秘密保全法についてのパブリックコメント

9月 17th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 4:28:28
under パブリックコメント , 秘密保全法 1 Comment 

パブコメの提出方法:秘密保全法 パブコメ募集開始!!
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/373937613.html

(1) 3ページ「ア適性評価は、(中略)行政機関の長又は警察本部長が行うものとする」および「外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全への脅威となる諜報その他の活動」について

[参照]
伊達判決を生かす会
http://datehanketsu.com/katsudou.html

砂川事件裁判で「日米安保条約に基づく米軍の日本駐留は憲法9条に違反する」とした伊達判決(1959年3月30日、東京地裁)を葬り去り、日米安全保障条約を予定通り改定すべく、国は高裁を飛び越して最高裁に跳躍上告した。

後に砂川事件裁判に関する米国の「機密文書」が発見された(一部の文書は「安全保障上の理由」で公開禁止処分にされた)。

これらの文書によれば、当時の藤山外相は駐日マッカーサー米大使から日本政府が迅速に跳躍上告を行うよう提案を受けた。

また、最高裁で上告審を審理した裁判長の田中耕太郎最高裁長官もマッカーサー大使と会い、「守秘義務」を破りながら、裁判情報を同大使に伝えた。

結局、異例のスピード審理で「1審破棄、差戻し」という15人全員一致の最高裁判決が同年12月17日に出る。

マッカーサー大使はこの判決が田中最高裁長官の手腕と政治力に負うところが大きいと評価し、「米軍の日本駐留が日本国憲法の下で合法(注:判決は合法と判断したわけではない)であるとする全員一致の砂川事件最高裁判決は、もちろん極めて有益な進展である。同様に重要なのが、条約の合憲性うんぬんは“政治の問題”であり、司法の判断に従うべきではないとする最高裁の判決である。15人の全員一致による最高裁判決は、安全保障条約改定に反対する分子が憲法を根拠に扇動するための隙間を残さず、少数派としての反対勢力に脚光を浴びせようと連中が試みる機会を絶った」と述べている。

米国に隷属して憲法(判断)を停止させる「統治行為論」を基礎付けた田中最高裁長官の手腕・政治力をマッカーサー大使は評価したのである。

在日米軍基地は日本に対する攻撃を誘うことで日本の安全を損なう可能性がある。砂川裁判は「外国の利益を図る目的で行われ、かつ、我が国及び国民の安全への脅威となる諜報その他の活動」を政府と裁判所が行い得ることを示している。

いくら安全保障が理由だからといって、政府に「特定秘密」を秘匿させれば、国民の利益と安全保障を損ないかねない。最高裁長官たる身分の者が自ら守秘義務を犯して自分の政治的主義を押し通そうとするのだから、行政機関の長などが特定秘密を扱う従事者の適性評価を行うということは笑うに笑えない話になる。

安全保障のためには情報を国民が監視しなければならない。秘密保全法は不要であり、代わりに情報公開の徹底が必要である。

(2) 1ページ「政令で定める」について

政令で定めず、国会議員が法律で定めること。

(3) 3ページ「オ(3)適性評価の実施に当たって取得する個人情報については、国家公務員法上の懲戒の事由等に該当する疑いがある場合を除き、目的外での利用及び提供を禁止する」について

特定秘密の漏えいに罰則を設けておきながら、適正評価で取得した個人情報の目的外利用に罰則を設けないのはおかしい。

(4) 3ページ「2 特定秘密の漏えい等に対する罰則」について

志布志事件や沖縄密約事件などの曝露のように公共性のある情報公開行為を阻害してはならない。公共性に反する情報隠ぺいを罰する法律と、公共性に反する情報隠ぺいを曝露する内部告発を奨励する法律が必要。

(5) 4ページ「本法の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない旨を定める。」について

5〜6ページなどに示されている特定秘密の範囲がそもそも不明確・無限定であり、従って国民の知る権利を制約し、基本的人権の侵害をもたらさざるを得ないから、この4ページの規定(憲法)と本法案は決定的に矛盾する。

(6) 5〜6ページの第1号から第4号で使用されている「その他」について

「その他」を含めれば特定秘密は無限定になるので使用しないこと。

(7) 5ページ「イ自衛隊の運用又はこれに関する見積り若しくは計画若しくは研究」および「イ安全保障に関する外国の政府又は国際機関との交渉又は協力の方針又は内容」について

これらの規定では抽象的で特定秘密を限定することはできないから、特定秘密を限定できる規定にすること。特定秘密の範囲は国民の知る権利を制約しないものとすること。

前回の(7)までに続き、(8)を提出する。

(8) 2ページ(2) 「特定秘密の提供」のエ(「刑事訴訟」「民事訴訟」「刑事事件の捜査(刑事訴訟法第316条の27第1項の規定により提示する場合のほか、捜査機関以外の者に当該特定秘密を提供することがないと認められるものに限る。」))について――裁判を受ける権利を侵害

裁判官にも秘匿されている特定秘密をめぐる事件の裁判をどのように進めるのか。裁判官が特定秘密の内容を知らなければ、令状の妥当性を判断することはできない。捜査当局が恣意的に市民運動を弾圧することが一層容易になってしまう。憲法違反の非公開裁判に道を開くだろう。

民主党時代の秘密保全法案には「公共の安全および秩序の維持」が目的としてあった。「公の秩序の維持」は自民党の改憲草案にある国防軍の任務でもある。国防軍に伴って非公開裁判を行う軍事裁判所が創設される。

このように既に非公開裁判が狙われている。秘密保全法と自民党流の改憲が実現すれば、秘密保全法と秘密軍事裁判所が一体運用されるはずで、この点からも秘密保全法は危険すぎる。

本法案概要では確かに「公共の安全および秩序の維持」は削除されているが、民事訴訟法によって既に「公共の安全と秩序の維持」に支障を及ぼすおそれがあると裁判所が認めれば、裁判所は文書の提出を命じることができず、刑事訴訟では被告に特定秘密は開示されない。

従って、国民は裁判で特定秘密の提供を受けることができない。これは実質的に裁判を受ける権利、知る権利を剥奪するものであり、許されない。

刑事訴訟法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S23/S23HO131.html

第三目 証拠開示に関する裁定
第三百十六条の二十七  裁判所は、第三百十六条の二十五第一項又は前条第一項の請求について決定をするに当たり、必要があると認めるときは、検察官、被告人又は弁護人に対し、当該請求に係る証拠の提示を命ずることができる。この場合においては、裁判所は、何人にも、当該証拠の閲覧又は謄写をさせることができない。

民事訴訟法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H08/H08HO109.html

(文書提出義務)
第二百二十条  次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。
四  前三号に掲げる場合のほか、文書が次に掲げるもののいずれにも該当しないとき。
ロ 公務員の職務上の秘密に関する文書でその提出により公共の利益を害し、又は公務の遂行に著しい支障を生ずるおそれがあるもの

(文書提出命令等)
第二百二十三条
4  前項の場合において、当該監督官庁が当該文書の提出により次に掲げるおそれがあることを理由として当該文書が第二百二十条第四号ロに掲げる文書に該当する旨の意見を述べたときは、裁判所は、その意見について相当の理由があると認めるに足りない場合に限り、文書の所持者に対し、その提出を命ずることができる。
一 国の安全が害されるおそれ、他国若しくは国際機関との信頼関係が損なわれるおそれ又は他国若しくは国際機関との交渉上不利益を被るおそれ
二 犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれ

情報公開・個人情報保護審査会設置法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H15/H15HO060.html

(審査会の調査権限)
第九条  審査会は、必要があると認めるときは、諮問庁に対し、行政文書等又は保有個人情報の提示を求めることができる。この場合においては、何人も、審査会に対し、その提示された行政文書等又は保有個人情報の開示を求めることができない。

太田光征

「原発の廃炉に係る料金・会計制度」に関するパブリックコメント

9月 9th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 23:53:48
under パブリックコメント No Comments 

【Webフォーム】
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620213008&Mode=0
このページの下にある「意見提出フォームへ」というボタンをクリックして、記入して下さい。

以下のように意見を書いて送りました。

太田光征

10ページ(2)「原子力発電施設解体引当金制度」について

意見と理由:「廃止措置費用は早期に回収すべきという観点を考慮し、運転期間40年に安全貯蔵期間10年を加えた50年を原則的な引当期間とする。」とありますが、これは原発事故で膨らむ廃炉資金を電気利用者に負担させるものです。

解体引当金はあらかじめ計画で明らかにしておいた上で電気利用者が電気事業者と契約しているものであり、廃止決定後に廃止措置のための計画外追加負担を認めることは、電気利用者に予期せぬ負担を強いる詐欺であり、電気事業者の責任を放棄するものであるから、このような追加負担を引当金・減価償却・発電コストとして認めないでください。

11ページ(1)「原子力発電設備の減価償却制度」について(1)

「今回の措置により、廃止措置中も電気事業の一環として事業の用に供される設備について運転終了後も減価償却を継続することとなるため」とありますが、運転終了すれば原子炉の価値はなくなるのであり、事業の用に供される設備ではなくなる。

廃止措置は運転期間中に計画すべきものであって、廃止決定後に廃止措置のための追加負担を減価償却として認めることは、電気利用者に予期せぬ負担を強いる詐欺であり、電気事業者の責任を放棄するものであるから、このような追加負担を減価償却・発電コストとして認めないでください。

11ページ(1)「原子力発電設備の減価償却制度」について(2)

「ただし、今回の見直しにより、例えば東京電力の場合、制度改正前までの引当において見積もられた設備のほかに事故炉の廃止措置に向けて新たに設備の取得が必要となる場合には、この減価償却費が追加的に原価算入され得ることとなるため、追加負担の要因となる可能性がある。」とありますが、廃止措置は運転期間中に計画すべきものであって、廃止決定後に追加設備のための追加負担を減価償却として認めることは、電気利用者に予期せぬ負担を強いる詐欺であり、電気事業者の責任を放棄するものであるから、このような追加負担を減価償却・発電コストとして認めないでください。

シリア情勢をめぐる報道についての要望書

9月 4th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 11:27:23
under メディア , シリア No Comments 

9月3日、シリア情勢をめぐる報道について、「平和への結集」をめざす市民の風として朝日新聞と毎日新聞に要望に伺いました。以下は毎日新聞あての要望書です。

毎日新聞外信部御中

2013年9月3日

 シリア情勢をめぐる報道について面会で要望をさせていただきたいので、ご検討をよろしくお願いします。

 米国によるシリア軍事介入の「開戦日時」(2日付毎日一面トップ「シリア攻撃 9日以降」)を何の躊躇・批判もなくメディアが「報道」する神経はいかがなものでしょうか。米国議会が9日以降に米大統領の提案を審議すると報じれば済むはずです。米国の軍事介入を当然と認識しているのではありませんか。

