小選挙区制の廃止へ向けて

5月 26th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 17:19:14
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 小選挙区制の致命的な問題点、「神話」は、すでに1993年の時点で故石川真澄氏などが明らかにしていたが、1994年、小選挙区比例代表並立制が導入されてしまった。

 どの選挙制度にも一長一短がある、とよくお茶を濁される。しかし、少なくとも単記投票制の単純小選挙区制に関しては、選挙制度を名乗ることはできないのではないか。なにしろ、得票第一党が議会第一党になることすら保証しないのだから。

 来るべき選挙制度改革の再論議に備えて、小選挙区制の問題点をまとめてみました。(印刷用ファイル

共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」賛同募集中
 
 
[参考文献]
石川真澄『選挙制度』(岩波ブックレットNO.172、1990年)
石川真澄『小選挙区制と政治改革』(岩波ブックレットNO.319、1993年)

[関連投稿]
中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164
小選挙区比例代表併用制の問題点
http://kaze.fm/wordpress/?p=220
大選挙区制(中選挙区制)の問題点 〜連記投票制の落とし穴〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=232
比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション
http://kaze.fm/wordpress/?p=229

【追記:6月27日】 「小選挙区制ではなぜ得票率と議席獲得率が一致しないか?」を新たに追加し、その他の項目を微修正しました。
【追記:7月14日】 「小選挙区制の過半数偽装効果と三乗法則」を追加しました。
 
 
【目次】
 
 
(1) 汚職・腐敗議員は小選挙区制でないと排除できないか?
(2) 小選挙区制でしか金権選挙はなくせないか?
(3) 小選挙区制は政権交代の可能性を高めるか?
(4) 小選挙区制ではなぜ得票率と議席獲得率が一致しないか?
(5) 小選挙区制は多数派を偽装する
(6) 小選挙区制の過半数偽装効果と三乗法則
(7) 小選挙区制の下では得票多数派が議会多数派になるとは限らない
(8) コンドルセのパラドックス
(9) オーストラリア下院の小選挙区制(優先順位付連記投票制)でもコンドルセのパラドックスは解消されない
(10) 選挙制度は政党制や政権交代を規定するためにあるのではない
(11) 小選挙区制が政権交代を促す保証はない
(12) 「小選挙区制→二大政党制→単独過半数政権」という神話の解体――G・サルトーリの実証研究
(13) 単独過半数政権の安定性神話――L・C・ドッドの実証研究
(14) 選挙区制と政党制に厳密な相関関係はない――「小選挙区制→二大政党制→単独過半数政権」の日本における反証例
 
 

(1) 汚職・腐敗議員は小選挙区制でないと排除できないか?

 中選挙区制では問題候補を落選させることができず、小選挙区制ならそれが可能だと主張されたが、そうともいえない。選挙区が小さいほど、地盤選挙、後援会選挙が機能するので、問題候補の当選をむしろ保証しかねない。

 また小選挙区制では政策幅が切り縮められ(2005年の“郵政民営化国民投票選挙”など)、同時に有権者は候補者の当選可能性を考慮しなければならない。こうして有権者の選択肢は限定されるので、問題候補に対立する(当選可能な)候補が政策的に良識的な候補とも限らない。

 比例代表制(政党の得票率と議席獲得率がほぼ一致)でも、拘束式名簿(政党が用意する当選順位つきの候補者名簿)に問題候補が上位に登録されることは難しいし、非拘束式名簿(当選順位なしで、得票数順で当選)なら、政策と候補者の多様な選択肢を確保しつつ、有権者は問題候補を排除できる。

 

(2) 小選挙区制でしか金権選挙はなくせないか?

 中選挙区制では同じ政党の候補どうしが争うため、有権者に対するサービス合戦を招き、そのために多額の選挙資金を必要とし、不適切な資金の獲得に手を染めやすい、という主張もあった。これも、中選挙区制から小選挙区比例代表並立制に変える際に使われた理屈の1つ。

 金権選挙には様々な形態がある。有権者に不適切なサービスを提供するケースばかりではない。選挙資金の多寡が当選を大きく左右する限り、金権選挙はどの選挙制度でも根絶しがたい。むしろ有権者の選択幅を狭める小選挙区制でこそ、金権選挙が高度に機能する。

 いい例が米国。民主・共和両党はいずれも軍需企業などから多額の政治献金を受けて選挙戦を勝ち抜き、二大政党以外の政党を排除し、異常な軍事政策を固定化する壮大な金権選挙を合法的に続けている。

 小選挙区制は金権選挙を排除できないが、政策と政党の多様性を排除する。

 

(3) 小選挙区制は政権交代の可能性を高めるか?

