世襲制限の立法化は壊憲クーデター

5月 26th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 0:20:31
under 一般 [5] Comments 

1. 政治改革詐欺としての世襲制限論議
2. 世襲制限論議から選挙制度改悪第二幕へ
3. 世襲制限の立法化は壊憲クーデター
4. 政治論議で主権を切り崩す罠にはまらないために――「政治改革」ではなく、「主権保障」を

政治改革詐欺としての世襲制限論議

 国政選挙での世襲を制限する議論が盛んですが、世襲制限については早くも抜け穴が考えられています。世襲候補を無所属で立候補させ、党県連が応援し、当選後に追加公認するという手です。実際、小泉純一郎氏の世襲選挙区でその可能性が指摘されています。

 「別の候補を立てなければ票は割れない。選挙に多少不利でも無所属で出馬し、当選後に追加公認される可能性が十分にある。しかも次男は自民党神奈川11区の支部長にとどまり、政党支部で企業・団体献金は受けられる。党執行部は刺客を送る考えはなく、県連が事実上支援することも黙認する方針だ。」(5月22日付け朝日新聞)

 千葉県知事選で森田健作氏が完全無所属を装い、自民県議多数の応援で当選し、当選後に自民党べったりであることを公然と認めたのとソックリです。

 世襲の制限といっても、その中身は、新人の世襲候補について、「同一選挙区から連続して立候補する場合は公認しない」(自民)「同一選挙区から連続して立候補するのを認めない」(民主)というもの。隣の選挙区からの立候補や、麻生首相のように間を空けた選挙での立候補を制限するものではないのです。メディア時代の今日、それで世襲制限というのは無理でしょう。

 
世襲制限論議から選挙制度改悪第二幕へ

 民主党の世襲議員は全体の約1割とのこと。それほど多いとはいえないでしょう。世襲制限というのは、要するに、非世襲の自民党議員を選びたい、という要望に応えるものです。またぞろ自民党改革のための政治改革論議が持ち上がっているのです。

 いわゆる政治改革論議が小選挙区比例代表並立制の導入にすり替えられた90年代初頭を思い出します。金権腐敗をなくすなどと理屈をつけて、主権者の主権を侵害する小選挙区比例代表並立制が導入されてしまいました。

 選挙制度は、政治改革なかんずく自民党改革の道具ではありません。小選挙区制は、西松建設や熊谷組などが設立した偽装政治団体による企業献金を防げませんでしたが、自民の延命には見事に成功しました。主権者の主権を具体的に保障するための選挙制度が、政治改革詐欺の犠牲になってしまったのです。

 世襲制限が、議員定数(比例区定数)の削減とセットで語られていることに注意しなければなりません。国会議員はけしからんという世論が世襲制限論議で高じることで、比例区定数の削減をスムーズに進めやすくなります。

 自民と民主による見せ掛けの政治改革競争が、自民のさらなる延命に貢献する比例区定数の削減に収斂する。主権者の主権を侵害する選挙制度改悪の第二幕です。

 民主党は「行革」の一環として、議員自ら身を削るということで、マニフェストに衆院比例区定数の削減を盛り込もうとしています。自民党の菅義偉選対副委員長も「自民党が体質を変える覚悟として、自らの身を削ることを国民に約束することが必要だ」(5月24日 時事通信)として、議員定数の削減を主張しています。

 しかし比例区定数の削減は、決して自民と民主の身を削ることになりません。小数政党の身をさらに削ることで――主権者の主権を切り崩して――自民と民主の立場を安泰にする仕掛けなのです。

[参考]
比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション
http://kaze.fm/wordpress/?p=229

 自民と民主が自分の身を削りたいなら、小選挙区制を廃止して、民意を反映する選挙制度に改正すればよいのです。

 
世襲制限の立法化は壊憲クーデター

 世襲制限は、政党の内規で規制するだけなら私も歓迎しますが、これを立法でということになると、困ったものです。憲法で保障された職業選択の自由を明らかに侵しますから。

 民主党新代表の鳩山由紀夫氏も、必ずしも世襲制限の立法化を否定していません。「公平公正というもの、こういう観点から私どもは例えば法案を作るべきではないか、ということでございまして、従って国民のみなさんに望ましい政治風土を作っていくために公平公正な立場に立てるような、そんな選挙のプロセスを作り上げていきたい。という思いで世襲議論をしているところであります」(5月16日付け産経新聞)

 もしかしたら、ここで言う「法案」が、政治資金管理団体の相続を禁止する法案のみを指すのかもしれません。それでも、世襲制限に当たって立法化を排除するとの明確な方針は、自民・民主のいずれからも出されていません。

 例えば旧教育基本法の改悪という壊憲はけしからんが、世襲制限の立法化という壊憲は容認できる、というようなダブルスタンダードはいけません。世襲制限の立法化は、自公民による一連の立法壊憲と何ら変わらないではないですか。

 主権者が自ら憲法機能の空洞化に加担することは自殺行為です。これは、労働条件に関して、正規雇用者と非正規雇用者が、いわゆる「下向きの平準化」「底辺に向かう競争」を競い合う様に似ています。相手方の労働条件の切り下げが自分にも跳ね返ってくるという構造は、気付きにくいものです。世襲議員を駆逐したつもりが、主権の拠り所である憲法をズタズタにしていた、では笑うに笑えません。

