の強制性ないし「強制連行」を否定する歴史修正主義者がいるという悲惨な事態を認識しておられるのでしょうか。

    「海軍航空基地第二設営班資料」と慰安所開設における中曽根元総理の「取計」に関する質問主意書(2013年5月16日、辻元清美衆議院議員)
    http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a183081.htm
    安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問主意書(中曽根康弘元首相による慰安所の設立・運営、2007年3月8日、辻元清美衆議院議員)
    http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166110.htm
    「海軍航空基地第二設営班資料」原資料
    http://fujihara.cocolog-nifty.com/tanoshi/2011/10/post-191b.html
    http://fujihara.cocolog-nifty.com/tanoshi/2011/10/post-4383.html

     おそらく認識されているからこそ、また慰安婦制度以外でも多くの政策で自民党との共通点がある議員を抱えているからこそ、来る参院選に向けて本来なら格好の攻撃材料になるにもかかわらず、分家たる日本維新の会はおろか、歴史修正主義の本家本元たる自民党との差別化を図る言説に切れ味がないのです。

     本来であれば、貴党などの言論によって、自民党は維新と共に支持率が急落しておかしくないのです。そうならない状況は日本の政治にとって不幸というしかありません。これがこの先、何十年も続くというのでしょうか。

     やりきれなさ、閉塞感に包まれている理由は自民党だけにあるのではありません。「自由民主党」が自由とも民主主義とも正反対の党でありながら、 よくもぬけぬけと、本来は燦然たる輝きを放っているはずのこの大切な言葉を「乗っ取って」(アーサー・ビナード氏)いることと相似している党が、第2党の地位を占めているからです。

     自民党にも思い切って提案しました。貴党は率先して党内の歴史修正主義者を切り捨てるべきではありませんか。

     思えば日本の政治には誇りというものがありません。真の誇りとは、ドイツが全世界に示し得たように、たとえ己の恥部であろうと、 過去の事実は事実として正確に認め、 謝罪すべきところはきっぱり謝罪できる力を持つことです。この力を欠いているからこそ、不名誉の上塗りにしかならない歴史修正主義に頼るのでしょう。

     このような真の誇りを持ちえない空っぽの政治に、私たち有権者は嫌気がさし、心の底から、真に誇りある政治を渇望しているのです。

     自民党と対抗するのに、政治への絶望そのものを克服する方向へ行くのではなく、有権者の健全な欲求の発現を抑圧する形で、ポピュリズムに頼ろうと野党が競い合う様は、現在の政治を象徴していて、不幸そのものです。

    石破氏「ポピュリズムだ」…野党の定数削減案に
    http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20130602-OYT1T00533.htm

     自民党と対抗するための切り札は、結局は有権者を裏切ることになる手練手管を弄するのではなく、有権者の心の底の欲求を呼び覚ますことができるよう、世論をがらっと変える改革に打って出ることでしょう。

    社会民主党執行部のみなさんへ: 世論をがらっと変える選挙協力を
    http://kaze.fm/wordpress/?p=459

     党内の歴史修正主義者を切り捨て、反歴史修正主義の野党統一候補を擁立することが、貴党にとっても日本の政治にとっても再生の重要な切り札になるはずです。

     上記のリストによれば、今夏の参院選で改選を迎える歴史修正主義議員は、大江康弘(無所属、辞職して自由民主党から比例区で出馬へ)、世耕弘成(和歌山)、塚田一郎(新潟)、西田昌司(京都)、江藤晟一(比例)、義家弘介(比例)(以上、自民党)、中山恭子(比例、日本維新の会)の各氏です。比例区を除けばわずか3選挙区ですから、他の野党との選挙協力がまったく不可能とはいえないでしょう。

     橋下発言でがたがたしている日本を尻目に、ドイツは誇りある政治を黙々と執行しています。

    ドイツがまたナチス被害者に賠償、日本はこれを見て恥ずかしいと思わないのか?―中国紙 (XINHUA.JP)
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130602-00000020-xinhua-cn

     先の大戦の被害者が生存しているうちに成し遂げるべき課題がある中で、憲法でも何でも「対抗できない政治」で貴党がもたもたしている暇はないのではありませんか。

    「平和への結集」をめざす市民の風
    http://kaze.fm/

    分家の従軍慰安婦発言が批判され、歴史修正主義の本家本元がお咎めなし?