 朝日新聞と毎日新聞は奇しくも米国によるシリア攻撃に関して「その時日本は」という文句を含む見出しの記事を書いています。米国の軍事介入を当然の前提として、単に米政府の開戦プロセスをひたすら解説し、「その時」の日本の対応を日本政府になり代わって解説するというもので、攻撃を受けるシリア国民がまったく不在です。「その前に日本」が何をなすべきかについて読者に判断の材料を与える内容になっていません。

 「(仏軍は)単独でアサド政権の化学兵器の使用能力を弱められない」(朝日9月2日付)、「限定攻撃 効果疑問も」(毎日9月2日付)などの記事も、西側によるシリアへの軍事介入が当然で、アサド政権の化学兵器のみが問題であると認識し、限定攻撃では不十分であると米国に指南しているかのようです。

 シリアにおける8月21日の「化学兵器攻撃」疑惑について、AP通信などに記事を書いてきたベテラン中東記者のデイル・ガヴラク氏が、ダマスカス郊外ゴウタ地区の住民や、反政府軍兵士とその家族などに数多くインタビューしたところ、反政府軍兵士が化学兵器と知らずに誤爆させたとの証言を引き出しています。

「シリア化学兵器攻撃」は反政府軍による誤爆で、化学兵器はサウジが提供――中東専門記者が現地住民にインタビュー
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/373646407.html

 CNNは2012年12月9日付の記事「米国が貯蔵化学兵器の確保でシリア反乱軍の訓練を支援」で、米国と欧州の同盟国がヨルダンとトルコで軍事請負会社を使って、シリアにおける貯蔵化学兵器の確保方法について、シリア反乱軍を訓練していると伝えています。

Sources: U.S. helping underwrite Syrian rebel training on securing chemical weapons – CNN Security Clearance - CNN.com Blogs
http://security.blogs.cnn.com/2012/12/09/sources-defense-contractors-training-syrian-rebels-in-chemical-weapons/

 アサド政権だけが化学兵器攻撃の責任を持つわけでないことを示す報道があるにもかかわらず、日本のメディアは一切伝えません。メディアは少なくとも、米国による軍事介入の前に、ガヴラク氏が引き出した証言が真実であるのかどうか、検証する責務が生じたといえます。(国連調査団の目的が化学兵器攻撃の実行者を特定することでないことはご存知でしょう。)

 メディアは米国によるシリアへの軍事介入が「限定的」でアサド政権の転覆が目的ではなく、政権による化学兵器使用能力を削ぐことが目的であるとする米国の発表をそのまま伝えています。

 しかし、8月29日付ガーディアンによれば、シリアのジハード集団(Ahrar Alsham Islamic Brigade)は当然にも、西側による空爆をアサド軍に対する攻撃に利用すると語っています。

Syrian rebels plan wave of attacks during western strikes | World news | The Guardian
http://www.theguardian.com/world/2013/aug/29/syrian-jihadi-fighters-attacks

 西側による軍事介入は明らかに政府軍の空軍能力を狙ったものであり、それが限定的であれ何であれ、効果は持続し、反政府軍を持続的に利するものです。

 表立った軍事介入が限定的であれ何であれ、西側による反政府軍への軍事支援は持続的に行われていますが、日本のメディアはこの点にほとんど触れません。

 日本のメディアがよく引用するニューヨーク・タイムズほかが数多くこの種の記事を書いていますが、日本のメディアは引用しないのです。海外での調査体制に問題があるとしても、海外メディアを引用することはできるはずです。

「CIAの支援によりシリア反政府軍への武器空輸が拡大」
Arms Airlift to Syrian Rebels Expands, With C.I.A. Aid - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2013/03/25/world/middleeast/arms-airlift-to-syrian-rebels-expands-with-cia-aid.html?pagewanted=all&_r=1&

「米国および欧州がザグレブ経由でのシリア反乱軍に対する武器の大規模空輸に関与」
US and Europe in ‘major airlift of arms to Syrian rebels through Zagreb’ - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/middleeast/syria/9918785/US-and-Europe-in-major-airlift-of-arms-to-Syrian-rebels-through-Zagreb.html

 英国が過去2年間にわたってシリアに化学兵器の原料となるフッ化ナトリウムを輸出してきたことも問題にされなければなりません。(英国議会報告書、2013年7月18日付フィガロ)

Londres vend des armes à la Syrie
http://www.lefigaro.fr/international/2013/07/18/01003-20130718ARTFIG00482-londres-vend-des-armes-a-la-syrie.php

 また、シリアの首都ダマスカス近郊ジョバルでサリンが使用されたとフランスが公式に認めた6月4日の前に、なぜフランスが抗サリン薬を自由シリア軍が支配する対トルコ国境のバブアルハワに輸送したのかも、追求されてしかるべきでしょう。(2013年6月24日付フィガロ)

Un camion de médicaments français contre le gaz sarin
http://www.lefigaro.fr/international/2013/06/24/01003-20130624ARTFIG00573-un-camion-de-medicaments-francais-contre-le-gaz-sarin.php

 さらに、8月28日付フィガロ・ブログが、西側外交筋の話として、米国当局者が国連に対して化学兵器調査団の活動を延長しない方がよい、と伝えたと書いています。この問題もメディアは追求すべきです。

Syrie: les Américains ont demandé à l’ONU de ne pas poursuivre sa mission − De Bagdad à Jérusalem : L’Orient indiscret
http://blog.lefigaro.fr/malbrunot/2013/08/syrie-les-americains-ont-deman.html

 8月29日付ガーディアンは、予定よりも早い国連武器調査団の出国は、米国のサダム・フセイン体制に対する空爆が差し迫っているという西側諜報当局の情報を受けて、10年以上前にイラクから同様に急いで出国したことを想起させる、と書いています。まさにその通りです。

UN orders its inspectors out of Syria in anticipation of strikes | World news | The Guardian
http://www.theguardian.com/world/2013/aug/29/un-inspectors-syria-strikes

 8月27日付ガーディアン記事「シリアに対する攻撃は戦争と殺戮を拡大するだけだろう」で、Seumas Milne氏は明確に軍事介入に反対しています。このような論調が29日の英国議会による軍事介入否決につながったと考えます。日本のメディアに求められるのもまさにこれです。

An attack on Syria will only spread the war and killing | Seumas Milne | Comment is free | The Guardian
http://www.theguardian.com/commentisfree/2013/aug/27/attack-syria-chemical-weapon-escalate-backlash

 Milne氏は、シリア人権監視団が8月21日の「化学兵器攻撃」による死亡者数を322人とした一方で、エジプト(軍事政権)が2日間で1295人以上を殺害したことを取り上げ、ケリー米国務長官はエジプト軍が民主主義を回復しているとして、オバマは米国が肩入れしないと言明したことを指摘しています。

 米国による軍事介入が恣意的であることを指摘する論調が、日本のメディアではあまり見られません。

 加えてMilne氏は、英国政府による開戦プロセスを解説するのではなく、反政府軍が神経ガスのサリンを使用したことが具体的に強く疑われると国連人権理事会調査官のカルラ・デル・ポンテ氏が指摘し(8月以前の攻撃について)、その後すぐにトルコの保安当局がシリアへ向かっていたアルカイダ系アル・ヌスラからサリンを押収したこと、反政府軍がシリア北東部からイラク国境にかけて数多くのクルド人に対して民族浄化を働いていることを指摘し、読者に判断材料を与えています。

 シリア民衆の独裁体制に対する蜂起が宗派間・地域代理戦争に変質してしまっているというMilne氏の基本的な認識さえ、日本のメディアでは押さえられていないようです。

 「人道に対する犯罪」を罰しないままにしておく訳にはいかないという米国の理屈は成り立ちません。Milne氏も記事の中で取り上げている劣化ウラン弾や白リン弾、枯れ葉剤を使用してきた米国が人道介入を語る資格がないのは明白です。

 サダム時代の方がマシだったと一部が語る現在のイラク。この10年間にイラクで殺された外国部隊の兵士(約4800人)とほぼ同じ人数の市民が毎年、命を奪われています。このような事態を招く「人道介入」などあり得るわけがありませんが、このような指摘も日本のメディアではほとんど見られません。

 シリア情勢をめぐる報道では、海外のメディアと日本のメディアで明らかに落差があり、日本のメディアは本来の使命を果たしているとは思えません。日本政府をして軍事介入への「支持表明」に向かわせる世論作りに貢献しているように見えてしまいます。

 日米政権の意向だけを伝えるのでなく、調査報道にさらに力を割かれ、読者がシリア情勢を理解することでシリアに対する軍事介入の是非を判断できる材料を提供していただきたいと思います。

「平和への結集」をめざす市民の風

第23回参議院選挙無効請求訴訟を提起

8月 15th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 15:29:49
under 選挙制度 , 2013年参議院選挙 , 裁判 No Comments 

8月16日、2013年参議院選挙の無効請求訴訟を東京高裁に提起しました。事件番号は平成25年(行ケ)第92番。

再改訂確定版(改訂確定版から主に、結論の2と3、それに対応する緒論(0)、論点(2-ア)の部分を変更):
http://otasa.net/documents/Suit Seeking Invalidity of the 2013 Upper House Election Final Version(20130816).doc

上のURLではダウンロードできない方がいるようなので、下記を追加(2013年10月9日)。

http://otasa.net/documents/2013_Upper_House_Election_Complaint.doc

pdf版を追加(2013年11月14日)。

http://otasa.net/documents/2013_Upper_House_Election_Complaint.pdf

無効請求訴訟は選挙日から30日以内なので、8月20日(月)まで可能です。まだ間に合います。皆さんの選挙区を管轄する高裁にも是非、提訴をご検討ください。ある選挙区の無効訴訟を提起できるのは、その選挙区の選挙人です。

私の訴状をそのままお使いになっても、取捨選択してお使いになっても結構です(「平和への結集」をめざす市民の風の事務局まで事前にご連絡ください→http://kaze.fm/contact.html)。原告と被告、管轄高裁、千葉選挙区に言及した論点(4)を変更すればOKです。もちろん提出日も。

収入印紙の欄は空白のままで結構です。印紙代が2万6000円、切手代が8080円必要。東京高裁で割り印は不要でした。訴状は計3部作成してください。住民票1通も必要です。

事前の電話照会で、千葉県選管(千葉選挙区)と中央選挙管理会(比例区)を私の訴状のように1つの事件の2つの被告とするのではなく、それぞれ別の事件とするのが普通、のような回答でしたが、今回は1つの訴状に両被告を掲載する形が認められました。訴訟を提起される場合、念のため、この点に関して、高裁に問い合わせるとよいでしょう。

選挙結果は総務省のサイトや時事のサイトなどで分かります。分析もご参考にしてください。

平和への結集ブログ » 2013参院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=475

http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/data/index.html
http://www.jiji.com/jc/2013san

訴状の「第2 請求の原因 3 憲法違反・公職選挙法違反の事実」の目次と、目次だけでは内容が見当できないと思われる緒論(0)、論点(2)の全文、「第3 結論」を掲載しておきます。

