小選挙区比例代表連用制

10月 13th, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 3:03:11
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公明党が衆議院選挙制度改定案として提案した小選挙区比例代表連用制について、2009衆議院選挙の結果を基にシミュレーションを行いました。現行定数の場合、小選挙区、比例区いずれかの定数を80削減した場合の3通りです。

議席配分が完全比例代表制とほぼ同じになるのは、小選挙区定数220、比例区定数180の場合、しかもブロック式ではなく全国一括式で比例区議席を割り当てた時のみです。

では、小選挙区定数を削減して小選挙区比例代表連用制にすればよいのかというと、そういうわけにはいきません。

小選挙区と比例区の定数を分離するのが小選挙区比例代表並立制と小選挙区比例代表連用制の本質で、無所属候補と政党候補に同じ総定数をめぐって同じ難易度で競わせる単一の土俵を用意するという思想がまったくない。

小選挙区定数を削減するか、比例区定数を増やした上で小選挙区比例代表連用制に改定すれば、政党にとってはより公平になりますが、無所属・政党間の格差がますます拡大します。

無所属候補(に投票する有権者)は我慢しろ、というのは、一部の人間だけに差別的な放射線被害を負わせても多数が無事であればよい、というのと同じで、認められません。

小選挙区比例代表連用制の小選挙区を中選挙区や大選挙区に置き換えれば、選挙制度思想も結果もずっとマシになるでしょう。

私が提案している中選挙区比例代表併用制は、無所属候補と政党の定数枠を分離するという差別の仕掛けから決別しています。

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164

中選挙区比例代表併用制は、無所属候補、政党候補ともまず同じ総定数をめぐって共通の中選挙区で競わせた上で、無所属候補については中選挙区で議席を確定させ、政党については残余議席を比例配分するというものです。

小選挙区比例代表連用制やドイツの小選挙区比例代表併用制は小選挙区で超過議席を発生させますが、中選挙区比例代表併用制は超過議席を回避できます。

福島原発震災の震源は、過疎地にしか原発を建設してはいけないなどという法律を制定してきた差別政治です。私たちの基幹的・実践的権利を保障する選挙制度がそもそも差別でやられているようでは、今後も私たちは差別政治による政治災害を被り続けることでしょう。

脱原発・国会議員の定数削減・壊憲/原発事故と政党の責任について
http://kaze.fm/wordpress/?p=342

民主党は3・11後、早くも25日の段階で、通常国会で衆議院比例区定数の80削減を実現すると公言しました。悲惨な原発事故被害に遭っている有権者から脱原発政党に投票する1票の価値をさらに減じると宣言したのです。差別に差別の追い打ちをかけるもので、あまりにもひどい。

脱原発は脱差別の運動。脱原発をめぐる攻防は、国会議員の定数削減、選挙制度改定をめぐる攻防と重なっています。震源を揺さぶりましょう。
 
 
【目次】

1. 公明党の小選挙区比例代表連用制
2. 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
3. 小選挙区比例代表連用制でも1票格差は解消しない

【関連投稿】

  • 2010参院選――結果分析
    http://kaze.fm/wordpress/?p=309
  • 中選挙区比例代表併用制を提案する
    http://kaze.fm/wordpress/?p=164
  •  

    1. 公明党の小選挙区比例代表連用制
     
     
    公明党は衆議院の選挙制度改定案として小選挙区比例代表連用制を提案していますが、これは「政治改革推進協議会(民間政治臨調)」が1993年にすでに提案しているものです。

    現在の小選挙区比例代表並立制と小選挙区比例代表連用制の違いは、比例区議席を政党に割り当てる計算方法の違いにあります。

    小選挙区比例代表並立制では通常のドント式を採用します。各党の比例区得票数を1、2、3、4、5…という1から始まる整数の除数(比例区での獲得議席数に相当)で割っていき、その商(議員1人当たりの当選に要する得票数に相当)の大きい順に1議席ずつ割り当てるという方法です。

    小選挙区比例代表連用制では政党ごとに除数を変えます。各党の除数は、1から始まる整数に小選挙区での獲得議席数を加えた数(小選挙区での獲得議席を比例区で獲得したものとみなす)とし、同様の計算で議席を割り当てていきます。
     
     

    2. 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
     
     
    2009年衆議院選挙の結果を基に、大きく3つの条件で、小選挙区比例代表連用制のシミュレーションを行いました。

    小選挙区定数を現行の300とし、比例区定数を現行の180とした場合(表1)、民主党が主張しているように比例区定数を80削減して100とし、小選挙区定数を300のままとした場合(表2)、小選挙区定数を80削減して220とし、比例区定数を180のままとした場合(表3)のそれぞれについて、現行の11ブロックごとに比例区議席を割り当てる場合、全国一括で比例区議席を割り当てる場合の結果を計算しています。

    小選挙区定数300、比例区定数180の場合(表1)、小選挙区と比例区を合わせた議席数は、小選挙区比例代表並立制と比べて完全比例代表制に近い結果となるものの、民主党では完全比例代表制と比べ26議席(ブロック式)あるいは15議席(全国一括式)も多く獲得しています。この余剰議席は、小選挙区比例代表連用制の欠陥というより、比例区の総定数の少なさ、あるいは定数を細切れにするブロック式に原因があります。