 小選挙区比例代表並立制の導入に使われた理屈はまだある。1989年の参院選1人区で自民が惨敗したことから、小選挙区制が政権交代の可能性を高めるとされた。

 しかしこれは俗論。1人区以外の2〜4人区、比例区でも自民は過半数割れを起こしていたので、そのような主張に根拠はない。

 2007年の参院選も同様。1人区では自民が6勝23敗とやはり惨敗した。しかし同時に、比例区と3人区、5人区でも与党は野党に負けている。比例区では野党27に対して与党21議席。3人区と5人区では野党12に対して与党8議席。2人区はその特性から民主12、自民11、無所属1議席と、ほぼ自民と民主が独占的に痛み分け。

 小選挙区制は、与野党支持率の差異を、偽装的な議席数の差に増幅するに過ぎない。与野党支持率の逆転によって与野党の議席数が逆転する際、議席数の開きを他の選挙制度より過剰に演出しているだけ。

 小選挙区制が与野党支持率の逆転をもたらすわけではなく、またそのようなことが許されてよいはずもない。

 多党制下にあっては、政権交代を可能にするどころか、阻害するのが小選挙区制。小選挙区制は、支持率・得票率で絶対的には多数といえない政党が政権に居座り続けることを許す。下記例を参照。

 

(4) 小選挙区制ではなぜ得票率と議席獲得率が一致しないか?

 例えば、与党A候補の得票率が35%、野党B候補の得票率が33%、野党C候補の得票率が32%とする。定数1の小選挙区では、与党A候補が得票率35%で100%の議席を獲得することになる。このようにして小選挙区制では大量の死票が発生してしまう。

 

(5) 小選挙区制は多数派を偽装する

 英国では1945年から1992年の間、第一党が得票率50%を超えたことはないが、保守・労働党のいずれかが議席獲得率50%に達しなかったことは、1974年2月の1回のみ。

 例えば、サッチャー首相率いる保守党が83年、60%を超える議席を獲得した地すべり的勝利を収めたときでさえ、得票率は42.4%に過ぎなかった。

 日本での多数派偽装は2005年の郵政選挙で際立った。小選挙区でみると、与党は過半数に満たない得票率49%で、76%もの議席を獲得した。 

 日本の第8次選挙制度審議会の答申は、小選挙区制の特性として、「政権の選択について国民の意思が明確な形で示される」点をあげた。しかしこれは捻じ曲げで、小選挙区制は、「政権の選択について国民の意思を巧妙な形で偽装する」のが実際。

 

(6) 小選挙区制の過半数偽装効果と三乗法則

 小選挙区制については、得票率と議席数の関係に関して、「三乗法則」といわれる経験則が指摘されている。例外が実際にはある。

 「小選挙区制で、全国的な二大政党が争うと、両党の議席は、両党の得票率の三乗に比例する」「このような三乗法則は、イギリスの統計学者によって、両党の各選挙区における得票率が、ある数学的性質を充たす場合は、成立することが証明された」(西平重喜『比例代表制』、 中公新書、1981年)。

 二大政党AとBがあって、Aの全体得票率が50%未満であっても、Aが過半数の選挙区でトップ当選すれば、議席の過半数を獲得できる。

 このように、小選挙区制の「多数派偽装」効果は、第一義的に、全体得票率が50%未満でも、各選挙区での得票率が相対的にトップの候補だけを当選させることに起因する「過半数偽装」効果といえる。これが小選挙区制の致命的効果であって、三乗法則は、「全国的な二大政党」が争った場合の、議席の過半数を超える部分に関する定量的な表現に過ぎない。