    6月 5th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 10:15:20
    under 一般 1 Comment 

    分家の従軍慰安婦発言が批判され、歴史修正主義の本家本元がお咎めなし?

    2013年6月5日

    自由民主党幹事長・衆議院議員 石破茂様

     従軍慰安婦をめぐる橋下発言によって、来る参院選においては「日本維新の会」が不利となり「自由民主党」が有利になったという見かたがあります。現に渡辺「みんなの党」代表までが「独り勝ちした後の自民党の先祖返り」を懸念しているようです。
     いい気分でしょうか? これで参院選はとったとお思いでしょうか? もし本気でそう思っておられるのだとしたら、おめでたい。

    (橋下発言について)「日本の過去の歴史に関し、不適切な発言を繰り返し、周辺諸国に誤解と不信を招いた」「安倍政権は、そのような発言や歴史認識にくみするものではない」(小野寺五典防衛相、時事通信 6月1日)

     貴党の橋下発言批判は「目くそ鼻くそを嗤う」のたぐいで、橋下発言の本家本元は安倍自民党なのだと炯眼の士はとうに見抜いています。炯眼の士でなくても、それくらいのことはだれにもわかります。

     根も葉もないことだと、もし仰るのでしたら、残念ながら、政党としての見識に欠けると言わざると得ない。いえ、黒を白と言いくるめる詐術にすぎないでしょう。

     貴党が橋下発言を批判するのは、諸外国、とりわけアメリカ合衆国からこの発言に対する批難が相次ぎ、わが身に火の粉が降りかかってきそうになると判断するからではありませんか。

     安倍首相は2007年、米国議会下院で慰安婦問題に関して日本政府に謝罪を求める決議案が準備されていることを受け、国内向けに「米決議があったから、我々が謝罪するということはない」(下記辻元清美衆議院議員2007年3月8日質問主意書)と語り、ブッシュ前米大統領と4月に会談した際、慰安婦問題について「ブッシュ大統領が『首相から釈明があった』と発言した」との辻元清美衆院議員の指摘を否定しておきながら、「元慰安婦の方々に、首相として心から同情し、申し訳ないという気持ちでいっぱいだ」と同前米大統領に発言したとの答弁書を決定しました(毎日新聞 5月18日)。

     ところが、米国大統領に釈明した安倍首相は2012年、多数の自民党国会議員などとともに、従軍慰安婦制度の強制性を否定する意見広告を米紙に出したのです。

    日本軍「慰安婦」 強制を否定/安倍首相が賛同/米紙に意見広告 4閣僚も/国内外の批判は必至/昨年11月
    http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-01-06/2013010601_01_0.html
     
     2007にも既に同じ意見広告がやはり多数の貴党国会議員などによって米紙に出されています。

    村野瀬玲奈の秘書課広報室 |2007年6月14日 ワシントンポスト紙 従軍慰安婦(性奴隷)強制文書否定広告署名国会議員(衆議院、参議院、五十音順) (2007年6月15日作成) 和文表記
    http://muranoserena.blog91.fc2.com/blog-entry-266.html
     
     その後も安倍首相らは従軍慰安婦制度の強制性を認めた河野談話を見直す考えを示し、米国による批判を受けて同談話をしぶしぶ継承すると決定したのです。橋下氏が風俗店の活用発言を米国に謝罪したのも、こうした安倍首相らの精神性をそっくりなぞるものです。

     このように安倍首相らは米国向けには本音を否定して、またさらけ出すということを繰り返してきました。

     言いかえれば、貴党は、このところ「国民感情」が貴党のもともと望んでいた方向へ動きだしていることに気をよくして、かなり「思い切った」政治的発言をもって「国民感情」のいっそうの誘導をこころみてきたのではないでしょうか。橋下・石原といったひとたちの言説をも巧みにとりこみ利用してきたのではなかったでしょうか。