    こうした乖離はすでに現在の小選挙区比例代表並立制の比例区選挙でも見られます。

    2010参院選――結果分析
    http://kaze.fm/wordpress/?p=309

    小選挙区定数300、比例区定数100の場合(表2)、民主党は完全比例代表制と比べ53議席も余分に獲得することになります。小選挙区比例代表連用制で比例代表制の側面を強化するのであれば、比例区定数の削減は論外。

    小選挙区定数220、比例区定数180の場合(表3)で初めて、全国一括式による議席割り当てが完全比例代表制の場合とほぼ同じになります。ブロック式ではまだ乖離を排除できず、民主党の例では完全比例代表制より10議席多い。

    小選挙区比例代表連用制で完全比例代表制に近い結果を出すためには、総定数に占める比例区定数の比重を現在より高めることが前提になります。
     
     

    3. 小選挙区比例代表連用制でも1票格差は解消しない
     
     
    小選挙区比例代表連用制も選挙制度思想の土台を欠いた制度であり、現在の矮小化された1票格差論に注意が必要です。

    小選挙区比例代表連用制は小選挙区比例代表並立制と同様に、比例区は政党の独占枠なので、無所属候補は比例区から議席を獲得できない。

    中小政党には議席を正当に獲得しやすい比例区を確保しておきながら、無所属候補には当選の困難な小選挙区のみしか手当てしないのは、候補者差別、主権者差別です。

    1票の価値は生票を投じた有権者にしかなく、死票を投じた有権者にはまったくありません。

    複数の選挙区間で有権者1人当たりの議席数を平等にして、生票を投じた有権者の間だけで、しかも複数の選挙区間で同じ生票率の場合だけに1票の価値の平等を実現しても、生票を投じた有権者と死票を投じた有権者の間で1票の平等、主権の平等は成立しない。

    選挙制度は主権を保障する制度であって、主権の平等を追求せずに限定的な条件下で1票の不平等のみを解消しようとする選挙制度論は、非常に奇妙。矮小化された1票格差論によって主権格差を拡大させてはいけない。

    定数を細切れにするブロック式の比例代表制は、異なる政党に投票した有権者の間で1票格差をもたらす仕掛けであり(同じ1議席を獲得するにも小政党は大政党より多くの得票数が必要)、無所属候補に狭く当選しにくい1人区しか与えない比例代表制は、(準比例代表制とも言われる中選挙区制や大選挙区制の場合と比べ)無所属候補に投票した有権者と、広い比例区で政党に投票した有権者の間で1票格差をもたらす仕掛けです。

    現在の小選挙区比例代表並立制において、比例区の削減は格差を拡大させるので問題だが、小選挙区の定数削減であれば問題ない、というわけにはいかない。

    小選挙区の定数を削減すれば、比例代表制の比重が高まって政党の間ではより公正になるものの、無所属候補にとっては当選枠が一層狭まることになり、格差を拡大させます。

    参議院選挙でも同様で、例えば1人区と5人区では死票率の乖離という1票格差は避けられない。

    議員1人の当選に必要な議席数をあらかじめ決めておけば、政党候補、無所属候補の別に関係なく、1票の価値は平等になります。差別の仕掛けを排した選挙制度は原理的に可能なのです。

    選挙制度の設計は、これにいかに近づけるか、という問題になります。

    差別の解消を試みた選挙制度として提案しているのが、中選挙区比例代表併用制です。

    中選挙区比例代表併用制を提案する
    http://kaze.fm/wordpress/?p=164
     
     

    表1 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
    (小選挙区定数300、比例区定数180)

    2009年衆議院選挙のデータ使用
    議席配分表


















    北海道 0 3 2 1 0 * * * 2 * 0 - 8
    東北 0 6 3 2 2 1 * * * * 0 - 14
    北関東 0 9 5 3 1 2 0 0 * * 0 - 20
    南関東 0 9 5 3 2 3 0 0 * * 0 - 22
    東京 0 6 4 4 1 2 0 0 * * 0 - 17
    北陸信越 1 4 2 2 1 * 1 0 * * 0 - 11
    東海 0 10 5 3 1 2 0 0 * * 0 - 21
    近畿 0 11 8 6 1 2 1 0 * * 0 - 29
    中国 5 0 4 1 1 * 0 * * * 0 - 11
    四国 3 0 2 1 0 * * * * * 0 - 6
    九州 2 4 9 3 1 2 0 * * * 0 - 21
    11 62 49 29 11 14 2 0 2 * 0 - 180
    全国一括式 0 55 51 31 16 17 4 2 2 * 2 - 180








    議席数 221 64 0 0 3 2 3 1 - 0 0 6 300
    得票率 47.4 38.7 1.1 4.2 2.0 0.9 1.0 0.3 - 0.1 1.5 2.8 -
    議席占有率 73.6 21.3 0 0 1.0 0.6 1.0 0.3 - 0 0 2.0 -








    +



    2009議席数 308 119 21 9 7 5 3 1 1 0 0 6 480
    同議席占有率 64.2 24.8 4.4 2.0 1.5 1.0 0.6 0.2 0.2 0 0 1.0 -
    比例区得票率 42.4 26.7 11.5 7.0 4.3 4.3 1.7 0.8 0.6 0.1 0.7 - -
    比例区:ブロック式 232 126 49 29 14 16 5 1 2 0 0 6 480
    比例区:全国一括式 221 119 51 31 19 19 7 3 2 0 2 6 480
    完全比例制 206 129 55 34 20 20 8 3 2 0 3 0 480

     
     

    表2 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
    (小選挙区定数300、比例区定数100)