 三乗法則の有無に関わらず、小選挙区制であっても、政党が議席の過半数を制するには、過半数の選挙区で得票率がトップになる必要がある。

 善良な政党連合と悪辣な政党連合があり、前者の支持率・得票率が後者のそれよりも低いとする。この場合、悪辣政党連合が候補者を一本化せず、分裂選挙をすることで、統一候補を立てた善良政党連合が過半数を獲得できる場合がある。これを、「全国的な二大政党」の存在を前提とする三乗法則の効果に起因すると考えるのは、間違い。そうではなく、単に、上述の過半数偽装効果による。

 小選挙区制が過半数偽装効果でもって善良政党連合に有利になることはあるが、分裂選挙は善良政党連合にも起こり得るので、小選挙区制が善良な選挙制度であるとはいえない。

 

(7) 小選挙区制の下では得票多数派が議会多数派になるとは限らない

 小選挙区制は、一応、多数代表制というべき選挙制度に分類されるが、得票第一党を議会第一党にする保証はない。これも過去に英国での実例がある。1951年、得票率は労働党が48.78%、保守党が47.97%と、労働党が上回っていたが、議席獲得率は、保守党が51.4%、労働党が47.2%と逆転し、保守党が戦後初めて政権を奪回することとなった。

 

(8) コンドルセのパラドックス

 小選挙区制が「有権者から最も好まれた候補者を選出」する制度とは必ずしもいえない。例えば、A、B、Cの3候補が立候補した場合、(第一選好の)「得票順」がA > B > Cとなっても、「選好順」はC > B > Aとなる場合がある。

 一見不思議だが、「第一選好票」の単純多数で当選を決定する単記投票制ゆえのパラドックス。中選挙区制でも同じようなパラドックスが発生する。

 上記の極端な例で説明する。A、B、Cの得票率はほとんど変わらないとする。つまり、それぞれ約3分の1の票を得たとする。さらに、Aが一番好きだとする有権者の中では、BよりCが好きだという有権者が100%。Bが一番好きだとする有権者の中でも、AよりCが好きだという有権者が100%。Cが一番好きだとする有権者の中でも、AよりBが好きだという有権者が100%であったとする。

 この場合、BよりCが好きだという有権者が約3分の2、AよりBが好きだという有権者も約3分の2いる。したがって、「選好順」はC > B > Aとなる。

 

(9) オーストラリア下院の小選挙区制(優先順位付連記投票制)でも
コンドルセのパラドックスは解消されない

 オーストラリア下院の選挙制度は完全小選挙区制だが、優先順位付連記投票制を取り入れている。有権者は候補者すべてに順位をつける。第一選好票で過半数を獲得した候補がいなければ、最下位候補を落選させ、その最下位候補に投票した有権者の第二選好票を上位候補に配分する。過半数を得る候補が現れるまで、同様の操作を繰り返す。

 この制度では、第一選好票のみを考慮して最下位候補をまず機械的に落選させる。したがって、オーストラリア下院の小選挙区制でも、選好順位の民意は反映されない。

[参考]
オーストラリア下院の選挙制度は優れているか?
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/89557778.html

 

(10) 選挙制度は政党制や政権交代を規定するためにあるのではない

 二大政党制を誘導し、単独過半数政権を実現するというのが、小選挙区制論者の表向きの主な動機になっている。しかしそもそも選挙は、国民の代表を選ぶのが第一義。憲法第43条には、「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」とある。多数派のみが全国民を代表するとはいえない。

 民意の正確な反映(得票率と議席獲得率の一致)を重視するのが、代表性に関する憲法解釈の傾向。詳しくは渡辺良二『近代憲法における主権と平等』(法律文化社、1988年)を参照。

 

(11) 小選挙区制が政権交代を促す保証はない

 米国下院も小選挙区制だが、1932年以来60年間にわたり、2期4年間を除き、民主党が第一党の地位を占めていた。

 英国の北アイルランドでも、ユニオニスト党の一党優位の状態が1993年の時点で50年間も続いていた。

 

(12) 「小選挙区制→二大政党制→単独過半数政権」という神話の解体
――G・サルトーリの実証研究

 小選挙区制が二大政党制を誘導する傾向にあることは確かだが、民意を強制的に完全な二党に集約することは難しい。また二大政党制の下で単独過半数政権が生まれるとも限らない。