 
政治論議で主権を切り崩す罠にはまらないために――「政治改革」ではなく、「主権保障」を

 主権者と護憲政党である共産・社民などは、壊憲クーデターである世襲制限の立法化に反対し、あくまでも政党内規で対応するべきだ、という論に組みするべきです。

 さらに、世襲制限論議を選挙制度改悪ではなく、選挙制度改正の足がかりにする。小選挙区制では、同一政党から1人の候補者が立つのが普通なので、支持政党の候補者を重視する主権者は、世襲候補が立てば選ばざるを得ません。同一選挙区で同一政党から複数の候補者を立てられるようにすればよいのです。そうした選挙制度の1つとして、中選挙区比例代表併用制を提唱しています。

[参考]
中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164

 世襲候補を排除する決め手は、世襲候補を擁立しない第三極を確保することです。自民党改革はウンザリ。その点でも、自民と民主に不当に有利な小選挙区制を廃止する必要があります。

 政治家を懲らしめようとするから、世襲制限という発想になり、壊憲と選挙制度改悪の形で、主権者が自ら墓穴を掘ってしまいかねない。そうではなく、目を自らに向ける。選挙制度改正により、主権者の主権を正当に保障することで、主権者が主体的に世襲候補を排除できるようにすればよいのです。

2009年5月25日

太田光征
http://otasa.net/

印刷用ファイル

選挙制度改正運動としての選挙区すみ分け投票の勧め

5月 8th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 23:23:55
under 選挙制度 , 選挙制度修正投票 [6] Comments 

 

政権交代の需要に依拠した選挙区すみ分け投票が野党連合を促し、
小選挙区制の廃止と平和共同候補の擁立、
第3極の形成に道筋をつける
(印刷用ファイル)

 1人区でどう平和共同候補を実現したらよいのか。平和共同候補と民主党候補が対立してよいのか。平和共同候補が、野党の分裂選挙と敗北を助長することがあってはいけません。平和共同候補は必ず勝てる候補でなければならず、全野党統一候補が理想です。

 第3極候補ないし平和共同候補を民主党候補と対立させてでも、第3極の形成や、9条派3分の1突破を図ろうとするアプローチは、将来見通しが立ちません[参考1]。何十年かかるのか、何世紀かかるのか分からない。

 小選挙区選挙を利用して第3極議員を増やすには、時間がかかります。したがってその前に、民主党の単独主義を牽制する全野党連合を早急に確立しなければなりません。全野党連合が形成されれば、全野党統一候補の擁立も可能になります。

 小選挙区制の米英などで第3極が台頭する兆しは見られません。小選挙区制の廃止が第3極形成の現実的な条件ではないのか。小選挙区制の廃止も、野党連合の枠組みが作られることで道筋がつけられます。少数政党を抹殺する仕掛けであり、かつ政権交代を阻害することがある小選挙区制――2005郵政選挙の小選挙区で、与党は49%の得票率で76%もの議席を獲得――は、野党連合の理念に反するからです。

 最も好まれた候補の選出すら保障しない小選挙区制は、選挙制度ではありません[参考2]。 主権を侵害する小選挙区制の廃止は、主権者にとっても最重要の政治課題です。小選挙区制の土俵に素直に乗ってはいけません。個別選挙における投票に矮小化しない、選挙制度改正などを目指す運動としての投票戦略を組み立て、実践する必要があります。民主党単独政権を回避する野党連合と、そこを足がかりとした小選挙区制の廃止、平和共同候補=全野党統一候補の擁立を目指す運動として、小選挙区選挙を利用するべきです。

 「選挙区すみ分け投票」※は、主権者が主導してこの野党連合を促すものです。共産・社民など小数政党を支持する主権者が、小選挙区で民主党候補に投票する見返り、バーターとして、民主党支持者に比例区では小数政党に投票してもらうことを狙っています。自民・民主・公明の議席を減らして、小数政党の議席を増やし、その結果各党がそれぞれの得票率にほぼ見合った議席数を獲得できるようにする投票パターン(選挙制度修正投票)に他なりません。まだ比例区が残っている点が米英とは異なり、ここに突破口があります。

 選挙区すみ分け投票は、政策か政権交代かの二者択一を迫るものではなく、政権交代の需要に依拠して、共産・社民など第3極の議席を増やし、小選挙区制廃止などの政策実現を図る運動なのです。

 沖縄でなぜ糸数慶子氏のような全野党平和共同候補が実現しているのか。平和世論の強度や、社会大衆党という地域政党が野党の接着剤として機能していること、市民による政党への働きかけだけでなく、当地でどの党もひとり抜きん出ていないことが、大きな要因として考えられます。

 「本土」においても、野党勢力バランスの「沖縄化」が必要でしょう。選挙区すみ分け投票は、この「沖縄化」に近づけるアクションともいえます。主権者が野党の勢力バランスを民意に即したものに変え、全野党の共依存関係をつくることで、全野党に選挙共同路線を取ってもらうのです。

 こうして全野党選挙共同の枠組みが作られることで初めて、1人区での勝てる平和共同候補の擁立にも道筋がつきます。政権交代のための全野党選挙共同の意義が認識されることで、少数政党抹殺政策であり、政権交代を阻害することがある小選挙区制の廃止機運も高まるというものです。小選挙区制をなくしたい小数政党からすれば、逆の関係も成り立ちます。

 共産・社民など小数政党の支持者としては、選挙にならない小選挙区選挙で死票を投じるのか、それとも野党連合を足がかりに小選挙区制の廃止などを目指す運動としての投票を行うのかが問われます。次期総選挙で野党連合が勝利すれば、小選挙区制の廃止を可能にする土台が作られます。共産・社民と両党支持者には、まずはたった1回の選挙を我慢し、選挙区すみ分け投票を推し進めていただきたいものです。