(0)緒論
(1)比例区の定数枠から無所属候補を締め出す現行選挙制度は制限選挙を禁止する憲法に違反
(2)投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある
 (2-ア)投票価値の本質
 (2-イ)50%未満の得票率で50%超の議席占有率を許す現行選挙制度は多数決さえ保障しない
(3)選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらす
(4)千葉県選挙区の選挙の違憲性とその他の選挙区の選挙の違憲性
(5)公職選挙法の供託金・立候補者数規定は「正当な選挙」どころか「不当な選挙」を規定するもので、憲法第14条に違反する
(6)野宿者の方などの選挙権が剥奪されている

(0)緒論

 まず、本件訴訟は、「定数是正訴訟」ではなく、選挙区間での「定数配分の格差」とは別の選挙権の格差を論点とするものである。選挙区間での「定数配分の格差」は、人口ないし有権者数当たりの定数(議員1人当たりの有権者数)の選挙区間での不均衡を論点にするものであり、議員1人当たりの有権者数が同じであれば、1選挙区内の定数がどうであるか、つまり小選挙区であるか中選挙区であるかなどを問わない。本件訴訟では、議員1人当たりの有権者数を選挙区間で揃えただけでは解消されない選挙権の格差を論点とする。

 平成24年の最高裁判決でも「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される」とある通り、法の下の平等を「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」に適用しているのであって、「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」の格差が「定数配分の格差」だけだと判断しているわけではない。

平成23年(行ツ)第64号 選挙無効請求事件
平成24年10月17日 大法廷判決(7ページ)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121017181207.pdf

 広島高裁岡山支部は2013年3月26日、2012年衆議院選挙の岡山2区の選挙を憲法違反とする判決の中で、「選挙区制を採用する際は、投票価値の平等(すなわち、選挙区(国民の居住する地)によって投票価値に差を設けないような人口比例に基づく選挙区制)を実現するように十分に配慮しなければならない」と述べている。

 広島高裁岡山支部判決は、訴状の争点に従って、区割り選挙(「選挙区制」)を前提にするなら人口比例選挙をせよ、と求めたのであり、人口比例選挙だけを実施すれば平等な投票価値が実現する、と判断したわけではない。

 「定数配分の格差」に対応する「1票の格差」という言葉はマスメディア用語であり、一連の「定数配分の格差」訴訟で山口邦明弁護士グループは正しくも「1票の格差訴訟」ではなく「定数是正訴訟」と呼ぶべきだと主張している。「定数配分の格差」だけが投票価値の格差でないことからして、当然であろう。

2013/03/26 「一票の格差」訴訟 東京高裁「違憲」判決 記者会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/70047

 そのメディアも最近になって、定数配分の格差以外の投票価値の格差を概念化し出した。読売新聞(2013年3月23日)は自由民主党の細田博之衆議院議員が提案している衆院比例区「中小政党優遇枠」案を評価するに当たり、「政党間」での「1議席あたりの得票数」を比較して、「社民の約26万票、公明の約27万票に対し、自民は約62万票で、大きな格差が生じている」と問題視している。

 産経新聞(2013年3月30日)に至っては、同案が「政党間での一票の格差」を新たに生み出し、「投票価値の平等」に反すると明確に書いている。ただし後述するように、「政党間での一票の格差」は新たに生み出されているわけではない。原告はこの産経記事の前から「政党間1票格差」という表現を使用している。2012年衆議院選挙比例区でも社会民主党は議員1人を当選させるために全国集計レベルで自由民主党の4.87倍もの票を要した。

 平成24年最高裁判決が言う「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」の格差は、「選挙区間」で比べる「定数配分の格差」(1議席当たりの有権者数の格差=定数分布の人口比例からの破れ)だけではなく、「生票を投じる有権者グループ」と「死票を投じる有権者グループ」の間で比べる「投票価値の格差」(生票・死票間1票格差=当選議員分布の投票者数比例からの破れ)(ここで「生票」とは候補者の当選に寄与した票の意味)、「政党間」で比べる「投票価値の格差」(政党間1票格差=1議席当たりの得票数の格差=当選議員分布の投票者数比例からの破れ)、言い換えると「政党間」で比べる死票率の格差、候補者類型の違いで比べる定数枠の格差(無所属候補が比例区の定数枠から締め出されている)、「選挙区間」で比べる死票率の格差など、多様な切り口がある。

 多様な類型を含む「1票の格差」および「1票の価値」をマスメディアが選挙区間の「定数配分の格差」(に対応する投票価値の格差)の意味でのみ使用していることに、投票価値の格差に関する議論が混迷している一因があるだろう。

(2)投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にこそある

 従来の定数是正訴訟では、憲法14条違反や「主権者の多数決論」などが争点とされてきた。国会議員の背後には同数の主権者ないし有権者がいるべきであるとする「主権者の多数決論」では、「生票を投じる有権者」と「死票を投じる有権者」を区別せず、選挙区の間で「選挙時」の「有権者」数の違いを問題視する。「選挙後」の投票価値を考慮せず、「死票を投じる有権者」にも投票価値を持たせることで「投票価値」を誰が持つのかという主体を曖昧化してきた。

 小選挙区制などの相対多数代表制(得票率の相対順位で当選者を決定)の下では、1つの選挙区で「有権者」という類を構成する選挙民が等しく同じ投票価値を持つということは不可能であって、「生票を投じる有権者」と「死票を投じる有権者」で投票価値は異なるし、どの政党候補に投じるか、候補者数がどれくらいかなどで投票価値は異なる。投票価値はその選挙区の「有権者一般」に一様なものとして保障されているわけではない。

 投票価値は生票を投じることで初めて発生するから、マスメディア用語としての選挙区間の「1票の格差」(定数配分の格差)はあくまで、投票率が両選挙区で同じ場合に、「生票を投じる有権者」グループの間で、「議員1人当たりの投票者数」(有権者数でない)を比較した比率としてしか意味を持たないだろう。

 このように定義した比率とて、候補者数の違いなどによって、選挙ごと、選挙区ごと、有権者ごとに異なる。「議員1人当たりの投票者数」は生票率に対応するが、生票率は選挙ごと、選挙区ごと、有権者ごとに異なるのだから、一定していないのは当然である。得票率90%で当選する候補者もいれば、得票率10%で当選する候補者もいる。生票を投じることで初めて発生する投票価値は、「議員1人当たりの有権者数」が同じであっても、選挙ごと、選挙区ごと、有権者ごとに違う。

 投票価値の格差の問題は、生票と死票の割合などを総合的に評価して、投票価値を持つ主体を明確化しながら、議論しなければならない。投票価値論はこのように奥が深いものである。

(2-ア)投票価値の本質

 従来の定数配分の格差に関する議論では、有権者数100万人(20万人 x 5)に定数5の中選挙区Aと、有権者数20万人に定数1の小選挙区Bにおいて、投票価値は同じとされる。有権者数10万人に定数1の小選挙区Cは、前2者より投票価値は高いとされる。

 しかし、例えば少数政党の候補者は小選挙区(1人区)で当選しにくいから、少数政党の支持者にとって、小選挙区Cの「高い投票価値」は実際的価値が低く、マスメディア用語で「1票の価値」の低い中選挙区Aの方がありがたい。投票価値の議論では誰にとっての投票価値なのかを明らかにしなければならない。

 このように小選挙区と複数定数区の間では、「議員1人当たりの有権者数」と併せ、死票率などを総合的に考慮しなければ、投票価値を比較することはできないのである。

 1人区同士を比べる場合でも、議員1人当たりの有権者数が揃っているからといって、死票率10%の1人区と死票率90%の1人区の間で投票価値が同じであるなどとは決して言えない。生票を投じた有権者からすれば、後者の投票価値が高く(より少ない票数で議員1人を当選させることができる)、死票を投じた後者の90%の有権者からすれば、前者で生票を投じた90%の有権者と比較して、不公平感を抱くだろう。

 後述する論点でもあるが、議員1人当たりの有権者数が同じでも、仮に西日本が1人区の区割り選挙のみ、東日本が単一の比例区だけであれば、東西の有権者は文句を言うのではないだろうか。

 投票価値の格差の一類型としての定数配分の格差を考える場合には、選挙制度の類型に留意しなければならない。比例代表制と相対多数代表制では様相が本質的に異なる。

 比例代表制は「1議員当たり同数の票数」で、つまりまさに「平等な投票価値」で有権者グループに議席を対応させるという思想に基づく。候補者同士に優劣を競わせるのとは違う。理想的な設計では死票は議席1つ分に抑制でき、例えば衆議院比例区ブロックの間における定数配分の格差は、そのまま「有権者一般」の持つ投票価値の格差といっていい。

 有権者100万人に定数20の比例区ブロックは有権者100万人に定数10のブロックより、「有権者一般」が1人当たり2倍の議員を当選させることができるから、「有権者」の投票価値は2倍である、という表現が意味を持つ。相対多数代表制とは異なり、選挙ごと、有権者(どの政党を支持するか)ごとに変わらない属性である。比例区ブロックの場合の定数配分の格差こそ、当選者数に影響を与える「投票価値の格差」「1票の価値の格差」といえる。

 相対多数代表制は、得票率順に当選させるもので、1人区なら得票率第1位のみを当選とし、それ以外を落選させ、落選候補に投じた有権者の票を死票とする。多数決原理を期待したものであるといえるが、生票率が50%を超えなければ多数決は成立しない。

 1人区の相対多数代表制(小選挙区制)の場合を具体例で考える。自由民主党支持の有権者9人と民主党支持の有権者1人の1人区Aと、自由民主党支持の有権者90人と民主党支持の有権者10人の1人区Bがあるとする。選挙区Aでは、自由民主党支持者と民主党支持者の「投票の有する影響力」は、(9分の1)対(1分の1)、選挙区Bでは、(90分の1)対(10分の1)=(9分の1)対(1分の1)で、選挙区Aと何ら変わらない。

 選挙区Bに属する自民党支持者は選挙区Aより有権者数が多いために自分の投じる1票によって候補者の当選に与える影響は小さいと嘆くかもしれず、同様のことを選挙区Bの民主党支持者も思うかもしれないが、選挙区B内での自民党支持者と民主党支持者の力関係は選挙区A内のそれと変わらないのである。

 「投票の有する影響力」は選挙区内の有権者(票)の力関係だけで決まり、他の選挙区と比べた有権者数の多寡とは基本的に関係ない。ただし、自由民主党は全国レベルで得票率が第一位だから、選挙区が大きく、従って有権者数が多いほど、全国レベルの得票率が再現される確率が高くなり、当選確率が高まるということはあり得る。これはむしろ「政党間1票格差」の問題になる。

 定数配分の格差の問題からは、小選挙区制を前提とし、選挙区Aを基準にすれば、選挙区Bは10分割して定数10にすべきであろう。しかし、このような区割り変更を行っても、有権者1人の「投票の有する影響力」は、等しく候補者1人に作用するのみで、しかも選挙区内の有権者(票)の力関係だけで決まるので、変わらないのである。「投票の有する影響力」が複数の候補者に及ぶ比例代表制とは、この点が決定的に違う。