 G・サルトーリは『現代政党学』(岡沢憲芙・川野秀之訳、早大出版部、1980年)で、「小選挙区制→二大政党制→単独過半数政権」という神話を英国の実例で解体している。

 英国は1885年に小選挙区制に切り替わった。「先ず1885〜1910年期。この期の大政党は保守党と自由党であった。総選挙は8回あったが、そのうち6回は真の単独政権を生まなかった」「戦間期(1918〜35年)、労働党が第二党になった。しかし自由党はレリヴァントな第三党として生き残った。この期の特徴は不安定と連合政権であった。それ故、イギリスが二党制の古典的なルールに従って行動したのは第二次世界大戦以後だけということになる」。

 

(13) 単独過半数政権の安定性神話――L・C・ドッドの実証研究

 ドッドの『連合政権考証』(岡沢憲芙訳、政治広報センター、1977年)によれば、単独過半数政権のみが安定政権をもたらすという説は、L・ローウェルの『ヨーロッパ大陸の政府と政党』(1896年)で広まり、デュヴェルジュらが無批判に受け入れてきた。

 ドッドは、欧州と大洋州の17カ国について、第二次世界大戦前約20年間と戦後約30年間の内閣の寿命を調べた。

 平均値では、「二大政党下の政府は平均五五ヵ月続いたが、多党制下の内閣の平均寿命は二六ヵ月であった」。しかし基準を変えると違ってくる。「五〇ヶ月以上かそれ以上も続いたすべての内閣のうち、約六〇%(四〇ヶ月以上続いた内閣の八〇%)は多党制議会から生まれた内閣であった」。

 

(14) 選挙区制と政党制に厳密な相関関係はない――「小選挙区制→二大政党制→単独過半数政権」の日本における反証例

 日本の場合はどうか。1890年の第1回衆議院総選挙から1898年の第6回総選挙までは、小選挙区制(1人区214、2人区43の総定数300)で行われた。2つの大きな政党が形成される傾向は認められたが、複数の小党が並存し、どの党も単独過半数を獲得したことがなかった。

 1902年の第7回総選挙から17年の第13回総選挙までは、1人区(46)から13人区まである大選挙区制(総定数369)で行われた。この期間は、二大政党と30人以下の中小党2〜4という構成であった。

 第14回(1920年)と第15回(1924年)の総選挙は、1919年に原敬内閣によって復活させられた小選挙区制(1人区295、2人区68、3人区11、総定数464)で行われた。第14回は、立憲政友会が278議席、憲政会が110議席(政友会の半数未満)、その他となり、第15回は憲政会152、政友本党111、立憲政友会102、その他となった。つまり典型的な二大政党は形成されていない。

 1925年に中選挙区制となった。それ以来1942年の翼賛選挙まで6回行われた総選挙のうち、第16〜18回(1928、30、32年)は立憲政友会、立憲民政党のほぼ完全な二大政党の構成になった(その他の党の当選者は6人以下)。第19回(36年)、第20回(37年)は社会大衆党が37議席を獲得して、政友党・民政党とのいわば2・5党制になる。

 このように、選挙制度史を眺めてみれば、小選挙区制が典型的な二大政党を形成し、単独過半数政権を誕生させるという法則性は、成立しない。

 
 
太田光征
http://otasa.net/

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い(野党国会議員への要請第2回)

5月 23rd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 21:52:18
under 一般 [37] Comments 

「風」では小選挙区制を見直すセミナーを企画しています。このセミナーに参加していただく国会議員を募るため、4月に野党国会議員の皆さんに要請文を送付しました。

ところが応じていただける議員がいませんでしたので、5月23日、再度、以下の要請文を野党国会議員にFAXとメールで送付しました。

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い
第1回活憲政治セミナー
「地球温暖化問題から取り残される日本の政治」のご案内

野党国会議員の皆様

 4月23、24の両日にわたりお送りした要請文「小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い」はお読みいただけましたでしょうか。

 与野党の一部からは相変わらず政界再編へ向けたと思われる動きが伝えられています。例えば、平沼赳夫氏は、「自民、民主の橋渡し」を目指した保守系新党の結成を公然と示唆しています。いわば「大連立を見かけ上の野党の立場」から促進しようとする動きといえます。

