2010参院選――結果分析

8月 10th, 2010 Posted by MITSU_OHTA @ 19:51:15
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共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」賛同募集中

 
 

2010参院選の結果分析を追々掲載していきます。

【訂正】(2010年12月31日)

表1の定数180で議席配分の計算に間違いがありましたので、訂正します。東北ブロックで自民が1減、みんなが1増、北陸信越ブロックで民主が1増、みんなが1減、四国ブロックで自民が1増、みんなが1減です。それに伴ない、議席占有率も民主が37.2から37.8に、みんなが14.4から13.9に変りましたので、本文も訂正しました。修正した議席配分表ファイルを後日アップします

【目次】

1. 定数が100に削減された場合の衆院比例区選挙シミュレーション
2. 民意を反映しない中選挙区制
3. 完全比例代表制であれば旧野党は過半数を維持できた
4. 定数削減でも身の切りようがない
 
 
 

1. 定数が100に削減された場合の衆院比例区選挙シミュレーション
 
 

まずは、今回の結果に基づいて行った衆院比例区選挙のシミュレーションです。定数180の場合と、定数が100に削減された場合の選挙結果を予想しました。

表1がその結果で、その一部を抜粋した表2を先に掲載しておきます。比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーションで指摘したことが再確認できます。

 
 

表2 衆院選比例区シミュレーション:議席占有率(%)の変化
条件は表1と同じ(2010年12月24日改訂:項目「国民」と「全国一区議席数(定数180)」を追加)
民主 自民 公明 共産 社民 みんな 国民
得票率 31.6 24.1 13.1 6.1 3.8 13.6 1.7
議席占有率
(定数180)
37.8 27.8 14.4 3.9 2.2 13.9 0
議席占有率
(定数100)
41.0 29.0 14.0 2.0 1.0 13.0 0
全国一区議席数
(定数180)
58 44 24 11 7 25 3
全国一区議席数
(定数100)
33 25 13 6 4 14 1
1票の格差

(定数100)
1.00 1.08 1.21 3.96 4.98 1.36 -

 
 

表2に示したように、民主と自民は現在の定数180でも得をしていますが、定数100ではさらに得をします。特に民主は定数100で議席占有率が得票率より約10ポイント上回るようになり、全国一区の比例代表制と比べて8議席多く獲得できます。

逆に、定数100における共産・社民の議席占有率は、共産が得票率の約3分の1、社民が得票率の約4分の1となります。

比例代表制といっても現在の定数ですら名ばかりで、定数100に削減されることで比較大政党と比較小政党の格差が一層拡大するということです。1票の格差(当選議員1人当たりの得票数)は民主と社民の間で4.98倍となります。

格差は比較大政党と比較小政党の間だけに限りません。現行定数180でも、みんなの党と公明党のように得票率が互角の比較中政党の間でおかしな格差が発生します。公明対みんなの予想議席数は定数180で26対25、定数100で14対13となり、得票率で公明を上回るみんなが、議席占有率で公明を下回るという事態が発生するのです。

定数100に削減されると、この格差はわずかな得票数の変化で拡大し得ます。特に北海道ブロックと四国ブロックで公明が数万票を上積みすればさらに2議席を獲得して、得票率ではみんなを下回ったまま、16対13と議席数でみんなを上回るでしょう。

得票率と議席占有率の逆転現象はなぜ発生するのか。南関東ブロックで説明しましょう。みんなの得票率は公明の1.33倍あるので、本来であれば議席割当は公明3に対してみんな4という割合になるはずです。実際、定数180ではそうした割り当てになっています。ところが総定数100では南ブロックの定数がわずか12と少ないために、公明2、みんな2という割合になってしまうのです。北関東ブロックも同様に、定数が少ないが故にみんなが応分の議席を獲得できない。こうした理由で不利になるブロックがみんなの側に多いために、逆転現象が発生します。総定数100であっても全国一区であればこうした逆転現象は起こりません(表1)。

比例区定数の削減は単なる定数削減ではなく、選挙制度の改定そのものであり、無駄削減というすりかえで選挙制度を改定することは許されません。

比例区定数100でも共産・社民はそれぞれ2議席、1議席を獲得できるという予想ですが、新党日本と新党大地が立候補していない今回の参院選の結果を前提にしています。新党日本が次期衆院選に立てば共産・社民の議席を相当奪うと予想されるので、共産・社民の議席獲得は危うくなるでしょう。共産は東京の議席を自民に、近畿の議席をみんなに、社民は九州の議席を民主に奪われる可能性が大です(議席配分表参照)。

 
 

表1 2010参院選の結果に基づく衆院選比例区シミュレーション
[ ]内は2009総選挙の結果
( )内は2007参院選の結果(に基づくシミュレーション値)
2010参院選比例区データ使用、2005年国勢調査に基づき定数配分
議席配分表























北海道 3 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4
東北 3 3 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 8
北関東 4 3 2 0 0 2 0 0 0 0 0 0 11
南関東 5 3 2 0 0 2 0 0 0 0 0 0 12
東京 4 2 1 1 0 2 0 0 0 0 0 0 10
北陸信越 3 2 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 6
東海 5 3 2 0 0 2 0 0 0 0 0 0 12
近畿 6 4 3 1 0 2 0 0 0 0 0 0 16
中国 3 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6
四国 1 2 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3
九州 4 4 2 0 1 1 0 0 0 0 0 0 12
41 29 14 2 1 13 0 0 0 0 0 0 100
議席占有率 41 29 14 2 1 13 0 0 0 0 0 0 100
得票率 31.6
[42.4]
(39.5)
24.1
[26.7]
(28.1)
13.1
[11.5]
(13.2)
6.1
[7.0]
(7.5)
3.8
[4.3]
(4.5)
13.6
[4.3]
(-)
1.7
[1.7]
(3.0)
2.1
[-]
(-)
2.0
[0.1]
(-)
0.8
[-]
(-)
0.7
[-]
(-)
0.4
[0.7]
(-)
-
得票率x定数 - - - - - - - - - - - - -
全国一括式 33 25 13 6 4 14 1 2 2 0 0 0 100






