     そこでハプニングがおこった。おなじスタートラインに並んだ仲間からフライングする走者が出たのですね。老獪さを欠いた青二才が、血気にはやって、本来なら小出しにすべきことがらを一挙に出してしまった。正直すぎたってわけです。

     橋下発言とは、貴党の総裁である安倍晋三氏が慰安婦問題に関してくりかえし発言してきた認識に誘発されて出て来たものです。日本が国家として女性を脅迫・拉致して性奴隷にしたと諸外国から非難されるような不名誉をこうむった原因は河野談話にあるのだから、これは見なおさなければいけないなどといった発言は、安倍晋三氏の物言いを真似たというより、鸚鵡返しにくりかえしたにすぎないのではなかったか。

     実際、辻元清美衆議院議員が指摘しているように、安倍首相は第1次内閣で2007年に「軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」とする答弁書を「初めて」閣議決定した、「閣議決定を多くの人たちは知らない。河野談話を修正したことをもう一度確定する必要がある」と虚偽を述べ、この虚偽を橋下氏が借用したのです(ほぼ同じ内容の閣議決定は1997年に橋本内閣が行っている)。

    橋下徹大阪市長の慰安婦を巡る発言の背景となった安倍首相の「閣議決定」に関する発言について
    http://www.kiyomi.gr.jp/blogs/2013/05/23-933.html

     要するに橋下発言は自由民主党の本音を増幅吹聴してまわったにすぎません。橋下氏は貴党の拡声器だった。貴党が歴史修正主義の本家本元であり、そこを出自とする「従軍慰安婦は自ら身体を売って稼いでいた」の石原慎太郎氏、「従軍慰安婦は戦地売春婦」の平沼赳夫氏、「化けの皮がはがれた」中山成彬氏を擁する日本維新の会は、貴党の分家に他ならないのです。

     こういった解釈に、もしご不満であるのなら、貴党は、たんに橋下発言を批判するポーズをとり国民を欺くことによって、自党の支持率上昇を計ろうなどといったさもしい根性は棄てて、歴史修正主義の本家本元の店じまいを明瞭に宣言すべきではないでしょうか。

     具体的には、「軍や官憲によるいわゆる強制連行」に関して国会議員から出されている質問主意書に改めて誠実に答えるとともに(2007年の質問から6年が経過した2013年の同じ内容の質問を調査していないのは、極めて不誠実)、上記意見広告に賛同した貴党議員を除名することではないでしょうか。

    安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する再質問主意書(「旧オランダ領東インドにおけるオランダ人女性に対する強制売春」資料、2007年4月10日、辻元清美衆議院議員)(ほぼ同じ内容の2013年の質問: http://goo.gl/kKwE0
    http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166168.htm

    バタビア臨時軍法会議の証拠資料と安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問主意書(2007年5月28日、辻元清美衆議院議員)(ほぼ同じ内容の2013年の質問: http://goo.gl/kKwE0
    http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166266.htm

    陸軍中尉による強制的な慰安婦の徴用(2013年4月23日、紙智子参議院議員の質問主意書)
    http://unitingforpeace.seesaa.net/article/364811549.html

    「海軍航空基地第二設営班資料」と慰安所開設における中曽根元総理の「取計」に関する質問主意書(2013年5月16日、辻元清美衆議院議員)
    http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a183081.htm
    安倍首相の「慰安婦」問題への認識に関する質問主意書(中曽根康弘元首相による慰安所の設立・運営、2007年3月8日、辻元清美衆議院議員)
    http://www.shugiin.go.jp/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a166110.htm
    「海軍航空基地第二設営班資料」原資料
    http://fujihara.cocolog-nifty.com/tanoshi/2011/10/post-191b.html
    http://fujihara.cocolog-nifty.com/tanoshi/2011/10/post-4383.html

    「平和への結集」をめざす市民の風
    http://kaze.fm/

    「民意と乖離しない政治・報道を求める要望書」第2回会合のお知らせ

    6月 1st, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 16:55:47
    under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) , 96条改憲 1 Comment 