 こうした誘いを野党が断固拒否するという空気は伝わってきていません。平沼氏の動きは、野党の信頼性を損なう働きといえ、そのような誘いに野党が動くならば、有権者は再度、野党に対して不信の目を向けることになるのではないでしょうか。

 最近言われだしている選挙制度改定は、こうした政界再編がらみの思惑、ないしは自公の生き残りを狙いとしたものと思われ、民意を反映したものではありません。

 有権者が野党に期待しているのは、民意を反映した政権交代です。そのためには、野党を分断し、民意をゆがめ、自公に勝利をもたらす小選挙区制を廃止し、同時に、大連立や自公延命のための選挙制度改定をも阻む必要があります。

 改めて、小選挙区制を見直す集会へのご参加を検討していただきたく思います。よろしくお願い申し上げます。

 なお、5月31日には、第1回活憲政治セミナー「地球温暖化問題から取り残される日本の政治」を行います。ご参加の上、発言、提言をしていただければ幸いです。詳細は公式サイトでご確認をお願いいたします。

2008年5月23日

「平和への結集」をめざす市民の風

太田光征

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い(野党国会議員への要請第1回)

5月 23rd, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 21:35:02
under 一般 [57] Comments 

「風」では小選挙区制を見直すセミナーを企画しています。このセミナーに参加していただく国会議員を募るため、4月23、24の両日にわたり、以下の要請文を野党国会議員にFAXとメールで送付しました。

小選挙区制を見直す集会へ参加のお願い

国会議員の皆様

 2005年郵政選挙の見せ掛け上の「圧勝」にも関わらず、その後の2007参院選でも退潮傾向が明らかになった自民党と公明党の与党連合は、小選挙区比例代表並立制では民意をゆがめた勝利が不確実になったと判断していることでしょう。現在の与党の枠組みを超えた政界再編を見込んで、新たな党略的生き残りのための選挙制度を模索する動きもあるようです。

 自民党と公明党が提唱する中選挙区制といっても、定数は3以下であると予想され、得票率を上回る議席獲得率を得る仕掛けを何が何でも狙ってくると思われます。

 得票率で示される与野党の力関係は、野党が優勢になっていると見られますので、死票の出ない、民意を反映した選挙制度ならば、野党連合の勝利はますます確実になってきました。今となっては、小選挙区制は、民意を逆転させる自公の延命装置にもなり、野党を分断させる危険な選挙制度になっています。

 反民主的な選挙制度で現在の与党の延命に手を貸すのか、それとも民主的な選挙制度改正で当然の政権交代を実現するのか、問われていると思われます。

 民意を反映した民主的な選挙制度は、与野党問わず受け入れられるべきものであり、政権交代も担保するものです。「平和への結集」をめざす市民の風は、独立した小選挙区制に反対し、民意を反映した選挙制度改正を実現する立場から、そのような趣旨のシンポジウム/政治セミナーを企画したいと考えています。

 付きましては、上記の趣旨にご賛同し、シンポジウム/政治セミナーにご参加いただける国会議員の皆様を募らせていただきたいと思います。集会の実施日時は皆様の都合に合わせます。下記連絡先までお知らせいただければ幸いです。ご検討よろしくお願い申し上げます。

2008年4月24日

「平和への結集」をめざす市民の風

太田光征

9条は世界史の本流:9条世界会議の報告

5月 7th, 2008 Posted by MITSU_OHTA @ 12:24:22
under 一般 [11] Comments 

〜1945年:重慶、東京、広島、長崎…
1945年広島

1947年5月3日:日本国憲法施行
9条は人類への贈り物

2008年5月4日:9条世界会議
9条世界会議
 
 
 
2008年5月4日から6日まで千葉県の幕張ほかで行われた「9条世界会議」(http://whynot9.jp/)の初日全体会議に参加してきました。企画、実務に携わった方々に感謝します。海外スピーカーの多くが9条世界会議を世界史的だと形容。池田香代子さんも6日の総会で、9条が世界史の本流に位置すると述べられましたが、このことに確信を持ってよいと思います。