 選挙区Bの分割という区割り変更によって新選挙区全体で選出される議員が10倍になるという変化はあるが、有権者1人はあくまで最大でも候補者1人しか当選させることができないことに変わりはない。旧選挙区Bの有権者1人は区割り変更によって投票価値が10倍になるのではなく、新選挙区全体でその時々の選挙ごとに変動する割合の生票を投じる有権者全体(死票を投じる有権者ではない)によって選出される議員数が10倍になっただけである。それに寄与するのはあくまで「有権者一般」ではなく、生票を投じる有権者のみである。投票価値を持つ「生票を投じる有権者」と生票率は選挙ごと、選挙区ごとに変わる。メディアが「1票の価値」が10倍になると言っても、死票を投じる有権者からすれば「与り知らぬ」ということになる。

 どのくらいの投票者数で議員1人を当選させることができるかは、選挙区間で議員1人当たりの有権者数をいくら揃えたところで、選挙ごと、選挙区ごとに変わり、従って投票価値も変わる。1人区における定数配分の格差で論点となる「投票の有する影響力」は有権者ごとに異なり、「有権者一般」に帰属させられる「1票の価値」の属性ではない。有権者が属する選挙区を含む地域の属性、地域代表性の問題と言うべきである。

 最高裁は国会議員の地域代表性を否定している(平成24年最高裁判決大橋正春裁判官の反対意見など)。憲法第43条で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」とあることからして、国会議員は地域代表者ではないから、地域間の「有権者数当たりの選出議員数」の不均衡はさほど大きな問題ではない。

 300もある衆議院小選挙区の区割りを多少変更したとしても、都道府県レベルでの選出議員の地域分布に大きな変化が生じるわけでもない。25の1人区がある東京と同様に、鳥取にもそれくらいの数の1人区があった上で、鳥取全体と東京全体を比べて議員1人当たりの有権者数が2倍などという状況にあるのではない。鳥取は2つの1人区がおそらく1つになり、削減率は50%と大きく見えるが、地域代表性の点で2議席と1議席では大差がない。都道府県レベルでの定数配分の格差は現状でもほぼ無視できる。

 ただ、参議院の場合は改選数が121議席で、うち48議席が全国一区の比例区、わずか73議席が選挙区だから、これをドント式などで48都道府県に人口比例で配分しようとしても、選挙区数の割に議席数が少な過ぎて人口に比例しないのは当然である。2010年国勢調査に基づけば、2013年参議院選挙で定数2の北海道選挙区の定数当たりの有権者数は、定数1の鳥取選挙区の4.7倍であった。

 参議院の選挙制度や総定数を現在のままとすれば、定数配分を人口比例とするには、都道府県という区割り単位を変更するしかない。しかし、それは、例えば定数2の北海道選挙区を基準にすれば、定数1の鳥取選挙区に定数1の岡山選挙区を合区して1つの1人区にしたりすることであるが、新たな地域のアイデンティティー「鳥取・岡山合区」を創出することにはなっても、地域のアイデンティティーに囚われない有権者の投票価値は、選挙制度(1選挙区の定数、この場合は定数1の小選挙区制)が変わらない限り、あるいは政党支持率などが顕著に変わる区割り変更でもない限り、基本的に変わらないのである(既述したように、選挙区が大きくなり、従って有権者数が多くなれば、小選挙区制などの相対多数代表制では、一般的に比較大政党に有利となる)。区割りの前後で変わるのは、その地域における「有権者数当たりの選出議員数」と、選出議員に貼られる選挙区名のレッテルの違いだけである。

 鳥取は都市部と比べて有権者数当たりの定数が多いということで非難されるが、むしろ都市部と比べて1選挙区内の定数が最小の1、すなわち小選挙区であるために一般的に死票率が高くなって投票価値が低くなる点も考慮しなければならない。これは(3)の論点となる。

 結局、地域属性の問題がさほど重要でないとなれば、1人区における定数配分の格差の問題で重要となるのは、生票と死票の対立である。選挙区間での定数配分の格差と、選挙区間での政党支持率の違いがランダムでない形で絡んで、「政党(とそれを支持する有権者)間1票格差」に影響を与えてしまう。

 例えば、衆議院でも参議院でも、自由民主党の支持率が大きい中国地方に有権者数当たりの定数が多いという問題がある。当然、同党に有利となっている。定数配分の格差は政党間1票格差と密に連関しているのである。逆に、地域によって政党支持率などに違いがなければ、いくら定数配分の格差(議員1人当たりの有権者数)が大きくとも、「政党間1票格差」に影響はしない。

 1人区では、選挙区の議員1人当たりの有権者数が多かろうが少なかろうが、その選挙区の有権者の投票価値は得票率第一位の候補を支持するかどうかで決まり、従って得票率第一位の候補を支持する有権者によってのみ決定されてしまい、どの候補が各1人区で得票率第一位の地位に収まるかどうか、どの有権者グループが得票率第一位の候補を支持する有権者グループかは、本来的に確率的なもので、選挙区の議員1人当たりの有権者数に依存しないから、その地域における「有権者数当たりの選出議員数」を問題にしない限り、どのような「議員1人当たりの有権者数」に配属されても、「投票の有する価値」は選挙区内の力関係だけで決定されるのである。そして「有権者数当たりの選出議員数」の違いもさほど大きくはない。

 要すれば、1人区における定数配分の格差は、生票を投じる有権者と死票を投じる有権者を区別せず、選挙区間で比較する「有権者一般」の投票価値の格差の問題ではない。

 最後に中選挙区制を含む大選挙区制では、議員1人当たりの有権者数が少なくなる、あるいは選挙区内の定数が増えれば、従来の議論の枠組みによる不適切な表現としての選挙区間での「1票の価値」が高まるだけでなく、より多くの投票者の票が生票となる確率が高まると同時に、より少ない票数で生票になる確率が高くなるので、本質的にも選挙区間での投票価値が高まる(議員1人当たりの投票者数が少なくなる)。

 生票と死票の対立、すなわち生票・死票間1票格差(生票を投じる有権者グループと死票を投じる有権者グループの間にある投票価値の格差)と、そこから生じる「政党(とそれを支持する有権者)間1票格差」などこそ、「投票の有する影響力」の格差の本質というものである。

 定数配分の格差が、「議員1人当たりの投票者数」の選挙区間での比較の問題だとするなら、それはまさに生票と死票の対立の問題と重なり、生票・死票間1票格差や「議員1人当たりの投票者数(得票数)」の政党間での格差(政党間1票格差)なども問題視されなければならない。投票価値を選挙区間だけで比較するパラダイムから抜け出す必要がある。

 国会議員が地域代表ではないのに対応して、有権者は各選挙区にへばりついた存在ではないから、選挙区ごとに有権者をまとめて、選挙区間だけを投票価値の比較基準としてよいとする合理性はないのであり、また投票価値は生票を投じて初めて生まれることからして、投票価値を比べるのであれば、有権者グループの区分け基準として投票選挙区を採用して「選挙区間」で比べる「定数配分の格差」(1議席当たりの有権者数の格差=定数分布の人口比例からの破れ)が問題であれば、「生票を投じる有権者グループ」と「死票を投じる有権者グループ」の間で比べる「投票価値の格差」(生票・死票間1票格差=当選議員分布の投票者数比例からの破れ)や、有権者グループの区分け基準として投票先政党を採用して「政党間」で比べる「投票価値の格差」(政党間1票格差=1議席当たりの得票数の格差=当選議員分布の投票者数比例からの破れ)などは、なおさら問題である。

 要すれば、「議員1人当たりの有権者数」の格差は地域代表性の格差を、「議員1人当たりの投票者数」の格差は投票価値の格差を生じさせる。

(2-イ)50%未満の得票率で50%超の議席占有率を許す現行選挙制度は多数決さえ保障しない

 2012年衆議院選挙では選挙区の1人区(小選挙区)で56%もの死票率を記録し、自由民主党は小選挙区において得票率43%で全議席の79%を獲得した。これは多数決ではなく少数決であり、憲法第14条法の下の平等に著しく反する。

 2013年参議院選挙でも同党は選挙区の得票率29.75%、比例区の得票率34.68%であったにもかかわらず、選挙区・比例区全体での議席占有率は53.72%であった。これも少数決であり、憲法第14条法の下の平等に著しく反する。

 単純小選挙区制などの相対多数代表制では多数決が成立しない場合があるからこそ、例えばフランスの小選挙区制では決戦投票制が導入されているのである。

 広島高裁岡山支部は2013年3月26日の定数是正訴訟判決で、「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」をもって国民主権が保障できると判断した。

 国会が議決で多数決を採用しているのは、それ以外にないという消極的な理由によるのであって、多数決原理が最高の民主主義原理であるというわけではない。国民主権は単純な多数決原理だけで規定されるものではないが、「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」が「平等な国民主権」の最低条件であることに原告は同意する。

 「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」という最低条件は、憲法前文にある「国民の厳粛な信託」を客観化・定量化した1つの条件といえる。「国民の厳粛な信託」という重い要請からは、憲法が生票率を上回る死票率を想定しているとは到底思われない。

 小選挙区制を中心とする現行選挙制度の下では、議員の権限は「国民の厳粛な信託」を受けた状態からは程遠い。極端化すれば分かりやすい。各選挙区で死票率が99%、従って生票率はわずか1%だとしよう。いくら選挙区間で議員1人当たりの有権者数を揃えても、理論的にそのような事態が生じるのである。死票を投じる有権者の意見が切り捨てられることで、少数派の投票者の意見を背負った国会議員が多数派の投票者の意見を背負った国会議員より大きな権限を行使できる状況は、有権者から見れば、「国民主権の格差」が存在するということになる。

 選挙において平等な国民主権が保障されなければ、「国民の厳粛な信託」を国会議員が引き受けた、とはとても言えない。国会において国会議員が「国民の厳粛な信託」を越えた権限を行使できるようにし、国民に「国民主権の格差」をもたらす現行選挙制度は、違憲である。

 2012年衆議院選挙の1人区選挙および2013年参議院選挙の選挙区選挙は、まさに「国民の厳粛な信託」に背いて「国民の多数意見と国会の多数意見の一致」がなく、最低限の多数決さえ成立せず、平等な国民主権が保障されなかった。

 そもそも相対多数代表制では多数意見さえ測定できないことが理解されていない。有権者が1票だけを投じる相対多数代表制の区割り選挙では、小選挙区か中選挙区かなどの定数の別に関係なく、過半数の生票率が達成されない場合、すなわち単純多数決が成立しない場合、「得票数の順位」が「投票者の候補者に対する選好の順位」に一致するとは限らないことが、既に数学的にコンドルセのパラドックスとして知られている。