北海道 4 2 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 8
東北 6 4 1 0 0 2 0 0 0 0 0 0 13
北関東 7 5 3 1 0 4 0 0 0 0 0 0 20
南関東 8 5 3 1 1 4 0 0 0 0 0 0 22
東京 7 4 2 1 1 3 0 0 0 0 0 0 18
北陸信越 5 4 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 11
東海 8 6 3 1 0 3 0 0 0 0 0 0 21
近畿 10 7 5 2 1 4 0 0 0 0 0 29
中国 4 4 2 0 0 1 0 0 0 0 0 0 11
四国 2 3 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 6
九州 7 6 4 1 1 2 0 0 0 0 0 0 21
68
[87]
(85)
50
[55]
(55)
26
[21]
(25)
7
[9]
(10)
4
[4]
(4)
25
[3]
(-)
0
[0]
(0)
0
[-]
(-)
0
[0]
(-)
0
[-]
(-)
0
[-]
(0)
0
[0]
(-)
180
議席占有率 37.8 27.8 14.4 3.9 2.2 13.9 0 0 0 0 0 0 -
得票率 31.6
[42.4]
(39.5)
24.1
[26.7]
(28.1)
13.1
[11.5]
(13.2)
6.1
[7.0]
(7.5)
3.8
[4.3]
(4.5)
13.6
[4.3]
(-)
1.7
[1.7]
(3.0)
2.1
[-]
(-)
2.0
[0.1]
(-)
0.8
[-]
(-)
0.7
[-]
(-)
0.4
[0.7]
(-)
-
得票率x定数 56.8 43.3 23.5 11.0 6.9 24.5 3.1 3.8 3.6 1.5 1.3 0.7 -
全国一括式 58 44 24 11 7 25 3 3 3 1 1 0 180

 
 
 

2. 民意を反映しない中選挙区制
 
 

今回の参院選は小選挙区制とともに中選挙区制の弊害をよく示しています。民主は議席数で「惨敗」したとはいえ、比例区だけでなく選挙区全体でも得票率で自民を上回っているのです(表3)。民主が得票率で負けているのは1人区のみです。

民主は3人区と5人区で得票率と議席占有率がよく一致しているのに対して、自民は1人区以外でも、2人区から5人区のすべてで議席占有率が得票率を大きく上回りました。

2人区から5人区で、自民は得票率で民主より約12ポイント負け越しているものの、議席数では2議席、議席占有率では約5ポイントしか負け越していません。

これは、比例代表制に近い結果を出すと言われる中選挙区制が実際にはそうでないことを示しています。

2人区は、得票率に大きな開きがあっても第一党と第二党で議席を等しく山分けする論外の制度になっています。3人区も2割台の得票率で3割の議席、5人区も1割台の得票率で2割の議席を獲得できる仕掛けです。

公明が比例代表制ではなく中選挙区制を主張している理由はそこにあるのでしょう。公明は比例区得票率が13.07%ですが、5人区では得票率13.20%で1議席(20.00%)を獲得しています。定数5の中選挙区なら、公明は議席占有率で約7ポイント得をするわけです。公明は2009東京都議会議員選挙でも2人区から8人区すべてで議席占有率が得票率を上回っています。

 
 

表3 得票率と議席占有率の関係
民主 自民 公明 共産 社民 みんな 候補者計
1人区 得票数 6,659,286 8,251,162 - 1,143,783 78,792 681,995 17,598,183
議席数 8 21 - 0 0 0 29
得票率 37.84
[47.43]
(36.56)
46.89
[38.68]
(42.56)(民主との直接対決区に限ると30.57)
- 6.50 0.45 3.88 100.00
議席占有率 27.59 72.41 - 0.00 0.00 0.00 100.00
2人区 得票数 7,402,098 6,062,468 - 1,324,796 51,463 2,039,141 17,848,950
議席数 12 12 - 0 0 0 24
得票率 41.47 33.97 - 7.42 0.29 11.42 100.00
議席占有率 50.00 50.00 - 0.00 0.00 0.00 100.00
3人区 得票数 6,287,210 4,171,939 1,458,956 1,235,634 376,744 2,600,226 16,855,907
議席数 6 5 2 0 0 2 15
得票率 37.30 24.75 8.66 7.33 2.24 15.43 100.00
議席占有率 40.00 33.33 13.33 0.00 0.00 13.33 100.00
5人区 得票数 2,407,406 1,010,514 806,862 552,187 95,685 656,029 6,097,767
議席数 2 1 1 0 0 1 5
得票率 39.50 16.60 13.20 9.10 1.60 10.80 100.00
議席占有率 40.00 20.00 20.00 0.00 0.00 20.00 100.00
2

5人区
得票数 16,096,714 11,244,921 2,265,818 3,112,617 523,892 5,295,396 40,802,624
議席数 20 18 3 0 0 3 44
得票率 39.45 27.56 5.55 7.63 1.28 12.98 100.00
議席占有率 45.45 40.91 6.82 0.00 0.00 6.82 100.00
選挙区計 得票数 22,756,000 19,496,083 2,265,818 4,256,400 602,684 5,977,391 58,400,807
議席数 28 39 3 0 0 3 73
得票率 38.97 33.38 3.88 7.29 1.03 10.24 100.00
議席占有率 38.36 53.42 4.11 0.00 0.00 4.11 100.00
比例区 得票数 18,450,140 14,071,671 7,639,432 3,563,557 2,242,736 7,943,650 58,453,437
議席数 16 12 6 3 2 7 48
得票率 31.56 24.07 13.07 6.10 3.84 13.59 100.00
議席占有率 33.33 25.00 12.50 6.25 4.17 14.58 100.00
選挙区 + 比例区 議席数 44 51 9 3 2 10 121
議席占有率 36.36 42.15 7.44 2.48 1.65 8.26 100.00

 
 
 

3. 完全比例代表制であれば旧野党は過半数を維持できた
 
 

全国一区の完全比例代表制であれば、自民はたったの30議席、民主は4減の40議席となり、民主・共産・社民・国民全体で53議席となります(表4)。2007参院選で同様に計算してみると、民主・共産・社民・国民・新日全体で69議席なので(議席配分表参照)、同制度であれば旧野党はちょうど過半数の122議席を維持できたわけです。

2007参院選では旧野党系の無所属候補がかなり当選しました。中選挙区比例代表併用制のように、無所属候補を当選させた上で、総定数の残りに比例代表制を適用して政党に議席を配分する方式で計算してみると、無所属全体が計7議席で、うち旧野党系が5議席、民主・共産・社民・国民・新日全体が65議席だから、旧野党系全体は70議席となり(議席配分表参照)、やはり旧野党系が今回の参院選の結果(無所属の当選がゼロなので53議席)と合わせて過半数を維持できたことになります。

 
 

表4 全国一区完全比例代表制だった場合の獲得議席数
議席配分表















完全比例代表制 議席数 40 30 16 7 4 17 2 2 2 1 0 0 121
議席占有率 33.06 24.79 13.22 5.79 3.31 14.05 1.65 1.65 1.65 0.83 0 0 -
現行比例区得票率 31.56 24.07 13.07 6.10 3.84 13.59 1.71 2.11 2.01 0.84 0.71 0.39 -

 
 
 

4. 定数削減でも身の切りようがない
 
 

「国会議員」はしきりに身を切りたがっています。消費税増税などの負担を国民に求めるのであれば、国会議員自ら身を切る必要があり、なぜかそれが国会議員定数を削減することなのだといいます。

(国会議員の定数削減について)「まず議員が自ら身を切る姿勢で、できるだけ年内に実現できるテンポで議論を進めてほしい」(菅直人首相、 8月2日、衆院予算委員会)

「『国民に負担を求める前に、まずは国会議員や官僚が身を切るべきだ』との国民の声に真摯に応えていく決意」(みんなの党2010選挙公約)