    小選挙区で56%もの票が死票となり、諸々の政策で完全に民意と乖離した結果をもたらした2012年衆議院選挙を受けても、国会議員は平等な国民主権の保障に取り掛かろうとしません。それどころか、国民主権の格差を拡大する96条改憲を狙っています。メディアにしても、本来は暴走運転なのに安倍政権を安全運転と形容するなど、不公正な報道をしています。

    国民主権と民主主義に背を向ける政党とメディアに対して、基礎的な要求を突き付けていくことが必要だと考え、要望書をまとめ、政党・メディアと懇談する機会を作るための取り組みを始めました。

    第1回目の相談会を2月に開催しましたが、下記の要領で第2回を開催します。皆さんのご参加を呼び掛けます。

    第1回目の後、要望書案の内容を修正しました。主に2点あります。

    まず、「定数是正訴訟」(マスメディア用語で「1票の格差訴訟」)の広島高裁岡山支部判決で、「『国民の多数意見と国会の多数意見の一致』をもって国民主権が保障できる」と判断されたことから、この考え方を援用しています。また、小選挙区制の下で改憲発議要件を緩和すると国民主権の格差が拡大する理由を詳細に説明しました。

    日時 : 2013年6月8日(土)午後6時30分〜9時
    会場 : 明石町区民館5号室

    住所 : 東京都中央区明石町14番2号
    TEL : 03-3546-9125
    アクセス : 東京メトロ日比谷線築地駅下車3番出口 徒歩7分
    東京メトロ有楽町線新富町駅下車4番出口 徒歩10分
    都バス
    「東15甲・乙 東京駅八重洲口−深川車庫」
    聖路加病院前下車 徒歩1分
    中央区コミュニティバス(江戸バス)
    [南循環]聖路加国際病院5番 3分程
    地図:http://chuo7kuminkan.com/about/akashi.html
    日比谷線築地駅の場合、3番出口を出て、日刊スポーツ新聞社と聖路加国際病院を通過し、信号を渡り直進、区立リサイクルハウス「かざぐるま」の奥隣り。

    呼び掛け :民意と乖離しない政治・報道を求める要望書実行委員会準備会

    連絡先:
    「平和への結集」をめざす市民の風
    〒271-0076 千葉県松戸市岩瀬46-2 さつき荘201号
    http://kaze.fm/
    join@kaze.fm
    tel/fax:047-360-1470

    「民意と乖離しない政治・報道を求める要望書」案

    ファイル(Word)はこちら:
    「民意と乖離しない政治・報道を求める要望書」案(6月1日)
    http://kaze.fm/documents/Request%20to%20Parties%20and%20Media(20130601).doc

    要望書タイトルに「僕も私も無視された」を追加する案も。

    タイトル案:政党とメディアに対する要望書:96条改憲による国民主権の格差の拡大より平等な国民主権の保障を/民意からの「迷走」内閣にふさわしい報道を

    要旨:

    [政党へ]

    2012年12月の衆院選は、原発・憲法・消費税などの最重要政策に関して民意と結果がことごとく乖離した異常な選挙。小選挙区での死票率は56.0%で、投票者2人に1人以上の票の価値がゼロ、すなわち平等な国民主権が保障されていない。

    「国民の厳粛な信託」(憲法前文)を越えた権限の行使が、一般法の立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)にまで拡大されようとしている。現選挙制度のまま改憲発議要件を緩和することは、改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差をさらに拡大してしまう(1.24倍から2.02倍へ)。

    政党・国会議員は、真っ先に平等な国民主権の保障(選挙制度と公職選挙法の抜本的な改正)に取り掛かり、脱原発などの民意を反映した政治を行うべき。

    [メディアへ]

    民主党の前首相らに対しては「迷走」「嘘つき」、安倍現首相に対しては「アベノミクス」「安全運転」。安倍政権は既に脱原発という大民意からの「大迷走」であり「大噓つき」(公明党は脱原発の公約を選挙後に脱原発依存に変更)の「暴走」状態にある。メディアは不公正なレッテルやイメージ言語の提供ではなく、多様で公正な見解の提供に努めるべき。