 一方、民主党支持者など政権交代を望む主権者は、小選挙区で勝利の見込みのある野党候補に票を集中させるには、どのような投票パターンが有効なのかを問う必要があるでしょう。

 共産党は小選挙区で候補者を降ろすべきだ、という意見は選挙の度ごとに聞かれますが、これが落とし穴です。それは一部の主権者の民意には違いありませんが、得票率で測った民意は、共産・社民の議席を増やせ、民主の議席を減らせ、というものです。この正当な民意を重視し、公平を期した要求を政党に突きつけるとすれば、共産・社民はほとんどの小選挙区で候補者擁立を見送ってくれ、その代わり民主は比例区で候補者の擁立数を大幅に減らし、議席を共産・社民に譲るべきだ、ということになるでしょう。

※ 選挙制度改正運動としての選挙区すみ分け投票:

 比例区・複数定数区では少数野党などに投票する代わりに、1人区(地方自治体の首長選挙を含む)では「勝てる野党候補」に票を集中させること。死票を投じることが常の少数野党の支持者と、1人区で死票を生票として欲しい民主党などの支持者双方にメリットを与える投票パターン。

 全体の議席異動からみると、1人区の議席を自公から民主などに移転させる代わりに、民主が比例区・複数定数区で獲得していた議席を少数政党に移譲し、各党の議席獲得率を得票率に近づける「選挙制度修正投票」といえます。

 異なる野党の支持者どうしで実際に「バーター契約」(選挙区すみ分けバーター投票)を結び、それを世間に公表するのがよい。こうした選挙区すみ分け投票の意思表示アクションは、選挙前から行います。

 本来であれば、各党が主体的に選挙区すみ分け投票の協定を結ぶのが理想です。次期総選挙に向けては、青森選挙区の一部で、民主党と社民党がこの投票で合意しています。

2009年5月8日

太田光征
http://otasa.net/

[参考1] 自民と民主が改憲発議要件を緩和する改憲に成功すれば、国会議員3分の1で9条改憲発議を阻止することはできない。
[参考2] 「小選挙区制の廃止へ向けて」
      http://kaze.fm/wordpress/?p=215

憲法9条を守り抜く4.24討論会〜2.21集会の提起と議論を深めるために〜

4月 10th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 11:35:39
under 一般 [36] Comments 

 2月21日に「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう! 2月21日パネルディスカッション」が開催されました。9条を守るために何をなすべきか、選挙共同を含めて議論をしようというのが本来の狙い。ところが実際は、十分な議論ができませんでした。

 そこで、24日に丸々討論を行う集会を「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう! 2月21日パネルディスカッション」実行委員会が企画しました。私も実行委員です。討論への参加を呼びかけます。

太田光征
http://otasa.net/
 

◆ 名称 憲法9条を守り抜く4.24討論会〜2.21集会の提起と議論を深めるために〜
◆ 日時 2009年4月24日(金) 午後6時半〜9時
◆ 場所 文京シビックセンター(講道館となり)4階 シルバーセンター会議室B

 地図 http://www.cadu-jp.org/notice/bunkyo_city-hall.htm
 交通 丸の内線 後楽園駅4b出口すぐ/南北線 後楽園駅6番出口すぐ/JR水道橋駅東口 左折直進徒歩10分

◆ 参加費 500円
◆ 主催 「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう! 2月21日パネルディスカッション」実行委員会

 連絡先
 9条改憲阻止の会
   〒160-0004 東京都新宿区四谷4-23 第1富士川ビ302号気付
   電話 03-3356-9932
 9条ネット
   〒103-0061 東京都中央区銀座5?15?18 銀座東新ビル4階
   電話 03-5652-3119

2009千葉県知事選――森田氏「偽装勝利」の可能性を残す単純小選挙区制のカラクリ

4月 1st, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 18:50:12
under 一般 [30] Comments 

 千葉県知事選挙が終わりました。メディアは案の定、森田氏の「圧勝」、森田氏勝利の「民意」という表現を使っています。しかしここには致命的な問題が潜んでいます。

 平和運動関係者の中には、共産党推薦の八田氏と民主党推薦の吉田氏の得票数を合わせても、森田氏の得票数に及ばないことをもって、「分裂選挙」を今回の敗因と考える人は少ないかもしれない。仮に、八田氏と吉田氏陣営が統一候補を立てたとしても、白石陣営や西尾陣営とまでは統一できないから、今回の結果は「実力」の差であり、敗北は仕方がない、と。

 しかし、森田氏の勝利は、必ずしも民意を反映しているとは言えない。現行の単純小選挙区制では、過半数を制する候補者が現れない限り常に「偽装勝利」の可能性が残るのです。単純小選挙区制が偽装勝利を許すカラクリを説明しましょう。

2009年千葉県知事選挙結果
出所:千葉県選挙管理委員会

候補者 得票数
森田健作 1,015,978
八田英之 136,551
西尾けんいち 95,228
白石ますみ 346,002
吉田たいら 636,991
2,230,750

 
 
 白石、八田、 西尾の各氏に投票した有権者の90%が、吉田氏、森田氏をそれぞれ2番目に好きな候補(第2選好候補)、3番目に好きな候補(第3選好候補)と判断し、白石、八田、 西尾の各氏に投票した有権者の残り10%が、森田氏、吉田氏をそれぞれ第2選好候補、第3選好候補と判断したとします。さらに、森田氏に投票した有権者全てが、2番目以降の候補として、吉田氏 > 白石氏 > 八田氏 > 西尾氏の順に好きだたとしましょう。