当初、ベアテ・シロタ・ゴードンさんにインタビューしたいと思い、取材登録したものの、ご高齢のため、メディアの取材は一切受けないということになり、残念。何分、貧乏アマチュア記者なもので、手持ちの借り受けたビデオは、会議全体の様子を収めるだけの機能を持ち合わせていません。スピーカーすべての方の写真を紹介できていないのは、そのため。発言内容の要旨を中心に報告します。

ナターシャ・グジーさんの透き通るような歌声ほか、アーティストのパフォーマンスの紹介も、残念ながら割愛しなければなりません。

【追記】 5月22日
初日全体会議の報告としては、別に、片山佳代子さんによるものが詳しい。

9条世界会議 報告
http://homepage1.nifty.com/kayoko/9jousekai.htm

池田香代子さんの発言要旨に以下を追加しました。国名の記憶が不確かだった部分です。

「エクアドルの制憲議会は4月1日、外国軍基地や外国軍の駐留を認めないとする新憲法条項案を可決した(国民投票は今年後半の予定)」

太田光征
http://otasa.net/
 
 
 
開会挨拶:吉岡達也さん (「9条世界会議」日本実行委員会共同代表/ピースボート)
吉岡達也さん

マイレッド・マグワイア (北アイルランド/1976年ノーベル平和賞受賞)
マイレッド・マグワイアさん

日本の平和憲法と第9条を放棄しようとする動きに多くの人が憂慮の念を抱いている。日本の再軍備、軍事化はアジアの人々の中に恐怖を増長させ、軍拡の引き金になり得る。

2003年5月、ブッシュ米大統領は戦争の再定義を行い、世界はさらに危険になった。戦争目的を、敵国の侵略と体制変革とする宣言。先制攻撃は予防戦争であると位置づけ、それに対するアメリカの独占権を主張。これは国際法と多国間合意に反する。アメリカ帝国の戦争再定義にはっきりと反対の意思を示す必要がある。

あらゆる形態の暴力に対しても闘いを挑んでいかなければならない。その端緒として、心の中から武装解除を始めていく必要がある。

日本が平和憲法をないがしろにするなら、被爆者に対する重大な侮辱である。アメリカの新しい核ドクトリンは軍事戦略のなかで核兵器の使用に焦点を当てている。アメリカは、核兵器が、予防戦争を含めて、どのような戦争であっても、それが使われる可能性があると主張。核兵器が不可欠であり、性能向上を図っていかなければならないとアメリカが言うとき、イギリス同様、核拡散防止条約の義務を無視している。

イスラエルに対して、中東の非核化でリーダーシップを求めるべき。アジアでの核兵器の蓄積、拡散に対しても反対していく必要がある。軍拡競争の宇宙への拡大を懸念する。テロが世界の安全保障上の最大の脅威であるとする西側の一部の主張は間違いであると思う。安全保障の名の下に人権侵害が行われ、テロが増幅され、安全どころかより危険になった。国家による人権侵害などをやめさせ、人間の安全保障を政府に要求するべき。

イギリス政府は、アイルランド共和国軍、ロイヤリスト武装グループとの対話を行い、北アイルランドにおける停戦、平和協定締結の手助けをすることができた。祖国北アイルランドの30年にわたる暴力に終止符が打たれ、平和を手に入れることができた。

ピース・ピープルを立ち上げて以来、暴力的手段は機能せず、対話のみが機能することを経験的に学んだ。簡単な解決策がないことも。長い期間の決意が必要。

平和を作ることは可能であり、北アイルランドがそのモデルになることを願う。2007年、ノーベル平和賞受賞者が暴力無き平和のための憲章を制定した。誰もが殺されることのない権利を持ち、誰も殺してはならない責任を持つとするもの。”This vision is possible. Thank you to the Japanese people for being part of it.”