    「自民圧勝」の事前予測が選挙結果に与えた影響などについて、独自に検証を行うべき。

    自民党改憲案が国防軍の新設や発議要件の緩和だけでなく、1)平和的生存権、2)国民主権、3)基本的人権、4)天皇制、5)立憲主義、6)地方自治など、広範な事項に及び、現憲法の基本的な考え方に根底的変更を加え、国民生活に広く影響を与えるものであることを、参院選の前から批評していくべき。

    本文:

    2012年の衆議院選挙は、異常な選挙でした。戦後最低の投票率(小選挙区)59.3%が強調されていますが、小選挙区での死票率が56.0%という異常な数値を示したことこそ、民主主義政治の基盤をゆるがすものとして、もっと強調されるべきであると考えます。

    自民党の比例区得票率は27.6%で、民主党にぼろ負けした2009年衆院選のときの26.7%とほとんど変わっていません。これでは、自民党が有権者の支持を回復したなどとは言えないでしょう。にもかかわらず政権奪取を成し遂げることができたのは、民主党政権に対する国民の幻滅に加えて、小選挙区制の弊害が新党の増加といった外的事情で増幅され、民意をはるかに超える議席を獲得したからです。

    選挙直後の世論調査でも「自民の政策を支持」はわずか7%しかなく(12月18日付朝日新聞)、最も重要な政策(原発推進、憲法9条の改変、集団的自衛権に関する政府解釈の変更、憲法改正要件の緩和、消費税増税、公共事業費の増額、米軍普天間飛行場の辺野古への移設、オスプレイの沖縄への配備など)に関しては民意と選挙結果がことごとく乖離しています。

    直近の世論調査でも同様で、朝日新聞が2013年5月2日付で発表した憲法世論調査の結果によれば、96条改憲反対、9条改憲反対、非核3原則の見直し反対、武器輸出の拡大反対、武力行使を伴う国連軍への自衛隊の参加反対、自衛隊の国防軍化反対、集団的自衛権の行使反対、定数配分の格差(マスコミ用語では1票の格差)が是正されないままでの改憲発議反対が、民意なのです。

    2012年衆院選は憲法前文が要請する「正当な選挙」や「国民の厳粛な信託」という議会制民主主義を保障する選挙の本質から完全に逸脱しています。

    このように悲惨な結果を2012年衆院選がもたらした後であっても、なお、現行の選挙制度を改正して主権者に平等な国民主権を保障しようといった機運は、メディアが盛んに報道しているような政党からは、いっこうに出てきません。

    選挙制度それ自体だけではありません。公職選挙法は、立候補の段階から選挙運動までがんじがらめに制限しています。インターネット選挙「解禁」でも有権者の権利は制限されたままになっています。国民主権が極度に毀損されているのです。

    こうした状況で、投票者の2分の1の支持も得ていない政党が一般法を成立させることだけでも問題なのに、まして、投票者の3分の2の支持を得ていない政党が、改憲発議を行うための要件(衆参各院議員の3分の2以上の賛成を要するという要件)の緩和を狙うとはなにごとでしょう。

    憲法とは、国家運営の要路にある権力者たちが民意に背かないように、国民が国家(の要路者)に与える命令です(立憲主義)。このように重要な法であるからこそ、それを変更しようとする改憲発議には各院議員の3分の2以上の賛成を要するという厳しいハードルを敢えて設けて(硬性憲法規定96条)、改憲プロセスには立法プロセスより厳格な国民主権原理の適用を求めているのです。

    にもかかわらず、一部の政党・議員は、平等な国民主権の保障(選挙制度と公職選挙法の抜本的な改正)はほったらかしにしたまま、「国民の厳粛な信託」を越えた権限の行使を一般法の立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)にまで拡大しようとしています。