 結果は、森田氏より吉田氏を好ましいと思う有権者が1,156,994人、吉田氏より森田氏を好ましいと思う有権者が1,073,756人。従って、「最も好まれた候補者」は、吉田氏ということになります。

 上記の「90%」を「83%以上」に置き換えても同様です。このパーセンテージについては、八田氏投票層に限れば、ほぼその線が予想されますが、実際はブラックボックスで分からない。

 「第1選好票で最も好まれた候補者」である森田氏は、上記を仮定すれば、実は「2番目に好まれた候補者」なのです。単純小選挙区制は、第2選好以下の順位を測ることができないので、見かけの選好順位しか決定できない。こうした矛盾をコンドルセのパラドックスと呼びます。単純小選挙区制を選挙制度とはみなせない理由の1つです。

 単純小選挙区制による選挙は、過半数を制する候補が現れない場合、選挙でも何でもないわけです。

 何時になったらこの虚構の政治儀式から抜け出せるのか。主権者としては、主権者をコケにする選挙制度の改正に、最優先で取り組みたいものです。

太田光征
http://otasa.net/

千葉県知事選挙:熟議討論集会の報告と立候補者情報

3月 26th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 18:59:27
under 一般 [9] Comments 

千葉県知事選挙熟議討論集会
平和への大結集・千葉主催「千葉県知事選挙熟議討論集会」

修正:名前が抜けていたので、追加しました。

(参考)
森田氏:憲法9条は改正を検討すべきである。
(「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート)

【目次】

(1) 主権者はどのような投票行動をすべきか――熟議投票・選挙区すみ分け投票
(2) 千葉県知事選挙熟議討論集会の報告
(3) 「八ッ場ダムをストップさせる千葉の会」公開アンケート
(4) 「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート――鬼泪(きなだ)山からの山砂採取問題など
(5) 浦安合同個人演説会
(6) 朝日新聞 千葉県知事選候補者アンケート
(7) 「平和への大結集・千葉」公開アンケート
(8) 千葉県知事選挙情報サイト

【立候補者】

森田健作氏 無所属 新
八田英之氏 無所属(共産推薦) 新 
西尾憲一氏 無所属 新
白石真澄氏 無所属 新
吉田 平氏  無所属(民主、社民、国民新、市民ネット推薦) 新


(1) 主権者はどのような投票行動をすべきか――熟議投票・選挙区すみ分け投票

そもそも「熟議投票」という概念は、小林正弥さんらが2004年参院選に向けて発表したアピールの中で、次のように提案されたものです。

「…選挙制度の変化のために、従来のように政党の支持・不支持だけで投票すると、死票となってしまう危険性が増えています。そこで、現在の選挙制度においては、各党・各候補者の政策に加えて、選挙区の状況を勘案して、投票することが重要になってきています。そこで、『熟議民主主義(deliberative democracy)』の最も重要な一環として、『これらについての情報を得た上で、さらに市民の間で十分な議論を行い、各自で投票を考える』という『熟議投票(deliberative vote)』が望ましいと思います。」
(B−2.「平和への結集」投票の指針:平和を希求する有権者に」
http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/ReCPAcoe/51kobayashiichinose.pdf

つまり、小選挙区制という死票を発生させる選挙制度を前提に、候補者の当選可能性なども考慮した戦術的投票のことを熟議投票と呼んでいます。

首長選挙にしろ、議会選挙にしろ、政策をパッケージで提示されたところで、主権者としては一括承認するわけにいきません。選挙で選択できるものには限界があります。

首長や議員の政策決定権限を最小限に抑制し、首長制のあり方について検討し、住民投票制度など、個別課題ごとに民意を直接問う制度を整える必要があるでしょう。

首長選挙は小選挙区制で行うしかありません。そうはいっても、過半数得票率の規定や決戦投票機能などを備えていない現行制度は、コンドルセのパラドックスを考慮していないので、選挙制度の名に値しません。

主権者としては、主権を保障する諸制度の確立にこそ優先的に取り組む必要があります。主権が保障されない枠組みの中で、各政策課題について熟議し、候補者の姿勢を問うことは、いつまでも続けられません。

今回の熟議討論集会では、予想通り、参加者は八田氏(共産党系)を推す人と吉田氏(民主党系)を推す人に分かれました。これでは森田氏の当選を拒むことは難しい。こうした矛盾と対立の構造は、主権を侵害する現行選挙制度に原因があります。

「各自が勝手に投票先を決める熟議投票」だけでは、不十分なのです。各自が勝手に投票先を決められるのは、主権を保障する選挙制度ができてからのこと。それまで主権者は、投票行動を統一する必要があります。

そのような矛盾・対立構造を解消するものとして私が提唱しているのが、「選挙制度修正投票としての選挙区すみ分け投票」です。現行選挙制度では矛盾のない選択などできないのだ、ということを認めなければなりません。そこが出発点です。

熟議討論集会では、首長選挙とその他の選挙をパッケージで考える必要があると提案しました。八田氏側(共産党系)の主権者は、今回は吉田氏側に投票する。その代わり、今度の総選挙の比例区など2人区以上では、吉田氏側(民主党系)が八田氏側(共産党系)に投票する――これで、総体において、私たちが望む平和候補者の当選拡大を図ることができる。