「年金、医療、介護の抜本改革の財源として消費税を否定しないが、物事に は順番がある。国民にお願いする以上、まずはわれわれ国会議員の定数を思い切って削減していく」(樽床伸二民主党国会対策委員長、7月6日、松山市の街頭演説)

「隗より始めよ、自分たちの身を切ることなしに全てのことは始まらない」(樽床伸二民主党国会対策委員長、7月6日、埼玉県さいたま市内の集会)

消費税の負担ごときで身を切る必要があるなら、沖縄に米軍基地の負担を押し付けておいて平気でいられるはずはありません。切腹したいのではないでしょうか。

しかし、菅直人首相は6月11日の所信表明演説で「沖縄を襲った悲惨な過去に思いをいたすとともに、長年の過重な負担に対する感謝の念を深めることから」と述べ、身を切るどころの覚悟ではありません。この落差は沖縄に対する差別とともに、「身切り論」がまやかしであることを示しています。

そもそも、定数削減で比較大政党の現職議員が身を切ることはありません。

今回の参院選では新人が55人も当選しました。2007参院選でも新人当選者は65人ですから、現在の参院は計120人の新人議員がいることになります。2009衆院選でも新人当選者は158人もいます。従って新人は衆参計で278人となり、総定数の38.5%を占めます。

選挙ごとに新人議員の当選者数は異なるでしょうが、この278人、38.5%が一応の目安となるでしょう。

自民公約のように衆参で計3割削減したとしても、新人の擁立者数を減らせばよいだけだから、比較大政党の現職議員が身を切ることはないのです。

衆院で180議席、参院で142議席減らすというみんなの党の案なら身を切ることも可能でしょうが、新党改革の半減案とともに正気の沙汰ではありません。

参院の第一種常任委員会は計11あり、議員は複数の委員会を掛け持ちできません。みんなの党の案に従って定数が242から100となれば、各委員会の定数はわずか9人前後となります。

さらに、定数削減で小政党の議席が減少すれば、小政党が参加できない委員会の数は一層増加します。これでは民意を反映したまともな委員会審議などできません。

定数削減という身切り論に国会の民主主義機能を向上させるなどという発想はまったくなく、勢力が弱小な政党ほど多くの削減数を主張して人気取りを図り、保守比較大政党以外の比較小政党を排除しようとしているだけです。

身を切られるのは比較小政党であり主権者です。敵対党と主権者の身を切るから消費税を上げさせてくれという理屈は成り立ちません。

 
 

太田光征
http://otasa.net/

第22回参議院選挙に向けてのアピール――民意を尊重する政治を実現し、日本の政治に希望を失わないために

6月 23rd, 2010 Posted by MITSU_OHTA @ 0:29:30
under 一般 [25] Comments 

 

民意を尊重する政治を実現し、日本の政治に希望を失わないために
第22回参議院選挙に向けてのアピール

論点

●沖縄の民意を尊重せず、沖縄を差別し、米国内には適用する基地安全基準を沖縄には適用しない「命のダブルスタンダード」を許す政治

―「沖縄以外には優しい」から自分に関係ない?

●世界的に少ない国会議員の定数削減は、身を切り、税金の無駄を削減するため?

―自民党と民主党だけが議席占有率のアップで得をし
―思いやり予算によるゴルフでボールを小学生の顔に当てる在日米軍には身を切ってもらわず
―民主党は今でも世界トップレベルにある政党交付金の増額検討を法案化
―二大政党制のアメリカは60兆近くと異常な軍事費が固定化されているけど
―自民党と民主党だけで本当に聖域なき無駄削減や事業仕分けができる?

●自分たちに都合がいいように公職選挙法に増改築を重ね国民主権を縛ってきた国会議員が、国民主権の牙城、憲法を変えたいという

―高い供託金はそのままにして庶民を立候補させず
―1票の格差は放置して
―より少ない国会議員で改憲発議できるように改憲したい?
―本当に国民のための改憲をしたい?
 
 
 7月11日が第22回参議院選挙の投票日となりました。今回の参議院選挙は3年に1回実施されるものであり、改選議席数は121議席(選挙区73、比例区48)です。

 昨年8月の総選挙において、私たち国民は自らの力で政権交代を勝ち取りました。そして、9月に発足した民主党を中心とする社民党・国民新党による鳩山連立政権に、今までの自公政権とは違い「国民の平和と生活を守る」という大きな変化を期待しました。

 しかし、鳩山連立政権は発足後8ヶ月で崩壊してしまいます。鳩山元総理は5月28日、米軍普天間基地の移設先を辺野古地区とする日米共同声明に反対を表明した福島瑞穂消費者行政担当大臣(社民党党首)を罷免の上、同声明に基づく政府対処方針を閣議決定したからです。

 沖縄の民意を尊重し日米共同声明に反対した福島消費者行政担当大臣を罷免し、沖縄の民意よりアメリカの立場を優先させた日米共同声明に、沖縄県民が大きな憤りを表したことは当然のことといわなくてはなりません。鳩山内閣は国民の支持を失い、総理辞任という結果にいたりました。

 鳩山総理退陣後の6月8日に、民主党と国民新党による菅連立政権が誕生しました。菅新総理は、就任当初から米軍普天間基地問題については「日米合意を踏まえ」る(民主党代表選立候補表明)考えを表明し、さらに6月14日の衆議院代表質問では「米国との再交渉や閣議決定の見直しを行うつもりはない」と明言しました。またしても沖縄の民意を切り捨てたのです。

 菅新内閣は比較的高い支持率を維持しているようですが、だからといって国民が日米共同声明を支持しているとはいえないと私たちは考えます。参議院選挙で民主党が過半数を獲得することは、この国民意識とのズレを正当化してしまう危険性があります。

 憲法9条の改憲についても、鳩山政権ではその兆しが遠のいたかのようにみえましたが、消費税をはじめ多くの政策で自民党との共通項を模索する菅新内閣では、驚くような展開が待っているかもしれません。(明確に改憲に反対をしているのは、過小代表政党の共産党と社民党しかありません。)私たち国民は改憲発議をさせないように機敏に対応していかなくてはならないでしょう。

 次に国会議員の定数削減の問題です。定数の削減は国民の意思を国会に反映させる途を狭め、また少数政党の締め出し(=少数意見の抹殺)となり二大政党制をもたらします。価値観が多様化する時代に明らかに逆行し、現在の国民の意識にも合致していません。

 では、私たち有権者はどうすればよいのでしょうか? 一番大事なことは、民主党がだめでも自民党には逆戻りさせない体制をどうつくるか、ということではないでしょうか。そのためには、私たちがいろいろな場で交流を深め、その力を中心にして市民の力で「本当に国民の平和と生活を守る」市民のための政権を実現させること、そのための広範な政治的ネットワークの形成を有権者として追求し続けること、といえるのではないでしょうか。