    広島高裁岡山支部は2012年衆院選の「定数是正訴訟」で、「『国民の多数意見と国会の多数意見の一致』をもって国民主権が保障できる」と判断しました。

    「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」という条件は、憲法前文にある「国民の厳粛な信託」を客観化・定量化した1つの条件といえ、この条件を満たさない小選挙区制は国民主権を保障しない、ということになるでしょう。

    小選挙区制のもとでは、国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離(客観的指標は各党の議席占有率を比例区得票率で割った値)が生じるのです。国民の間どうしから見れば、「国民主権の格差」が存在する、ということになります。

    「国民の厳粛な信託」を越えた権限は、「違憲権限」というべきです。

    このように平等な国民主権を保障しない法のもとで、はたして、民主主義政治が成り立つでしょうか。

    特に、小選挙区制を中心とする現行選挙制度のまま改憲発議要件を緩和することの意味は、重層的に深刻です。違憲権限の行使の領域が立法プロセスから改憲プロセス(改憲発議)へと拡大するにとどまらず、改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差が拡大してしまうからです(理由は最後に詳述)。

    このような改憲発議はまさに「壊憲」発議とも言うべきでものであり、国民主権をさらに切り縮めるという点で、首長の権限を著しく強化しようという動きと軌を一にするものではないでしょうか。

    各党のみなさん、国会議員のみなさんにお願いします。なによりもまず、国民主権の平等性を保障してください。公職選挙法の全面改正に取り掛かってください。と同時に、脱原発などの民意を政治に反映させてください。

    なお、議員定数の削減について申し上げるなら、国民の多様な意思を国会にできるだけ的確に反映させるためには、しかるべき議員定数が必要であり、日本の議員定数は国際比較すると大幅に少ないことから、定数削減の必要性はまったくありません。

    現行制度のまま小選挙区の定数を削減するなら無所属候補(およびその支持者)に対する差別を拡大することに他ならず、比例区での削減なら少数政党(およびその支持者)に対する差別の拡大に他なりません。このように差別を押し付けるやりかたは、よしんば民意であるとしても、民意とは認められません。

    国会議員自身が率先して「身を切らなければならない」などといった議論があります。政治家の「身切り論」は虚偽であり、身を切られるのは、代表を選ぶ権利を縮減されてしまう一般国民の方です。こうした「身切り論」が日本国以外の国々から、いったい、どのように見られているのか。このような点についてもご配慮をお願いしたいものです。

    メディアも必要な情報をきちんと国民に伝えているとは言えないのではないでしょうか。なるほど、選挙区がどこかによって「1票の重み」に格差があるという問題点は指摘することがあっても(ちなみに、これは「地域」を代表する上での格差であって、「主権者」における1票の格差とは、厳密には言えないでしょう)、もっと本質的な問題すなわち政党間の1票格差(議員1人を当選させるために必要な票数の違いとして定義され、たとえば、2012年衆院選の比例区では、社民党が自民党の4.87倍)や、 生票と死票との間の1票格差などを強調することはありません。

    仮に選挙区のあいだでの1票格差が解消したとしても、小選挙区制を中心とする現行選挙制度をこのまま放っておくなら、主権者の間に1票の格差のある状態も、国民主権と乖離した政治が行われていく問題も、決して解決されはしないのです。

    日本新聞協会は1月15日の「軽減税率を求める声明」で「多様な意見・論評を広く国民に提供する」のが新聞の役割であるとしていますが、各紙は選挙制度や1票格差の報道に限っても、上記のように重要な論点を提示できていません。

    軽減税率を求める声明||声明・見解|日本新聞協会
    http://www.pressnet.or.jp/statement/130116_2234.html
    http://www.pressnet.or.jp/statement/pdf/keigen_zeiritsu.pdf

    さて、この「声明」は、新聞が「民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与」するとして、新聞などに対する「知識課税強化」に反対するものです。

    しかしながら、たとえば消費税増税の必要性に関して説得力のある論評がどこにも見あたらないなかで、「知識課税強化」に対してだけ反対するというのでは、その姿勢はきわめてバランスを欠いていると言わざるをえないのではないでしょうか。