重要なのは、こうした選挙区すみ分け投票によって、民主党に偏っている野党の勢力バランスが修正され、野党共闘路線を確かなものにする効果がある点です。そうした政治力学が生まれて初めて、矛盾に満ちた単純小選挙区制の廃止に道が開かれるでしょう。

選挙区すみ分け投票は、選挙制度改革運動に他ならず、共産党系主権者と民主党系主権者の矛盾・対立構造を解消する機能を持つものです。


(2) 千葉県知事選挙熟議討論集会の報告

平和への大結集・千葉が主催した「千葉県知事選挙熟議討論集会」に参加してきました。

日時:2009年3月21日
会場:千葉市市民会館                      
主催:平和への大結集・千葉(http://www.xn--x41az7v.jp/~daikessyu/

参加者から出た意見を簡単にまとめておきます。

―投票率ワースト1は、1981年の千葉県知事選挙で、25.38%。平成9年が28.67%、昭和29年が29.30%、昭和60年が30.7%。

―森田氏は、浦安合同個人演説会では3分の1くらいしか参加していない。残土産廃ネットワークでも公開アンケートをお願いしたが、回答拒否の文面が大結集に対するものとまったく同じで、誠実さが見られない。白石氏からも回答がなかったが、八田氏からは回答をもらった。

―白石氏は、教育政策の見直しを掲げているが、学校選択制とかバウチャー制など、新自由主義的意味での個人の尊重を主張している。

―白石、森田の各氏は、医療の自立を主張。病院ごとの独立採算性のことなら、医療の現実を分かっていない。

―吉田氏は、支持団体を通じて配布するチラシと、一般向けチラシが異なっている。

―市民ネットワーク千葉県の方:市民ネットワーク千葉県は、総選挙に向け、13ある選挙区のうち、6、7選挙区で民主党と政策協定を結んだ。自衛隊の海外派遣には慎重を期することを盛り込んだ。平和・憲法を基準に個人ごとに推薦するかどうかを決めている。吉田氏についても、100%政策を支持しているわけではない。政策協定に、当選後、その都度話し合うという条項をいれてある。

―新社会党の方:新社会党としては、問われれば、八田氏を支持することにしている。吉田氏は、教育基本法の改定推進に立場にあった政治倫理研究会の役員をしている。吉田氏は、教育基本法の改定には賛成しているが、公明党に関する部分には不満だと明言した。吉田氏は、財界も推している。堂本氏は、後に自民党に取り込まれた。吉田氏は、よりまし候補とは言えない。残念だが、当選可能性はないが、八田氏がいいと判断した。

―新社会党の方:8年前、共産党で活動している方から、共産党候補を推す政策協定を持ちかけられたが、共産党県レベルで拒否されたという経緯がある。4年前も、候補者と政策・応援協定を結んだが、チラシに「新社会党支持」という言葉が入った程度で、応援依頼はなかった。

―堂本知事に環境問題で要望をしたが、環境問題は全部自民党が押えていて、何もできないと語っていた。自民党を半分にしてくださいよ、と言われた。堂本氏にとって、手に余る千葉県だった。吉田氏も、有権者が応援しなければならない。知事になったら、(政治を)させること。

―八田氏の周囲がアンケートに回答しなかったことに不信を抱いている。政策についてではなく、自分たちの組織に属さない市民にどう呼びかけて政策を実現していくのか、疑問だ。

―自民党は成田・羽田間に3兆円をつぎ込もうとしている。借金だ。森田氏には30人の自民県議がついている。

―吉田氏が知事選出馬に当たって相談したのが松下政経塾一期生の方だった。当選後にチェックする上でも、候補者の背後を知っておく必要がある。


(3) 「八ッ場ダムをストップさせる千葉の会」公開アンケート

「八ッ場ダムをストップさせる千葉の会」公開アンケート
http://yanbachiba.blog102.fc2.com/blog-category-17.html

八ツ場ダム反対を明確に主張しているのは、八田氏と吉田氏。西尾氏は回答がなかったが、パンフレットなどから、千葉県の財政負担反対は明らか。

白石氏:「八ッ場ダム事業については、治水、利水の観点から事業の必要性は理解できるところであるが、ただ、闇雲に事業を進めるだけでなく、時代のニーズや進め方を検証した上で、事業費の削減など必要な見直しについても考えていくことも必要であると考えている。」

(参考)
白石氏:4600億の事業のうち、すでに7割の執行が完了しており、今後、千葉県の負担金はダム本体工事だけで約46億あり、これを福祉に、という声があるが、千葉県は年間1600億の福祉予算を使っている――という正しい知識を持っていただきたい、と発言。(浦安合同個人演説会)

吉田氏:「千葉県の水需給予測、及び河川整備の点からみて、利水、治水の両面から必要ないと考える。」

森田氏:「この問題は千葉県単独の事業ではないため、関係都県との調整が必要。また全体の建設費が9000億円、千葉県の負担金も780億円に及ぶことから、関係都県と協議、検討した上で対応を考えるべき。」


(4) 「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート――鬼泪(きなだ)山からの山砂採取問題など

「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート
http://chibatiji.exblog.jp/9788796/

鬼泪(きなだ)山周辺の国有林からの山砂採取に明確に反対しているのは、西尾、八田、吉田、森田の各氏。白石氏は、一括文書回答で、その中で鬼泪山に言及していない。

「政策を知る会」公開アンケートではこのほかにも多くの質問項目があり、森田氏が女性関連政策に軒並み否定的な回答をしていることが明白です。

道路・交通についても、リニアモーターカーの導入をすすめると1人回答したのが、森田氏で、「産業の振興、雇用創出のためにも高規格道路(自動車専用道路)づくり(圏央道、第2湾岸、銚子連絡道路など)をすすめる。」を明確に選択したのも森田氏。