 以上の観点から、今回の参議院選挙では、下記の3条件を備える候補者への投票を呼びかけます。

1 普天間基地の撤去、少なくとも県外、国外への移転を求める。

2 憲法9条堅持の立場を明確にし、改憲の発議をしない。

3 国会議員の衆参両院での定数削減に反対する。
 
 
2010年6月22日 
 
「平和への結集」をめざす市民の風
http://kaze.fm/
join@kaze.fm

普天間基地問題の対米交渉に関する提言

5月 1st, 2010 Posted by MITSU_OHTA @ 11:31:08
under 一般 [30] Comments 

普天間基地問題の対米交渉に関する提言

ファイル

内閣総理大臣 鳩山由紀夫様

2010年4月28日

 普天間基地移設問題が迷走しています。鳩山総理が5月決着という約束が守れなかったら政局かとマスコミが騒いでいますが、国民は普天間基地の移転に反対したり、辺野古への移設を強行せよと求めているわけではありません。ほとんどの国民が「普天間基地の継続」にも「国内他地域への移設」にも反対しています。自信を持ってアメリカと渡り合ってほしいと思います。

 そもそも最初からアメリカとの議論の仕方を間違っていたのではないでしょうか。閣内議論もできていないのに「トラスト・ミー」とオバマ大統領にささやいてはいけませんでした。岡田外務大臣も嘉手納への移設案からアメリカに話をはじめてはいけませんでした。政権のスタートの段階でプロセスの間違いを犯しました。

 アメリカからすれば、まずSACO(沖縄に関する特別行動委員会)合意という政府間の約束があります。まずは「それを守れ」ということでしょう。それに対し新政権がまず言うべきは、「前政権の約束は何でも踏襲するというのでは民主主義は成立しない」ということです。前政権の考えを国民が否定したから新政権ができました。特に普天間問題は新政権の選択で国民が重視した問題の一つです。「約束の継続はできない」と最初に通告するのが当然でした。

 ところが、この「約束の継続はできず、SACO合意の一部見直しをすべきである」ということが、今日に至ってもアメリカ政府に対して明確に表明されていないように見えます。アメリカは、交渉に当たって論理を重んじるという傾向があります。従って、なすべきことは早期に原点に戻り、「日本政府はSACO合意の一部を見直しすべきであると考える。また、普天間代替基地は辺野古に求めるのではなく、国外移設もしくは普天間基地そのものの廃止が相当である」という態度を明確に表明し、アメリカ政府に申し入れることであると思います。

 日本国民の大多数が納得する案が、日米関係にとって最も良い解決策であり、それを尊重することが、民主主義の先進国であるアメリカの取るべき道でもあります。閣議において全閣僚の意思統一を行なった上で、このような方針を政府見解としてアメリカに伝えるべきと考えます。総理の英断を期待します。

「平和への結集」をめざす市民の風
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2010年参議院選挙へ向けての公開討論会

4月 14th, 2010 Posted by MITSU_OHTA @ 10:27:04
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チラシ

※ 無料インターネット電話のスカイプ(ただし安いヘッドセットなどで構いませんがマイクとスピーカーが必要)を通じて参加することも可能です。スカイプでの参加を希望される方は事前にスカイプIDなどをお知らせください。

 鳩山内閣の支持率が大きくダウンする中で、今年の7月には参議院選挙が行なわれます。
 
 私達“「平和への結集」をめざす市民の風”は、2007年参議院選挙や2009年総選挙においては、憲法の平和主義を守り活かす“活憲”のために、平和勢力の結集・平和の共同候補の実現を訴えてきましたが、今年の参議院選挙については、平和を愛する市民がどのように取り組むべきか、多くの市民の皆さんとともに討議をしたいと考えて公開討論会を開催することにしました。このような討論会は異例のことと思いますが、平和を愛する市民の共同の知恵をつくりあげていきたいと考えています。
 
 公開討論会では、4つの論点を予定しています。

(1) 鳩山内閣をどう評価するか:鳩山内閣の肯定面と否定面をどうみるか、鳩山内閣に対して市民運動は何をすべきだったのかなど。
(2) 政治の動向と2010年参議院選挙をどう考えるか:新党乱立、政界再編をどうみるか、民主党の過半数獲得戦略をどう考えるかなど。
(3) 参議院選挙を市民はどのように取り組むべきか:市民は何ができるのか、平和政党と市民の共同候補の実現の道筋は何かなど。
(4) 参議院選挙にあたって、各政党に緊急に要望すべきことがあるか:候補者のインターネットを通じた選挙活動の解禁を要望したらどうかなど。

 公開討論会では発言資格に制限はありません。お気軽にご参加ください。

日時:2010年5月14日(金)18:30~21:00(開場:18:00)
場所:としま未来文化財団 勤労福祉会館 第6号室
    東京都豊島区西池袋2-37-4
    ?03-3980-3131
    池袋駅西口徒歩約10分、池袋駅南口徒歩約7分
    http://www.toshima-mirai.jp/center/e_kinrou/
参加費:200円
スピーカー:河内謙策、小林正弥、竹村英明
 
 
主催:「平和への結集」をめざす市民の風
E−mail: join@kaze.fm
URL: http://kaze.fm/

第3回活憲政治セミナー:「日米同盟」の将来と2010参議院選挙

2月 24th, 2010 Posted by MITSU_OHTA @ 22:28:50
under 一般 [106] Comments 

第3回活憲政治セミナーのご案内 チラシ 資料

今回は、半田滋氏(東京新聞編集委員)をお招きして講演していただくことにしました。後半は、フロアも参加したディスカッションを行ないます。皆様の参加をお待ちしています!!

スカイプによる参加もできますから、遠隔地の方でも是非ご参加ください。希望者は事前に下記メールアドレスにご連絡ください。

日 時:4月7日(水)18:30〜20:50(開場18:00)

テーマ:「日米同盟」の将来と2010参議院選挙

論点1  普天間問題と日本政府としての解決策
論点2  「日米同盟」の将来はどうあるべきか
論点3  2010参議院選挙に市民はどう関わるべきか

講 演: 半田 滋氏(東京新聞編集委員)
講演の後はフロアをまじえたディスカッション

会 場:東京都港区 港勤労福祉会館 第1洋室
    (東京都港区芝5丁目18番2号)
    JR田町駅西口右折 徒歩5分
    地下鉄浅草線・三田線三田駅(A7出口) 徒歩1分
http://www.city.minato.tokyo.jp/sisetu/syoko/kinro/index.html
    
参加費:500円

主 催: 「平和への結集」をめざす市民の風   
E-mail: join@kaze.fm    
URL: http://kaze.fm/

社民党に物申す:社民党さん、普天間も「県内移設」一転了承ということはないでしょうね!?

