西岡武夫参院議長・民主党・みんなの党の参院・衆院選挙制度改定案の分析と大選挙区比例代表併用制のシミュレーション

西岡武夫参院議長・民主党・みんなの党の参院・衆院選挙制度改定案の分析と大選挙区比例代表併用制のシミュレーション

参議院の定数削減・選挙制度改定について、各党から具体的な案が出始めました。2010年12月1日には民主党の区割り3案の概要が報道され、同10日にはみんなの党が定数削減を含む選挙制度改定案を発表し、同22日には西岡武夫参院議長が私案を各会派で作る「選挙制度の改革に関する検討会」に提示しています。

2010参院選の結果に基づくシミュレーションなどで各案を分析しました。さらに、主権の保障と主権の平等を要件に組み立てた選挙制度として提案している中選挙区比例代表併用制の説明も兼ねて、西岡議長案を基本にした大選挙区比例代表併用制についてもシミュレーションを行いました。

表1がそのまとめで、民主党衆院比例区案のシミュレーション結果なども合わせて載せています。

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【要旨】

  • 主権の保障と主権の平等が選挙制度の要件
  • 選挙制度論に政治論を持ち込まない
  • 選挙区間1票の格差を無くしても有権者は平等にならない
  • 死票の極小化、議員得票数の平準化は不可能ではない
  • みんなの党の参院比例代表制案は実質的に中選挙区制
  • 西岡参院議長の9ブロック比例代表制案(改選定数121、政党候補のみ当選、ブロック式議席配分)は政党間1票の格差が最大2.87倍
  • 議長案の政党間1票の格差は全国一括・再配分式で1.34倍以下に低減
  • スウェーデン(国政)とドイツの比例代表制は、政党と無所属候補の平等性に無頓着
  • 政党と無所属候補の平等性を追求した中選挙区比例代表併用制
  • 西岡議長修正8ブロック参院大選挙区比例代表併用制(改選定数242、無所属30人当選、全国一括・再配分式)は議長案より選挙区間1票の格差、政党間1票の格差を低減
  • 西岡議長修正8ブロック参院大選挙区比例代表併用制(改選定数121、無所属15人当選、全国一括・再配分式)は西岡議長修正8ブロック参院比例代表制(改選定数121、政党候補のみ当選、全国一括・再配分式)より選挙区間1票の格差が低減
  • 【目次】

    1. 選挙制度について〜主権の保障と主権の平等が選挙制度の要件〜
    2. 1票の格差について
    3. 手間暇かけた選挙が許されるなら
    4. 民主党の参院選挙制度改定案
    5. みんなの党の参院選挙制度改定案
    6. 西岡武夫参院議長参院比例代表制案
    7. スウェーデンとドイツの比例代表制
    8. 中選挙区比例代表併用制
    9. 大選挙区比例代表併用制のシミュレーション

    【関連投稿】

  • 小選挙区制の廃止へ向けて
    http://kaze.fm/wordpress/?p=215
  • 2010参院選――結果分析
    http://kaze.fm/wordpress/?p=309
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    表1 2010参院選の結果に基づく西岡武夫参院議長参院比例代表制案、みんなの党参院選挙制度改定案、民主党衆院比例区案、大選挙区比例代表併用制のシミュレーションまとめ
    ( ):ブロック式(各ブロックごとに議席を配分する)の場合の政党間1票の格差(2010参院選の場合は比例区と選挙区全体の政党間1票の格差)
    < >: 全国一括・再配分式(全国集計した得票数を基に各党に議席を配分し、各党ごとに各ブロックの得票数に応じて各ブロックに議席を再配分する)の場合の政党間1票の格差
    [ ]:全国一括・再配分式の場合の選挙区間1票の格差
    単なる「1票格差」は選挙区間1票の格差を表す