(5) 浦安合同個人演説会
                       
浦安合同個人演説会の様子を伝えるJANJANの記事
「千葉県知事選 候補者5氏が揃って演説会」(ビデオあり)
http://www.senkyo.janjan.jp/senkyo_news/0903/0903160494/1.php

以下は、政策に相違が目立つ課題についての発言要旨です。

行財政改革について

西尾氏:県職員に対する地域手当の廃止と聖域のない行政コストのカットを主張。
白石氏:知事報酬の2割カットと県職員の削減、(子育ての終わった)退職間際の職員の給与カット、退職金の半分を県債で支払う、年1千億円カット、法人超過課税の導入で税収増を主張。
森田氏:前年度踏襲主義を止め、事業の見直し等のコスト削減を図る。
八田氏:小泉構造改革と三位一体改革で、仕事が増えたにもかかわらず2008年まで4兆円の税金が減らされたことと沼田県政時代の大型開発が財政破綻の原因。巨大開発の見直しと、福祉型公共事業の転換を主張。
吉田氏:無駄な国直轄事業への財政支出の中止と大胆な投資を主張。

雇用問題について

西尾氏:バイオマスエネルギーの生産や介護事業に力をいれることで雇用を増やす。
森田氏:自分自身の試練を与えられた使命だと思い乗り越えることに頑張ることから入るべきである、頑張ればメシぐらいは食えるのではないかと主張。アクアライン料金を800円に下げて、経済効果を期待する。
八田氏:労働者派遣法の抜本改正を求め、大企業呼び込み型ではない雇用効果の高い福祉型公共事業に転換し、大企業の責任を取らせ、セーフティーネットを拡大する。
吉田氏:企業を倒産させないための緊急融資を県独自の既存制f度を利用して行い、農業ハローワークなどを通じた需要創造を。
白石氏:企業に解雇を思い止まらせるための雇用調整助成金の拡充、失業給付の改善を国に求め、職業教育を進め、成田空港を活かして海外からの渡航者を対象にした遺伝子ビジネスを呼び込みたい。

教育問題について(これ以降、森田氏は退席した)

八田氏:学校間競争と財政支援の格差を持ち込むことになる学力テストの公開には反対し、子供に格差を持ち込まず、生きる力を育てるべき。
吉田氏:学校・家庭・地域が一体となった地域センターによる教育を。
白石氏:出し方に注意をした学力テストの公開に賛成で、成績の悪い学校に人的・資金的資源を投入すべきとし、多様性のある教育と機会均等を主張。学力テストという数値化した実証データで「格差」は測られるし、それに基づき教育を語る必要があるとした。
西尾氏:競争を煽る学力テスト公開には反対で、基本的な生活習慣を身に付けさせることが学力向上につながり、携帯やテレビ、ゲームなど学習を阻害する要因を減らしていくべきと主張。

三番瀬と第二湾岸道路について

白石氏:三番瀬は県独自の保全条例を検討し、湾岸道路は需要予測に基づき検討していきたいとした。
西尾氏:三番瀬は保全しラムサール条約に登録すべきで、第二湾岸には見切りをつけ、湾岸バイパスを。
八田氏:三番瀬のラムサール条登録を急ぎ、第二湾岸道路は財政的重荷であり、慎重にならざるを得ないと主張。
吉田氏:三番瀬はラムサール条約に登録し、アクアライン無料化が実現すれば、湾岸道路は必要なくなるとの見解。
(参考:三番瀬猫実川河口域の埋め立てについて)
森田氏:現段階では明確に判断を下せる段階にはないと考える。今後、様々な意見を伺いながら、検討すべき。
(「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート)

介護問題について

西尾氏:南房総にシニアタウンのようなものを建設したい。
八田氏:千葉県の特別擁護老人ホーム数は全国最低で、これを6000作ると公約。
吉田氏:要介護度4、5の方に対するセーフティーネットを拡大する予算措置が必要であり、在宅やグループホームも検討すべきと主張。
白石氏:後期高齢者医療制度は無理があるので、制度改正を求めていき、介護については、小規模分散型ケアホームを、資金がかかるので、NPOなどを活用して建て、不足する介護士に外国人の活用を検討したいとした。

憲法9条について

回答時に出席していなかった森田氏を除く4名が、1項、2項とも守るべきだとした。
西尾氏:憲法を変えずとも、自衛隊を持つことができたし、将来は非武装を目指すべきと発言。
八田氏:世界の財産が憲法9条、世界で評価が高まっていると主張。
吉田氏:憲法を一切変えないという思想とリンクすることは違うと発言。
白石氏:現憲法下でも自衛隊を持つことができており、国際協力、海外派遣が十分機能していることを改正しない理由に挙げた。
(参考)
森田氏:憲法9条は改正を検討すべきである。
(「千葉県知事選ー候補者の政策を知る会」公開アンケート)

タウンミーティンングについて

八田氏:それを含め様々な機会を捉え様々な意見を聞きたい。
白石氏:堂本氏のようにタウンミーティンングを定例化する考えはない。
西尾氏:膝を付き合わせる会議を設けたい。
吉田氏:(時間切れでコメントなし)

