1982年の国会における選挙制度(差別的な政党要件と参議院拘束名簿式比例代表制)の審議

第23回参議院選挙無効請求訴訟( http://kaze.fm/wordpress/?p=478 )の第2回口頭弁論が11月21日午後3時30分から東京高裁511号法廷(5階)であります。傍聴をよろしくお願いします。

所在地(東京高等裁判所)
http://www.courts.go.jp/tokyo-h/about/syozai/tokyomain/

被告の答弁書に対する準備書面の作成のために、過去の国会審議を調べています。

以下は、現在の公職選挙法第八十六条の三の差別的な政党要件とほぼ同じ規定と、参議院拘束名簿式比例代表制の導入を盛り込んだ「公職選挙法の一部を改正する法律案(参議院提出、第九十五回国会参法第一号)」の審議の様子の一端です。同案とその審議の不当性が明らかです。

現公職選挙法(参議院比例代表選出議員の選挙における名簿による立候補の届出等)
第八十六条の三  参議院(比例代表選出)議員の選挙においては、次の各号のいずれかに該当する政党その他の政治団体は、当該政党その他の政治団体の名称(一の略称を含む。)及びその所属する者(当該政党その他の政治団体が推薦する者を含む。第九十八条第三項において同じ。)の氏名を記載した文書(以下「参議院名簿」という。)を選挙長に届け出ることにより、その参議院名簿に記載されている者(以下「参議院名簿登載者」という。)を当該選挙における候補者とすることができる。
一  当該政党その他の政治団体に所属する衆議院議員又は参議院議員を五人以上有すること。
二  直近において行われた衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙若しくは比例代表選出議員の選挙又は参議院議員の通常選挙における比例代表選出議員の選挙若しくは選挙区選出議員の選挙における当該政党その他の政治団体の得票総数が当該選挙における有効投票の総数の百分の二以上であること。
三  当該参議院議員の選挙において候補者(この項の規定による届出をすることにより候補者となる参議院名簿登載者を含む。)を十人以上有すること。

国会会議録検索システム
http://kokkai.ndl.go.jp/

(1)公職選挙法改正に関する特別委員会――公職選挙法の一部を改正する法律案(参議院提出、第九十五回国会参法第一号)、96-参-公職選挙法改正に関する…-12号、昭和57年06月24日

長谷川正安参考人(名古屋大学教授)
「その第一は、二つの法案が規制の対象としている国民の選挙権、被選挙権が日本国憲法が保障する基本的人権であるかどうかという根本的な問題であります。
 結論から申しますと、フランス大革命が高揚した一七九三年六月二十四日に憲法が制定されておりますが、これはもちろん国民主権の憲法でありますが、この憲法には人及び市民の権利の宣言、いわゆる人権宣言というものが付せられておりますが、その人権宣言の第二十九条で選挙権が人権の一つであることが明記されております。そういう二百年前の事実から始まって、今日国際的に認められている国際人権規約、自由権の第一にある自由権規約の中でも選挙権が人権の一つとして認められております。一般的にいえば、参政権とりわけ国民が立法のためにその代理人を選任する選挙権が基本的人権の一つであるということは、私の勉強した限りでは、憲法の歴史から見ましても、また現在の比較憲法的観点から見てもほとんど異論なく承認されていると思われます。」
「選挙権の本質が公の務め、公務であるとかあるいは公の義務であるというのは、人権思想に対立する戦前の国家主義的な思想が強かった時代の法律論の名残りでしかありません。国民主権に基づく憲法の歴史では、選挙権は主権的な人権であるとして、自由権や社会権に比べてさえより重要なものとして認める憲法学者もいるくらいです。
 このように考えますと、今回の公職選挙法の改正は、憲法の改正、特に人権規定の改正にも当たる重大な意味を持っている問題を私たちはいまここで討議しているのだと思います。」

(2)公職選挙法改正に関する調査特別委員会公聴会――公職選挙法の一部を改正する法律案(参議院提出、第九十五回国会参法第一号)、96 - 衆 - 公職選挙法改正に関する… - 1号、昭和57年08月07日

西平重喜公述人(統計数理研究所附属統計技術員養成所長)
「なお、ちょっとつけ加えますと、小党分立ということが政局の混乱をもたらすというようなことが言われることがあります。そういう場合に第一次大戦後のワイマール憲法下のドイツの例がよく引き合いに出されるのであります。しかしながら、それは小党分裂のゆえにヒットラーの登場を促したということではございませんで、むしろ大きい政党、中くらいの政党というような政党の間の混乱がそれをもたらしたのであります。さらにまた、あべこべに二大政党制と言われているイギリス、カナダ、オーストラリアというような国を見ますと、そういうようなところでは議会の解散が頻々と行われておりまして、決して政党の数が少なければ政局が安定するというものではございません。」

松本道廣公述人(日本医療労働組合協議会議長)
「 それは、七月十六日の参議院本会議の強行採決、それに先立ちます七月九日の参議院特別委員会における自民党さんのいわゆる単独強行採決、これは前例のないものだというふうに言われておりますし、国会史上汚点を残すと言われておりますが、私はそのとおりであろうというふうに思っております。
 特に、七月九日の委員会での三点の乱暴な審議の方法というのは、私は許されるべきものではないんではないかというふうに思っております。
 その一つは、委員会開催定数に達していない状態で強行に採決をされているということでございます。
 二つは、身体障害を持つ前島議員が入室できない状態で、そういう状態が明白にあるにもかかわらず質疑の権利を放棄さすような、そういうふうな運営をなされているということであります。」
「それを代表していまの内容を申し上げますと、もちろん政治の問題、平和の問題民主主義の問題、憲法の問題、それについての関心は高い組織だというふうに自負はいたしておりますが、しかし、今回のような問題について、事柄の実態、本質をいま職場の末端までが理解しているだろうかという点では、これは大きな疑問があると思います。その意味からも、国民の立場からも十分に事柄の本質や経過が明らかになるように御審議も願いたいし、政党としても努力をお願いしたいというふうに思います。」

(3)討論――公職選挙法の一部を改正する法律案(参議院提出、第九十五回国会参法第一号)、公職選挙法改正に関する… - 12号、昭和57年08月17日

小杉隆(新自由クラブ・民主連合)
「 その第一は、政党要件が厳し過ぎることであります。すなわち、立候補者名簿を提出することができる政党の要件として、衆参合わせて五人以上の議員がいること、直近の国政選挙で有効投票の四%以上の得票を得たこと、比例代表区選挙、選挙区選挙合わせて十人以上の候補者を有することのいずれか一つに該当することとしておりますが、これは小会派、無所属の締め出しと言うほかありません。政党本位の比例代表制を採用している西欧各国では、一人一党を認めるなど、政党要件は緩やかであります。個人立候補を認めると政党と個人が混在し不都合だと言うならば、できるだけ緩和して実質的に無所属や少数党が立候補し得る道を残すべきであります。
 本来、少数意見を反映させやすいというのが比例代表制の特色であります。その特色を政党要件を厳しくすることでなくしてしまうことは、今回の改正案の意義も半減することに通じるものであります。」

太田光征

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