    2010参院選比例区得票率 31.6 24.1 13.1 6.1 3.8 13.6 1.7 2.1 2.0 -
    現行衆院議席占有率・定数180 37.8 27.8 14.4 3.9 2.2 13.9 0 0 0 -
    西岡議長参院案議席占有率・改選数121(表3) 38.0
    (1.0)
    29.8
    (1)
    13.2
    (1.2)
    3.3
    (2.3)
    1.7
    (2.9)
    <1.2>
    14.0
    (1.2)
    0 0 0 1.2
    [2.0]
    民主党衆院案議席占有率・定数100 41.0
    (1)
    29.0
    (1.1)
    14.0
    (1.2)
    2.0
    (4.0)
    1.0
    (5.0)
    13.0
    (1.4)
    0 0 0 -
    みんなの党参院案議席占有率・改選数50(表2) 42.0
    (1.1)
    34.0
    (1)
    12.0
    (1.5)
    2.0
    (4.3)
    0 10.0
    (1.9)
    0 0 0 1.43
    修正西岡議長参院案議席占有率・改選数121(表4) 37.2
    (1.0)
    29.0
    (1)
    13.2
    (1.2)
    4.1
    (1.8)
    1.7
    (2.8)
    <1.2>
    14.9
    (1.1)
    0 0 0 1.1
    [1.3]
    大選挙区比例代表併用制議席占有率・改選数121(表5) 38.7
    (1)
    28.3
    (1.0)
    14.2
    (1.1)
    3.8
    (2.0)
    <1.1>
    0.9
    (5.0)
    <1.1>
    14.2
    (1.2)
    0 0 0 1.1
    [1.3]
    大選挙区比例代表併用制議席占有率・改選数242(表6) 36.3
    (1)
    27.4
    (1.0)
    13.7
    (1.1)
    5.7
    (1.2)
    2.8
    (1.6)
    <1.1>
    13.7
    (1.1)
    0 0 0.5
    (4.9)
    <1.1>
    1.1
    [1.2]
    衆院全国一区議席数・定数180 58 44 24 11 7 25 3 3 3 -
    衆院全国一区議席数・定数100 33 25 13 6 4 14 1 2 2 -
    2010参院選議席占有率 36.4
    (1.4)
    42.2
    (1)
    7.4
    (1.7)
    2.5
    (4.0)
    1.7
    (2.2)
    8.3
    (2.1)
    0 0.8
    (2.4)
    0.8
    (2.7)
    -

     
     
     

    1. 選挙制度について〜主権の保障と主権の平等が選挙制度の要件〜

    まずは選挙制度のそもそも論について触れておきます。

    各有権者の意向を最大限に尊重するシステムが選挙制度です。選挙制度は選挙制度として独立させ、選挙制度論に政治論を持ち込んではいけません。

    政党と無所属候補の平等性を含め、主権の保障と主権の平等が選挙制度の要件です。

    2. 1票の格差について

    「1票の価値」は通常、どういうわけか、「異なる選挙区間における<当選議員>1人当たりの<有権者数>」で比較される1票の影響力のことを指します。せいぜい、異なる選挙区間で投票率、生票と死票の割合が同じ場合、当選議員1人当たりの平均的な生票数が同じであることしか意味しません。

    各議員を当選させるに要する生票数は選挙ごと、選挙区ごと、議員ごとに異なるのだから、実際の一人一人の「1票の価値」が同じであるはずがありません。上記の意味で「1票の価値」という言葉を独占することは問題です。

    有権者数と投票率が同じ2つの小選挙区(1人区)で、一方は生票率が90%、もう一方は死票率が90%だとしましょう。同じ90%でも死票を投じた有権者に1票の価値はまったくありません。生票と死票の間には明らかに1票の価値の格差が存在するのです。

    生票の間でも1票の価値は平等ではありません。2010参院選東京選挙区(定数5)で、民主党は得票率39.5%で議席占有率40.0%(2議席)、みんなの党は得票率10.8%で議席占有率20.0%(1議席)、公明党は得票率13.2%で議席占有率20.0%(1議席)、共産党は得票率9.1%で議席0などとなっており、みんなの党に投票した有権者の1票の価値はダントツ1位です。

    「異なる選挙区間における当選議員1人当たりの有権者数」をいくら同じにしても、有権者は平等になりません。選挙制度は、矮小化した1票の価値論を優先するのではなく、政党と無所属候補の平等性を含め、主権の保障と主権の平等を要件に組み立てる必要があります。

    3. 手間暇かけた選挙が許されるなら

    主権の保障と主権の平等を優先するなら

    ・死票を可能な限り減らし
    ・議員1人当たりの得票数を可能な限り同じにし
    ・候補者選択の自由を最大限に保障する

    必要があるでしょう。こうした観点からは、有権者を縛る選挙区の区割りという概念に役目はありません。

    投票を締め切ると、総得票数を総定数で割った値である基数、すなわち議員1人当たりの平均得票数が判明します。区割り選挙では必ず、基数を超えた得票数の候補者、基数未満の得票数の候補者が現れます。