    原発に関する報道でも、マスメディア各社は、電力の供給が需要に追いつかないという、政府や電力会社からリリースされた情報だけを、各社独自の検証を併記することなく、何度も何度も流して、電力不足を煽ったではありませんか。

    米軍普天間飛行場の県外・国外移設も脱原発も、広範な民意の支持を得ていたにもかかわらず、これらを推進しようとした鳩山由紀夫首相(当時)と菅直人首相(当時)の辞任とともに道連れにされ、うやむやになってしまいました。この問題でもメディアが一定の役割を果たしたことは否定できません。

    野田住彦前首相による国会解散すなわち実質的辞任についても同じことが言えるでしょうが、しかし、この場合には、逆に、民意の支持を受けていない消費税増税法の成立が許された後のことです。なんという対照でしょうか。

    「民主主義を支える公共財として一定の要件を備えた新聞」(「声明」)と自認されるのなら、民主主義に反した政策の誘導に手を貸していないか、自ら検証してしかるべきでしょう。

    世論調査に基づき事前に何回も「自民圧勝」と報道したことによって、非自民支持者の投票意欲をそいで史上最低の投票率を招き、また逆に勝ち馬に乗ろうという心理も引き出して、「自民圧勝」の誘因となったのではないでしょうか。メディア各社による選挙の世論調査報道が世論誘導につながっていないかどうかについても、検証が必要だと考えます。

    メディアは、民主党の前首相らに対しては「迷走」「嘘つき」などといった常套語を繰り返し流し、ネガティブキャンペーンと言っていい状態を作り出していました。

    脱原発という大きな世論を受けて前民主党政権が決定した「2039年までの脱原発」との方針を、安倍新政権はあっさりと捨て去りました。公明党は公約で「可能な限り速やかに原発ゼロを目指します」と謳っていたのに、自民党との連立協議の結果、「可能な限り原発依存度を減らす」と変えてしまいました。これでは単に依存度を減らすことにしかならず、明らかな公約違反です。

    それなのに、メディアは、民主党政権時の前首相らに繰り返し投げつけていた「迷走」や「嘘つき」といったレッテル貼りはしません。それどころか、安倍政権は今夏の参院選までは「安全運転」を続けるだろうなどといった言い方をします。あたかも安倍政権が現在、国民にとって安全な状態にあるかのようなポジティブイメージを与え続けています。安倍政権が、実際には、脱原発などの大民意からの「大迷走」であり「大噓つき」の「暴走」状態にあるにもかかわらず、です。

    メディアは、選挙制度や原発、消費税などの重要政治課題に関しては核心部を避けて報道し、自民党・公明党などに有利な方向へ世論を誘導する姿勢を取ってきたと言わざるを得ません。

    参院選に向けては、この他にも、メディアは「アベノミクス」などといった言葉を繰り返し用いて安倍政権の経済政策に対してポジティブイメージを与えようとしています。そういったイメージ言語を提供するのではなく、安倍政権の政策の中身についての分析・批評を、また、自民党・公明党と他の党派の経済政策の異同を解説してくださるようお願いします(違わないのなら「アベノミクス」などとまるで特別な政策であるかのような呼称を使用しても意味がない)。

    自民党改憲案の内容に関しても、メディアは、国防軍の新設や発議要件の緩和といった問題ばかりを伝えていますが、この改憲案は、実は1)平和的生存権、2)国民主権、3)基本的人権、4)天皇制、5)立憲主義、6)地方自治など広範な事項にわたって、現憲法の基本的な考え方に根底的変更を加え、国民生活に広く影響を与えるものです。メディアには、これらを参院選前から批評していく公共的な責任があるのではないでしょうか。

    メディア各社には、「声明」にあるように、「多様な意見・論評を広く国民に提供することによって、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に大きく寄与」されることを願っています。

    御党、御社より本要望書に対してご見解をいただければ幸いです。

    <小選挙区制の下で改憲発議要件を緩和すると改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差が拡大する理由>