 コンドルセを引用して小選挙区制の問題点を国会で指摘した国会議員は、国会会議録検索システムによれば、1人しかいない。公明党の渡部一郎衆議院議員は、1993年4月20日の第126回国会衆議院政治改革に関する調査特別委員会で次のように述べている。「小選挙区制というものが原理的に国民を代表しないということにつきましては、既にフランスにおきましてコンドルセという人が二百年前に論及されて以来、その論議は破られていないのであります。」

 国会の議論はこのような科学的知見を無視したもので、とても真摯な議論とは言えない。国民主権を最高度に保障するための選挙制度という思想がまったく見られない。このような議論で導入された小選挙区制を中心とする現行選挙制度は違憲無効というべきである。

 当然、国会で採用されている多数決は「意見の多数決」である。上記の広島高裁岡山支部判決でも、国民と国会の間で多数「意見」の一致が見られるべきとしている。

 国会議員の背景に同数の有権者がいるべきとする「主権者の多数決論」を精緻化する必要がある。国会議員が「国民の厳粛な信託」に基づいて合理性をもって多数決による立法および各院3分の2以上の賛成による改憲発議を行うためには、国会議員が国民全体の意見を正確に背負っていることが条件である。現実には、脱原発や憲法96条改憲、消費税増税など、ことごとくの重要政策で国民の多数意見と国会の多数意見に重大な乖離が見られる。

 憲法96条の改憲をめぐっての国民と国会議員の意見の乖離を見てみよう。政党として96条改憲を掲げているのは、自由民主党・日本維新の会・みんなの党である。2013年参院選で、これら3党は選挙区の得票率合計が57.82%、比例区の得票率合計が55.55%と、3分の2を超えていないが、選挙区・比例区全体で3分の2超となる66.94%の議席を獲得し、改選数の枠で見れば、改憲発議の要件を達成した。

 ここで、国民の意見の指標が得票率、国会議員の意見の指標が議席占有率であるが、多くの死票を生み出す現行選挙制度によって、一部の国会議員の意見がかさ上げされる形で、国民の意見との乖離を呈しているのである。

 この乖離はとりもなおさず「国民主権の格差」であり、その指標は議席占有率66.94%(国会議員の意見の指標)を選挙区の得票率合計57.82%あるいは比例区の得票率合計55.55%(国民の意見の指標)で割った1.16倍あるいは1.21倍となる。

 同じく2013年参院選において自由民主党単独で見ると、この「国民主権の格差」は拡大する。同党の選挙区・比例区全体での議席占有率53.72%を選挙区の得票率42.74%あるいは比例区の得票率34.68%で割れば、1.26倍あるいは1.55倍となる。これは可決に過半数の賛成が必要な立法や、改憲発議要件が2分の1に引き下げられた場合の改憲発議における「国民主権の格差」が、改憲発議要件が現行の3分の2のままでの改憲発議における「国民主権の格差」より拡大することを意味する。

 選挙制度はこうした「国民の意見と国会議員の意見の乖離」(国民主権の格差)を最小化するものでなければならない。

 国会で「国民の意見の多数決」を成立させるためには、選挙において「1議席当たりの有権者数」を選挙区の間で揃える以外に、有権者の多数意見さえも死票という形で無にするのでなく、意見をもれなく議席という形で実現しなければならない。要するに、死票を最小化した上で「1議席当たりの生票数」を限りなく揃えて初めて、国会議員の背景に同数の有権者がいる、ということが意味を持ってくる。「同数」に死票を投じる膨大な有権者を含めても意味がなく、国会で「国民の意見の多数決」は成立しない。

 つまり選挙は多数決であってはならないことが重要であるが、実際の選挙では最低限の多数決さえ機能していないのである。

 憲法は第43条で「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と要請している。この条項を単なる訓示規定としないためにも、実体的な法的担保が必要となるが、それは選挙民の意見を国会に総動員するよう、候補者が選挙民の意見をもれなく背負うことができる選挙制度ということになろう。

 憲法第43条を担保するためには、死票を最小化させる選挙制度として、相対多数代表制より比例代表制の要素が必要になる。当然、「1議席当たりの投票者数」が完全に揃えば、文句なしに投票価値は同一になるから、この点でも比例代表制の要素を検討しなければならない。

 衆議院、参議院とも、現行選挙制度は小選挙区制にしろ中選挙区制にしろ、憲法前文「国民の厳粛な信託」、憲法第14条法の下の平等、憲法第43条「全国民を代表する選挙」に従って、死票を最小化しつつ、国民の意見と国会の意見の乖離を限りなく縮小して平等な国民主権を保障しようという思想に基づいて真摯な議論によって制定された法律ではなく、科学的知見も無視して導入されたものであるから、憲法違反であり、そのような選挙制度に基づいて実施された2013年参議院選挙も違憲無効と言うべきである。

第3 結論

 既に最高裁判所は「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」の格差が憲法で定めた法の下の平等に反するとの判断を下している。

 本訴状では「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」の格差は「定数配分の格差」に起因する投票価値の格差だけではないこと、投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にあることを力説し、現行選挙制度が「定数配分の格差」に起因する投票価値の格差以上に重大な投票価値の格差をもたらしている事実を指摘し、さらに現行選挙制度が無所属候補の立候補権を制限している事実、選挙管理委員会が野宿者の方などの選挙権を剥奪している事実、公職選挙法が政党要件を持たない党派や非富裕者に対する制限選挙を規定している事実を指摘した。

 「定数配分の格差」に起因する投票価値の格差については、特に選挙制度の細部たる「1人別枠方式」が違憲とされた。このような細部について憲法判断ができるなら、投票価値の格差をもたらす選挙制度本体についても憲法判断ができるはずである。
 
 以下の判決を求める。

(1)比例区の定数枠から無所属候補を締め出す現行選挙制度は制限選挙を禁止した憲法に違反すると認める。
(2)「定数配分の格差」に起因する投票価値の格差以外にも「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」の格差があり、投票価値の格差の本質は生票と死票の対立にあることを認める。
(3)憲法前文「国民の厳粛な信託」、憲法第14条法の下の平等、憲法第43条「全国民を代表する選挙」は、死票を最小化しつつ国民の意見と国会の意見の乖離を限りなく縮小して平等な国民主権を保障する選挙制度を要請していることを認め、従って憲法は選挙区間での定数分布の人口比例だけでなく投票先政党間などでの当選議員分布の投票者数比例も要請していることを認め、小選挙区制および大選挙区制(理論的に中選挙区制を含む)はそのような要請を是とする思想に基づいて真摯な議論によって制定された法律ではなく、同思想に通じる科学的知見を無視しているから、憲法違反であると認める。
(4)選挙区によって異なる選挙制度を適用することは投票価値の格差をもたらし憲法違反であると認める。
(5)公職選挙法の供託金・立候補者数規定は制限選挙を禁止した憲法に違反すると認める。
(6)野宿者の方などの選挙権を剥奪していることは憲法違反であると認める。
(7)よって2013年参議院選挙の千葉県選挙区、その他の選挙区、比例区の結果を無効とする。

太田光征

定数配分の格差(1票の格差)の理解のために

8月 7th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 1:46:47
under 選挙制度 , 定数配分の格差(1票の格差) No Comments 

【要旨】

現在の小選挙区制のように単純な相対多数代表制(得票率30%などでも得票率第1位なら当選)の場合、1票の価値は選挙区と選挙区の間ではなく、選挙区内の力関係で決まり、定数配分の格差の是正でも有権者1人が当選に影響を与えることができる候補者数は1人なので、定数配分の格差を是正しても、投票価値に変化はあまりない。
投票価値に違いが生ずるのは、地域によって政党支持率などに違いがあり(中国地方で自民が強いなど)、そのような地域に定数が偏って配分されるような場合に限られる。
そうでない場合、定数配分の格差は、単に地域選出の議員が人口ないし有権者数当たりで多いか少ないかという地域属性の問題であって、有権者一般の1票の価値の属性とは言えない。
比例区ブロックの場合、定数配分の格差があれば、これこそ当選者数に影響を与える1票の価値の格差といえる。

【参考】
選挙権関連の格差は「定数配分の格差」だけではありません〜「0増5減」は無所属候補に対する差別を拡大する〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=468

まず、原告の山口邦明弁護士グループが正しく主張しているように、「1票の格差訴訟」ではなく「定数是正訴訟」と呼ぶべきだ。

「1票の格差」訴訟の意義
http://kaze.fm/wordpress/?p=451
2013/03/26 「一票の格差」訴訟 東京高裁「違憲」判決 記者会見
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/70047

また、2012年の最高裁判決も、法の下の平等を「選挙権」「投票の有する影響力」「投票価値」に適用しているのであって、投票価値の格差が定数配分の格差だけだと判断しているわけではない。

平成23年(行ツ)第64号 選挙無効請求事件
平成24年10月17日 大法廷判決
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121017181207.pdf
「憲法は,選挙権の内容の平等,換言すれば,議員の選出における各選挙人の投票の有する影響力の平等,すなわち投票価値の平等を要求していると解される」(7ページ)

以下、現在の小選挙区制のように単純な相対多数代表制(得票率30%などでも得票率第1位なら当選)の場合の話。

自民党支持の有権者9人と民主党支持の有権者1人の1人区Aと、自民党支持の有権者90人と民主党支持の有権者10人の1人区Bがあるとする。メディア用語で言うところの「1票の格差」(定数配分の格差)は選挙区Bがひどく、選挙区Bの有権者の「1票の価値」は選挙区Aの有権者のそれより小さいとされる。

そうだろうか。選挙区Aでは、自民支持者と民主支持者の1票の影響力は、(9分の1)対(1分の1)、選挙区Bでは、(90分の1)対(10分の1)=(9分の1)対(1分の1)で、選挙区Aと何ら変わらない。

候補者を当選させる1票の影響力は、選挙区と選挙区の間の候補者当たりの有権者数で決まるものではなく、1つの選挙区の中で、どの候補を支持する票かで決定される。

日本全体で見れば、自民党の支持率がトップだから、選挙区の有権者数が多いほど、自民に有利であることは確率的に明らかである。

一般的に、選挙区当たりの有権者数が少ない方が、自民候補より非自民候補の当選確率が高まるだろう。

例えば、2013年参院選沖縄選挙区で糸数慶子氏が当選したが、もしも沖縄選挙区が鹿児島選挙区などと合区されていれば、自民候補が当選していた確率が極めて高い。

だから、定数配分の格差の是正は、投票価値の実質的な格差をまったく是正しないとも言えない。

ただ、31しかない参院小選挙区とは違って衆院小選挙区のように300も選挙区がある場合、2倍程度+の定数配分の格差を是正したところで、各党の当選確率が変化するかどうか、分からない。

選挙区の違いによって政党支持率などに違いがあることを前提に、「定数配分の格差」(選挙区の間で候補者当たりの有権者が異なること)は実質的な格差をもたらし得る。自民が強い中国地方で候補者当たりの有権者数が少ない、従って定数が多いことが問題となる。