八ツ場ダムについて

白石氏(最後のまとめ演説にて):4600億の事業のうち、すでに7割の執行が完了しており、今後、千葉県の負担金はダム本体工事だけで約46億あり、これを福祉に、という声があるが、千葉県は年間1600億の福祉予算を使っている――という正しい知識を持っていただきたい、と発言。


(6) 朝日新聞 千葉県知事選候補者アンケート

朝日新聞 千葉県知事選候補者アンケート(3月17、18日付)から。

成田空港について

八田氏が、発着回数を際限なく増やすことに反対、森田、白石、吉田の各氏は、年間30万回の発着回数を目指す考え。

医療再生について

森田氏:「自立のための経営サポートや効率化の推進、地域事情に合わせた対策に加えて、自立支援のための資金投入も検討する。」
八田氏:「県が地域医療に責任を果たす姿勢を明確に」
西尾氏:「無駄な公共事業(八ツ場ダム)を直ちに停止・凍結し、この予算を県立医科大学創設に振り向け…」
白石氏:「病院局を地方独立法人化して、七つの県立病院の合理化と自立化を図り、一般会計からの繰り出し金を抑制し、財源を地域医療の中核病院支援へ振り分ける。」
吉田氏:「教養課程修了者を受け入れる4年制の医大を民間と共同で設置するほか、千葉大医学部の定員を増やす。」


(7) 「平和への大結集・千葉」公開アンケート

「平和への大結集・千葉」公開アンケート
http://www.xn--x41az7v.jp/~daikessyu/page012.html

八田氏と森田氏からは文書で回答できない旨、返事がありました。


(8) 千葉県知事選挙情報サイト

下記サイトはニュース記事など情報が豊富です。

千葉県知事選挙2009 千葉を任せていいのは誰なんだ?
http://chibagovernor2009.blog73.fc2.com/
 
 
太田光征
http://otasa.net/

選挙制度改革に関する協議の申し入れ

3月 17th, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 23:18:03
under 一般 [8] Comments 

 西松建設からの政治献金が「事件化」されたことで、政治資金規正法の改正に動き出す気配が生まれてきました。1994年には、政治改革の名目で現在の選挙制度に改悪されてしまいましたが、今回の件がきっかけとなり、正しい方向で選挙制度改革に注目が集まってほしいところです。

 政治献金を政党のみに認めればよいとか、公共事業を受注する企業からの政治献金を禁止すればよい、という意見が出ていますが、そうした制度内改革だけでは、企業寄り政策などを是正できません。派遣企業からの政治献金が適切だ、ということにはならないでしょう。

 では企業・団体献金を一律に禁止すれば、政治改革が完成するのか。政党・議員の買収手段は、企業・団体献金だけではありません。例えば、原発を推進したい電力企業の労組から、選挙運動の支援を受けるという便益も、政治を歪めます。

 小選挙区制は、二大政党制という寡頭政治を強制する傾向があります。ですから小選挙区制は、腐敗政治を固定化させるのに都合がいい制度です。この点に目を向けなければなりません。

 買収する側は、二大政党だけを押えればよい。アメリカのように、マスメディアと二大政党の癒着も悲劇的です。主権者にしても、小選挙区制の下では、ポジティブな面では違いがあっても、ネガティブな面では同じ二大政党というのが、一番悩ましい。死票を生じない選挙制度の下での多党制が、腐敗政治を防止するためのセーフティーネットといえます。

 主権者の良識を死票の形で抹殺しない、主権を保障する選挙制度が、何よりも価値があります。

 本日、下記申し入れ書を民主党、日本共産党、社会民主党、国民新党、日本新党および新党大地に郵送しました。

太田光征
http://otasa.net/
 
 

選挙制度改革に関する協議の申し入れ

●●御中

 国会活動いつもありがとうございます。貴党には、野党連合による、国民の立場に立った、民意を反映した政権交代を期待しております。

 その政権交代とも密接に関係する選挙制度について、各党は次期衆院選に向け、見解を出し始めています。選挙制度は、憲法が真っ先に謳った国民主権を具体的に保障するための、極めて重要な制度であり、すべての主権者にとって最優先の政治課題であるといえます。主権を切り縮める方向での選挙制度改定は、あってはなりません。

 これまで、尋常でない頻度で公職選挙法が改定されてきましたが、そのほとんどが主権を制約するものでした。1994年に小選挙区比例代表並立制が導入されたことで、主権格差が制度化され、世界に類を見ない主権侵害の法体系が完成しました。

 野党が得票率で与党を上回った場合でも、与党が政権に居座ったり、得票率で与党より劣る野党が政権を獲得したりすることを許す小選挙区制は、選挙制度の名に値しません。

 いわゆる「衆参のねじれ」は、小選挙区制による「民意のねじまげ」の賜物にほかなりません。「衆参のねじれ」解消は、小選挙区制の廃止で可能です。

 そもそも選挙制度は、単に政権交代を促すための制度ではなく、歴史的にみても、小選挙区制が政権交代を促すという事実はありません。もはや、小選挙区制神話に基づく政権交代の必要性がないほど、自民党の寿命が尽きようとしています。

 つきましては、貴党と当団体があるべき選挙制度について意見交換を行える機会を設けていただきたく、お願い申し上げます。このような政党・市民間の協議が実現すれば、日本の民主主義に画期的な前進をもたらすに違いありません。是非ともご検討よろしくお願い申し上げます。

2009年3月17日

「平和への結集」をめざす市民の風・選挙制度問題担当
太田光征

「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!2.21パネルディスカッション」報告

3月 1st, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 12:18:20
under 一般 [2] Comments 