    自民党・日本維新の会・みんなの党は2012年衆院選で総定数の76.25%となる366議席を獲得しましたが、比例区得票率の合計は57.72%に過ぎません。自民党単独では比例区得票率27.62%で総定数の61.25%となる294議席を獲得しています。

    およそ想像がつきますが、3党が衆院で3分の2(66%)の320議席を獲得するには、どのくらいの比例区得票率(投票での支持率)が必要でしょうか。

    2012年衆院選の結果をもとに、3党が同じ割合で比例区得票率と小選挙区得票率を落として、3党が計320議席を獲得できるような場合の自民党の比例区の得票率Zを推計してみましょう。

    小選挙区での得票率Xと議席占有率Y(X、Y、Zはいずれも%)の関係を自民党と民主党のデータを使って直線で近似すると、次のようになります。

    Y=3.4653X - 70.045

    3党の比例区議席数は比例区得票率に応じて減り、自民党の小選挙区議席数は上記の式に従い、維新とみんなの小選挙区での獲得議席数は昨年と変わらず18議席と仮定します。

    昨年、自民党は小選挙区得票率が43.01%、比例区得票率が27.62%で、3党の比例区における獲得議席数は計111議席でした。小選挙区の定数は300です。

    (Z/27.62) x 111 + [(Z/27.62) x 3.4653 x 43.01 - 70.045] / 100 x 300 + 18 = 320

    この式を解くと、Zは25.34%となり、対応する3党全体の比例区得票率は52.96%となります。

    つまり、3党が衆院の議席の3分の2を獲得するには、比例区選挙でほぼ2分の1の支持を得るだけよいのです。発議要件「3分の2以上」を「2分の1以上」に緩和したいといっても、小選挙区制を中心とする現行選挙制度のもとでは、有権者の支持という点で、既に「2分の1以上」が実現しているのです。

    議席占有率66%を比例区得票率52.96%で割ると1.24倍となり、これが多くの政党・議員の賛成を求める硬性憲法規定96条の下での改憲発議における国民主権と「国民の厳粛な信託を受けた議員権限」の乖離、従って国民主権の格差の目安となります。

    次に見るように、小選挙区制のもとで発議要件を「2分の1以上」に緩和すると、有権者の4分の1にも満たない支持でも発議できるようになり、国民主権の格差はさらに拡大します。

    自民党は比例区得票率27.62%で比例区・小選挙区全体の61.25%の議席を獲得しました。

    上記と同様に、自民党が衆院の議席の2分の1となる240議席を獲得する場合の自民党の比例区の得票率を推計すると、24.66%となります。

    議席占有率50%を比例区得票率24.66%で割ると2.02倍となり、これがたった1つの政党による発議を許してしまう発議要件「2分の1以上」の下での「国民主権の格差」の目安です。「1票の格差」訴訟(定数是正訴訟)で違憲の目安とされる2倍を超えています。

    自民党などが単独で投票者の4分の1未満の支持でも発議できるようになる一方で、投票者の4分の1超の支持を得ている政党連合(2012衆院選でいえば公明党、共産党、社民党、旧未来など)でも改憲発議できなくなります。これは明白な「改憲発議権の格差」「国民主権の格差」です。

    安倍首相は96条改憲の理屈として、「2分の1に変えるべきだ。国民の5割以上が憲法を変えたいと思っても、国会議員の3分の1超で阻止できるのはおかしい」(4月16日付読売新聞)と述べ、いかにも国民の権利を思ってのように語ります。

    安倍首相は「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」が見られないことを問題にしているわけですが、小選挙区制を中心とする現行選挙制度によって既にそのような事態が生じていることを、まず問題視しなければりません。

    国民の7割以上が脱原発を望んでも、比例区でたった28%の支持しか得ていない自民党が民意の実現を阻止しているのです。現在、国民の5割以上と国民の5割以上の支持を得た国会議員が共に支持している改憲条項はないでしょう。

    国民主権を尊重するなら、国民主権の格差を拡大する96条改憲ではなく、小選挙区制を中心とする現行選挙制度を真っ先に改正しなければなりません。

    民意と乖離しない政治・報道を求める要望書実行委員会準備会

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