    2009年衆議院選挙のデータ使用、2005年国勢調査に基づき定数配分
    議席配分表


















    北海道 0 2 1 0 0 * * * 1 * 0 - 4
    東北 0 3 2 1 1 1 * * * * 0 - 8
    北関東 0 4 3 2 1 1 0 0 * * 0 - 11
    南関東 0 5 3 2 1 1 0 0 * * 0 - 12
    東京 0 3 3 2 1 1 0 0 * * 0 - 10
    北陸信越 0 1 2 1 1 * 1 0 * * 0 - 6
    東海 0 5 3 2 1 1 0 0 * * 0 - 12
    近畿 0 5 6 4 0 1 0 0 * * 0 - 16
    中国 2 0 3 1 0 * 0 * * * 0 - 6
    四国 1 0 1 1 0 * * * * * 0 - 3
    九州 0 1 7 2 1 1 0 * * * 0 - 12
    3 29 34 18 7 7 1 0 1 * 0 - 100
    全国一括式 0 17 35 21 10 11 2 1 1 * 2 - 180








    議席数 221 64 0 0 3 2 3 1 - 0 0 6 300
    得票率 47.4 38.7 1.1 4.2 2.0 0.9 1.0 0.3 - 0.1 1.5 2.8 -
    議席占有率 73.6 21.3 0 0 1.0 0.6 1.0 0.3 - 0 0 2.0 -








    +



    2009議席数 308 119 21 9 7 5 3 1 1 0 0 6 480
    同議席占有率 64.2 24.8 4.4 2.0 1.5 1.0 0.6 0.2 0.2 0 0 1.0 -
    比例区得票率 42.4 26.7 11.5 7.0 4.3 4.3 1.7 0.8 0.6 0.1 0.7 - -
    比例区:ブロック式 224 93 34 18 10 9 4 1 1 0 0 6 400
    比例区:全国一括式 221 81 35 21 13 13 5 2 1 0 2 6 400
    完全比例制 171 107 46 28 17 17 7 3 2 0 2 0 400

     
     

    表3 小選挙区比例代表連用制のシミュレーション
    (小選挙区定数220、比例区定数180)

    2009年衆議院選挙のデータ使用
    小選挙区における定数の配分と議席数の割り当ては最大剰余法による
    議席配分表


















    北海道 0 3 2 1 0 * * * 2 * 0 - 8
    東北 1 5 3 2 2 1 * * * * 0 - 14
    北関東 1 9 5 2 1 2 0 0 * * 0 - 20
    南関東 1 9 5 3 2 2 0 0 * * 0 - 22
    東京 1 6 4 3 1 2 0 0 * * 0 - 17
    北陸信越 2 4 2 1 1 * 1 0 * * 0 - 11
    東海 1 10 5 2 1 2 0 0 * * 0 - 21
    近畿 0 12 8 6 1 2 0 0 * * 0 - 29
    中国 5 1 3 1 1 * 0 * * * 0 - 11
    四国 3 0 2 1 0 * * * * * 0 - 6
    九州 4 5 7 2 2 1 0 * * * 0 - 21
    19 64 46 24 12 12 1 0 2 * 0 - 180
    全国一括式 7 59 45 28 15 16 4 2 2 * 2 - 180








    2009議席数x(220/300) 162 47 0 0 2 2 2 1 - 0 0 4 220
    得票率 - - - - - - - - - - - - -
    議席占有率 - - - - - - - - - - - - -








    +



    2009議席数 308 119 21 9 7 5 3 1 1 0 0 6 480
    同議席占有率 64.2 24.8 4.4 2.0 1.5 1.0 0.6 0.2 0.2 0 0 1.0 -
    比例区得票率 42.4 26.7 11.5 7.0 4.3 4.3 1.7 0.8 0.6 0.1 0.7 - -
    比例区:ブロック式 181 111 46 24 14 14 3 1 2 0 0 4 400
    比例区:全国一括式 169 106 45 28 17 18 6 3 2 0 2 4 400
    完全比例制 171 107 46 28 17 17 7 3 2 0 2 0 400

     
     
    太田光征
    http://otasa.net/

    2011年6月19日北千住・脱原発街頭行動での故久保田千秋さんの訴え

    10月 1st, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 10:00:41
    under 一般 [6] Comments 

    http://youtu.be/ij9kGxQES4w

    2011年6月19日、北千住駅前ロータリーで久保田千秋さん、長岩均さん、私の3人で脱原発街頭行動に取り組んだ。私が脱原発街頭行動で久保田さんらとご一緒したのはこの日が初めて。普段は地元の松戸などでだいたい1人で同様の行動をしている。

    その久保田さんが3カ月後の9月26日、つまり25日の数寄屋橋行動の翌日に他界された。享年59歳。

    私は25日、東日本大震災被災者支援千葉西部ネットワークの取り組みとして、仲間と松戸駅前で南相馬野菜支援カンパのお願いと脱原発の訴えをしていた。

    いま思えば私も数寄屋橋行動に参加したかった。長岩さんによれば25日の久保田さんの演説は格調高いものだったという。

    このような形でこのビデオを紹介するなど、想像もしていなかった。他界される直前まで、数寄屋橋行動のほかにも9・19明治公園集会・デモや経産省前テント行動などに元気に取り組まれたという。だから突然の死は誰もが信じられない。