選挙区の違いによって政党支持率などに違いがない場合、選挙区の間で「定数配分の格差」があっても、「1票の価値の格差」が生じるわけではない。

選挙区の違いによって政党支持率などが著しく異ならない限り、定数配分の格差は、単なる地域代表性の格差(ある地域の有権者数当たりの議員数と別の地域の有権者数当たりの議員数の格差)に他ならない。

中国地方や四国地方から1人区の議席1人分を東京や千葉に持ってきても、東京や千葉の有権者が等しく1票の影響力が高まったといって、喜べるわけでもない。1議席当たりの有権者数が少なくなるので、全国レベルで優位にある自民の落選確率が少しは高まる可能性があるが。

1人区で1人の有権者が1票で影響力を行使できるのは、候補者1人の当選だけだ。定数配分の格差が是正されても、それは変わらない。単に都市部選出の議員が増えるだけであって、それは1票の価値が高まったことが原因ではなく、単に議席の割り当てが増えたからに他ならない。

1人区における定数配分の格差は、有権者の1票が持つ属性ではなく、その選挙区が含まれる地域の属性であると言った方がいい。

定数配分の格差が意味を持つのは、1人区ではなく、複数定数区や比例区ブロックの場合。格差の是正で死票率や党派の議席占有率の変化につながる確率が高まる。

一票の格差は比例代表制で解消するしかない
http://kaze.fm/wordpress/?p=142

例えば、2007参院選。有権者数からいって千葉選挙区が定数3なら大阪選挙区は定数4であるべきだった。が、定数3であるために、千葉選挙区で得票数477,402票の加賀谷健候補が当選し、大阪選挙区で次点4位の宮本岳志候補が得票数585,620票で落選した。

今回の参院選の大阪選挙区で共産党の辰巳孝太郎候補が4位で当選したのも、まさに定数配分の格差是正のおかげといえる。

1票の格差とは何か
http://kaze.fm/wordpress/?p=381#disparity2

衆院の11ある比例区ブロックで、有権者当たりの定数が異なれば、「議員1人を当選させるに要する票数」が異なるから、この場合こそ正しく定数配分の格差が1票の価値の格差になる。

太田光征

沖縄とともに声をあげよう10.12市民交流集会(2013年)

8月 5th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 20:23:31
under 一般 No Comments 
横田基地もいらない!
沖縄とともに声をあげよう10.12市民交流集会成功へ
実行委員会への参加・資金援助・集会への参加について

 賛同・協力のお願い

暴走する危険な安倍右翼政権の下で、平和と民主主義、国民の安心と安全、基地のない日本をめざし奮闘されているすべてのみな様に心からの敬意を表します。

さて、横田基地もいらない!市民交流集会実行委員会は、2010年から毎年10月に、多くの個人・団体のみなさまの賛同・協力をいただき、福生市民会館大ホールで集会を開催してきました。年々共同の輪が広がり、昨年は800人近い参加者があり、孫崎さんの講演も好評で、集会とデモ行進を成功させることができました。

今年も、沖縄県民との連帯を一層強め、すべての米軍基地の撤去を要求し、オスプレイをはじめとする米軍による横暴な軍事訓練をやめさせ、憲法改悪を許さず、日本と世界の平和を守る決意の下、第4回目の集会を開催することといたしました。

私たちは、集会の名称に「沖縄とともに声をあげよう」をかかげ、沖縄県民との連帯をしっかりと位置づけています。そして、沖縄の県民ぐるみのたたかいと首都圏での粘り強いたたかいに連帯し、横田基地撤去をオール東京のたたかいとして本格的に発展させて行くには、この趣旨に賛同して下さる団体、個人をこれまで以上に大きく結集し、主催する実行委員会を充実・拡大させることがどうしても必要です。

こうした見地から、三多摩の諸団体はもとより、全都規模で平和運動・労働運動・民主運動などで奮闘されている諸団体と、多くの個人のみなさまに、本実行委員会への参加、とりくみへの賛同、資金面での協力を呼びかけさせて頂いています。
とりわけ現状に怒り、連帯の力で平和な未来を築こうと願っておられる市民のみなさまの、集会への参加、実行委員会への参加、資金援助などに積極的なご協力をおねがいいたします。

団体では、しかるべき機関などでご検討頂き、本実行委員会への参加・賛同・資金面での協力、宣伝チラシの活用などを決めて頂き、ご支援頂きたいと念願するものです。

 2013年7月       横田基地もいらない!沖縄とともに声をあげよう
10.12市民交流集会実行委員会
               代 表 井出 由美子(東京平和委員会)
                   江田 忠雄 (伊達判決を生かす会)
                   尾林 芳匡 (八王子合同法律事務所)
                   菅谷 正見 (三多摩地区労働組合連合協議会)  
                   菅原 義春 (西多摩地区労働組合総連合) 
島田 清作 (横田基地問題を考える会)
高橋 美枝子(横田基地の撤去を求める西多摩の会)

 ○ご検討いただいた結果を、裏面を使ってご返信ください。
宜しくお願い致します。

          横田基地もいらない!
沖縄とともに声をあげよう10.12市民交流集会
    実行委員会の呼びかけに応え以下のことに協力します。
諸団体・労組など
  1.実行委員会に加わり、実行委員を派遣する。
  2.実行委員会に加わるが、実行委員は出せない。
  3.集会の趣旨に賛同し、集会参加を組織内に呼びかける。
4.  〃      、賛同金に協力する。(   口        円)
5.  〃      、組織内に案内チラシを配布してもよい。(        枚)
  賛同金の目安  ・団体は一口 3000円をお願いします。
  口数に限らず、賛同金をお決め下さるところは積極的にお願いします。  
●上記項目について協力頂ける項目すべてに○をお願いします。
  ○団体・労組名
                                         
    代表者 
                                         
    連絡先
                                         
 個人
  1.集会の趣旨に賛同し、実行委員会に加わる。
  2.賛同金に協力する。     (   口       円)
  3.案内チラシを配布してもよい。 (     枚)
     賛同金の目安  ・個人は一口 1000円をお願いします。
●上記項目について協力頂ける項目に○をお願いします。 
   ○個人名
                                         
    連絡先
                                         
  返信先 FAX 03−5927−1487(東京平和委員会FAX専用)
     郵送の場合 〒198-0036 青梅市河辺町8−7−14 寉田 一忠
                                       
賛同金振込先(郵便)  
   口座記号 00190−5  口座番号 789986
   加入者名 横田基地もいらない市民交流集会実行委員会
 ※疑問など、問い合わせは、080−8721−7177 実行委員会事務局(担当・岩田)まで
今後の実行委員会の予定 7月27日(土)・9月1日(日)いずれも13時半〜 立川アイム

—————–

実行委員会からの案内を転載

太田光征

2013参院選――結果分析

7月 30th, 2013 Posted by MITSU_OHTA @ 3:50:17
under 選挙制度 , 2013年参議院選挙 No Comments 

暮らしと経済、改憲の動向、脱原発と脱被ばく、米軍普天間飛行場など日米安保の行方など、日本の今後を決める上で重要な2013年参議院選挙。またしても53%という低い投票率に終わり、小中選挙区比例代表制並立制という選挙制度ゆえに民意を反映しない結果となりました。

参院選後の第一声というか、7月28日の最初の街頭行動では、もっぱら下記要望書で指摘した選挙制度と96条改憲の関係に潜む「不平等な国民主権」の問題のほか、数十年を覚悟してでも投票率と政治意識を向上させ、自分のためというより子どもと孫のために日本の政治を変革していこう、という訴えをしてきたところです。

民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書
http://kaze.fm/wordpress/?p=469

取り急ぎ、主に選挙制度論議に必要な範囲で、基礎的な分析を行いました。今後、内容を追加していく予定です。

使用データ:
時事ドットコム:2013年参議院議員選挙
http://www.jiji.com/jc/2013san
時事ドットコム:参院比例票数を訂正=総務省
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201307/2013072600955&g=pol

【参考】
2012衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=435

【目次】

(1) 各党の消長(民主は公明に抜かれ比例第三党、社民の比例区得票率は2012年衆院選と同じ)
(2) 参院選の小中選挙区比例代表制並立制は、小選挙区と中選挙区で死票率が違うため、多数決のルールが異なるのであり、いくら選挙区の間で有権者当たりの定数を揃えたところで、選挙権の格差をもたらし、定数配分の格差以上に違憲である(地方ほど定数が少ないために死票率が高く、自民などの比較大政党に有利であるため、反TPPなどの意思が都市部より生かされにくい)
(3) 参院選での統一名簿の効果は限定的(共産から大地までの連合でも上乗せ議席は2議席だけ)
(4) 小中選挙区比例代表並立制でなく、中選挙区比例代表併用制だったら、生活の党・緑の党・みどりの風・新党大地も議席を獲得できた(自民は獲得議席数が65から42に激減)
(5) 比例区選挙の議席配分方法として少数政党に有利と言われるサンラゲ式でも、自民の1議席が生活に回るだけ
(6) 比例代表制であれば96条(先行)改憲反対勢力(公明抜き)は 2010年参院選、2013年参院選で3分の1を超えていた
(7) 脱原発党派は2012年衆院選と比べ、比例区で得票率を伸ばしたが、議席占有率は微減
(8) 政党要件のあるみどりの風は比例区で緑の党に負けた――泡沫排除の目的で非政党に過重な立候補条件を課す公職選挙法は破綻
(9) 自民・公明は、選挙区で計48%、比例区で計49%の得票率しかなく、2012年衆院選と同様に過半数の支持を得ていない


(1) 各党の消長

党派別の獲得議席数は表1に、比例区の詳細な結果は表2に、選挙区の定数別の詳細な結果は表3に示した。

自民党は比例区得票率を2012年衆院選の27.62%から34.68%に、小選挙区得票率も2012年衆院選の43.01%から57.64%に増やした。みんなの党も比例区得票率を2012年衆院選の8.72%から8.93%へ微増させた。

維新が橋下徹共同代表の「従軍慰安婦制度」発言で得票率を激減させたのは当然だが、歴史修正主義の本家本元たる自民党と、同制度に旧日本軍の関与を認めた河野談話の見直し派を数多く候補に抱えていたみんなの党がいずれも比例区得票率を伸ばした。運動側の力不足と反省すべきだろうし、自民もみんなの党も維新と歴史認識の点で同質であることをメディアが指摘しなかったことが悔やまれる。

分家の従軍慰安婦発言が批判され、歴史修正主義の本家本元がお咎めなし?
http://kaze.fm/wordpress/?p=463
みんなの党参院選候補者(選挙区)の42%が村山談話・河野談話見直し派(選挙区で当選したみんなの党候補者4人中3人が見直し派)
http://unitingforpeace.seesaa.net/article/368666500.html

民主党は比例区得票率を2012年衆院選の16.00%から13.40%に微減させ、小選挙区得票率を2012年衆院選の22.81%から16.01%へと大きく減らした。比例区得票率で公明党に抜かれてしまった。