12月 7th, 2009 Posted by higashimototakashi @ 20:13:32
under 一般 [61] Comments 
 社民党はこれまで民主党小沢幹事長の提案する官僚答弁禁止の国会法「改正」案に反対の立場をとってきたはずですが、この3日、一転して賛成の立場に豹変しました。

「社民党は3日夕、政審全体会議を国会内で開き、民主党がまとめた官僚答弁を禁止する国会法改正案原案に関し、基本的に了承した。小沢一郎幹事長から先月30日に改正に非協力的だと批判され、わずか3日間で姿勢を一変させた格好だ」(東京新聞 2009年12月3日)。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2009120301000642.html

 上記東京新聞記事にいう民主党小沢幹事長の社民党批判とは次のようなものでした。

「小沢氏は、11月16日に社民党に改正案を打診して以降、同党から返答がないとしたうえで、『非常に残念だ。私は(06年に)代表に就任して以来、参院選、衆院選という二つの大きな選挙を担当したが、非自民で(当時の野党の)みんなの力を合わせて政権交代をと(目指した)。特に社民党には、選挙区の割り当てやらいろんなところで積極的に協力してきたつもりだ』と過去の話まで持ち出して『社民批判』を展開した」(読売新聞 2009年11月30日)。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091130-OYT1T01162.htm

 社民党はこの時点まで、「小沢氏の目指す国会改革について、『法律を作って役所の答弁を禁止することまでは必要ない』(福島党首)と一貫して否定的」(同上)な立場でした。

報道例:
■国会改革、通常国会以降に=社民難色で調整進まず(時事通信 2009年11月28日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200911/2009112800184
■国会法改正は全会一致で=福島担当相(時事通信 2009年11月17日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200911/2009111700343
■法制局長官の答弁必要=社民幹事長(時事通信 2009年11月12日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200911/2009111200342
■国会法改正、必要ない=福島社民党首(時事通信 2009年10月9日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=200910/2009100900359

 それが上記の小沢氏の恫喝を受けた翌日の1日朝、社民党側から民主党に官僚答弁を禁止する国会法「改正」案の説明を要請します。社民党議員の大勢はこの時点まではまだ「(内閣法制局長官は)憲法の番人だ。今まで通り答弁させるべきだ」などと民主党の国会法改正案に反対の姿勢をみせています(報道例1)。が、同党の「重野幹事長は法改正に反対していたが、説明を受けた後、記者団に、『当初受け止めたものと比べて、距離はかなり縮まった』と述べ、柔軟に対応する考えを示唆」(報道例2)します。

■報道例1:社民党が国会改革で説明会 小沢氏の痛烈批判受け(共同通信 2009年12月1日)
http://www.47news.jp/CN/200912/CN2009120101000998.html
■報道例2:官僚答弁禁止、民主説明に社民幹事長が軟化(読売新聞 2009年12月2日)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091201-OYT1T01244.htm

 そうして3日夕に同党政審全体会議を開き、これまでの官僚答弁を禁止する国会法「改正」案反対の立場を賛成(了承)の立場に転じます。まさに「小沢一郎幹事長から先月30日に改正に非協力的だと批判され、わずか3日間で姿勢を一変させた」(東京新聞)わけです。

社民党さん。

 あなた方の党はこれまで内閣法制局長官の答弁禁止を含む国会法の「改正」は、「憲法を大事にするわが党からすれば、政府から独立して憲法観を表現する法制局長官(の答弁)は必要だ」(重野幹事長、時事通信 2009年11月12日)、「政治主導で憲法解釈が変更される」(同)恐れがある、「『解釈改憲』に歯止めがかからなくなる」(時事通信 2009年11月28日)、「『官僚答弁の禁止』で喜ぶのは、政治家ではなく官僚の方ではないか。(略)すべての言い訳を政治家にさせ、嘘の答弁を演出して後日判明しても知らんぷりをしていられる」(保坂展人のどこどこ日記 2009年10月3日)などとして明確に反対の立場をとってきたはずです。

 それがどうして民主党小沢幹事長の恫喝があるや否や右から左へと態度を180度豹変させるのでしょう? あなた方の党は自らの政党の理念やその政党に属する議員、構成員ひとりひとりの人間的節操、あるいは政治的節操よりも、権力集団の一員となってなんとかその利権の配分のおこぼれにあずかりたい、という思い、執念の方が一段と勝る政党という名を冠しただけの単なる利権屋集団にすぎないということでしょうか? そうではないでしょう?

 民主党の小沢幹事長が提起した非民主的な国会法「改正」案に反対、というあなた方の党の初心の態度表明は正しいのです。小沢幹事長の提起する同国会法「改正」案のどこが、そして何が非民主的なのか? この点について下記におふたりの憲法研究者の論を紹介し、あなた方の党の初心の態度表明の正しさを第三者的に補完してみます。

 おひとり目。浦部法穂さん(神戸大学名誉教授/弁護士)。浦部さんはまず官僚答弁禁止問題でその問題の焦点になっている内閣法制局自体の問題性を次のように述べます。

「(内閣法制局の)憲法解釈は、これまでの自民党政権の基本政策に沿った形で行われてきた。自衛隊を合憲とする論理も、アフガン戦争やイラク戦争への自衛隊派遣を合憲とする論理も、すべて内閣法制局の示した憲法解釈による。内閣法制局は、いってみれば、憲法をねじ曲げてきた「元凶」でさえある。内閣法制局の憲法解釈は、これまで、お世辞にも正当に行われてきたとはいえない」

 それでも、と浦部さんは言います。

「それでも、内閣法制局の存在意義は、その時々の政権の思惑に合わせてご都合主義的に解釈を変えるのでなく、これまでの解釈との整合性を保って『純粋法理論』的な『装い』を施す(一応法律論らしい論理を示す)ところにあるのであって、そのことが、時々の政権の『突出』に一定の歯止めをかけてきた」。「内閣が『やりたい』と言っても『法理論的にできない』と言える機関の存在とその判断を政府が尊重するという政治慣行によって、権力制限規範としての憲法の規範的意味が、かろうじて、まさに首の皮一枚で、残ってきたともいえるのである」。「小沢幹事長や平野官房長官の発言は、この『首の皮一枚』をも切り落としてしまおうとするものにほかならない。憲法解釈を『政治判断』で行うというのは、『政治』の都合のいいように憲法を解釈するということである。時々の『政治』の都合でどうとでも解釈できるようなものは、もはや『憲法』とはいえない」(憲法解釈も「政治主導」? 「法学館憲法研究所」2009年11月12日)
http://www.jicl.jp/urabe/backnumber/20091112.html

 もうおひと方。上脇博之さん(神戸学院大大学院教授)。上脇さんも浦部さんと同様にまず内閣法制局自体の問題性を次のように指摘します。「私は、これまで内閣法制局の憲法解釈が日本国憲法の立場を正しく捉えて『解釈』してきたとは思っていない」。