    久保田さんといえば、3・11以前の何かのデモの時だったと思うが、大きなよく通る声でおそらく沖縄米軍基地、安保を訴えていたのをよく覚えている。

    私が久保田さんと街頭行動を共にしたのは数えるほどだが、今後街頭行動をするたびに思い出さないわけにはいかない。マイクを握る時、自分と久保田さんを重ね合わせる感じになるのだと思う。

    6月19日は北千住行動の後、実は第2ラウンドとして松戸駅前にも来ていただいた。そこで福島第1原発で子供さんが働いているという親父さんと鉢合わせになったのだが(私の場合は再会)、福島原発事故はチェルノブイリ並みではない、すぐに収束する、などという親父さんの主張にやや色をなして久保田さんは反論されていた。その後、反省の弁を私たちに向けて口にされたが。こんなことも思い出される。

    この親父さんは自分の子供が健康リスクを背負いながら事故収束に当たっているのだから、脱原発の訴えは事故収束の後にしなさい、と私が最初に会った時に言われたものだ。

    気持ちは分かるが、今現に原発震災で苦しんでいる方々、また今後発生するかもしれない原発震災に苦しむ方々のことが念頭にない。

    久保田さんはまさに命をかけて脱原発を訴えていたわけだが、親父さんはこの事実を知ってどう思うか。今度会う機会があれば聞いてみたい。

    しかしなぜ久保田さんがこんなにも早く亡くならねばならないのか。福島原発震災の原因を作り、東電を含む電力業界から多額の献金を受けてきた自民党などは、原発被災者に対して何らの責任も取っていない。

    ビデオ中でも久保田さんが訴えているが、政党助成金を廃止すれば震災復興資金に回せるのだ。それさえもせず議員定数を削減しようとする。久保田さんは定数を削減する必要はないとはっきり主張している。

    久保田さんはこう訴えた。「国会議員が原発事故を反省する気持ちがあるなら、まず予算の組み替えを行ってほしい。原子力予算4550億円を震災復興に、米軍思いやり予算1881億円を東北思いやり予算に。思いやり予算を使えば被災者25万人に月々10万円を支給することができる。320億円の政党助成金を返納してほしい。国会議員は国民一人ひとりの意見を代弁していて、削る必要はない。東北復興のために320億円を返納してもらいたい。震災復興資金80兆円の工面は自民党にしかできない。米国債をアメリカに買い取ってもらい、借金を返してもらう。これはアメリカと大変親密な関係にあった自民党にしかできない仕事。」

    脱原発活動家の久保田さんが早死にし、福島原発震災の原因者たる自民党などが無責任にのうのうとしている。

    久保田さんは腎臓病を抱えていたとはいえ、いやそうであるからこそ、死期を早めた原因に放射線があるのではないかと私は疑っている。放射線の影響はがんだけではない。

    セシウム137の腎臓への影響
    http://yocaki.tumblr.com/post/9326267969/137

    セシウムの人体への影響 - 5年後10年後子どもたちが健やかに育つ会 越谷
    http://sukoyaka-koshigaya.jimdo.com/%E6%94%BE%E5%B0%84%E8%83%BD%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%81%AE%E4%BA%BA%E4%BD%93%E3%81%B8%E3%81%AE%E5%BD%B1%E9%9F%BF/
    「(チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシの)ゴメリ市の突然死の89%が腎臓の破壊を伴い、突然死の99%が心筋不調。 」

    1986年4月26日のチェルノブイリ事故後、米国ではエイズ関連疾患の死亡率が激増した。同死亡率は84年5月から85年5月まで十数%減少していたにもかかわらず、85年5月から86年5月にかけて100%近く増加している。(『死にいたる虚構―国家による低線量放射線の隠蔽―』、ジェイ・M・グールド、ベンジャミン・A・ゴルドマン著、肥田舜太郎、斎藤紀訳、2008年、PKO法『雑則』を広める会)

    乳幼児死亡率も同様で、米国やドイツでは1986年5月から7月にかけて乳幼児死亡率が前年同月と比べ25〜70%以上も上昇している。(同上)

    東電は「万が一、将来ガンになったときに、東電は補償してくれるのか?」という福島市民の問いかけに対して、「因果関係が証明できない場合は、補償しない」と答えている。

    <原賠審への公開レター発出>「自主」避難せざるをえなかった人々の声を聞いてください
    http://unitingforpeace.seesaa.net/article/228101765.html

    放射線の影響は一部の障害を除いて、疫学調査による統計で調査対象群の中に被害者がいる、という形でしか判明しない。個人の被害者は特定できない。

    東電と原発のこの理不尽さ。

    脱原発は久保田さんがやり残した課題。私にとってはより身近で重いものになった。

    太田光征
    http://otasa.net/

    差別政治を温存させる脱原発運動

    9月 24th, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 23:09:41
    under 一般 No Comments 

    原発差別、主権者差別(定数削減)、パレスチナ差別…こうした複数の差別問題を同時に集中して訴えることで、それぞれ単独で訴えるよりもリアルに認識して、脱<脱政治化>し、それらの震源としての差別政治を標的にしてもらえるだろうと思います。

    自分の子供さえとりあえず無事であればOK、国内ではこれ以上の原発は認めないが海外に差別を輸出する原発輸出はOK、何となく即時の脱原発は心配だから超ダラダラの脱原発は認めるが被ばく労働を存続させてもOK、の脱原発運動を展開して得るものは何なのでしょうか。

    ある種の脱原発運動が差別政治の被害を戦争などの別形態に変えるだけの変革運動にならない保証はありません。みんなの党や橋本大阪府知事らに対する支持の拡大などを想定して。