「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!2.21パネルディスカッション」の報告です。発言要旨をかいつまんで紹介しておきます。詳しい内容については、直接ビデオをご覧ください。

太田光征
http://otasa.net/
 
 
「憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!2.21パネルディスカッション」
主催:2.21パネルディスカッション実行委員会
日時:2009年2月21日
場所:文京区民センター

憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 1/7
http://video.google.com/videoplay?docid=-1897314432599953858

 
 

最近の世界金融恐慌について:伊藤 誠(経済学者)

現在の金融恐慌は、新自由主義の結果であり、資本主義の運動内部によるもの。オバマ米大統領も(ニュー)ニューディール政策を取ろうとしている。ニューディールは、完全雇用を実現できないという限界があった。それが実現したのは、第二次大戦があったから。現在の軍事技術は、資本集約的で、雇用効果が少ない。

ドイツ左翼党の経験から:伊藤成彦(中央大学名誉教授)

ドイツでは2007年に、旧西ドイツの社会民主党左派が離脱して結成したWASG(Arbeit & soziale Gerechtigkeit ? Die Wahlalternative)と、旧東ドイツのドイツ社会主義統一党を前身とする左翼党-民主社会党が、統一して左翼党を結成した。政党連合段階の2005年9月の連邦議会選挙では、614議席中、54議席を獲得した。左翼党は、東西格差がある分断国家で統一がうまくいかなかった状況で結成されたもので、日本にこのモデルを当てはめることはできないだろう。

憲法・自衛隊・田母神論文問題:山内敏弘(龍谷大学教授)

昭和初期に似ている現在の状況、右旋回傾向が、田母神問題をクローズアップさせている。田母神氏は表現の自由を主張していたが、下部自衛官と高級幹部では表現の自由の保障度が違う。同じ航空自衛隊に所属していた小西誠氏の言論活動は保障されず、小西氏は懲戒免職処分を受けている。

「テロとの戦い」のデマゴギー:奈良本英佑(法政大学教授)

2001年9月11日、マンハッタンの南、ユニオンスクエアで新聞を読んでいた。ツインタワーが炎上し、崩れ落ちた。その翌日、ハイジャック犯19人の顔写真が新聞に載っていた。捜査当局が動きをマークしていたが、止められなかったか、止めようとしなかったのだろう。刑事事件の捜査経過がはっきりしていない。その後アメリカは、証拠を示さず、ビン・ラディンを引き渡せとアフガニスタンに要求し、アフガニスタン攻撃を開始した。9月12日の新聞で、当時の国防次官が、イラクもやるべきだ、と発言している。「テロとの戦い」はインチキである。

平和運動の経験から:糸井玲子(キリスト者政治連盟)

二度と神を裏切ってはいけないと、日の丸君が代裁判などを闘っているクリスチャンが多い。子供だったから、知らなかったからといっても、戦争に加担した罪を背負っている。残りの人生を、この罪を許してもらうために頑張っていきたい。[「戦中派平和活動家」の思いをよく表現しているスピーチです。若い方は是非ビデオを実際にご覧ください。]

派遣切り・非正規雇用者の現実:山口素明(フリーター全般労組)

東京都が、「安全条例」で、街頭における市民活動を「迷惑パフォーマンス」として規制しようと動いている。外国人・暴力団・市民活動家が排除対象。そもそも、憲法は、権力をいかに規制するかというもので、公共的なものを、権力を取っ払って、皆で担っていくという理念の下にある。今の改憲状況は、その逆を行くものだ。(権力者側による憲法の空洞化だけでなく)本来の憲法理念を守らせる民衆側の努力の「空洞化」が目立つ。

子どもたちと生きる:星野弥生(翻訳家)

世田谷でいじめによる子供の自殺が多発していたため、「子供の命を守るネットワーク」を立ち上げ、「チャイルドライン」を開設するなどした。子供の問題と政治は密接につながっている。「心のノート」や「新しい歴史教科書」などに取り組んだ。世田谷では「新しい歴史教科書」を採択させなかった。「教育問題は、子供、親がいる柔らかいところからひたひたと足もとを掬われ、足跡が近づいてくるという、気分の悪いものだと思う」。人とのつながりが財産だが、教育に格差が持ち込まれ、「名簿」がないなど、親が分断されている。次の世代を生きる人と一緒に社会を作っていきたい。

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 2/7
北野弘久(日本大学名誉教授):憲法は、全ての税金を平和・福祉のために使うことを約束している。
http://video.google.com/videoplay?docid=-6935998331273938299

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 3/7
前田裕晤氏(大阪全労協議長):運動の主人公は政党ではなく市民である。労組・市民団体あげて選挙戦を戦ったきた。
http://video.google.com/videoplay?docid=-8819670233986307447

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 4/7
上原公子氏(前国立市長):自ら息苦しさを作り上げる日本人。自粛し、強いヒーローを待望する。田母神氏は国会議員になるのではないか。
http://video.google.com/videoplay?docid=-4346987268857929691

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 5/7
平田豊氏(前北部労協事務局長):昨年、東京北部と西部で全労協と全労連が総力を結集して格差反対の集会を行った。今後、全都集会に発展するだろう。
http://video.google.com/videoplay?docid=3149723020899900750

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 6/7
質疑応答
http://video.google.com/videoplay?docid=-8281054289313023975

 
 
憲法9条を守りぬくために力を合わせよう!パネルディスカッション 7/7
フロアからの意見
http://video.google.com/videoplay?docid=-5759377112069994859