 が、それでも、と上脇さんも内閣法制局の答弁の重要性を次のように述べます。

「が、それでも、改憲政治家の憲法『解釈』よりも、まだマシであると思っている。正確に言えば、内閣法制局の憲法『解釈』は危険であったが、改憲政治家の憲法『解釈』はもっと危険である」。「国会審議において官僚答弁を禁止するとして、憲法解釈について内閣法制局の答弁を禁止すれば、改憲政治家である大臣が憲法『解釈』を行うことになるから、これまで内閣法制局が違憲であると解釈してきたもの(自衛隊の集団的自衛権行使や、国連安保理決議がある場合の自衛隊の武力行使など)を『合憲』であると『解釈』してしまう危険性がある。言い換えれば、(内閣法制局の答弁禁止は)官僚(内閣法制局)がつくってきた『歯止め』さえ取っ払ってしまい、立憲主義を骨抜きにしてしまう危険性があるのである」(内閣法制局長官よりも恐ろしい改憲政治家の憲法「解釈」 「ある憲法研究者の情報発信の場」2009年10月10日)
http://blog.livedoor.jp/nihonkokukenpou/archives/51257494.html

社民党さん

 上記に見たように小沢氏の提起する国会法「改正」案に反対、というあなた方の党の初心の態度表明は憲法学の研究者からも支持される正当な態度表明です。それを180度転換させるあなた方の党の今回の態度豹変はどのようにも論理的説明がつかないものです。あなた方の党が政党という名を冠しただけの利権屋集団というのでもない限り。あなた方の党は、保守的な党との与党連立を重視するあまり自らの党のレーゾン・デートル(存立根拠)ともいうべき理念を簡単に放擲する表明をして当時の社会党を解体にまで到らせた社会党村山党首時代のあまりにも苦々しい経験をいまだに昨日のことのように覚えていらっしゃるはずです。あなた方の党は、この苦々しい経験をいま一度繰り返されるおつもりでしょうか? あなた方の党が今回のこの暗愚な態度の豹変の重大性に一日も早く気づかれることを私としては祈るばかりです。

 さて、話の続きはまだあるのです。

 沖縄の普天間基地の撤去問題に関する福島党首の「どっちつかず」(党幹部)の態度に党内の閉塞感が強まり、「党首交代論も浮上」(朝日新聞)してきた、という報道があったのは先月の26日のことです。

報道例:
■普天間問題、苦悩の社民 党首交代論も浮上(朝日新聞 2009年11月26日)
http://www.asahi.com/politics/update/1126/TKY200911260007.html
■社民党党首選 照屋氏擁立か/県連、きょう対応検討(沖縄タイムス 2009年12月2日)
http://www.okinawatimes.co.jp/news/2009-12-02-M_1-001-1_004.html?PSID=3e6938d3c43c2e1d8fd853bfc87cbb4f

 こうしたのっぴきならない「党首交代論も浮上」してきたことから、福島党首は3日、鳩山内閣が普天間基地の辺野古移設を決めた場合は連立離脱も辞さない考えを示唆します(共同通信 2009年12月3日)。「4日告示の党首選をにらみ、普天間問題に関する福島氏の取り組みが不十分との党内の不満を抑える狙いもあるとみられ」(同)ています。
http://www.excite.co.jp/News/politics/20091203/Kyodo_OT_CO2009120301000198.html

 この福島党首の記者会見での「連立離脱も辞さない」表明を受ける形で沖縄県選出の照屋寛徳衆院議員が同3日に記者会見し、不出馬の意向を明らかにし、同4日に福島氏が社民党党首に再選されます(朝日新聞 2009年12月3日、同4日)。
http://www.asahi.com/politics/update/1203/TKY200912030479.html?ref=rss

 社民党の問題は、この党首交代騒ぎと機を一にするように上記の国会法改正案に対する同党としての態度も反対から一転了承へと180度豹変させていることです。そのなにが問題かといえば、同党のレーゾン・デートルともいえる憲法上の問題にも関わってくる国会法改正案への態度の180度の転換さえかくも容易に転換するのであれば、「鳩山内閣が普天間基地の辺野古移設を決めた場合は連立離脱も辞さない」という福島党首の言明も信頼するに足ることにはならないだろう、ということです。事実、対立候補の社民党首選出馬の動きがなければ、福島党首は「連立離脱」を決して口にしなかっただろう、というメディアの指摘もあります。福島党首の「連立離脱」表明は自らの意志の表明というよりも、対立候補封じのための策という側面の方が強かったのではないか、という指摘です。

 また、この点に関して気になるのは、社民党の福島党首が国民新党の亀井代表と「来年夏の参院選までは移設先を決めるべきでない」という点で合意したかのような報道があることです(首相に亀井氏「参院選まで普天間決めるな」 社民と共闘(朝日新聞 2009年11月28日)。
http://www.asahi.com/politics/update/1128/TKY200911270494.html

 この点について「<佐藤優現象>批判」(『インパクション』第160号 2007年11月刊)の筆者の金光翔さんは次のような指摘をしています。

「社民党は、普天間基地移設問題の年内決着に反対している。鳩山首相のグダグタぶりが、落としどころが決まった上でのパフォーマンスでない保証もないのだが、少なくとも以下のことは言えるだろう。決着延期で社民党と共闘する国民新党の亀井静香のように、参議院選まで決めなくてよい、と言うのであれば、民主党は、公約違反の批判を浴びることなく、参議院選を迎えることができることになるし、しかも保守的な支持層に対しては、決着の遅延の責任は社民党に押し付けることができるのだから、民主党にとっては一石二鳥だ」(「社民党がいるからこそ民主党の横暴が抑えられている?」私も話させて 2009年12月5日)
http://watashinim.exblog.jp/10526371/

 上記の金光翔さんの指摘は私は的を射た指摘だと思います(ただし後段の「『安保容認・県外施設』の立場である大多数のリベラル・左派」という金さんの認識は賛成できません。「リベラル」はともかくとして「安保容認」の「左派」が「大多数」だとは私は思いません)。普天間基地撤去問題は、民主党のこの問題についての対応だけでなく、連立与党の一員としての社民党のこの問題に対する対応も注意深く見守る必要があるように思います。同基地撤去を真に実現するためには、その注視は、同基地撤去の実現を願う市民としての義務というべきものでもあるように思います。

東本高志

2009衆議院選挙――結果分析

10月 2nd, 2009 Posted by MITSU_OHTA @ 17:29:26
under 一般 [26358] Comments 

2009総選挙(衆議院選挙)の結果を分析中ですが、膨大なデータを処理しなければならず未だに終わっていません。完了してからまとめて掲載するつもりでしたが、終わった分析から順に報告していくことにします。印刷用ファイルはすべて終了後に用意します。

太田光征
http://otasa.net/

共同声明「国会議員の定数削減に抗議する」賛同募集中
 
 
【目次】

1. 民意は民主党の単独過半数を明確に否定している
2. 改憲派議員の割合――民主党の改憲派議員の割合は07参院選から増加している
3. 民主党が勝った小選挙区のうち、自民・民主の支持層以外に依存しなければ勝てなかった可能性の高い選挙区は51ある。
 
 