保守政党の間で票が行ったり来たりするだけというパターンが、ここ何年も続いている。

共産の比例区得票率は9.68%で、2012年衆院選の6.13%、2009年衆院選の7.03%をいずれも超えている。社民の比例区得票率は2012年衆院選と今回でまったく変わらず2.36%。2012年衆院選で比例区得票率5.69%を稼いだ旧未来の票が共産・社民両党に幾分か回るだろうと予測していたが、社民については外れたようだ。

生活の党・緑の党・みどりの党を合計しても比例区得票率は2.86%しかない。旧未来の比例区得票率5.69%との差に相当する票はどこに行ったのだろう。


(2) 参院選の小中選挙区比例代表制並立制は、小選挙区と中選挙区で死票率が違うため、多数決のルールが異なるのであり、いくら選挙区の間で有権者当たりの定数を揃えたところで、選挙権の格差をもたらし、定数配分の格差以上に違憲である

表3に定数別の「1票格差」(「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、最小の党のそれで割った値)を、表4に定数別の死票率を示した。

自民党は1人区の得票率が57.64%だが、93.55%もの議席を獲得した。死票率は1人区の41.69%が最高で、死票率の最低は比例区の4.79%。

死票率を別の観点から見たのが、上で定義した「1票格差」(政党間1票格差)。1人区はあまりに高い死票率で、ほぼ自民候補しか当選せず、他党派の当選者数が少ないため、1票格差は計算していない。

1票格差の最低は5人区の1.19倍で、最高が2人区の3.48倍。「定数配分の格差」2倍が違憲なら、実質的な投票価値の格差である「1票格差」2倍超はなおさら違憲だ。

定数の違いによる死票率や1票格差の違いは選挙権と選挙制度の本質に関わる。選挙区によって小選挙区制や中選挙区制というように異なる選挙制度を適用すれば、法の下の平等に反し、選挙権の格差をもたらす。

具体的に言えば、地方ほど定数が少なく、従って死票率が高い。地方ほど比較大政党とそれを支持する有権者に有利となっている。

TPP(環太平洋連携協定)などを考えると、よく分かるだろう。地方は農業県が多いから、TPPに反対している有権者が多いものと思われる。ところが、TPPに反対の比較少数政党に対する票は死票になりやすく、TPPを二枚舌で反対といいながら推進している自民党という比較大政党に対する票は生票になりやすい。逆に都市部の有権者が反TPPの比較少数政党に投じる1票は、地方ほど死票になりにくく、TPP反対の意思を託せる確率が高い。

これを地方と都市部の有権者の間に存在する選挙権の格差と言わずして何と言うのか。定数配分の格差よりはるかに重大だ。

定数配分の格差は、それそのものより、選挙区によって定数の違いによる死票率や1票格差の違いが生じていることを前提に、地方と都市部などの選挙区によって有権者当たりの定数が異なることで、これらの死票率や1票格差による影響が増幅することが、問題となる。

現在では中国地方という自民党支持率の高い地域で有権者当たりの定数が多いことが問題だが、このように選挙区によって政党支持率に違いがなければ、また選挙区によって定数の違いによる死票率や1票格差の違いが生じなければ、定数配分の格差は、純粋に地域で選出される議員数の有権者当たりの違い(地域代表性格差)という意味しか持たない。

このような場合に、定数配分の格差は1票の価値の格差を意味しない。自民党支持の有権者1万人、民主党支持の有権者1000人の1人区Aと、自民党支持の有権者10万人、民主党支持の有権者1万人の1人区Bでは、当選に影響を与える1票の価値はまったく同じである。

有権者当たりの定数が同じなら、1人区の10選挙区と10人区の1選挙区では、確かに投票率が同じであれば投票に参画する有権者の数は揃うことになるが、生票という実質的な投票価値を手にすることで投票に参画する有権者の数は、明らかに10人区の方が多い。

平等な国民主権を尊重した多数決原理は、いくら選挙区の間で有権者当たりの定数を揃えたところで実現はせず、生票率ないし死票率を合わせなければならない。参院選の小中選挙区比例代表制並立制をそのままにして定数配分の格差をなくしても、例えば地方と都市部の間では多数決のルールが死票の多い小選挙区制や死票の少ない中選挙区制という違いによって異なり、その結果として実質的に投票に参画できる有権者の数が異なるという格差は、なくならない。

もっとも、中選挙区制でも、表3に示すように、死票率は無視できないほど大きい。都議会議員選挙の結果からも示されている。

2013東京都議会議員選挙――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=470


(3) 参院選での統一名簿の効果は限定的

生活の党・緑の党・みどり風の票を合算して比例区の議席を配分すると、民主の議席が1議席減り、生活の党・緑の党・みどり風の連合が1議席を獲得する。

社民・生活・緑・みどりの票を合算して比例区の議席を配分すると、自民・民主の議席がそれぞれ1議席減り、社民が元々獲得していた1議席に2議席が上乗せされ、社民・生活・緑・みどりの連合で3議席を獲得する。

社民・生活・緑・みどり・大地の票を合算した場合も、社民・生活・緑・みどりの票を合算した場合と同様のパターンの議席配分になる。

共産・社民・生活・緑・みどり・大地の票を合算しても、共産・社民がそれぞれ元々獲得していた議席に社民・生活・緑・みどりの票を合算した場合と同様のパターンで2議席が上乗せされるだけ。

衆議院比例区のように少ない定数の11ブロックに細切れされている場合は、少数政党の票を合算することでこれらの政党連合に配分される議席数が大幅に増えるが(参照: 2012衆院選――結果分析 )、参議院比例区のように全国一区でそれなりの定数がある場合は、複数の少数政党が統一名簿を作成しても、劇的に議席が増えるわけではない。ただ、統一名簿を作成することで有権者の意識が変わるということはあり得る。


(4) 小中選挙区比例代表並立制でなく、中選挙区比例代表併用制だったら、生活の党・緑の党・みどりの風・新党大地も議席を獲得できた

表5に参議院の現行選挙制度である小中選挙区比例代表並立制でなく、中選挙区比例代表併用制だった場合の結果を示した。

中選挙区比例代表併用制というのは、総定数を中選挙区に割り振り、政党候補も無所属候補も中選挙区で競い、無所属候補は主に中選挙区で当選させ、総定数から無所属の当選人数を差し引き、この残りの定数を政党名簿に投じた票数に基づいて政党に比例配分するというもの。

中選挙区比例代表併用制を提案する
http://kaze.fm/wordpress/?p=164

今回の参院選では、沖縄社会大衆党の糸数慶子氏と無所属2人が選挙区で当選した。参院選改選数121議席の残る118議席を比例区得票数に基づいて各党派にドント式で配分した(比例区の議席分は選挙区に割り振られていないし、選挙区の1人区は文字通り中選挙区ではないので、厳密には中選挙区比例代表併用制とは異なる)。

その結果、幸福実現党を除き、比例区に立った党派すべてが議席を獲得することができた(より中選挙区比例代表併用制に近い想定として、仮に選挙区で6人が当選したとすると、表5より自民党・みどりの風・みんなの党がそれぞれ1議席を失う)。自民党は獲得議席数が65から42に激減する。

ところで、例えば、自民党比例区候補の渡辺美樹氏は、緑の党比例区候補の三宅洋平氏より、獲得票数が少なかったにもかかわらず当選し、一方の三宅氏は落選してしまった。

これは感覚的におかしいと判断されやすいが、参院選の比例区選挙は非拘束名簿方式で、政党名での得票数と個人名での得票数を合算し、まず政党全体に対する議席数をその合算数で決めるという制度なので、個人得票数だけで判断することはできない。もしも個人に対する投票だけを比例区選挙でも義務付けていれば、渡辺氏の得票数は増えていただろう。

究極の1人1票選挙は、1人の当選に要する票数を完全に揃えれば実現する。技術的には通信ネットワークと端末を使い、複数日にわたって複数回の修正投票を行えるようにすればよい。

ある政党の支持者は、1回目の投票である候補に投じた票が多過ぎれば、2回目以降の修正投票で、1回目の投票で得票数が足りなかった同党候補に票を移譲するはずだろう。今回の例で言えば、自民の渡辺氏のような候補が2回目以降の修正投票で票を獲得する。こうして政党の候補は得票数が揃う。しかし、これでは手間がかかる。

現在の比例代表制は、このような修正投票のプロセスを省略しているだけで、外形的に各候補の得票数が不揃いになるものの、同プロセスを採用した1人1票選挙の近似的な制度と言える。

また、個人得票数の多寡で当選を決める大選挙区制(中選挙区制)は、例えば超人気の脱原発候補が脱原発有権者のほとんどすべての期待を受け、当選した脱原発候補はその1人だけ、というような民意を反映しない事態を生じかねない危険性を持っている。

選挙制度を考える場合、死票とともに過剰な生票を防ぐことを考慮しなければならず、比例代表制などの要素が必要になってくる。大選挙区制(中選挙区制)の問題点は他にもある。

大選挙区制(中選挙区制)の問題点〜連記投票制の落とし穴〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=232

より根本的には、小選挙区制であれ大選挙区制(中選挙区制)であれ、単純に「得票数順」で当選を決める区割り選挙にはコンドルセのパラドックスが働くので、真の「選好順」を測定できないという問題がある。

小選挙区制の廃止へ向けて――(8) コンドルセのパラドックス
http://kaze.fm/wordpress/?p=215#8


(5) 比例区選挙の議席配分方法として少数政党に有利と言われるサンラゲ式でも、自民の1議席が生活に回るだけ

田中龍作氏が比例区選挙における議席配分方式の問題を取り上げ、「ドント式による比例選挙が『比例していない比例選挙』と言われるゆえんでもある」と指摘している。

田中龍作ジャーナル | 大政党ほど有利 「比例していない比例選挙」とは…
http://tanakaryusaku.jp/2013/07/0007625

ところが、ドント式による比例選挙が「比例していない比例選挙」となるのは、正確に言えば衆院選の比例区ブロックのように、定数が少ない場合に限られる。例えば、2012年衆院選の比例区では、社民の1票格差は4.87倍(対自民、全ブロック集計)であった。

2012衆院選――結果分析
表1 2012年衆議院選挙の結果
http://kaze.fm/wordpress/?p=435#2012election_table1

少数政党に有利と言われるサンラゲ式で今回の参院選の議席を配分しても、自民の1議席が生活に回るだけの結果となる。「1票格差」の最大はドント式で社民の1.23倍(対民主)、サンラゲ式で同じく社民の1.33倍(対生活)だから、サンラゲ式で拡大してしまう。

定数が少なくとも50議席程度以上であれば、ドント式でもサンラゲ式でも、結果はほとんど変わらない。下記を参照いただきたい。

比例区定数が100に削減された場合の衆院選比例区シミュレーション
2 議席比例配分の計算方法と票数集計単位の比較〜ドント式と定数の少ない現行ブロック式の組み合わせは小党に不利〜
http://kaze.fm/wordpress/?p=229#2