    主権の保障と主権の平等を実現したい有権者は、ほかの有権者と相談し、超過した生票を基数未満の得票数の候補者に移譲したいと思うでしょう。超過した生票を基数未満の得票数の候補者に移譲するというプロセスは、比例代表制の本質にほかなりません。現行の比例代表制は、このプロセスを近似したものです。

    改ざんの可能性があるので望ましくはありませんが、電子投票システムならこうした希望は実現するでしょう。投票者に投票時刻順のシリアルナンバー証明書などを発行し、ある候補者について基数を達成した時刻以降に当該候補者に投票した有権者が、後日の投票で仮落選した候補者に再投票できるようにします。

    このプロセスを繰り返せば、死票を限りなくゼロにすると同時に、議員1人当たりの得票数を同じにすることが可能です。こうした観点からは、選挙区内の候補者にしか投票できない区割り制度は有権者にとって迷惑なものなります。

    こんなに手間暇かけてもいられないというのであれば、近似的な制度を考えるしかありません。優先順位付連記投票制で同じことができるのかどうか、ちょっと複雑で分かりかねます。

    4. 民主党の参院選挙制度改定案

    2010年12月1日付の毎日新聞によれば、民主党は参院選挙制度改定案として、現行定数242を200議席に減らした上で、(1)11ブロック(の大選挙区制)、(2)連記投票制(改選数2の選挙区で有権者1人が2票を投票するなど)、(3)全国47の1人区、を挙げていますが、2と3の詳細は不明です。

    (1)の案はマシな方ですが、(3)の小選挙区制は論外です。

    連記投票制の区割り選挙は、(1)同一候補に複数票を入れる、(2)複数票を同じ政党の別候補に入れる、(3)それらを組み合わせるなど、複数の投票パターンが考えられます。複数の議席があるのだから有権者は複数の票を持つべきだとする考え方は一見もっともらしいのですが、どの党の支持者も(2)のパターンのみの投票行動を取ると、単に複数の小選挙区選挙を同時に実施するだけの意味しか持ちません。

    連記投票制で小政党が議席を獲得するには、(1)のテクニックが必要になります。大政党にしても、議席数を最大化するには(2)を基本にしつつも、票の分散し過ぎを警戒する必要があります。連記投票制の区割り選挙では、同じ政党を支持する投票でも、有権者の投票の仕方で劇的に議席数が変化するのです。

    大選挙区制(中選挙区制)の問題点 〜連記投票制の落とし穴〜
    http://kaze.fm/wordpress/?p=232

    5. みんなの党の参院選挙制度改定案

    みんなの党の参院選挙制度改定案は、現行定数242を100に削減し、全国を衆院比例区と同じ11ブロックに分け、すべて「比例代表制」で選ぶというものです。半数、つまり50議席ずつ改選するので、「総定数50を11ブロックに分けた比例代表制」ということになります。定数はほとんどが5以下なので、形式的に比例代表制とはいえ、実質的には中選挙区制です。

    みんなの党の参院選挙制度改定案
    http://www.your-party.jp/news/office/000552/

    2010参院選の結果に基づく同案のシミュレーション結果を表2に示しています。みんなの党は、「議員定数削減を具現化するための選挙制度の改定における基本的な理念」として「一票の格差の是正」を掲げています。しかし共産・社民などの小政党に投票する有権者の1票の価値は、小選挙区制を含む現行制度より低下します。

    6. 西岡武夫参院議長参院比例代表制案

    西岡武夫参院議長の案は、現行定数を維持したまま、下記の9ブロックに分け、現在と同じ非拘束名簿方式(政党名でも個人名でも投票できる)の比例代表制で全議席を選出するというものです。無所属の立候補を認めるかどうかについては今後検討するとしています。

    北海道=12議席▽東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)=18議席▽北関東信越(茨城、栃木、群馬、新潟、長野)=22議席▽南関東(埼玉、千葉、神奈川、山梨)=44議席▽東京=24議席▽中部(富山、石川、岐阜、静岡、愛知、三重)=32議席▽関西(福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)=40議席▽中国・四国(鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、高知)=22議席▽九州・沖縄(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)=28議席

    議長案も「1票の格差」是正に力点を置いて選挙区間の1票の格差を1.16倍以下に抑えているものの、無所属候補の立候補をきっぱり認めておらず、「主権の保障」という観点が不十分です。主権を最大限尊重するのであれば、無所属候補を有権者が選ぶ権利を保障しなければなりません。

    さらにあらゆる面で「主権の平等」も保障する必要があります。「異なる選挙区間における当選議員1人当たりの有権者数」で比較される1票の価値だけでなく、「異なる政党に投票した有権者の間における1票の価値」、「政党候補に投票した有権者と無所属候補に投票した有権者の間における1票の価値」なども可能な限り平等にすべきです。