    差別政治を温存させる脱原発運動というものは考えにくい。

    太田光征
    http://otasa.net/

    電気事業会計規則等の一部改正(案)への意見

    9月 22nd, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 15:27:00
    under 一般 No Comments 

    http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620111033&Mode=0

    件名を「電気事業会計規則等の一部改正(案)への意見」として下記様式で本日22日までです。

    太田光征
    http://otasa.net/

    *

    経済産業省資源エネルギー庁電力・ガス事業部電力市場整備課パブリックコメント担当
    qqmfbe@meti.go.jp

    [氏 名]
    [住 所]
    [電話番号]
    [FAX番号]
    [電子メールアドレス]
    [意見の趣旨]

    原子力損害賠償支援機構負担金は電力会社の発電事業で発生する料金原価(営業費)ではない。(将来の)賠償金は原発の維持を望む者だけが負担すればよい。原子力損害賠償支援機構負担金は営業費とするべきではない。

    ・該当箇所

    (2)一般電気事業供給約款料金算定規則、一般電気事業託送供給約款料金算定規則及び卸供給料金算定規則において、原子力損害賠償支援機構負担金(特別負担金を除く。)を料金原価(営業費)に追加する改正を行う。

    ・意見内容

    原子力損害賠償支援機構負担金(以下、負担金)は法律が勝手に電力会社に義務付けたものに過ぎず、電力会社の発電事業で発生する料金原価(営業費)ではない。負担金は将来の事故に備えたものだというが、将来において(過酷)事故が起こるかどうか分からない点からしても、負担金は営業費ではあり得ない。

    自衛隊による原発の警備が一部の政党などから主張されているが、そのコストを電力会社が負担する法律を作ったとしても、それは営業費ではあり得ない。負担金を発電事業の営業費として認めることは、自衛隊による警備費を発電事業の営業費として認めることに等しい。

    この営業費でもない負担金を電気料金として消費者が負担し、しかも総括原価方式によって電力会社の利益までが電気料金に上乗せされることになる。

    原子力損害賠償支援機構法の趣旨は、福島原発事故の被害者に迅速な賠償を行うことであって、東電を救済するものでも、他電力会社の営業を支援するものでもない。

    将来において事故を起こすかもしれないから被害を受ける消費者が将来の賠償金を負担しろ、ということはあまりにも馬鹿げている。賠償というものは通常の事業で生じた利益の一部を当てるから賠償という。被害者や第三者が賠償金を負担する賠償などあり得ない。

    真の賠償というものは、原発を推進してきた全関係者の収入、その一部を政治資金や広告費などとして受け取ってきた政党やメディアなどの収入、原発を維持したい一般消費者の収入のみで行うものだ。

    政党助成金は有権者が支持しない原発推進政党にも交付されてきた。原発推進政党は受け取ってきた政党助成金を国庫に返納する法律を作るか、原発被災者の補償金に当てるべきだ。復興増税という痛みを国民に強いる前に、(新人議員の立候補者数を減らせば現職議員の椅子は減らないから「身を切る」ことはできないにもかかわらず、原発事故と膨大な財政負担の防止に貢献する脱原発少数政党に対する1票の価値をさらに減じる)議員定数削減という偽装利益を国民に求めなければならないと原発推進政党が主張するなら、真っ先にそうしてもらいたい。

    消費者に選択の自由を与えず原発を強要し、原発の維持を望まない消費者に電力会社の利益まで上乗せした負担金を負担させる道理はまったくない。(将来の)賠償金は原発の維持を望む者だけが担えばよい。そのためには発送電の分離、電力自由化を一層進める必要がある。

    負担金を営業費としないでください。

    ・理由(可能であれば、根拠となる出典等を添付又は併記して下さい。)

    原子力損害賠償支援機構負担金は法律が勝手に電力会社に義務付けたものに過ぎず、電力会社の発電事業で発生する料金原価(営業費)ではない。負担金は将来の事故に備えたものだというが、将来において(過酷)事故が起こるかどうか分からない点からしても、負担金は営業費ではあり得ない。

    将来において事故を起こすかもしれないから被害を受ける消費者が将来の賠償金を負担しろ、ということはあまりにも馬鹿げている。消費者に選択の自由を与えず原発を強要し、原発の維持を望まない消費者に電力会社の利益まで上乗せした負担金を負担させる道理はまったくない。(将来の)賠償金は原発の維持を望む者だけが負担すればよい。

    1.改正の主旨
    原子力損害賠償支援機構法(平成23年法律第94号。以下「支援機構法」とい
    う。)の施行に伴い、電気事業法(昭和39年法律第170号)に基づき定めら
    れている、電気事業会計規則(昭和40年通商産業省令第57号)、一般電気事
    業供給約款料金算定規則(平成11年通商産業省令第105号)、一般電気事業
    託送供給約款料金算定規則(平成11年通商産業省令第106号)、卸供給料金
    算定規則(平成11年通商産業省令第107号)及び一般電気事業部門別収支計
    算規則(平成18年経済産業省令第3号)について、所要の改正を行う。
    2.改正の内容
    (1)電気事業会計規則の別表第一(勘定科目)に以下の科目等を新設する。
    ?原子力損害賠償支援機構負担金
    営業費用に支援機構法第38条第1項に規定する負担金を整理するため「原子力
    損害賠償支援機構負担金」の項目を設ける。なお、「原子力損害賠償支援機構負
    担金」は一般負担金及び特別負担金に区分して整理する。
    ?原子力損害賠償支援機構資金交付金
    特別利益に支援機構法の規定に基づく原子力損害賠償支援機構からの資金交付金
    を整理するため「原子力損害賠償支援機構資金交付金」の科目を設ける。
    ?未収原子力損害賠償支援機構資金交付金
    固定資産に原子力損害賠償支援機構資金交付金の未収金を整理するため「未収原
    子力損害賠償支援機構資金交付金」の科目を設ける。
    (2)一般電気事業供給約款料金算定規則、一般電気事業託送供給約款料金算定
    規則及び卸供給料金算定規則において、原子力損害賠償支援機構負担金(特別負
    担金を除く。)を料金原価(営業費)に追加する改正を行う。
    (3)その他所要の改正を行う。
    上記(1)及び(2)の改正に伴う技術的な改正及び様式等の改正を行う。
    3.施行日
    平成23年9月下旬を予定