1. 民意は民主党の単独過半数を明確に否定している
 
 
表1は、2009衆院選の各党獲得議席数をまとめたもので、2007参院選の結果に基づくシミュレーション値や、全国一区比例代表制だった場合の獲得議席数議席配分計算表)なども示しています。

各党の比例区得票率や、全国一区比例代表制だった場合の獲得議席数を比較すれば明らかなように、民主党は比例区得票数レベルで投票者の過半数から支持を受けているわけではなく、民主党の比例区票に社民・国民・日本・大地の票を合わせてさえも過半数に達せず、共産の票を足してやっと過半数になる。ここに今回の衆院選の民意が表れています。

小選挙区も含めた民主党の獲得議席数308だけを見たのでは、民意を読み誤ることになります。民主党が嫌々社民・国民と連立政権を組んでいることは、上記民意から正当といえ、各党の比例区票を基準にすれば、むしろ社民・国民の閣僚数が極端に少ないといえる。

表1 2009衆院選結果

カッコ内は2007参院選の結果に基づくシミュレーション
(カッコなしは選挙結果と同じ)















北海道 2 4
(5)
1 0 0 0 0 0 1
(0)
0 0 - 8
東北 4
(5)
7 1 1 1
(0)
0 0 0 0 0 0 - 14
北関東 6 10
(9)
2
(3)
1 0
(1)
1 0 0 0 0 0 - 20
南関東 6
(7)
11
(10)
2
(3)
1 1 1 0 0 0 0 0 - 22
東京 5 8 2 1
(2)
0 1 0 0 0 0 0 - 17
北陸信越 4 6 1 0 0 0 0 0 0 0 0 - 11
東海 6 12
(11)
2
(3)
1 0 0 0 0 0 0 0 - 21
近畿 9
(7)
11
(12)
5 3 1 0 0 0
(1)
0 0 0 - 29
中国 4 6
(5)
1
(2)
0 0 0 0 0 0 0 0 - 11
四国 2 3 1 0 0 0 0 0 0 0 0 - 6
九州 7 9 3 1 1 0 0 0 0 0 0 - 21
55 87
(85)
21
(25)
9
(10)
4 3
(-)
0 0
(1)
1
(0)
0 0 - 180
議席獲得率 30.6 48.3 11.6 5.0 2.2 1.6 0 0 0.6 0 0 - -
得票率 26.7
(28.1)
42.4
(39.5)
11.5
(13.2)
7.0
(7.5)
4.3
(4.5)
4.3 1.7
(3.0)
0.8
(0.3)
0.6
(0.5)
0.1 0.7 - -
得票率x定数 48.1 76.3 20.7 12.6 7.7 7.7 3.1 1.4 1.1 0.2 1.3 - -
全国一括式 - - - - - - - - - - - - -








議席数 64 221 0 0 3 2 3 1 - 0 0 6 300
得票率 38.7 47.4 1.1 4.2 2.0 0.9 1.0 0.3 - 0.1 1.5 2.8 -
議席獲得率 21.3 73.6 0 0 1.0 0.6 1.0 0.3 - 0 0 2.0 -






議席数 119 308 21 9 7 5 3 1 1 0 0 6 480
完全比例制 129 206 55 34 20 20 8 3 2 0 3 0 480
比例区得票率 26.7
(28.1)
42.4
(39.5)
11.5
(13.2)
7.0
(7.5)
4.3
(4.5)
4.3 1.7
(3.0)
0.8
(0.3)
0.6
(0.5)
0.1 0.7 - -
議席獲得率 24.8 64.2 4.4 2.0 1.5 1.0 0.6 0.2 0.2 0 0 1.0 -

 
 

表2 各党得票数

カッコ内は得票率(%)

比例区 小選挙区
自民 18,810,217(26.73) 27,301,982(38.68)
民主 29,844,799(42.41) 33,475,334(47.43)
公明 8,054,007(11.45) 782,984(1.11)
共産 4,943,886(7.03) 2,978,354(4.22)
社民 3,006,160(4.27) 1,376,739(1.95)
みんな 3,005,199(4.27) 615,244(0.87)
国民 1,219,767(1.73) 730,570(1.04)
日本 528,171(0.75) 220,223(0.31)
大地 433,122(0.62) -
改革 58,141(0.08) 36,650(0.05)
幸福 459,387(0.65) 1,077,543(1.53)
本質 7,399(0.01) -
無所属 - 1,986,055(2.81)
70,370,255 70,581,679

 
 

2. 改憲派議員の割合――民主党の改憲派議員の割合は07参院選から増加している
 
 
「どちらとも言えない」という態度保留派と、無回答の29人を考慮すると、改憲派議員は新議員全体の59%以上、87%未満といえる。朝日の見出しのように、分母を回答者だけにして、「改憲派、3分の2切る」とはいい切れない。3分の2を超える可能性は十分にある。

民主党に限って見れば、憲法改正に「賛成」「どちらかと言えば賛成」を合わせた割合は、61%(04年)、39(07年)、46(09年)と07年参院選から増加に転じ、「どちらかと言えば反対」「反対」を合わせた割合はそれに呼応して、27%(04年)、34(07年)、22(09年)と07年参院選から減少している。

また民主党については、憲法改正について「どちらとも言えない」が11%(04年)、22(07年)、31(09年)と増加し、態度が曖昧化しているのが特徴。

[参考]
参院新勢力に関する朝日新聞東大共同調査(2007年8月7日)
http://kaze.fm/wordpress/?p=140

 
 

表3 改憲派議員の割合

朝日東大共同調査(立候補予定者アンケート)=9月1日付朝日新聞
新議員480人のうち回答者451人(無回答29人)

09年 05年
当選者 自民 民主 当選者
賛成 31% 75 16 72
どちらかと言えば賛成 28% 21 30 15
どちらとも言えない 22% 3 31 5
どちらかと言えば反対 9% 2 13 3
反対 10% 0 9 5

 
 

3. 民主党が勝った小選挙区のうち、自民・民主の支持層以外に依存しなければ勝てなかった可能性の高い選挙区は51ある
 
 
民主党は比例区で29,844,799票(得票率42.41%)、小選挙区で33,475,334票(得票率47.43%)を獲得した(表2)。小選挙区は比例区より3,630,535票だけ多い。この分は、小選挙区制の特性で、民主の実力を表すものではなく、民主支持層以外から流れた票と考えられます。

今回、自民支持層は比例区で29.4%、小選挙区で30.9%が民主に投票した(表5)。ほとんど同じ割合なので、自民支持者で民主に投票した人の大部分は、比例区・小選挙区とも民主に投票したものと思われます。したがって上記の差分363万票余りは、自民・民主の支持層以外からのものと見なせます。

下記の小選挙区は、いずれも民主候補が当選した小選挙区ですが、当該小選挙区から民主が獲得した比例区票が、小選挙区の対立候補(ほとんど自民)が獲得した小選挙区票よりも少ない選挙区のリストです。合計51あります。