    表3が議長案のシミュレーション結果です。定数が少なくなるブロック制の議長案では死票が生じ、得票率と議席占有率に乖離が生じています。「当選議員1人当たりの得票数」で比較される政党間の1票の格差は、議長案の通り各ブロックごとに議席を配分するブロック式で最大2.87倍となっており、「異なる政党に投票した有権者の間における1票の価値」の平等が保障されていません。

    ブロック制の議長案でも、議席配分方式を全国一括・再配分式にすれば、政党間1票の格差は1.34倍以下に低減します。全国一括・再配分式とは、全国集計した得票数を基に各党に議席を配分し、各党ごとに各ブロックの得票数に応じて各ブロックに議席を再配分する方式です。

    ただし全国一括・再配分式の場合、北海道と東北の各ブロックの定数がそれぞれ6、9と少ないために、選挙区間1票の格差は議長案のブロック式より拡大し、北海道で最大1.95倍となります。

    そこで表4に示すように、北海道ブロックと東北ブロックを統合して全8ブロックとし、全国一括・再配分式で計算すると、政党間1票の格差、選挙区間1票の格差はともに1.34倍以下に低減します。改選定数を増やすことでも選挙区間1票の格差は低減します(表6)。

    7. スウェーデンとドイツの比例代表制

    全国一括・再配分式はドイツの小選挙区比例代表併用制でも採用されています。連邦州単位で投票するものの、全連邦州における獲得票数に基づき各党に議席を比例配分した後で、各党ごとに各州における獲得票数に応じて各州に再配分します。

    スウェーデン型比例代表制(国政)は総定数が349議席で、うち310議席を29の中選挙区で選出し、残る39議席を調整議席として、政党の全議席が全国得票数に基づき比例配分されるように各党に配分します。

    以上のように何らかの区割り選挙であっても、ある程度の定数を前提に、全国集計した獲得票数に基づいて議席を確定させる比例代表制を採用すれば、政党間1票の格差、得票率と議席占有率の乖離は生じません。こうして「異なる政党に投票した有権者の間における1票の価値」の平等は保障されます。

    残る問題は、「政党候補に投票した有権者と無所属候補に投票した有権者の間における1票の価値」の平等をどう保障するかです。それにはまず、無所属候補の立候補そのものを保障する必要があります。

    スウェーデン型比例代表制の調整議席は政党独占枠なので、スウェーデン型比例代表制を無所属候補にも広げて適用すると、政党と無所属候補の間で不平等が生じます。

    ドイツの小選挙区比例代表併用制の総定数598議席はいわば準比例区定数で、うち半数の299議席が小選挙区に割り当てられます。小選挙区での当選は無条件に確定し、比例代表名簿からの獲得議席数が小選挙区での獲得議席数を上回れば、小選挙区での当選者に上乗せする形で、比例代表名簿の候補に議席が割り当てられます。

    通常、ドイツの大政党は小選挙区での獲得議席数が比例代表名簿からの獲得犠牲数より多く、いわゆる超過議席が発生するので、議席占有率は得票率を上回ります。従って、ドイツ型比例代表制も格差を生み出す制度です。

    小選挙区比例代表併用制の問題点
    http://kaze.fm/wordpress/?p=220

    ドイツで1人の比例代表名簿が認められているのかどうか確認していませんが、そもそも無所属候補に比例代表制を適用することには無理があります。

    無所属候補の場合、議席1人分だけの平均得票数(基数)を獲得することはなく、比例代表制を適用する政党以上の確率で余剰生票ないし死票が発生します。これは有権者の平等な主権を脅かす問題です。

    政党に比例代表制を適用する場合、複数の候補が“幅”のある得票パターンと余剰生票・死票の移譲を通じて、有権者の平等な主権を近似的に保障できますが、無所属候補に単純比例代表制を適用しても、これができません。

    単純比例代表制下では、政党候補に投票する有権者と無所属候補に投票する有権者の間に不平等が存在するのです。

    スウェーデン(国政)とドイツの比例代表制は、政党と無所属候補の平等性に無頓着で、主権の保障と主権の平等という考え方に立っていません。

    8. 中選挙区比例代表併用制

    主権の保障と主権の平等を尊重するのであれば、比例代表制と合わせ、何らかの区割り選挙で無所属候補を当選させるしかないと考えられます。

    大選挙区では大政党の票割り(候補者数調整と選挙区内地区への割り当て)が難しく、大規模な共倒れの可能性が伴ないます。これは松戸市議会選挙など直近の地方議会選挙で実際に起きていることです。その結果、無所属候補などに不平等に有利な状況が生まれます。