    脱原発・国会議員の定数削減・壊憲/原発事故と政党の責任について

    9月 12th, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 23:58:46
    under 一般 [103] Comments 

    脱原発・国会議員の定数削減・壊憲

    脱原発ならいずれも定数削減派のみんなの党や橋下大阪府知事などに任せておけばいいのでは、と思う有権者も多いのではないか。

    しかしこれでは憲法も何も吹っ飛んでしまう。脱原発を実現しても、差別政治の根っこは無傷のまま。脱原発で原発被災者をなくすことができたとしても、それを上回る戦争被害者をもたらす壊憲を許すなら、壮大な「肉を切らして骨を断つ」になってしまう。

    脱原発、しかも超ダラダラ脱原発だけを焦点化することは、壊憲政党を増長させる危険性を持つ。

    みんなの党などとの差別化を図るためにも、即時の脱原発、沖縄基地・安保、憲法、国会議員定数(基本的人権・民主主義)…を掲げるしかないのではないか。

    電力需給実績については、東電管内で8月18日に今夏最大の電力需要を記録したが、原発がなかったとしても供給できた※し、9月の電力需給見通しでも東電管内だけで原発15基分(現在、日本全体で11基しか稼働していない)の電力が余る※ので、即時の原発停止は以前にも増して有権者の支持を得やすい。

    ※ 原発関連の基礎情報もろもろ
    http://unitingforpeace.seesaa.net/article/221007611.html

    原発事故に引き寄せて定数問題や壊憲問題などを訴えていくスタイルがいいでしょう。
     
     
    原発事故と政党の責任について

    福島原発震災の責任は政府と東電だけでなく、原発政策を進めてきた政党にもある。過疎地にしか原発を立ててはいけないなどという法律、その他諸々の法律を国会が通さなければ、福島原発事故はあり得なかった。

    電力業界から政治献金を受けてきた政党は、それらを原発被災者の補償金に充てるべき。

    今回の原発震災の震源は、差別政治にある。沖縄に米軍基地を押し付けるのと同じ差別政治が原発震災をもたらした。

    3・11後、政治家が真っ先に取り掛かるべきは、この差別政治を清算することだったはず。

    ところが民主党は、3・11後の国会会期中に衆院比例区定数の80削減を実現すると明言した。

    原発被災者が心底、この日本から原発をなくしたいと思っても、脱原発少数政党に投じる1票の価値は、定数削減でますます小さくなる。あまりにもひどすぎる。

    原発を地方に押し付け、原発被災者の一票の価値を減じるという二重の差別。踏んだり蹴ったり。人権を無視する政党に被災者支援、原発事故の収束ができないのは当たり前。

    国会が民意を反映し、脱原発政党の力がもう少し強かったならば、今回の原発事故は防げたかもしれない。

    国会議員を減らして浮く金は、原発被害の補償金とは比べものにならないくらい小さい。政党助成金をなくせば、議員何百人も削減したに等しい。

    福島県飯館村の決起集会で、ある村民が国会議員は何もしないから定数を削減するべきだ、と訴えていた。

    定数削減をして、原発被災者の主権を切り縮めてみたところで、原発推進政党が喜ぶだけ。国会議員に向けるべきターゲットが間違っている。

    一方自民党。自民は3・11後、また憲法に緊急事態条項を、と主張している。中山前衆院議員の試案では緊急事態を自然災害、テロ、「その他」とし、何でも緊急事態にできる。緊急事態を宣言して、通信の自由を制限するという。

    通信の自由を制限すれば、東日本大震災、紀伊半島大水害で助かった人も助からなかっただろうに。

    自民は基本的人権を壊憲で切り崩すという野望を3・11後も捨て去っていない。恐るべし。

    さらに言えば、自民の新憲法草案では、自治体差別立法を抑止するための現95条、それこそ原発などの地方押し付けに抵抗できるよう、自治体差別立法を拒否するための住民投票条例を規定している現95条を削除している。

    人権無視の政治、差別政治は3・11の前も後も変わらない。

    脱原発のターゲットは脱差別ではないか。政治災害を生産する差別政治、これを根から絶つ。無傷のままでいいはずがない。脱差別が第一というスローガンを政治家から聞きたいものだ。

    太田光征
    http://otasa.net/

    横田基地もいらない!10・15市民交流集会

    9月 8th, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 0:32:45
    under 一般 No Comments 