変えなければならないのはドント式かサンラゲ式かという議席配分方式ではなく、定数(配分される議席数)の大きさだ。衆院選であればブロック単位ではなく全国単位で票を集計して議席を配分する必要がある。

その前に、定数が比例区と選挙区に分かれ、比例区の定数分を無所属候補から締め出している並立制の差別を解消しなければならない。


(6) 比例代表制であれば96条(先行)改憲反対勢力(公明抜き)は 2010年参院選、2013年参院選で3分の1を超えていた

比例代表制であれば、まず10年参院選で96条(先行)改憲反対勢力(公明抜き)は51議席を獲得できていた。

2010参院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=309#2010e3

残る改選数の選挙が今回の13年参院選であったわけだが、やはり比例代表制の一種である中選挙区比例代表併用制であれば、表5に示すように36議席を獲得できた。

結局、51議席と36議席を足した87議席が、比例代表制であった場合の96条(先行)改憲反対勢力(公明抜き)の現有議席となり、総定数242議席の3分の1を超える。

これを国民の意見と国会の意見の乖離、国民主権の格差と言わずして何と言うのか。


(7) 脱原発党派は2012年衆院選と比べ、比例区で得票率を伸ばしたが、議席占有率は微減

12年衆院選比例区での共産・旧未来・社民・大地の得票率と、13年参院選比例区での共産 ・社民・生活・大地・緑の党・みどりの風の得票率の変化をみると1.7ポイント増だが、議席占有率でみると1.9ポイント減少している。

2012衆院選――結果分析
http://kaze.fm/wordpress/?p=435

これは明らかに多党乱立が原因。ただ、絶対的支持率そのものが低いことが根本的な問題であって、1.9ポイント減が問題にならないくらい、得票率と議席占有率の絶対数を高めることが必要。


(8) 政党要件のあるみどりの風は比例区で緑の党に負けた――泡沫排除の目的で非政党に過重な立候補条件を課す公職選挙法は破綻

政党要件のない党派が比例区で戦うには、10人の候補者を揃えなければならない。このような規定は政党にはない。ただ10人を用意するだけならそれほど負担でないかもしれないが、候補1人につき600万円の供託金が必要だから、非常に重い条件となる。

政党だって10人を擁立し、10人を当選させるのは至難の業。社民は3人を立てて、1人を当選させただけだ。

このような公職選挙法の規定は実質的に非政党、新しい党派の比例区での立候補を不当に制限する。

そもそも、泡沫排除という目的が公職選挙法の中で明示されているわけではないが、このような制限選挙を認める目的を公職選挙法に盛り込むことは憲法違反に他ならない。

その上で、政党要件のあるみどりの風が比例区で緑の党に負けたことで、泡沫排除という目的の整合性が取れなくなってしまった。政党より支持される非政党に重い負担を強いるのは誰が考えても不公正だ。


(9) 自民・公明は、選挙区で計48%、比例区で計49%の得票率しかなく、2012年衆院選と同様に過半数の支持を得ていない

これは表2と表3に示してある通り。

一方、自民・公明の議席占有率は、選挙区で70%、比例区で52%、全体で63%(表1、表2、表3)。比例区でほぼ50%の得票率(すなわち国民の半数の支持の指標)を達成するだけで、議席の3分の2近くを獲得できることに注目してほしい。

国民の過半数の支持を得ていない勢力が国会の多数決で法律を成立させ、国民の半数の支持しか得ていない勢力が議席の3分の2近くを獲得して改憲発議ができる。国会議員は国民の代理で多数決と改憲発議を行うのだと認めれば、得票率と議席占有率の乖離は、国民主権を毀損している、国民主権の格差をもたらしている、と理解できるはず。

この問題は、下記の政党・メディアあて要望書で取り上げている。

民意を生かす政治・公正な報道を求める要望書
http://kaze.fm/wordpress/?p=469

 
 

表1 2013年参議院選挙の結果(党派別当選者数)
議席占有率は%
当選 議席占有率 選挙区 比例区 改選 非改選 公示前 新勢力
自由民主党 65 53.72 47 18 34 50 84 115
公明党 11 9.09 4 7 10 9 19 20
民主党 17 14.05 10 7 44 42 86 59
日本維新の会 8 6.61 2 6 2 1 3 9
日本共産党 8 6.61 3 5 3 3 6 11
みんなの党 8 6.61 4 4 3 10 13 18
社会民主党 1 0.83 0 1 2 2 4 3
生活の党 0 0.00 0 0 6 2 8 2
新党大地 0 0.00 0 0 1 0 1 0
緑の党 0 0.00 0 0 0 0 0 0
みどりの風 0 0.00 0 0 4 0 4 0
幸福実現党 0 0.00 0 0 0 0 0 0
沖縄社会大衆党 1 0.83 1 0 1 0 1 1
新党改革 0 0.00 0 0 1 1 2 1
無所属 2 1.65 2 0 5 1 6 3
121 100.00 73 48 116 121 237 242

表2 2013年参議院選挙の結果(比例区の詳細)
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、最小の民主党のそれで割った値
得票数 得票率 議席数 議席占有率 1票格差
自民 18,460,335 34.68 18 37.50 1.01
公明 7,568,082 14.22 7 14.58 1.06
民主 7,134,215 13.40 7 14.58 1.00
維新 6,355,299 11.94 6 12.50 1.04
共産 5,154,055 9.68 5 10.42 1.01
みんな 4,755,160 8.93 4 8.33 1.17
社民 1,255,235 2.36 1 2.08 1.23
生活 943,836 1.77 0 0.00
大地 523,146 0.98 0 0.00
緑の党 457,862 0.86 0 0.00
みどりの風 430,673 0.81 0 0.00
幸福 191,643 0.36 0 0.00
53,229,541 100.00 48 100.00

表3 2013年参議院選挙の結果(選挙区の詳細)
1票格差:「1議席当たりの得票数」を各党ごとに求め、最小の党のそれで割った値
大地・緑の党・幸福は諸派にまとめた。率は%。
得票数 得票率 議席数 議席占有率 1票格差
1人区(31選挙区) 自民 9,818,270 57.64 29 93.55
公明
民主 2,727,427 16.01 0 0.00
維新 170,134 1.00 0 0.00
共産 1,661,560 9.75 0 0.00
みんな 471,628 2.77 0 0.00
社民 35,801 0.21 0 0.00
生活 167,480 0.98 0 0.00
大地
緑の党
みどりの風 367,083 2.15 0 0.00
幸福
諸派 638,929 3.75 1 3.23
無所属 975,995 5.73 1 3.23
17,034,307 100.00 31 100.00
得票数 得票率 議席数 議席占有率 1票格差
2人区(10選挙区) 自民 6,080,897 41.95 10 50.00 1.40
公明
民主 3,048,094 21.03 7 35.00 1.00
維新 1,513,424 10.44 1 5.00 3.48
共産 1,509,268 10.41 1 5.00 3.47
みんな 1,351,893 9.33 1 5.00 3.10
社民 46,101 0.32 0 0.00
生活 302,635 2.09 0 0.00
大地
緑の党
みどりの風
幸福
諸派 576,888 3.98 0 0.00
無所属 67,233 0.46 0 0.00
14,496,433 100.00 20 100.00
得票数 得票率 議席数 議席占有率 1票格差
3人区(3選挙区) 自民 3,156,382 37.98 4 44.44 1.41
公明 599,755 7.22 1 11.11 1.07
民主 1,519,752 18.29 2 22.22 1.36
維新 450,177 5.42 0 0.00
共産 857,349 10.32 0 0.00
みんな 1,117,977 13.45 2 22.22 1.00
社民 112,853 1.36 0 0.00
生活 148,240 1.78 0 0.00
大地
緑の党
みどりの風 62,985 0.76 0 0.00
幸福
諸派 285,591 3.44 0 0.00
無所属
8,311,061 100.00 9 100.00
得票数 得票率 議席数 議席占有率 1票格差
4人区(2選挙区) 自民 1,948,595 25.66 2 25.00 1.47
公明 1,326,881 17.48 2 25.00 1.00
民主 798,384 10.51 1 12.50 1.20
維新 1,299,277 17.11 1 12.50 1.96
共産 913,859 12.04 1 12.50 1.38
みんな 898,176 11.83 1 12.50 1.35
社民 76,792 1.01 0 0.00
生活
大地
緑の党
みどりの風 119,633 1.58 0 0.00
幸福
諸派 142,271 1.87 0 0.00
無所属 69,002 0.91 0 0.00
7,592,870 100.00 8 100.00
得票数 得票率 議席数 議席占有率 1票格差
5人区(1選挙区) 自民 1,677,048 29.75 2 40.00 1.19
公明 797,811 14.15 1 20.00 1.13
民主 552,714 9.80 0 0.00
維新 413,637 7.34 0 0.00
共産 703,901 12.49 1 20.00 1.00
みんな 320,287 5.68 0 0.00
社民
生活
大地
緑の党
みどりの風 70,571 1.25 0 0.00
幸福
諸派 115,463 2.05 0 0.00
無所属 986,373 17.50 1 20.00
5,637,805 100.00 5 100.00
得票数 得票率 議席数 議席占有率 1票格差
1〜5人区 自民 22,681,192 42.74 47 64.38 1.00
公明 2,724,447 5.13 4 5.48 1.41
民主 8,646,371 16.29 10 13.70 1.79
維新 3,846,649 7.25 2 2.74 3.99
共産 5,645,937 10.64 3 4.11 3.90
みんな 4,159,961 7.84 4 5.48 2.16
社民 271,547 0.51 0 0.00
生活 618,355 1.17 0 0.00
大地 0.00
緑の党 0.00
みどりの風 620,272 1.17 0 0.00
幸福 0.00
諸派 1,759,142 3.31 1 1.37 3.65
無所属 2,098,603 3.95 2 2.74 2.17
53,072,476 100.00 73 100.00

表4 2013年参議院選挙――定数別の死票率
1人区 2人区 3人区 4人区 5人区 比例区
総得票数 17,034,307 14,496,433 8,311,061 7,592,870 5,637,805 53,229,541
生票 9,933,167 9,407,148 5,719,234 6,002,408 3,845,444 50,682,381
死票 7,101,140 5,089,285 2,591,827 1,590,462 1,792,361 2,547,160
死票率 41.69 35.11 31.19 20.95 31.79 4.79

表5 2013年参議院選挙――小中選挙区比例代表並立制でなく、中選挙区比例代表併用制だったら
沖縄社会大衆党の糸数慶子氏と無所属2人を選挙区当選者とし、残る118議席を比例区得票数に基づいて各党派にを配分
自民 公明 民主 維新 共産 みんな 社民 生活 大地 緑の党 みどりの風 幸福 社大・無所属
実際 65 11 17 8 8 8 1 0 0 0 0 0 3 121
併用制 42 17 16 14 11 11 2 2 1 1 1 0 3 121

 
 
太田光征