    2009東京都議会議員選挙の8人区でも、民主党は得票率40.5%に対して議席占有率31.3%と、得票数と議席占有率にかなりの乖離がみられます。従って区割り選挙の規模としては、中選挙区が適当ではないでしょうか。

    2009東京都議会議員選挙――結果分析
    http://kaze.fm/wordpress/?p=274

    政党と無所属候補の平等性を含め、主権の保障と主権の平等を要件に組み立てた選挙制度として提案しているのが、中選挙区比例代表併用制です。全国を中選挙区に区割りし、政党候補、無所属候補ともに中選挙区、比例区の両方で競い、主に中選挙区で無所属候補の当選を確定させ、総定数から無所属候補の当選者数を差し引き、残りの議席を得票数に応じて各党に配分するというものです。

    中選挙区比例代表併用制を提案する
    http://kaze.fm/wordpress/?p=164


    9. 大選挙区比例代表併用制のシミュレーション

    中選挙区比例代表併用制を説明し、それと西岡議長案を比較するためにも、中選挙区比例代表併用制の中選挙区を西岡議長案の修正8ブロックに置き換えた大選挙区比例代表併用制をシミュレーションしました(表5表6)。使用データは2010参院選の結果です。

    大選挙区比例代表併用制(改選定数121の場合)シミュレーション:
    政党候補と無所属候補が大選挙区の各ブロックで競い、無所属候補15人が当選したとする。無所属候補15人は各ブロックの有権者数に応じて各ブロックに配分した。政党候補は無所属候補とともに各ブロックを比例区とする比例代表制選挙も戦うが、無所属候補は獲得議席数をゼロとする。政党については、各ブロックごとに議席を比例配分するブロック式と、全国集計した得票数を基に各党に議席を配分し、各党ごとに各ブロックの得票数に応じて各ブロックに議席を再配分する全国一括・再配分式の2つでシミュレーションした。政党候補の全国レベルの当選枠は、改選定数121から無所属候補の当選議席数15を差し引いた106議席。北海道・東北ブロックなら、定数15から無所属の2議席を引いた13議席が政党の取り分。全国一括・再配分式の場合、各ブロックの定数は仮定数の意味しかない。

    西岡議長修正8ブロック参院比例代表制(改選定数121、表4)では、全国一括・再配分式による選挙区間1票の格差、政党間1票の格差はともに1.34倍以下です。

    西岡議長修正8ブロック参院大選挙区比例代表併用制(改選定数121、表5)では、選挙区間1票の格差が最大1.27倍(全国一括・再配分式)、政党間1票の格差が最大1.92倍(全国一括・再配分式、議席数1の国民新党)、議席数2以上の政党の1票の格差が1.18倍(全国一括・再配分式)以下となっています。

    政党間1票の格差を小さくする全国一括・再配分式の採用を前提に、無所属候補をまんべんなく当選させることで選挙区間1票の格差が低減していることは、注目に値します。

    西岡議長修正8ブロック参院大選挙区比例代表併用制(改選定数242、表6)では、選挙区間1票の格差が最大1.15倍(全国一括・再配分式)、政党間1票の格差が最大1.85倍(全国一括・再配分式、議席数1の女性党=表6では同じく議席数1の創新党の1.55倍と統合し1.70倍としている)、議席数3以上の政党の1票の格差が1.25倍(全国一括・再配分式)以下となっています。

    このように改選定数を242とする西岡議長修正8ブロック参院大選挙区比例代表併用制の全国一括・再配分式なら、西岡議長案より選挙区間1票の格差も、政党間1票の格差も低減させることが可能です。

    無所属候補の当選選挙区に偏りが生じた場合は、全国一括・再配分式を前提に選挙区間1票の格差は拡大します。それを防ぎたいのであれば、議席配分において「各ブロックの得票数」を比例区ではなく、選挙区の各党得票数にすればよいでしょう。

     
     
     