民主候補が当選した小選挙区のうち、その小選挙区票と、次点で落選した対立候補が獲得した小選挙区票の差が約4万票未満の選挙区について調べた結果なので、そうした選挙区をほぼ網羅しているはずです。

上記の推測を前提にすると、民主候補が当選したこれら51の小選挙区は、自民・民主の支持層以外からも票をもらわなければ勝てなかった小選挙区、言い換えると、両党支持層以外に依存しなければ勝てなかった選挙区の可能性が非常に高い。

 
 

民主党が勝った小選挙区のうち、自民・民主の支持層以外に依存しなければ勝てなかった可能性の高い51選挙区

凡例:小選挙区名(民主候補の対立候補=小選挙区獲得票、民主候補=民主が当該小選挙区から獲得した比例区票)

北海道5区(町村信孝=151,448、小林千代美=144,026)、北海道11区(故・中川昭一=89,818、石川知裕=64,992)、北海道12区(武部勤=112,690、松木謙公=78,527)、山形1区(遠藤利明=104,911、鹿野道彦=98,797)、福島1区(亀岡偉民=136,526、石原洋三郎=135,943)、茨城1区(赤城徳彦=111,674、福島伸享=105,771)、栃木1区(船田元=111,455、石森久嗣=106,734)、群馬1区(尾身幸次=109,846、宮崎岳志=99,786)、群馬3区(谷津義男=89,436、柿沼正明=86,073)、東京1区(与謝野馨=130,030、海江田万里=119,809)、東京3区(石原宏高=121,699、松原仁=121,485)、東京9区(菅原一秀=126,026、木内孝胤=124,495)、東京10区(小池百合子=96,739、江端貴子=91,440)、東京12区(公明・太田昭宏=108,679、青木愛=99,826)、東京13区(鴨下一郎=111,590、平山泰朗=100,444)、東京14区(松島みどり=93,675、木村剛司=89,914)、東京16区(島村宜伸=113,634、初鹿明博=109,704)、千葉10区(林幹雄=107,745、谷田川元=94,358)、神奈川13区(甘利明=136,164、たちばな秀徳=132,559)、山梨2区(平沼グループ・長崎幸太郎=57,213、坂口たけひろ=40,402)、石川1区(馳浩=117,168、奥田建=115,136)、石川3区(北村茂男=98,599、近藤和也=81,163)、富山1区(長勢甚遠=82,040、村井宗明=66,405)、岐阜5区(古屋圭司=100,931、阿知波吉信=96,927)、三重1区(川崎二郎=98,380、中井洽=98,367)、三重4区(田村憲久=84,583、森本哲生=79,660)、静岡4区(望月義夫=100,352、田村謙治=95,724)、静岡8区(塩谷立=114,677、斎藤進=113,105)、大阪3区(公明・田端正広=97,121、中島正純=96,101)、大阪6区(公明・福島豊=107,336、102,115)、大阪15区(竹本直一=107,896、大谷啓=102,015)、奈良2区(高市早苗=94,879、滝実=93,033)、和歌山2区(石田真敏=71,343、阪口直人=70,081)、香川1区(平井卓也=91,403、小川淳也=86,164)、広島4区(中川秀直=97,296、空本誠喜=90,277)、広島5区(寺田稔=93,594、三谷光男=79,290)、広島7区(宮沢洋一=111,321、和田隆志=105,971)、山口2区(山本繁太郎=105,940、平岡秀夫=89,551)、福岡4区(渡辺具能=106,124、古賀敬章=91,482)、福岡5区(原田義昭=125,767、楠田大蔵=110,214)、福岡9区(三原朝彦=109,807、緒方林太郎=96,138)、福岡10区(西川京子=106,365、城井崇=91,717)、佐賀1区(福岡資麿=75,475、原口一博=59,194)、佐賀2区(今村雅弘=79,243、大串博志=70,717)、長崎2区(久間章生=106,206、福田衣里子=98,398)、長崎3区(谷川弥一=77,316、山田正彦=62,714)、長崎4区(北村誠吾=93,428、宮島大典=73,625)、熊本2区(林田彪=99,933、福嶋健一郎=86,796)、大分3区(岩屋毅=112,602、横光克彦=78,696)、鹿児島1区(保岡興治=94,226、川内博史=93,950)、沖縄4区(西銘恒三郎=71,653、瑞慶覧長敏=62,766)

 
 
自民、民主の各支持層、無党派層が自民と民主に比例区で投票した割合の合計は、ともに前回(05年)から今回(09年)にかけてほとんど変化していない。投票先が自民から民主に変わっただけで、少数政党にシフトすることはなかったと思われる。若干減少した分は、みんなの党に流れたのだろう。

支持層別ではなく、投票層全体でみれば、自民と民主の比例区得票率の合計は、69.2(05衆院選)、67.6(07参院選)、69.1(09衆院選)と推移し、減少幅はさらに小さくなる。みんなの党に流れて減少した分は、公明党支持層から補填されたのではないか。

民主が社民候補を推薦した小選挙区では、民主支持層の約6割が社民候補に投票した。選挙協力は比較的成功したといえる。
 
 

表4 各党支持層の比例区投票先
朝日新聞出口調査=8月31日・9月1日付朝日新聞
(項目「自+民」を追加)
数値(%):2009衆院選/2005年衆院選

自民 民主 自+民 社民
自民支持層(37%/41) 比例区 54/73 30/13 84/86 -
民主支持層(25%/20) 比例区 2/9 84/81 86/90 -
社民候補を推薦した小選挙区 17 - - 66
無党派層(20%/21) 比例区 15/33 53/37 68/70 -
その他(18%/18) 比例区 - - - -

 
 
自民から民主に投票先が変るだけで、少数政党にシフトすることがなかった傾向は、小選挙区で一層はっきっりしている。無党派層、公明各支持層が自民と民主に小選挙区で投票した割合の合計は、ともに前回(05年)から今回(09年)にかけてほとんど変化していない。

共産支持層は、公認候補がいない小選挙区で、約7割が民主に投票し、公認候補がいる小選挙区でも、約2割が民主に投票している。
 
 

表5 各党支持層の投票先
共同通信社出口調査=8月31日付日経新聞
(項目「自+民」を追加)


+








今回 15.6% 51.6 67.2 4.9 8.9 6.1 7.5 2.0 1.4 0.1 1.6
前回 32.6% 38.2 70.8 7.2 8.5 7.5 - 1.4 3.7 - 0.7



今回 23.4% 59.4 82.8 - - - - - - - -
前回 37.4% 45.5 82.9 - - - - - - - -






今回 53.7% 29.4 83.1 6.1 2.1 1.5 4.5 1.2 0.4 0.1 0.9



今回 59.8% 30.9 90.7 - - - - - - - -







今回 67.7% 16.6 84.3 7.1 1.8 0.6 0.6 0.3 0.2 0.1 1.8
前回 72.3% 11.5 83.8 - - - - - - - -







公認あり - 22.1% - - - - - - - - -
公認なし 15.2% 69.3 84.5 - - - - - - - -