    横田基地もいらない!10・15市民交流集会

    日時 2011年10月15日午後1時開会
    場所 福生市民会館大ホール

    福生市民会館 - アクセス
    http://www.fussashimin.hall-info.jp/access/index.html
    東京都福生市福生2455 ?:042-552-1711
    JR青梅線『牛浜駅』東口下車→横田基地に向かって五日市街道沿いに徒歩5分

    料金 無料
    主催 10・15横田基地もいらない!市民交流集会実行委員会

    連絡先事務局 070 6558 1866

    ★ 講演 伊波洋一さん(前宜野湾市長)
    「米軍基地撤去の闘いと日米地位協定」(仮題)

    ★活動の交流
    軍事基地撤去にむけた横田・座間などの活動

    ★デモ行進 4時終了予定

    伊波洋一さんのプロフィール

    1974年宜野湾市役所入所
    1996年沖縄県議会議員当選
    2003年〜2010年宜野湾市長
    宜野湾市長としては普天間基地問題解決のため、3度の訪米要請行動、国会の安全保障委員会や外務委員会に招かれ訴える。
    ■主な著書
    「普天間基地はあなたの隣にある。だから一緒になくしたい」(かもがわ出版)
    「地域から平和をきずく」(晃洋書房)
    「沖縄基地とイラク戦争」(岩波ブックレット)

    プログラム

    10:30〜12:00 沖縄の闘いのDVD上映
    1:00 開会のあいさつ
    1:05 伊波洋一さんの講演
    『米軍基地撤去の闘いと日米地位協定』(仮題)
    2:05 エイサー和光青年会(予定)
    2:25 基地撤去の闘い連帯の発言
    2:45 基調報告(実行委員会) 決議
    3:00 閉会のあいさつ デモ行進の説明
    3:15 デモ行進開始 横田基地に沿って拝島方面に進みます。解散は4時頃です

    横田基地めぐりのご案内

    首都東京にある巨大な米軍基地、横田。この機会に基地めぐりを体験してみませんか。マイクロバスを使用します。

    Aグループ午前10時出発9:50集合
    Bグループ午前11時出発10:50集合
    ■集合場所市民会館ロビー
    ■定員各グループ20名合計40名
    ■参加費1000円
    ■申込み先渡辺042-555-7834

    ■10: 30から沖縄の闘いを記録したDVDを上映します。ご覧ください
    ●やんばるからのメッセージ
    ●辺野古不合意
    ■となりのロビーで基地問題の展示をします。ぜひご覧ください。

    食品安全委員会「放射性物質の食品健康影響評価に関する審議結果(案)」について

    8月 27th, 2011 Posted by MITSU_OHTA @ 17:55:39
    under 一般 [15] Comments 

    食品安全委員会ワーキンググループによる「放射性物質の食品健康影響評価に関する審議結果(案)」について意見を提出しました。字数制限の関係で大幅に削ってありますが。

    食品安全委員会:放射性物質の食品健康影響評価の状況について
    http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/radio_hyoka.html

    評価案はモデルに基づかないとしているものの、「低線量急性障害」、「内部被ばくと外部被ばくの影響の違い」がいずれもないという前提に立ち、ほぼ外部被ばくのデータだけで放射線の影響評価を行っています。

    食物に含まれる放射性物質による内部被ばくの影響を評価したものにはなっていないのです。

    ● 7月26日食品安全委員会終了後の記者会見から:
    http://www.foocom.net/secretariat/observer/4683/
    「今年に摂った線量が、ただちにリスクを直線的にあげるのではない。累積線量がある程度以上になって発がん率が増加するという形をとる」
    「内部被ばくと外部被ばくでは、生態に与える影響は同一ではないのではないかという議論もあった。しかしながら、広島・長崎のデータも含めてみていくと、必ずしもそうではないという結果が多い」(本当にそうか。であるなら内部被ばくで評価できるではないか)
    ● 評価案から:
    「TDIに相当する摂取量のウランによる放射線量は、実効線量として約0.005 mSv/年に相当し(参考1参照)、十分低い線量であると考えられた。したがって、ウランの毒性は化学物質としての毒性がより鋭敏に出るものと考えられた」

    以下、上記の重要論点について意見を述べます。

    『死にいたる虚構―国家による低線量放射線の隠蔽―』(ジェイ・M・グールド、ベンジャミン・A・ゴルドマン著、肥田舜太郎、斎藤紀訳、2008年、PKO法『雑則』を広める会)は、原爆症認定集団訴訟で大阪高裁が低線量内部被ばくの影響を認めた際の科学的根拠にした文献の1つです。

    この『死にいたる虚構』では、チェルノブイリ事故後、アメリカ各地でミルク中のヨウ素131濃度と全死亡率の増加率に相関関係が見られたことが示されています。線量反応関係は上に凸の形です。

    ミルク中ヨウ素131の最高濃度はカリフォルニア州、ワシントン州の44pCi/l=1.6Bq/l(1ピコキュリー=0.037ベクレル)で、その他の核種を考慮してもかなりの低線量です。

    ちなみにヨウ素131に関する米国の飲料水基準は0.111 Bq/lで、日本の暫定基準値は300 Bq/lと異常に高くなっています。

    世界も驚く日本の基準値
    http://happy-net.jp/uploader/kizyunti.pdf

    またヒトと同様、食虫の小型の鳥についても、86年から87年にかけて、米国各地の減少率とミルク中ヨウ素131濃度に強い相関が見られたことが示されています。86年夏に雛鳥捕獲数が減少したのは、新芽や種を餌とする鳥のみで、(食物連鎖で放射性物質を濃縮していない)死んだ昆虫などを餌とするキツツキなどに影響がなかった。(同書第三章「沈黙の夏」)

    低線量被ばくとその影響が現れる時期については、トンデルらの研究が参考になります。

    原子力資料情報室通信 No.381 号 2006 年3 月
    http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/seminar/No104/CNIC0602.pdf
    チェルノブイリからの放射能汚染によりスウェーデンでガンが増えている?
    京都大学原子炉実験所 今中哲二
    原著論文:
    M.Tondel et al. J Epidemiol Community Health 2004;58:1011-6.
    M・トンデル 科学社会人間 No.95:3-7 2006 年1 月.