    表2 みんなの党参院選挙制度改定案
    単なる「1票格差」は選挙区間1票の格差を表す
    議席配分表























    一ブ






















    北海道 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1.38 2
    東北 2 2 0 0 0 0 0 0 0 0 1.16 4
    北関東 2 2 1 0 0 1 0 0 0 0 1.15 6
    南関東 2 2 1 0 0 1 0 0 0 0 1.31 6
    東京 2 1 1 0 0 1 0 0 0 0 1.28 5
    北陸信越 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1.25 3
    東海 2 2 1 0 0 1 0 0 0 0 1.21 6
    近畿 3 2 1 1 0 1 0 0 0 0 1.27 8
    中国 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1.24 3
    四国 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1=基準 2
    九州 2 2 1 0 0 0 0 0 0 0 1.43 5
    21 17 6 1 0 5 0 0 0 0 - 50
    議席占有率 42.0 34.0 12.0 2.0 0 10.0 0 0 0 0 0 100
    政党間一票格差 1.06 1=基準 1.54 4.31 - 1.92 - - - - - -
    得票率 31.6 24.1 13.1 6.1 3.8 13.6 1.7 2.1 2.0 0.8 - -
    全国一括式 17 12 7 3 2 7 0 1 1 0 - 50

     
     

    表3 西岡武夫参院議長9ブロック参院比例代表制(改選定数121)
    各ブロックごとに議席を配分するブロック式と、全国集計した得票数を基に各党に議席を配分し、各党ごとに各ブロックの得票数に応じて各ブロックに議席を再配分する全国一括・再配分式の2つでシミュレーションした。カッコ内の数値は全国一括・再配分式の場合。カッコがない場合、両方式の値は同じ。単なる「1票格差」は選挙区間1票の格差を表す。
    議席配分表

















    西


























    北海道 3
    (2)
    2
    (1)
    1
    (0)
    0 0 0 0 0 0 0 1=基準
    (1.95)
    6
    (3)
    東北 4
    (3)
    3
    (2)
    1 0 0 1 0 0 0 0 1.12
    (1.40)
    9
    (7)
    北関東信越 4 4
    (3)
    1 0 0 2 0 0 0 0 1.12
    (1.19)
    11
    (10)
    南関東 8
    (7)
    5 3 1
    (2)
    1 4 0 0
    (1)
    0 0
    (1)
    1.12
    (1=基準)
    22
    (24)
    東京 5
    (4)
    3 1 1 0
    (1)
    2 0 0 0 0 1.16
    (1.13)
    12
    中部 6 5
    (4)
    2 0
    (1)
    0 3 0 0 0
    (1)
    0 1.14
    (1.04)
    16
    (17)
    関西 7 5 3 2 0
    (1)
    3 0 0 0
    (1)
    0 1.14
    (1.01)
    20
    (22)
    中国

    四国
    4
    (3)
    4
    (3)
    2 0 0 1 0
    (1)
    0
    (1)
    0 0 1.13
    (1.10)
    11
    九州 5
    (4)
    5
    (4)
    2
    (3)
    0
    (1)
    1 1 0
    (1)
    0 0 0 1.11
    (1.00)
    14
    (15)
    46
    (40)
    36
    (30)
    16 4
    (7)
    2
    (4)
    17 0
    (2)
    0
    (2)
    0
    (2)
    0
    (1)
    - 121
    議席占有率 38.0
    (33.1)
    29.8
    (24.8)
    13.2
    (13.2)
    3.3
    (5.8)
    1.7
    (3.3)
    14.0
    (14.0)
    0
    (1.7)
    0
    (1.7)
    0
    (1.7)
    0
    (0.8)
    - -
    政党間一票格差 1.03
    (1=基準)
    1=基準
    (1.02)
    1.22
    (1.04)
    2.28
    (1.10)
    2.87
    (1.22)
    1.20
    (1.01)
    -
    (1.08)
    -
    (1.34)
    -
    (1.27)
    -
    (1.07)
    - -
    得票率 31.6 24.1 13.1 6.1 3.8 13.6 1.7 2.1 2.0 0.8 - -
    全国一括・再配分式 40 30 16 7 4 17 2 2 2 1 - 121

     
     

    表4 西岡武夫参院議長修正8ブロック参院比例代表制(改選定数121)
    各ブロックごとに議席を配分するブロック式と、全国集計した得票数を基に各党に議席を配分し、各党ごとに各ブロックの得票数に応じて各ブロックに議席を再配分する全国一括・再配分式の2つでシミュレーションした。カッコ内の数値は全国一括・再配分式の場合。カッコがない場合、両方式の値は同じ。単なる「1票格差」は選挙区間1票の格差を表す。