コーラ・ワイス (アメリカ/ハーグ平和アピール代表)
コーラ・ワイスさん

コスタリカ憲法の第12条も常備軍を禁じている。パナマの憲法も軍隊の排除を謳っている。ボリビアでも、戦争を放棄し、軍隊を拒否する憲法改正の国民投票をまもなく行う予定。

コスタリカにこんなTシャツがある――「空軍は鳥で十分、陸軍は蟻で十分、海軍は魚で十分」と書かれている。コスタリカでは24歳の法学生が、イラク戦争を支持した政府を相手取り、違憲訴訟を起こした。学生は勝訴し、イラク戦争を支持するリストからコスタリカの名前は削除されることになった。

1999年のハーグ平和会議で、9条の価値が確認された。人類は奴隷制、植民地主義、女性参政権の禁止法を廃絶した。それまで尊重されてきた制度を廃絶することは無理ではない。

女性・平和・安全保障に関する国連安保理決議1325には、人類の命運がかかった大きな決定の場には女性が参加すべきと規程されている。

世界の軍事費は年間1兆ドル。アフガニスタン・イラク戦争では3兆ドルが費やされている。貴重な財源の犯罪的な配分ミスである。

アクションの提案をする。9条の大使となって、今よりできることを1つ増やそう。核兵器のない世界を実現するための法的、技術的、政治的手段を提供するモデル核兵器協定がある。日本はその国連での採択に向けて先頭に立てるはず。

池田香代子(日本/ 「9条世界会議」日本実行委員会共同代表、翻訳家)

池田香代子さん

エクアドルの制憲議会は4月1日、外国軍基地や外国軍の駐留を認めないとする新憲法条項案を可決した(国民投票は今年後半の予定)。

問題の解決に手段は2つしかない。戦争をはじめとする暴力か、話し合いかの2つ。話し合い、つまり民主主義は、戦争を否定して初めて本物になることを今いちど銘記しなければならない。

お金のグローバリゼーションではない、市民が縦横につながるオルタグローバリゼーションの大波で、世界を覆い尽くしましょう。

土屋公献(日本/ 元日弁連会長)

同じ9条の採用を各国に呼びかけたいが、おこがましいだろうか。

エマニュエル・ボンバンデ (ガーナ/西アフリカ平和構築ネットワーク)

アフリカほど9条が必要とされるところはない。日本の指導性に期待する。

ベアテ・シロタ・ゴードン (アメリカ/元GHQ日本国憲法起草者)

日本国憲法の草案作成には世界中の憲法を参考にした。民間の憲法研究会、社会党、共産党からも案が提案されている。日本国憲法は世界の英知が詰まったもの。日本国憲法は米国憲法よりすばらしい。押し付けであるとは思わない。

李 錫兌(イ・ソクテ) (韓国/弁護士、人権活動家)

アジアでは、日本が漢字を輸入するなど、文物の交流に重きが置かれてきた。仏独は、争いのない関係に利益を見出した。日本は、理性的な政策に背を向けてはならない。

カルロス・バルガス (コスタリカ/国際反核法律家協会副会長)

1980年代、アメリカはニカラグア侵略のために米軍基地をコスタリカ国内に建設しようと圧力をかけたが、常備軍を拒否した12条を持つコスタリカ憲法を根拠に跳ね除けることができた。1983年、コスタリカは中立宣言(コスタリカの永世的、積極的、非武装中立に関する大統領宣言)で、国内における外国の軍事活動を禁止している。

アン・ライト (アメリカ/元陸軍大佐・外交官)

軍需産業ではなく、平和でもうかる産業を。

エイダン・デルガド (アメリカ/イラク帰還兵)

911テロ後、何かをやりたい思いから入隊した。アメリカで軍人は貴い職とされる。戦争の美点とされるものはすべて嘘だと分かり、兵役を拒否した。
戦争に反対するだけでは認めているも同然。周りに話していくことにした。

カーシム・トゥルキ (イラク/人道支援ワーカー)

国を守るために武器を取ったが、敵対関係にならないことが最良。軍事活動と人道支援は混同される。人道支援でも、スパイの疑いをかけられ、誘拐された。非武装支援がよい。

雨宮処凜 (日本/作家)

イラクへは2回訪問した。イラクでも派遣会社が活動している。子供を産み育てることができる職業として自衛隊がリクルート。食うために自衛隊へ、はアメリカ貧困層が入隊する状況に似ている。

高遠菜穂子 (日本/イラク支援ボランティア)

2004年4月、イラクで武装勢力に拘束された。日本が「9条を突破」したから人質になったのだろう。丸腰、対話、支援という「9条実践」をしていたから解放されたのだと思う。

[以下、9条ピース・ウォーク参加者の写真]