    トンデルらはチェルノブイリ後のスウェーデンにおいて、セシウム137汚染により2年から10 年後という比較的短期間にがん発生率が有意に増加したことを示しています。

    今中は大まかな見積もりとして、100kBq/m2 のセシウム137汚染を初めの2年間で10〜20mSvとし、トンデルらが見出した過剰相対リスクを1Sv当り5〜10としました。広島・長崎原爆生存者の場合、過剰相対リスクは1Sv当り約0.5 なので、スウェーデンの場合はその10〜20倍と極めて高い。やはりトンデルも、低レベル被ばくで効果が大きくなるモデルを考えています。

    評価案ではPrestonらによる原爆被爆者の死亡率調査第13報の結果を「固形がんによる死亡のERR(過剰相対リスク)は被ばく線量0〜125 mGyの範囲の線量に対して線量直線性があるようにみえた(被ばく線量0〜100 mSvでは有意な相関が認められなかった)」と紹介し、生涯累積線量100mSvの根拠にしています。

    http://www.rerf.or.jp/library/scidata/lssrepor/rr24-02.htm
    原爆被爆者の死亡率調査 第13報 固形がんおよびがん以外の疾患による死亡率:1950−1997年(要約のみ)
    Preston DL, 清水由紀子, Pierce DA, 陶山昭彦, 馬淵清彦
    Radiat Res 160(4):381-407, 2003

    しかし実際には、ERRは 0〜4.0Svで1Sv当たり0.47(対照と比べリスクが47%増加、p<0.001)、0〜0.2Svで0.76(p<0.003)、0〜0.125Svで0.74(p<0.025)と、線量が低下するほどERRが上昇しており、有意性はp=0.15と消失するものの、0〜0.05Svで0.93とさらに上昇しています。

    原爆被爆者についても、低線量域において上に凸の線量反応関係(ペトカウ効果)を示しているのです。

    広島・長崎の被爆者生涯調査
    http://www.nuketext.org/kenkoueikyou.html

    評価案では、白血病についても高線量外部被ばくによる原爆被爆者のデータを紹介しています。

    しかし、入市被爆者の間に見られる白血病罹患率の上昇は、低線量内部被ばくの影響を含むと見なすべきで、これらのデータこそ評価案に盛り込むべきです。

    原爆症認定訴訟名古屋地方裁判所判決(平成19年1月31日)
    http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20070309095813.pdf
    a 広瀬文男「原爆被爆者における白血病」(甲全12号証)
    「非被爆者(全国平均)の白血病発生率は10万人当たり2.33人であるが,広島における爆発3日以内の入市者(8月6日ないし8月9日に入市)におけるその発生割合は9.69人,同4日から7日までの入市者(8月10日から8月13日に入市)における同発生割合は4.04人であった。」

    47回原子爆弾後障害研究会
    http://shoruisouko.xsrv.jp/kntk/4_ss2_kamada.pdf
    日時:2006年6月4日
    11.8月6日入市被爆者白血病の発生増加について
    鎌田七男ほか

    評価案ではインド・ケララ州の高自然放射線地域で発がんリスクの上昇が見られなかったとするNairらの研究も紹介しています。

    http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19066487
    Health Phys. 2009 Jan;96(1):55-66.
    Background radiation and cancer incidence in Kerala, India-Karanagappally cohort study.
    Nair RR, Rajan B, Akiba S, Jayalekshmi P, Nair MK, Gangadharan P, Koga T, Morishima H, Nakamura S, Sugahara T.

    しかし、評価案中でも「地上γ線被ばくによるがんリスクの超過は認められなかった」とし、原著でも内部被ばくを考慮していないと記述している(Google検索: http://p.tl/etAO )ように、この研究結果を内部被ばくの評価に用いることはできません。

    評価案では、生涯累積線量100mSvが閾値ではなく、「低線量の放射線による健康影響を疫学調査で検証し得ていない可能性を否定することもできず」としており、この100mSvは言語明瞭意味不明です。

    生涯累積線量という概念そのものも問題です。小児がんのように人生の早い段階で死をもたらすケースで一律の生涯累積線量という概念は役立ちません。低線量内部被ばくの影響が最も早く現れる症状は何なのか、その時の線量はどのくらいか、を究明しなければ、(食品中の)放射性物質の影響を評価したことにはなりません。

    100mSvを前提にしても、これを人生のステージごとにどう割り振るのか。丸投げされることになる厚労省も困るでしょう。

    評価ワーキンググループが「入手し得た文献」の中にはバズビーらのものも含まれますが、「参考のサポート」扱いです。イラクやアフガニスタンなどにおける劣化ウランの影響も含め、低線量急性障害や低線量内部被ばくの影響に関する研究事例を虚心坦懐に一から再検討されることをお願いいたします。

    太田光征
    http://otasa.net/