    議席配分表

















    西




























    北海道

    東北
    6 4 2 1 0
    (1)
    2 0 0
    (1)
    0 0 1=基準
    (1=基準)
    15
    (17)
    北関東信越 4 4
    (3)
    1 0 0 2 0 0 0 0 1.04
    (1.30)
    11
    (10)
    南関東 8
    (7)
    5 3 1
    (2)
    1 4 0 0
    (1)
    0 0
    (1)
    1.05
    (1.09)
    22
    (24)
    東京 5
    (4)
    3 1 1 0 2 0 0 0 0 1.08
    (1.34)
    12
    (11)
    中部 6 5
    (4)
    2 0
    (1)
    0 3
    (2)
    0 0 0
    (1)
    0 1.06
    (1.20)
    16
    (16)
    関西 7
    (6)
    5
    (4)
    3 2 0
    (1)
    3 0 0 0
    (1)
    0 1.07
    (1.21)
    20
    (20)
    中国

    四国
    4
    (3)
    4
    (3)
    2 0 0 1 0
    (1)
    0 0 0 1.05
    (1.31)
    11
    (10)
    九州 5
    (4)
    5
    (4)
    2 0 1 1 0
    (1)
    0 0 0 1.03
    (1.26)
    14
    (13)
    45
    (40)
    35
    (30)
    16 5
    (7)
    2
    (4)
    18
    (17)
    0
    (2)
    0
    (2)
    0
    (2)
    0
    (1)
    - 121
    議席占有率 37.2
    (33.1)
    29.0
    (24.8)
    13.2 4.1
    (5.8)
    1.7
    (3.3)
    14.9
    (14.0)
    0
    (1.7)
    0
    (1.7)
    0
    (1.7)
    0
    (0.8)
    - -
    政党間一票格差 1.02
    (1=基準)
    1=基準
    (1.02)
    1.19
    (1.04)
    1.77
    (1.10)
    2.79
    (1.22)
    1.10
    (1.01)
    -
    (1.08)
    -
    (1.34)
    -
    (1.27)
    -
    (1.07)
    - -
    得票率 31.6 24.1 13.1 6.1 3.8 13.6 1.7 2.1 2.0 0.8 - -
    全国一括・再配分式 40 30 16 7 4 17 2 2 2 1 - 121

     
     

    表5 西岡武夫参院議長修正8ブロック参院大選挙区比例代表併用制(改選定数121)
    政党候補と無所属候補が大選挙区の各ブロックで競い、無所属候補15人が当選したとする。無所属候補15人は各ブロックの有権者数に応じて各ブロックに配分した。政党候補は無所属候補とともに各ブロックを比例区とする比例代表制選挙も戦うが、無所属候補は獲得議席数をゼロとする。政党については、各ブロックごとに議席を比例配分するブロック式と、全国集計した得票数を基に各党に議席を配分し、各党ごとに各ブロックの得票数に応じて各ブロックに議席を再配分する全国一括・再配分式の2つでシミュレーションした。政党候補の全国レベルの当選枠は、改選定数121から無所属候補の当選議席数15を差し引いた106議席。北海道・東北ブロックなら、定数15から無所属の2議席を引いた13議席が政党の取り分。全国一括・再配分式の場合、各ブロックの定数は仮定数の意味しかない。単なる「1票格差」は選挙区間1票の格差を表す。

    議席配分表

















    西


































    北海道

    東北
    6
    (5)
    4
    (3)
    1 1 0
    (1)
    1 0 0
    (1)
    0 2 1=基準
    (1.08)
    15
    (17)
    北関東信越 4
    (3)
    3 1 0 0 2 0 0 0 1 1.04
    (1.24)
    11
    (10)
    南関東 7
    (6)
    5
    (4)
    3 1 0
    (1)
    3 0 0
    (1)
    0 3 1.05
    (1.13)
    22
    (24)
    東京 4
    (4)
    3
    (2)
    1 1 0 2 0 0 0 1 1.08
    (1.27)
    12(11)
    中部 6
    (5)
    4 2 0
    (1)
    0 2 0 0 0
    (1)
    2 1.06
    (1.08)
    16
    (16)
    関西 6 4 3 1
    (2)
    0
    (1)
    3 0 0 0
    (1)
    3 1.07
    (1=基準)
    20
    (20)
    中国