ピース・ウォーク

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第1回活憲政治セミナー:地球温暖化問題から取り残される日本の政治

5月 7th, 2008 Posted by Keiss1979 @ 8:42:42
under 一般 [3] Comments 
「平和への結集」をめざす市民の風
活憲のための政治セミナー
当日の写真から・・・詳しい報告はしばらくお待ちください(6月3日)。

第1回活憲政治セミナー3

第1回活憲政治セミナー1

第1回活憲政治セミナー2

衆議院山口2区補選で民主党候補が大勝しました。国民の多くが福田政権に「ノー」を突きつけつつあります。福田総理は7月の洞爺湖サミットで、世界に向けリーダーシップを発揮、汚名挽回して政権維持をと考えているようです。しかし、その肝心の地球温暖化対策、日本はボロボロで世界から取り残されつつあるのです。

1997年の京都会議で、世界の先進国は2012年までに温室効果ガスを削減すると約束しました。ところが日本は削減どころか排出量を増やしています。この10年間、何にも有効な対策を打ってこなかったからです。経済界の既得権を重視し、産業界に厳しい制度をことごとく排除してきたからです。

今年のはじめには、沖縄での米兵による少女暴行、護衛艦「あたご」の衝突など、日米関係や自衛隊そのものを問う事件が続きました。消えた年金はさっぱり解決せず、追い討ちをかけるように特別高齢者医療制度、原油や穀物の値上がりによる物価高騰、自暴自棄の凶悪犯罪や自殺が増えています。国民生活は大ピンチなのに、国会は空転し有効な対策を打てていません。平和問題も、社会福祉・高齢者問題、経済政策も、そして地球温暖化問題でも「いきあたりばったり」なのです。

そこで、現在の政治の行き詰まりを打ち破る展望を探るため、私たちは政治セミナーを企画します。人類を脅かす環境問題、国民を脅かす格差・貧困の問題、民意をゆがめる小選挙区制の問題、そして平和にとっての憲法9条の価値などについて、一緒に考えてみませんか。

第1回 地球温暖化問題から取り残される日本の政治
       ―洞爺湖サミットで何をなすべきか―

平和問題、社会福祉・高齢者問題、経済政策・・・
地球温暖化問題でも「いきあたりばったり」!

講師:平田 仁子(ひらた きみこ、NPO法人 気候ネットワーク運営委員)

1970年生まれ。米国環境NGO「Climate Institute」で地球温暖化に関する活動に携わる。98年6月より気候ネットワークに参加。
NGOの立場から、国内外の地球温暖化に関する政策研究・政策提言・情報提供などを行う。共著『よくわかる地球温暖化問題 改訂
版』(気候ネットワーク編・中央法規出版)
気候ネットワーク:国内の地球温暖化問題に取り組む約160の団体、600の個人が参加する環境NGO(http://www.jca.apc.org/kikonet/)。

日時:2008年5月31日(土)14:00〜17:00
会場:神田公園区民館 神田司町2−2 電話 03-3252-7691
    JR・東京メトロ銀座線神田駅から徒歩5分
    東京メトロ丸の内線淡路町駅から徒歩5分
    都営新宿線小川町駅から徒歩5分
    ※会場は「みどりの会」で予約しています
地図:http://www.city.chiyoda.lg.jp/service/00065/d0006550.html
参加費:800円(前売り500円)

2回目以降の予定

第2回 「拡大する格差社会と失われゆく憲法の精神」
    〜ワーキングプアと政治の無策〜 (2008年7月下旬開催予定)
第3回 「小選挙区制は政治を良くできたか」
    〜あるべき選挙制度を考える〜 (2008年9月開催予定)
    ※現職議員を招いたパネルディスカッションを予定
第4回 「東アジア共同体としての平和政策」
    〜憲法9条と北朝鮮問題〜(2008年11月開催予定)
広島・長崎へのオプショナルツアー(2008年8月予定)

主催:「平和への結集」をめざす市民の風
後援:地球平和公共ネットワーク
協力:みどりの会
お問い合わせ先:政治セミナー実行委員会 電話番号:080-5373-0575(末次)
メール:join@kaze.fm 
URL:http://kaze.fm/