    四国
    4
    (3)
    3 2
    (1)
    0 0 1 0
    (1)
    0 0 1 1.05
    (1.25)
    11
    (10)
    九州 4
    (3)
    4 2 0 1 1 0 0 0 2 1.03
    (1.20)
    14
    (13)
    41
    (35)
    30
    (27)
    15
    (14)
    4
    (6)
    1
    (4)
    15 0
    (1)
    0
    (2)
    0
    (2)
    15
    (-)
    - 121
    政党間議席占有率 38.7
    (33.0)
    28.3
    (25.5)
    14.2
    (13.2)
    3.8
    (5.7)
    0.9
    (3.8)
    14.2 0
    (0.9)
    0
    (1.9)
    0
    (1.9)
    - - -
    政党間一票格差 1=基準
    (1.01)
    1.04
    (1=基準)
    1.13
    (1.05)
    1.98
    (1.14)
    4.98
    (1.08)
    1.18
    (1.02)
    -
    (1.92)
    -
    (1.18)
    -
    (1.12)
    -
    (-)
    - -
    政党間得票率 31.6 24.1 13.1 6.1 3.8 13.6 1.7 2.1 2.0 - - -
    全国一括・再配分式 35 27 14 6 4 15 1 2 2 - - 106

     
     

    表6 西岡武夫参院議長修正8ブロック参院大選挙区比例代表併用制(改選定数242)
    政党候補と無所属候補が大選挙区の各ブロックで競い、無所属候補15人が当選したとする。無所属候補15人は各ブロックの有権者数に応じて各ブロックに配分した。政党候補は無所属候補とともに各ブロックを比例区とする比例代表制選挙も戦うが、無所属候補は獲得議席数をゼロとする。政党については、各ブロックごとに議席を比例配分するブロック式と、全国集計した得票数を基に各党に議席を配分し、各党ごとに各ブロックの得票数に応じて各ブロックに議席を再配分する全国一括・再配分式の2つでシミュレーションした。政党候補の全国レベルの当選枠は、改選定数242から無所属候補の当選議席数30を差し引いた212議席。北海道・東北ブロックなら、定数30から無所属の3議席を引いた27議席が政党の取り分。全国一括・再配分式の場合、各ブロックの定数は仮定数の意味しかない。単なる「1票格差」は選挙区間1票の格差を表す。
    議席配分表


















    西


































    北海道

    東北
    11
    (10)
    8
    (7)
    3 1 1 3 0 0
    (1)
    0 0 3 1=基準
    (1.06)
    30
    (29)
    北関東信越 7
    (6)
    6
    (5)
    2 1 0
    (1)
    3 0 0 0 0 3 1.04
    (1.11)
    22
    (21)
    南関東 13
    (12)
    9
    (8)
    5 2
    (3)
    1
    (2)
    7 0 0
    (1)
    1 0
    (2)
    6 1.05
    (1=基準)
    44
    (47)
    東京 8
    (7)
    5
    (4)
    2 2 1 3 0 0 0
    (1)
    0 3 1.08
    (1.15)
    24
    (23)
    中部 11
    (10)
    8
    (7)
    3 1 1 4 0 0 0
    (1)
    0 4 1.06
    (1.12)
    32
    (31)
    関西 12
    (11)
    8
    (8)
    6 3 1 5 0
    (1)
    0
    (1)
    0
    (1)
    0 5 1.07
    (1.04)
    40
    (42)
    中国

    四国
    7
    (6)
    6 3 1 0 2 0
    (1)
    0
    (1)
    0 0 3 1.05
    (1.03)
    22
    (23)
    九州 8
    (7)
    8
    (7)
    5
    (4)
    1 1 2 0
    (1)
    0 0 0 3 1.03
    (1.13)
    28
    (26)
    77
    (69)
    58
    (52)
    29
    (28)
    12
    (13)
    6
    (8)
    29 0
    (3)
    0
    (4)
    1
    (4)
    0
    (2)
    30
    (-)
    - 242
    政党間議席占有率 36.3
    (32.5)
    27.4
    (24.5)
    13.7
    (13.2)
    5.7
    (6.1)
    2.8
    (3.8)
    13.7 0
    (1.4)
    0
    (1.9)
    0.5
    (1.9)
    0
    (0.9)
    - - -
    政党間一票格差 1=基準
    (1=基準)
    1.01
    (1.01)
    1.10
    (1.02)
    1.24
    (1.03)
    1.56
    (1.05)
    1.14
    (1.02)
    -
    (1.25)
    -
    (1.15)
    4.89
    (1.10)
    -
    (1.70)
    -
    (-)
    - -
    政党間得票率 31.6 24.1 13.1 6.1 3.8 13.6 1.7 2.1 2.0 1.6 - - -
    全国一括・再配分式 69 52 28 13 8 29 3 4 4 2 - - 212

     
     

    太田光征
    http://otasa.net/

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